@itan-journ@l praha

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『ヤング・アダルト・ニューヨーク』ヒップスターに翻弄される40代夫婦の青春日記



       


ニューヨークに暮らすまだ大人になり切れていない40代の夫婦が、20代のヒップスターな夫婦と交流して様々な体験をし、結果少しだけ大人になる・・・?という映画です。ELLEの映画レビューでこの映画のことを知り、最近こういうシティもの(タイトルに街の名前が入っている人間喜劇という認識)を観ていないな~、面白そうと思って鑑賞してみました。原題は「While We're Young」ですが、今回は邦題の方が映画の内容と合ってる気がします。

ジョッシュ(ベン・スティラー)とコーネリア(ナオミ・ワッツ)はニューヨークに住むDINKS夫婦。夫の職業はドキュメンタリー映像監督で、妻はプロデューサーかなんかです。夫婦同士で仲良くしていた友人カップルに赤ちゃんが誕生し、お祝いに駆けつけますが、マタニティーハイ気味の夫婦に引く二人。友人夫婦は違う世界の住人になってしまったし、今までの様な付き合いはもうしばらく出来ないだろう・・・と考えてしまうのでした。

そんなときジョッシュの講演を聞きに来ていた二十代の夫婦、ジェイミー(アダム・ドライバー)とダービー(アマンダ・セイフリッド)と知り合います。世代差がありますが、若い彼らの自由なライフスタイルや思想に影響を受けたジョッシュ夫婦は、彼らと親しく付き合うように。刺激的で楽しい付き合いにのめり込むジョッシュ夫妻でしたが・・・というあらすじです。

ノア・バームバック監督の映画を観るのは初めてですが、この家がの舞台がニューヨークなこと、都会派人間コメディなことで、ポスト・ウディ・アレンとも言われている様です(ジュリー・デルピーもそうでした)。確かに、ジョッシュ夫婦が若いジェイミー夫婦に影響を受けて行く過程が短いシーンでテンポよくポンポンと繋がれて、あれよあれよという間に親しくなっていくのはウディ翁の映画みたい。この短いシーンの連続の中にナオミ・ワッツによるヒップホップダンスに代表される若干イタい中年子供のあがき、みたいな意地悪視点があるのもぽいです。そういえばナオミが出ていた「恋のロンドン狂騒曲」も皮肉加減が最高の映画でした。




※ネタバレします。




コメディーですが、よくよく考えてみるとなかなかに切ない話ですよ。仲良くしていた友達夫婦と共有するものがなくなっちゃって気落ちしていたところに、若く新しい友達夫婦ができた。彼らの自由な気風に影響されて「うちらもまだまだ若い!青春できるじゃん!」と有頂天になるものの、実は彼らの思惑は別のところにあり、単に利用されていただけだった・・・という・・・。ジョッシュ夫妻の妻コーネリアのお父さん(チャールズ・グローディン)が有名ドキュメンタリー作家だったので、同じく映像作家志望のジェイミーの若夫婦は彼らに近づき、キャリアの踏み台にしようとしていたわけです。

ジョッシュ夫婦は自分たちの選択で子供を持たないことにしたのかと思っていましたが、妻コーネリアは過去に二回流産を経験していたんですね。これは思いのほかヘビーで閉口するしかありませんでした。でもその話題が出た後でヘビー過ぎない仕上がりにしたのは、映画のバランス上正解だったのではないでしょうか。映画を観ていると、子供がいないからジョッシュ夫妻はいつまでも大人になれないのでは?といった印象も与えられるのですが、なんとなくそんな単純なものではないと思うんですよねえ。うまく言えないけど子供の有無に関係なく、その人が持つヤング・アダルト性は死ぬまでそんなに変化しないような気がしているのです。

私がリアルだな、と思ったのが赤ちゃんが生まれた友人夫婦の夫のセリフ。夫は妻の出産でパタ二ティー・ハイになり、赤ちゃんの超音波画像をタトゥーにして腕に入れるほどになるのです。しかし実際に赤ちゃんのお世話が始まると、やはりちょっと戸惑い&お疲れ気味に。夫が家にやってきたベン・スティラーに「この子は素晴らしいよ。でもすごく大変だ。実際、思っていた程すべてがハッピーというわけじゃない」(セリフうろ覚え)みたいなことを言うんですよ。普通の映画だと対立構造を作って、子供がいる側のリアルってほとんど描かれていないような気がするんですが(SATCのドラマ版は特にそうでした)、こういう視点が映画に奥行きを与えている気がしましたし、それが母でなく父となった人からの本音がポロリ、というのはとても珍しいなと感じたのでした。

最近、日本のメディアでは負け犬論争を引き起こした「結婚する/しない」を更に過ぎて「子供がいる/いない」の対立構図を炎上を期待して打ち立てている傾向があるような気がしています。そういったトピックの最後に「子供がいてもいなくても、お互いに色々あるし色々大変」という喧嘩両成敗的な締めがあったりする場合がありますが、だったら最初からあおるんじゃねえよ!ってガクっとすることも。まあ今の時代にホットで注目されて、盛り上がれるトピックということなんでしょうね。

さて一方のジェイミー若夫婦のライフスタイルは、いわゆるヒップスターな感じ。「ヒップスター」という言葉はこっちに来てからよく友人から聞いており、明確な概念はないけどなんとな~く、こういう人達のことなんだろうな・・・というぼんやりとしたイメージが出来上がっていました。いわゆるお洒落なライフスタイルにコダワリのある今時の若者ということなんですが、ただのお洒落じゃなくてプレッピーでビンテージライクな、少し懐古主義的なものを好む人達(でも最新情報にアンテナは高感度)。服装は古着や定番をベースにして、ミックス&マッチなお洒落が好き。男女共にフェー ドラ帽や太い黒縁のメガネをよく着用しています。男子はマスタードイエローのスキニーパンツが好きな様子。交通手段は自転車で、若いオーナーが立ち上げたばかりのインダストリアルなインテリアの中でコダワリのコーヒーが飲めるカフェに集い、アート談義をする。こんな感じ(笑)。

ジェイミー若夫婦の踏み台事件を経たジョッシュ夫妻はその一年後、ついに外国から養子を迎えることにします。その地へのフライトを待つ空港のロビーで、夫婦は二歳ぐらいの小さな男の子がスマホで遊んでいるのを見かけます。スマホを持って大人の真似をして「もちもち」と話したりしている、それはそれは可愛らしい子なんですが、夫婦は何かギョッとしたものを見たときの様な微妙 な表情になるのです。ここも印象的でしたね。「あら可愛い」と微笑むのではなく「俺ら、こんなのを迎えようとしてるのか・・・」みたいなリアルさがにじんでいて良かったと思います。もちろん彼らは養子を愛して大切に育てるでしょう。でも、やっぱりちょっと大丈夫なのかな・・・というような絶妙な感じがよかったと思います。

平均寿命がどんどん長くなる中、40代ってのはその半分か人によっちゃまだ前半部。だから、ジョッシュ夫妻みたいに悩んで突っ走って壁に激突したり、激突したまま走り続けてイタさをさらしたりしたって、全然いいじゃない?というか、そういったことを体験するのは別に青春時代だけ若者だけの特権というわけでもないでしょう。長い目で見れば人生はその大小や頻度の差あれど、そういったことの繰り返しなのではないでしょうか。と、世間的には40代のいい大人と言われる年頃になっても妙に落ち着いてしまわずに、一生懸命生きるキャラクターが痛々しくも愛しく思える映画だったのでした。


関連記事
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。