FC2ブログ

@itan-journ@l praha

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『山椒大夫』a.k.a.安寿と厨子王



       
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

山椒大夫 [ 田中絹代 ]
価格:2000円(税込、送料無料) (2016/11/17時点)



名画座で行われていた溝口健二特集の三作目です。拙ブログの記録を見ていると最新ハリウッド人気映画と日本の古い映画がまぜこぜになってて「この人二重人格?」と思われてしまうかもしれません・・・まあ雑食ということです。「山椒大夫」ってタイトルだけは子供の頃から聞いたことがあったんですね。「大夫(だゆう)」の意味がわからなかったけど、なんとなく山椒がついているから、なんか美味しそうな話なのかなあ、などとボンヤリ思っていました。山椒はやっぱり鰻には欠かせません。親子丼にかけても美味しいですな。

森鴎外の小説が原作なんだそうです(今は青空文庫で無料で閲覧可能)。冒頭でお母さんが少年のことを「厨子王」と呼ぶので「安寿と厨子王」っ て昔話だ、と気が付いたんですね。でもこれもタイトルだけで内容をまったく知らなかったんですよ。「ズシオウ」という響きから「寿司王」と連想していた私は、このお話のことも「なんか美味しそうだな」と長年思っていたのでした・・・。「寿司王」という名の回転寿司屋は色んなところにありそうですね。

山椒大夫はこの安寿と厨子王というおとぎ話をベースにしたお話だそうで。そりゃもう悲惨な運命に翻弄されまくる親子の悲劇です。ひたすら悲劇しか起こらず、不憫でいたたまれない気分になる話ですが、最後は一応ハッピーエンドってことになるのかなあ・・・。この作品も内外での評価が高く、ベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞。ゴダールはこの映画が好き過ぎて「気狂いピエロ」のラストシーンでまったく同じ構図の海のショットを撮ってオマージュを捧げているんだそうです。

時は平安くらい。ある貴族が没落してしまい夫はどこかへ左遷、妻子は夫に会いに行くため歩いて旅をすることになります。お母様の玉木(田中絹代)、少年の厨子王とその妹の安寿、そしてお付きのばあやという女子供だけの心もとない旅です。後から知ったんですが少年時代の厨子王を演じたのは子供の頃の津川雅彦だそう!すごいセリフまわしに学芸会感があったんだけど、まだ新人だったのね。津川雅彦、今は死にそうなお爺さん役やってますから、この映画も相当古いわけです(54年)。



※ネタバレします。



妻子は野宿をしているところ尼寺に住む老婆に出会います。老婆の親切で寺に泊めてもらい、その老婆が手配してくれた船に乗って旅を続けることになっていましたが悪い船頭に騙されて、親子が離ればなれになってしまいます(ババアもグルだった)。子供は人買いに連れられて都へ。山椒大夫(進藤英太郎)という長者の荘園で強制労働されるために売られてしまうのでした。この荘園がもう超絶ブラック企業で、可哀相な兄妹はクタクタになるまで日夜働かせられます。ただ1人、山椒大夫の息子である太郎(河野秋武)だけが兄妹を不憫に思い、新しい名前をつけてくれ親切にしてくれたのでした。

成長した厨子王(花柳喜章)と安寿(香川京子)は相変わらず強制労働に明け暮れる日々です。厨子王は荘園を抜け出そうとした者に焼印を加えるまでに変わってしまいました。ある日、安寿は新しく佐渡島からやって来た奴隷が歌う歌で、母親の玉木が生きていることを知ります。その歌には安寿たちの名前が歌詞になったものなのでした。もう労働力として見なされなくなった老女を姨捨山に捨てに行く役を言い渡された厨子王は、山の中で見張りをまいて安寿と逃げ出す作戦を立てます。しかし2人一緒に逃げるより厨子王だけで行った方が助かる確率が高いと考えた安寿は残って追っ手を止める係を志願するのでした。逃げ出した厨子王は、山椒大夫の息子で今は出家して山寺の住職になってる太郎のもとへ行き身を隠します。一方、安寿はこのまま残れば拷問され兄の行方を吐いてしまうと懸念してか、入水自殺を図るのでした。

という前編です。ここまでだけもかなりドラマですね。親子が湖のほとりで引き離されるシーンは「ええ~っ!」とビックリ。今まで静的な絵巻物風のシーンばかりだったので、急にこんな動的で心を揺さぶる様なシーンになって驚きました。可哀相すぎる!!!(最初から何やら怪しげな船頭だったが)そういえば「雨月物語」のときも湖畔で家族が別れるシーンがとても印象的でした。「おしん」で奉公に行くおしんと泉ピン子のおっかあが別れるシーンも思い出しますね~(古い)。 溝口作品がちょっと意識されていたのかな。

成長した厨子王(花柳喜章)と安寿(香川京子)。厨子王の花柳喜章は顔と芝居が濃くて、今の俳優で言うと山田孝之っぽい。安寿の香川京子様は昔から品があったんですね。強制労働の掃き溜めの中でもこの上品さをキープしてるってのが凄いです。今の女優で言うと堀北真希っぽい感じかな。私は美しく成長した安寿が山椒大夫に手籠めにされやしないかとヒヤヒヤしていました。

逃げた厨子王は太郎の勧めで関白に直訴し、父から別れる時にもらった家に伝わる小さな観音様のお陰で高貴な出だと認めてもらいます。そして山椒大夫の荘園を管轄する国司に就任します。国司としてまず着手したのが人の売買禁止、荘園での労働には相当の賃金を払うことなどでした。つまり奴隷解放を行ったのです。周囲からは前代未聞だと言われますが、書状を持って山椒大夫の荘園に行き皆を解放します。しかし妹安寿の姿が見えません。安寿は入水自殺をしたと知らされて悲しみに打ち拉がれる厨子王なのでした(どのタイミングだったか、左遷された父も亡くなっていることを知る)。その後、務めを果たした厨子王は国司を辞任して母親探しの旅に出ます。母は佐渡島の漁村にある売春宿に売られたという噂を聞き、漁村を訪れる厨子王。浜辺に腰掛けた盲目の老婆が変わり果てた母親の玉木なのでした。

ここから後半のリベンジ編なんですが、超絶ブラック企業の山椒大夫荘園から皆を解放する展開も、溜飲が下がるという感じにはあまり描かれていません。いまいち山椒大夫の腹黒さ描写が弱かったからかなあ・・・。国司になった厨子王にとたんにペコペコし出すとか卑屈極まりないところなど描かれていたら、また違った印象になったかもしれません。お母さんの玉木さんはやはりソープに沈められて、もとい遊郭に売られていたんですね。年老いた今は漁村で海苔を干したりするのを手伝っていたんですが、もう完全に人が変わっていて、厨子王が「お母さま、僕ですよ」と言ってもからかわれていると思って相手にしません。でも父の形見である観音様を触らせると、本物の厨子王だということがわかるんですよ。そうして固く抱き合う親子なのでした。

いや~、本当に可哀相な話でした。ハッピーエンドと言ってもいいのかなという感じですが、最後が少しでもポジティブに終ってよかったですよ。しかし、不思議に思ったのが何故タイトルがブラック長者の「山椒大夫」なのでしょうか・・・?なぜ彼がタイトルロール?主役でもなんでもないヒールなんですが。原作を読むとわかるのかな。この話から得られる教訓は、いくら親切で無害そうなババアから宿をオファーされても決して泊まってはいけない・・・ってことでしょうか。あと親からもらったギフトがピンチのときに助けてくれるから肌身離さず大事に持っとけ、とか?(「グリーン・インフェルノ」では父親からもらったネックレスがいい仕事をしてた気がします)無理矢理ですが、そんな感想を持ったのでした。

関連記事
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。