@itan-journ@l praha

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『Nocturnal Animals』優れた芸術作品による間接的な復讐は可能なのである





ファッション界のスター、トム・フォード様の映画第二作目です。友人Y嬢(処女作「シングルマン」のファン)と「Anthropoid」を観に行った時に予告編が流れていて「!!!」と思わず暗闇で見つめ合ったのでした。ダークな色調の映像に映えまくるエイミー・アダムスの真っ赤な唇(やはり使用してるのはトム・フォード ビューティーのプロダクト?)、鮮やかな緑のドレス、乾いた空気の中で銃口を向けるマイケル・シャノンのアップに、切なそうに運転をするジェイク・ギレンホールの表情・・・映像的な魅力もさることながら「一体これはどんな話なんだろうか・・・?」と興味をかき立てられたのです。

素晴らしい映画でした。いや~、二作目でこの成熟っぷりか、凄いな・・・と、天は何物をもトム・フォード様にお与えになった様です。私が感じ取ったのは・・・優れた芸術作品による、間接的だが、しかし確実に相手を追い詰めていくという復讐は可能なのである・・・という印象。現実と小説の世界が交互に描写され、見るものを残酷で美しい復讐のシーンへと引きずり込みます。

キャストはヒロインのエイミー・アダムス、 ヒロインの元夫/小説の主人公(二役)のジェイク・ギレンホール、小説の登場人物で警官のマイケル・シャノン、小説の登場人物で犯罪者のアーロン・テイラー・ジョンソン、ヒロインの現夫にアーミー・ハマー、ヒロインの母親にローラ・リニー、その他マイケル・シーン、アンドレア・ライズボロー、アイラ・フィッシャー(ブルーノの嫁ですね)と、ピンだけでも主役を張れる級の演者が集結しており、それぞれが素晴らしいパフォーマンスを見せています。

ヒロインのスーザン(エイミー・アダムス)はギャラリーのオーナーで裕福な生活を送っています。同じく裕福でハンサムな夫のハットン(アーミー・ハマー)がいるのですが、夫婦仲は冷えきっており夫は外で浮気をしています。ある日、スーザンの元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から小包が届きます(このとき封を開けようとして指を切ってしまうのも象徴的だ)。中には「ノクターナル・アニマルズ」という彼が書いた小説が入っていました。この小説はスーザンに捧げられており、彼女に最初の読者になって欲しいということなのでした。タイトルは「夜行性動物」という意味で、不眠症のヒロインに元夫がつけたニックネームでもあるのでした。スーザンは小説を読み始めますが、彼女とエドワードをモデルにしたと思われるキャラクターが残酷な運命にとらわれて行くのを読書により追体験します。スーザンとエドワードの過去、フィクションである小説が絡み合い・・・というあらすじです。



※ネタバレします。



現実世界とフィクションが交互に出て来るんですが非常にシームレスに繋がっており、観客もスーザンの視線から残酷な小説世界を体験するということを可能にしています。ストーリーテリング力が抜きん出ているってことなんだろうなあと感じました (トム・フォード様は兼脚本)。原作小説があるんですが、未読ですけどこのクオリティーだったらオスカー脚色賞とか余裕なんじゃね・・・?というレベルだと思います。元夫エドワードが書いた小説の内容はサスペンス・スリラーで、行きずりのギャング(アーロン・テイラー・ジョンソン)とその連れに妻と娘を誘拐されて殺された男トニー(ジェイク・ギレンホール 二役)が警官アンデス(マイケル・シャノン)の助けを借りて復讐を遂げるという話です。この話もまたヒリヒリするように悲惨。小説パート、特に事件が起こるまでの一連のシーンは「嫌だな、嫌だな、怖いな、怖いな~」と稲川淳二もビビりまくる不穏なバイブスがびんびん出ていました。

小説の中の男、トニーは愛する妻(アイラ・フィッシャー)とティーンネイジャーの娘(エリー・バンバー)を連れて南部へドライブ旅行に出かけます。深夜、携帯のシグナルもないような道路を走っていると、よからぬ輩が乗っている車に煽られて追い越そうとしますが、逆に彼らに車をぶつけられて停車するハメに。そこで絡まれてタイヤをパンクさせられ妻子を連れさられてしまうんです。この一連のシーンがもう嫌だな、嫌だな~の連続。リーダー格のギャング、レイ(アーロン・テイラー・ジョンソン)は別にそこまでコワオモテじゃないし(なんだったらイケメンです)、他のやつらも田舎の普通のあんちゃん風情なんですよね。銃やナイフとかで脅しても来ないし、なんだったら振り切れそうなくらいな感じなんですよ。でもネチネチと絡んで来るのが、な~んか嫌だな、嫌だな~という。で、取り返しのつかないことになっちゃうんですが、ほんのちょっとしたことがオオゴトになってしまった・・・という流れが、リアルな感じがして本当に恐ろしかったです。

妻子と引き離されたトニーは荒野に捨てられますが、近くの民家に助けを求めて警察に通報。捜査にあたるのがアンデス(マイケル・シャノン) でした。なんかデジャヴまでいかないけど、エイミー・アダムスとマイケル・シャノンってどこかで共演してなかったっけか・・・?と思ったら「マン・オブ・スティール」でしたね。そしてエイミー・アダムスと現夫役のアミハマってどこかでリンクしてない・・・?と思ったら、スーパーマンのカヴィル兄さんが「コードネーム U.N.C.L.E.」でアミハマと共演してました。んだから、エイミーさんは違う映画でソロとイリヤ、アンクル・デュオの相手役をしてるってことなんですね!あ~スッキリした。

マイケル・シャノンは悪役を演じることが多いですが、この映画ではとってもいい役。南部なまりのきつい一見とっつきにくそうだけど素朴ないいおっさんを演じていて悲惨なムードに彩られた映画全体の良心としてバランスを保っていたと思います。もうすっかり貫禄のある実力派オッサン俳優という感じですが、シャノンは74年生まれなんで意外と若いんですね。これにはビックリ。あとフィルモグラフィーを見ると2016年の出演作数がすごいことになってます。働き過ぎ!(笑)

その後、変わり果てた姿の妻子の遺体が遺棄されているのが発見されるのでした。 小説のあまりの描写にスーザンは本を閉じて眠れなくなってしまうのですが、どうしてエドワードがそのような小説を書いたのか彼女には心当たりがあるようです。彼女は自身の過去を回想します。古くからの知り合いだったスーザンとエドワードはニューヨークで再会。昔からお互いに気持ちがあった二人は交際を始めて結婚することになりますが、スーザンの母(ローラ・リニー)から反対を受けます。まず作家志望のエドワードがお金を持っていないこと、あとは彼が精神面に置いて少し弱いということでした。ここら辺はよくわかっていなかったかも知れませんが、ロマンチストすぎて生活力がないみたいな意味だったのかな?と思います。

反対を押し切ってスーザンとエドワードは結婚しますが、やはりエドワードの文学的素養を信じきれず、スーザンは彼との結婚生活に嫌気がさして来ます。二人が道で口論するシーンがありますがスーザンが放った「あなたは弱い」という言葉がエドワードを刺激し、これで二人の仲が修復不可能になるんですね。そしてスーザンはこの頃に出会った同じく上流階級出身のハットン(アーミー・ハマー)と付き合い始めるのでした。

さて小説に戻ります。アンデスの捜査により容疑者が割り出されて主犯格のレイが確保されるのですが、後に証拠不十分で釈放されてしまいます。この挑発的でふてぶてしいリーダー格のレイを演じるのがイケメン俳優のアーロン・テイラー・ジョンソンです。長髪でヒゲを生やしているのでその美貌は隠れ気味なんですが、全裸で便座(なぜか野外にある)に座っているシーンが長尺であり(絶妙なカメラワークが局部を上手に隠していて見えないが)、ここが唯一のゲイぽいといえばゲイぽいシーンなのでした。「シングルマン」が監督自身のセクシャリティーを反映したものでしたが、二作目の本作はまったく別物と言っていいでしょうね。

結局、犯人逮捕に至らず法の下に裁いて償いをさせることが出来なくなってしまいます。しばらくしてアンデスから連絡をもらったトニーは彼が肺がんだと診断されて退職が近いことを知らされます。そこでアンデスが言った言葉が、予告編にも出て来る「お前さんが正義が下されるのを見る覚悟があるかどうかだ」(訳適当)というものでした。アンデスはもう死ぬのでトニーが犯人たちに復讐することに協力するよ、というということなんですね。これがマイケル・シャノンの低音ボイスで発音されるわけです。ゾクゾクしますね!

そしてアンデスは遂にレイと仲間の一人を捕まえて、復讐の機会を与えてくれるんですよ。やっていることは警察や法の道を外れてしまっているけど、人としての道には外れていないんですよ。でもいざとなるとトニーは躊躇してしまい彼らを撃てない。隙を見て逃げる彼らをアンデスが撃ってくれるんですよ。レイは逃げてしまいましたが、仲間はアンデスによって射殺されたのでした。その後、レイの居場所を見つけたトニーは覚悟を決め一人で乗り込みます。そこでもレイはトニーを挑発して神経を逆撫でするようなことを言うんですよね。そして「お前が弱いから妻子が殺されたんだ」というようなことを言うんです。この「弱い」というのがキーワードで、リアル世界でもエドワードがスーザンに言われて一番気にしている言葉なのでした。それに刺激されたトニーはついに引き金を引きます。ところがレイが隠し持っていた凶器で攻撃を受け、彼も目を負傷してしまいます。そして銃の誤射で自分を撃ってしまい倒れるのでした。

リアル世界で小説を読んでいるスーザンは再び回想します。エドワードとの結婚はダメになったのですが、彼女は妊娠していました。新しい恋人のハットンに付き添ってもらい極秘で中絶手術を受けます。ところがそれがエドワードの知るところとなり、最もひどい形で彼を裏切り捨てることになったのでした。その後スーザンはハットンと結婚。エドワードの小説中で娘が暴行されるシーンを読み、不安になったスーザンが娘に連絡するシーンがありますが、この娘は恐らくハットンと再婚してから出来た子なんでしょうね。スーザン自身が「彼とはひどい別れ方をしてしまった」と認めていますが、まさかそんな終り方だったとは。

エドワードの小説「ノクターナル・アニマルズ」は彼自身がトニー、スーザンがトニーの妻をモデルとしており、残酷で暴力的な殺人事件を作中で展開させることによってエドワードがスーザンにどれだけ傷つけられたのかが語られているのでした。読む人が読めばわかるようになっている、という物語なんですね。スーザンは本の残酷描写と過去の出来事を重ねてハッとさせられるわけです。恐らく結婚していたときエドワードはたいした文才ではなかったようですが、皮肉なことにスーザンとのひどい別れを経て人を脅かすようになるまでの作品を生み出すスキルを身に付けたということなのでしょう。

スーザンはエドワードに感想のメールを送り、彼と食事に行くことになります。久しぶりに会うのでスーザンは丁寧に化粧をし、魅惑的に見えるワンピースを選びます。待ち合わせの高級レストランに到着し、食前酒を飲みながらエドワードを待つスーザン。しかし彼が現れることはありませんでした。これでENDです。

これでエドワードによる小説を使った復讐は完了したのでした。うーん、見応えがあった!ジェイク・ギレンホール演じるエドワードは回想と小説の中だけに出て来るのが良かったですね。スーザンの今の結婚生活もうまく行ってないので、もしかしたら才能を開花させたエドワードと再会することで何か期待をしていたのかもしれませんね。彼女はアートギャラリーのオーナーなので、芸術家が優れた作品を作るのにどれだけモチベーションが必要なのか理解していたはず。ここまで負の情熱をたぎらせているなんてストーカーっぽくてキモいという感覚では全然なかったように見えますし。しかし、なんと美しく完璧な復讐なのでしょうか。思わずため息が出てしまいました。

やはり評価は高いようで、様々な賞でノミネートされいくつか受賞をしています。有名なところだとトム・フォード監督がベネチア映画祭の審査員賞を受賞、金獅子賞ノミネート。ゴールデングローブではトム・フォードが監督賞と脚本賞ノミネート、アーロン・テイラー・ジョンソンが助演男優賞ノミネート(こちらは発表前)だそうです。個人的に助演男優ってことではテイラー・ジョンソンよりマイケル・シャノンだろ!と思いますが。他の映画賞では圧倒的にシャノンが助演男優賞ノミネートされている数が多いです。

面白いところでは、Women Film Critics Circleという映画賞で、ローラ・リニー演じるヒロインのお母さんが「Mommie Dearest Worst Screen Mom of the Year Award」という賞を受賞しています。「Mommie Dearest」ってのは前に観た「愛と憎しみの伝説」の原題なので、今年スクリーンで最悪だったお母さん賞ってことですかね(笑)。しかし、ローラ・リニーの出番すごく短かったんですよ。5分もなかったんじゃないかなあ。

しかしトム・フォード様ってすごい。ファッション・デザイナーとしても一流、映画作家としてもこの腕前です。次回作もかなり期待出来るのではないでしょうか。恐らく日本でもそのうち公開されると思いますので、是非ご覧下さい!







とにかく価格設定が高いトム・フォード ビューティー!
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Noriko says... ""

こんばんは☆

この映画、ちょうど予告でみて観たいなと思ってたところです。
おもしろそうですね(^.^)

↓の「ドントブリーズ」も観たいんですけど、地元では上映してないので
DVDになるまでお預けになりそうです。

今年はいろいろ映画を観る参考にさせてもらいました!
来年も楽しみにしています。よいお年を(^_^)/
2016.12.31 18:49 | URL | #- [edit]
aitantanmen says... "Re: タイトルなし"
Norikoさん

本作は本当におすすめです!濃厚で見応えがあり、ああ映画観たな〜って感じがしました。なので、なんかお得感もありました(笑)。せっかく観るなら、もっとこういう映画を・・・とも思いました。

「ドント・ブリーズ」は日本でヒットしていると聞いているのですが、意外と公開館が少ないんですかね。少し遅れてでも、お近くの劇場で公開されると良いですね。それまでネタバレは見聞きしないように、どうぞお気をつけて!

こちらこそ、コメントをどうもありがとうございました。また来年もどうぞよろしくお願い致します。
2016.12.31 19:10 | URL | #- [edit]
Leigh says... ""
ほぼ毎日映画のレビューを書かれているのですね。その情熱と体力には感心させられす(皮肉ではないですよ! W)。『ラマン』以来はじめてじっくりと読ませていただきました。ネタバレはあるものの映画の核心が伝わってきて、是非この映画を見てみたいと思わせてくれる文章です。私も映画は結構たくさん見ているほうだと思いますが、映画館には滅多に行かないばかりか、家ではケーブルTVの無料チャンネルでしか見ないので、2、3年前の映画が私にとっての最新です。

エイミー・アダムスは『アメリカン・ハッスル』ではじめて見たとき、「隠れたセクシー女優」を発見したと思いました。その意味は、その時点で既に結構年が行っているように見えてベテラン女優だろうと思えたのに、ぜーんぜんその存在を知らなかったからです。その深みのある瞳とキュートな口元の笑みのコントラストには尋常ではないものを感じました。調べてみると、案の定若い頃はどちらかというと普通の可愛らしい女の子という感じなので、きっとアメリカン・ハッスル以前にも見かけていたのでしょうが、目に止まらなかったのだと思います。

さて、『ノクターナル・アニマルズ』ですが、「サスペンス」が意味するドキドキ感が重厚な作品のようですね。ファッションデザイナーの作品らしくスタイリッシュなところがさらに品質を上げているのかもしれません。私はサスペンスの本質はエンターテインメントで、芸術というよりは工芸(クラフト)だと思います。私は芸術と言える映画を数は少ないけれどいくつか知っていますが、普段はサスペンスファンです。でも、最近、仕掛けのマンネリ化やCG頼りなどで、映画全体が低迷しているような印象を持っています。

最近見た映画では、『ファーナス/訣別の朝』がドキドキ感がありましたかね~。主演のクリスチャン・ベールも良かったけど、弟役のケイシー・アフレックがとても良かった。今、儚くて危ない感じが出せる数少ない俳優だと思います。『キラー・インサイド・ミー』ではじめて見たときは、「これは誰だ!?」と思いましたが、ベン・アフレックの弟なんですね。分厚い感じのお兄さんよりずっといいと思います。

それでは、またときどきお邪魔します。

りー
2017.01.17 12:26 | URL | #- [edit]
aitantanmen says... "Re: タイトルなし"
りーさん

どうもありがとうございます!そうなんですよね、誰に頼まれる訳ではなく、映画を観たらみっちり感想を書かなきゃならない習慣になってしまって今に至っています。こうして過去作の文章も読んで頂け、更に観たいと思って頂けるならとても嬉しいです。

大活躍のエイミー・アダムスですが、私の最初のイメージは「魔法にかけられて」というディズニー風?映画でのプリンセスでした。振り切った姫演技が印象に残っていたし、当時32歳ってのも凄いなと思いました〜。こういうロマコメ映画の女優さんなんだろうなって思っていたら、オスカーに絡んで来る実力派だったので正直驚きました。優しそうな美人顔にだまされた!という感じでしょうか。

本作は人間心理を掘り下げたドラマで、荒涼とした南部の風景とヒリヒリするような復讐劇(それもリアルとフィクションで同時進行!)のコンビネーション、かなり見応えがありました。トム・フォード、映画監督としても一流なのではないかと思わせるにじゅうぶんな出来映えだったと思います。

『ファーナス/訣別の朝』は未見ですが、クリスチャン・ベールならきっと間違えないでしょうね。ケイシー・アフレックは今度「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でオスカー取るかもと言われていますよね。分厚い感じのお兄さん(笑)とはまた違った、マッドな魅力を持った役者さんだなと思います。

2017.01.22 02:32 | URL | #- [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。