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@itan-journ@l praha

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『エクス・マキナ』A.I.と痴人の愛?




今年度「リリーのすべて」でオスカー助演女優賞受賞、そしておファスの現彼女という旬の女優であるアリシア・ヴィキャンデル(ヴィカンダーなど表記に揺れあり)が出演しているSFです。町山さん(たまむすびポッドキャスト)と夫に勧められたので観てみました。日本では未公開でしたがWikiによると6月に公開されることが決まった様ですね。


IT会社で働く冴えない男子、ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は抽選に当たって会社の社長でIT業界のカリスマ、ネイサン(オスカー・アイザック)の別荘に招待されます。憧れの人と会えるということで舞い上がるケイレブ。ヘリコプターで連れて行かれたのは人里離れた美しい山の中にある、超ハイテクな研究施設を兼ねた別荘でした 。そこで1週間ほど滞在するケイレブなのですが、実はそこでもう一つのミッションがあったのです。それはネイサンが作った人工知能エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)をテストすること。エヴァとのテストを重ねるうちに、次第に彼女に惹かれて行くケイレブでしたが・・・というお話です。

冴えない男子と小悪魔系ルックスの女子(A.I.だけど)の組み合わせということで、なんとな~く、アンドロイド版「500日のサマー」みたいな話なのかなあ・・・と思っていたのですが、想像したよりもずっとシビアで辛口な映画でした。A.I.との恋愛?と思ってしまいがちだけど、そんなようなものではありません。でもこういう甘さが一切ない終り方の方が好きです。

このケイレブが本当に冴えな~い、残念な容姿の草食系メンズ。パッと見でイケメンじゃないキャラクターってのは、物語が進むに従って魅力が出て来たりするんですが彼は残念なまま。だが、そこがいい。俳優なのにこの残念さはスゴイな・・・と思ってしまうんですが、中の人ドーナル・グリーソンは「レヴェナント」でも非力で残念な若者として出演していました。しかし、この残念な感じが逆に良かったですね。

カリスマ社長のネイサンはヒゲを生やしていている筋肉もりもりのトレーニングフリークで、ビル・ゲイツとかスティーブ・ジョブズとかマーク・ザッカーバーグとか、そんな線の細いITカリスマとは全然違う感じ。立派なヒゲを蓄えているのでインド系ぽくも見えるんですが、演じているオスカー・アイザックはグアテマラ出身なんだそうです。SWやX-MENの新しいシリーズに出演しているそうで、なかなかの売れっ子ですね。

大自然の中にあるけど、超モダンで人工的な別荘の舞台設定がまた良かったですね。ガラス張りのリビングなんですが、自然なのは外だけでインテリアは直線的で人工的。ウッディ要素とかほっこり要素とか一切なし。もちろん部屋の中に観葉植物なんてものはありません(個人的にこれは辛い)。そんな外界と人工とのコントラストがお洒落でした。なにしろケイレブの部屋には窓がないんです。他の施設は申し分ないんだけど、これもかなり辛い。

そしてこの別荘の中にはハウスメイドのキョウコ(ソノヤ・ミズノ)という日本人の女の子がいます。彼女は言葉がわからないので一切話さないんですが、それもまた人工的。無表情がミステリアスで、スラっとしていてモデルさんみたい、彼女は誰?と検索してみたら、日系イギリス人のバレリーナ兼モデルさんなんだそうです。なるほどダンスシーンにキレがあったわけだ。



※ネタバレします。




ケイレブはA.I.のエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)とガラス越しに対面するんですが、町山さんがポッドキャストで言っていたようにエヴァちゃんがとても自分好みの顔なんですね。なぜかというと、社長のネイサンがケイレブが打ち込んだ検索ワードや好きなポルノのジャンルなどのオンライン収集したデータをもとにして、エヴァちゃんが好みど真ん中になるように作り上げていたからなのです。エヴァは最初サイボーグっぽい半透明の素材とC-3POみたいなメタル素材で出来たボディをしていますが、テストを重ねるうちに人間味が出て来て、花柄のワンピースなんかも着て来ちゃったりするんですよ(確か髪型はモンチッチみたいなベリーショートだった)。

テスト中に施設の電源が落ちてしまうアクシデントがあります。電源が落ちるということはテストを記録しているカメラも落ちるということ。そのときだけはネイサンから監視されていません。そこでエヴァは「ネイサンを信じちゃダメ」とケイレヴに告げるのでした。ケイレブとエヴァの会話が完全にプライベートになる停電が何回かあるんですが、これがケイレブのエヴァに対する心理的な距離を縮めている演出になっていたと思います。テストじゃない、直接エヴァの心に触れる会話だと思ったケイレブなのでした。

しかし世の男っつーのは小花柄のワンピースに淡い色のカーディガンっていう、おそらく昭和からあるであろう愛され控えめ系フェミニンルックが本当に好きだよなー。しかもその小花柄が洗練されておらず妙に野暮ったくて、これまた昭和の家電についていたような感じの色使いなのである・・・。ケイレブはこういうファッションを好む、という情報を前提にしての衣装なんですが、冴えない男の凡庸な好み=昭和な小花柄ってのがなんかまたグっと来ちゃいますね。

アリシア嬢の演技なのですが、やっぱりさすがの仕上がり。試験者に好意を寄せるA.I.という変な設定なんですが、可愛らしい外見をしているけれどもやはり人肌ではない冷たさと、好意を寄せているようで実は彼女の腹の底が本当は見えない、何かがあるという感じを出していたと思います。でも、もうちょっと観客をケイレブに感情移入させた方が後の展開の驚きが大きかったかも。家族の話とかもしていましたが、もっとケイレブがエヴァのことを好きになるような決定的な何かがあったりするとよかったんじゃないかな〜と思いました。

エヴァにも警告されるし、テストを重ねるにつれケイレブは次第にネイサンとこの別荘はおかしい・・・と思って来るわけです。冷涼な山の中やモダンな別荘のカットが挿入され、得体の知れない感じがよく出ていました。超モダンだけど、なんか冷た〜い感じ。好意を寄せて来るエヴァのことが気になったケイレブは、ネイサンに「エヴァにセクシャリティーをプログラミングした?」と聞くのですが、ピシャリと否定されてしまいます。そしてやはり人工的だったハウスメイドのキョウコもA.I.でした(兼、ネイサンの愛人)。エヴァはある日、停電のさなかケイレブに「ここから私を出して」と頼みます。逃避行のお誘い、キター!ネイサンからは、エヴァの試験が終ったら彼女を初期化してまた新しいA.I.を作ると聞いていたので「ここにいたらエヴァが消えてしまう!」となったケイレブは一計を案じます。

ケイレブはネイサンを飲ませて酩酊させて、キーを盗みその間にシステムをいじります。保存された映像からはネイサンが今までにA.I.を数多く作っており、そのA.I.たちが施設内で発狂したりしている姿が収められていました(アジア人のA.I.もいたが、もしかしたらネイサンはアジア系フェチなのか)。ショックを受けたケイレブは自分ももしかしたらA.I.なのかも・・・と思い、自室で腕にナイフを入れるのでした。もちろん赤い血が滴り落ちるんですが、あまりにA.I.ばかりの別荘なので何もかもが信じられなくなってしまったわけです。この追い詰められた気持ちはよくわかります。自分がケイレブでも似た様なことをやっていたのではないかな・・・と思う訳です。

さていよいよ物語はクライマックス。実は停電のときに行われたケイレブとエヴァの会話は、停電の影響を受けないカメラで撮影されネイサンにモニターされていたのです(やはり)。二人で別荘から逃げようとしていたことはバレていたのでした。このテストの真の目的とは・・・ケイレブの好みに作られたエヴァが、ケイレブをたぶらかして自分を外に連れ出すようにそそのかすことが出来るのか、ということを判定するテストだったのでした。試験者として連れて来られたケイレブは、試験する側ではなくされる側の材料だったのです。

それを告げて高らかに笑うネイサンでしたが、エヴァが部屋から出て行く姿が監視カメラに写ります。どうやらケイレブはネイサンが酔っている時にロックの設定をいじっていたようです。逆上したネイサンはケイレブを殴り気絶させ、エヴァを止めに行きます。棒で彼女を殴り破壊しようとするネイサンですが、その刹那、彼の胸を貫く柳刃包丁が。後ろからキョウコが彼を刺したのです。エヴァとキョウコが協力して創造者のネイサンをやっつける事態になってしまったのです。強打されるA.I.に飛び散る血、このカオスにおおお・・・と震えてしまいます。キョウコは強打されて壊れてしまいますが、エヴァは片腕を失っただけでした。エヴァは歩みを進め、今まで作られたA.I.が保存されている部屋に行きます。

そこで他のA.I.から失った片腕を取り、人工皮膚を取って自分のボディーに貼付けていきます。皮膚をすっかり貼付けて髪が生えた様子は、どこからどう見ても人間の女の子。クローゼットから洋服を取り、靴を履き、エヴァは別荘から出ようとします。このときの格好が白いレースのぴったりとしたツーピース(アリシア嬢がイメガをやっているヴィトンかと思いきやカレン・ミレンのものだそう)に白いパンプスのピュアなオールホワイトルックでした。エヴァはただ単に外の世界に出たかっただけ・・・というのがこのホワイトルックで表現されているのかな、と思いました。

ネイサンは廊下で柳刃包丁を胸に刺したまま息絶え、意識が戻ったケイレブはロックされた部屋から出られずにドアを叩き続けています。しかしエヴァにはそんなこと関係ありません。別荘から出て、森の中を歩きヘリコプターが迎えに来る場所(その日はケイレブの最終日でお迎えのヘリがアレンジしてあったのだ)まで行きます。やって来たヘリに乗り、連なる山脈を見下ろすエヴァ。彼女はずっと憧れていた都会に行き、見たかった複雑に絡み合う高速道路を見ます。そして雑踏の中に消えて行くのでした・・・。

そっか、そういう終り方か・・・と少し期待を裏切られた感がありますが、それがまた良かったですね。途中まで、エヴァとケイレブで手に手を取り合って逃げるのか?などと甘いことを思ってましたが、エヴァはケイレブのことなんて爪の先程も気にかけていません。見事に置いてきぼり。だが、そこがいい。細かい設定は違いますが、なんとなく谷崎潤一郎の「痴人の愛」を思い出しました。男が若い女を庇護の元に置いていましたが、いつの間にか若い女が男の手に余るようになり、最後は彼を凌駕する存在になって手ひどく裏切る、というところまでのプロットが少し似ています。常に自分より下にある存在としていつも可愛がってやっていた女が、次第にその本性を表して形勢が逆転し、男は破滅へ追いやられる・・・(女にとっては自由の獲得)というやつです。ケイレブとエヴァ、ネイサンとエヴァ、キョウコの関係と重なります。「痴人の愛」の方は裏切られた後で女の提示する条件を飲んで「復縁」し、男が飼いならされた状態で暮らすというもっと恐ろしいエンディングでしたが・・・。

社会に紛れたエヴァはA.I.ということを隠して女優となり、そのたぐいまれな演技力でオスカー女優にまで上り詰めるのでした・・・なんちゃって。A.I.のほの暗い恐ろしさみたいなのがよく表現されていた映画だと思いました。エンディングのモノクロームの幾何学模様も美しかったです。

監督のアレックス・ガーランドはこれが監督デビュー作。色々な映画の脚本を手掛けていますが、もともとは小説家でなんとプリオ主演の「ザ・ビーチ」の原作を書いた人なんだそう。「ザ・ビーチ」も楽園の暗黒面みたいなものを鋭くえぐったグっとくる話でした。煩わしい世間を捨てて自由を求め楽園に行っても、結局そこでも俗世と同じ様な人間関係だったりヒエラルキーだったりがあって、真の自由は手に入らない・・・みたいな話だったと思います。映画ではプリオ主演、ティルダ・スウィントンが楽園のボスを演じていました。アレックス・ガーランドはこういうグっとくる作風系の人なのかな。次回作も楽しみです。


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