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『あん』心に染みる描写、自身のQOLへの課題も



       
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今年の春に開催された、居住する街の国際映画祭で上映されたラインナップのうちの一本でしたが、いつもの通り見逃していました・・・。予告編を周囲の人にも見せて楽しみにしていたのですが・・・。毎年夏は日本に帰省していた為、7月8月はザ・邦画祭り(韓流、華流、その他英語圏以外の国のも合わせて)していたんですが、今年は帰らなかったので久しぶりの日本映画です。

予告編を見た限りだと、美味しい餡子を作ることのできる樹木希林演じる不思議な老婆と、その周囲の人とのほのぼのストーリーだと思っていたんですが、美味しい餡子は物語の入口にしか過ぎなかったのです。しかし餡子ですよ、餡子 (餃子ではなく)。海外住まいだと、和菓子なんて日本からのお土産で頂く以外、お口に入る機会がありません(そのお土産だって頂くのは本当に本当にまれ)。ローカルにも和菓子を愛して下さる方や和菓子愛好家のような方がいらして、日本関連のイベントなどで手作りの和菓子を売っていたりするのですが。美味しくない訳じゃない、でもな~んか、な~んか、日本のとは違うんだよなあ・・・といったところです(もちろん日本人なだけで料理下手の私なんかより圧倒的にスキルフル)。

随分前ですが、東京にある製菓専門学校の文化祭に遊びに行ったことがあります。そこは洋菓子科と和菓子科にわかれていて、学生さんが作ったお菓子を良心的な価格で販売していました。和菓子科に留学生が何人かいらっしゃったのを覚えています。学生さんたちによるお菓子はとても美味しかった。 やはり、専門的に勉強したセミプロフェッショナルが作っているからでしょう。製菓やパンこそ如実にプロと素人の差が出る様な気がします。きっと和菓子の世界も寿司に負けずと奥が深く、デリケートな世界なのではないでしょうか。

しかし日本がスゴイと思うのは工場で大量生産された安い和菓子でもそれなりに、いやなかなか美味しいということですね。決して値の張る有名店のものでなくていいんです(もちろん美味しいですが)。私は日本にいる時、必ずスーパーやコンビニで買い物や用事を済ませると必ずおにぎりと大福やお団子、桜餅なんかを買ってしまいます。帰省中の今しか食べられないし、安くて美味しいし、買わない理由はありません。そして実家の家族に「また買って来た」と呆れられながら、いそいそと緑茶を入れて一人家庭甘味処をするのでした。そんなことばかりしているから帰省の度に数キロ肥えて帰って来ます。

ということで感想です。恥ずかしながら私は河瀬直美監督の映画を初めて観たんですが、内外で評価されているのがわかる気がしました。なんというか「映像の詩人」ってのはこういう作風のことを言うのではないだろうか・・・と思った訳です。商店街の隅で咲く淡く儚げな満開の桜、春の柔らかな光の中でどら焼きをつつく女子中学生たちのセーラーカラー、大きな鍋の中でふつふつと煮られている小豆の美しい照り、早朝にアパートの屋上でタバコを吸う中年男の孤独なシルエット、初秋の風に吹かれた雑木林が奏でるざわざわとした音、道の隅の方に吹寄せられては散らされる落ち葉たち・・ ・。何気ない描写が本当に美しいのです。ちょっと美化されすぎてる感もなくはないのですが、何もかもがキラキラと、そして若干ぼんやりとして見えていた子供時代のフィルターを通して再び日常生活を見た感じ。綺麗なんだけど、なんだかはかなげで切なくて心がギュっとするんです。



※ネタバレします。




孤独な訳ありぽい男、千太郎(永瀬正敏)は商店街にあるプレハブ小屋で、どら焼きやを営んでいました。あるとき謎の老婆、徳江(樹木希林)がバイト募集の張り紙を見てやって来ます。高齢なので雇えないと断るのですが、徳江は自作の餡子をそっと置いて帰って行くのでした。その餡子がめちゃめちゃ美味しかったことに驚いた千太郎は徳江を雇い入れ、徳江の餡子は人々を魅了しお店は大繁盛。しかし、徳江には誰も知らない辛い過去があったのでした・・・。どら焼きや繁盛記かと思ったら、その奥には難病や死ぬこと、そして有限の人生をどう生きるかというテーマが隠されていたのです。すでに樹木希林が故人となった後でテープ再生される千太郎たちへのメッセージが、それに重ねて映される自然の風景が、本当にあたたかくて切ない。

樹木希林の演技がまた素晴らしい。今回もいつものようにちょっと変わったおばあさんなのかな?って思ったんだけど、それは最初だけ。時代柄、差別の対象とされた難病と共に生きた芯の強い女性を演じていました。病気やハンディキャップがあっても、上質なQOL、クオリティー・オブ・ライフをおくっている人って本当に素敵だし、尊敬します。施設にいる親友役の市原悦子もグッジョブでした。先に観ていた友人は「大森南朋が出てるよ」と言っていたのでいつ出て来るんだろうと思っていましたが、それは永瀬正敏でした(笑)。彼もいつもの通りよかったですね。「家族もいなそうだし、この人もきっと訳ありなんだろうな・・・」って思っていたらその通りでしたが、もっとヘビーな前科がついているのかと思っていました。もう一人メインキャストとして、どら焼きやの常連の女子中学生の佳子が出て来るんですが、この子も丸ボウロのような素朴な顔立ちで、素直な中学生らしい演技がいいなあ〜と思っていたら、エンドロールで「内田伽羅」と出て樹木希林の孫ということが判明!てことはモックンと也哉子の娘かい!おじいちゃんはシェゲナベイベーかい!とビックリしました。

そういやモックンも似た様なテーマの映画(「おくりびと」)に出ていましたな。この映画は色々賞を取ったけど感動させよう、させようとしていて、私は好きじゃないんですね。滝田洋二郎監督のことを「たまたま賞をもらっただけで、たいした監督じゃない」とバッサリ言っていたローカルの知人がいましたが、私も多少そう思ってしまったのでした。

閑話休題。「あん」では主人公たちの大切などら焼きやを脅かす存在として浅田美代子とその甥っ子(大賀)が登場しますが、彼らの描かれ方がちょっとステレオタイプだったかなあとも思いますね。浅田美代子は千太郎のお世話になってる先輩の奥さんで、どら焼きやのオーナー。どこからか徳江の病気のことを知った彼女は千太郎に懸念を伝えるのです。今はハンセン病って治療出来るし伝染もしない病気なのに、ちょっと大袈裟じゃ?って思いましたが、まあ話の展開には必要だったのでしょう。浅田美代子が座敷犬みたいなのを連れてるのがよかったですね。小型犬をやたら可愛がっているババアは嫌な奴が多いという、これもちょっとステレオタイプか(笑)。でもあんな小さな食べ物屋さんの厨房に犬を連れて来る方がダメなんじゃね?

あと彼女が次期店長として連れて来る出来の悪そうな甥っ子の描写ですね。どら焼きや餡子に思い入れ全くナシ、ドロップアウトしかけのゆとりです!みたいな感じが、またちょっとステレオタイプかな~と(笑)。まあ彼に罪はないのですが。リノベーション入ったどら焼きやの小屋が若干若者向けにお洒落になっていたような気がします。

この悪役たちの登場に千太郎や女子中学生の佳子はかなりムッとした雰囲気になってしまうんですが、ここもわかりやす過ぎたかも。ちょっとした戸惑い描写くらいでよかったんじゃないかなという気もしました。そうしたらラストで千太郎が公園でどら焼きを売り始めたときに「ああ、やっぱり自分の道を選んだんだな・・・」と回収できるんじゃないかなと思ったので。たとえそれが非現実的だったとしても。

まあそういったところはあるのですが、それを差し引いても前述の美しい詞のような映像の素晴らしさが失われる訳ではありません。毎日漫然と生きている中で、生きて行く意味って何だろう、そもそも意味なんか見つかるのだろうか、そんな漠然と大きいことを考えるよりも日々のクオリティー・オブ・ライフ向上に努めた方が簡単かもしれない、でも小豆煮たりするのは面倒くさい・・・という思いが私の中でぐるぐると回るのでした。あとは、どら焼きが食べたくなります。私はセンターに大きな栗が入ったのがいいな。




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Comment

浦鉄 says... "座敷犬(笑)"
あ~この映画見た~!樹木希林はほんとに芸達者だと改めて思ったし、映像も美しく、何よりどら焼がうまそう。しかし後半、ステレオタイプババァ登場あたりからどーにもこーにも教育ビデオ的だったのがちょっともったいなかったような記憶が…。だってなんか調べもので図書館とか行ってなかったっけ!?そこはウィキペディアじゃね!?欲を言えば知恵袋あたりで差別書き込みとか見て衝撃を受けるくらいの描写が欲しかったような。
差別側もいかにも悪役な座敷犬ババァじゃなくて、他のことでは良識ある一般市民なのに、いざ近所でこういうことがあるとやっぱり心配になっちゃうのよ、ほら変な噂でも流れて子供が何か言われたりしたら嫌じゃない、ううん私自身は差別とかするつもり全くないんだけど、とかの方がよりリアルなのにな~。まあ差別のリアルを描く映画じゃないんだけど、リアルな方が映画としてもより深いのにな~。
でも差別が現実世界でも残っている以上、ああいう描き方にならざるを得ないのかもしれない、とも思う。こういう映画が単純に映画としての完成度を追求できるようになるには、差別が完全に過去のものになって、それこそ図書館で調べてやっと出てくるくらいにならないとダメなのかも、悲しいけど。そしてやっぱり観賞用の鳥はどんなに感情移入しても逃がしちゃダメ、ゼッタイ!
2016.09.13 21:46 | URL | #- [edit]
aitantanmen says... "Re: 座敷犬(笑)"
おお久々の濃い浦鉄コメント!

良識ある市民風な人が行う差別というのはなかなか多重的でいいね!実際はそういう人も多そう〜。私自身はそう思ってないんだけど、周りが言っているという自己保身コーティングされた主張やアピールは、差別だけじゃなくて色々なシーンでもよく見られるよね。自分は責任を負わず、他人に言わせてるところがたまらなくコスい!でもそういうシーンを映画とかで見ると「この映画わかってんな」と思わずグっと来ちゃうね。

そういや現在の話なのにインターネットが全然出て来なかったね。女子中学生たちもどら焼きを食べながらスマホを弄んだりしてなかったし(しかもみんな中学生らしくて清純で可愛かった)。ITデバイスは映画全体の自然で美しいトーンとは相容れなかったからかな。あと樹木希林が預かって野に放したカナリアだけど、あの後ちゃんと野生で生きて行けたのかちょっと心配・・・。そうそう、本文中で出て来た製菓専門学校の文化祭ってのは他でもない浦鉄さんが誘ってくれたものだよ!
2016.09.14 18:56 | URL | #- [edit]

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