@itan-journ@l praha

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『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』女性版ペグ兄&おデブのニックみたいなペア



       


ゴーストバスターズ」のリブート版が面白かったので、同じ監督&主演女優×2で作られた本作をチェックしてみました。そーいえば、こんな映画、あったねえ・・・という感じでしたが「どうせくだらないBSOL映画だろう」と思ってスルーしてたんですよね。BSOL映画ってのはスター映画でもあるわけです、メインの女優か男優で知ってる人出てないとあんまり観る気にならないんですよ。しかし、私は甘かった。この映画はなんと、オスカー脚本賞と助演女優賞にノミネートされていたそうで。知らなかった・・・。なんかもっと、こういうところを宣伝でアピールした方が良かったのでは?などと思ったのでした・・・(自分が知らなかっただけだけど)。

いや~、しかし面白かったですね。細かい所でちょっと引っかかるところもあったけど、すごく楽しめるBSOLコメディ映画でした。主演と兼共同脚本のクリステン・ウィグ、助演女優賞ノミネートのメリッサ・マッカーシーのこの名コンビぶりは女性版のサイモン・ペグ&ニック・フロストみたい!(ちなみにペグ兄&ニック・フロストの「宇宙人ポール」ではクリステン・ウィグがペグ兄の相手役で登場してましたな)クリステン・ウィグ、背もスラっとしてるし脚も綺麗(だから衣装はみんなミニ丈?)、顔はちょっとコミカルさが隠しきれないけど美人といっていいでしょうね。私は最初彼女を「ローラーガールズ・ダイアリー」で見た時に「シンシア・ニクソン(SATCのミランダ)そっくり」って思ったけど、見慣れて来るとそうでもなかったです。

一見BSOL映画なんだけどエロネタ、ゲロネタ、うんこネタが盛り込まれ、最後はちょっといい話で終るという映画でした。大人の女性が出て来る映画にうんこネタってのはSATCの映画二作目を思い出しますね。SATCでもメキシコ旅行でシャーロットがお腹下してたし、アメリカ人の中では南米の食べ物ってちょっと危ないという認識なんでしょうかね。

ヒロインのアニー(クリステン・ウィグ)は30代後半くらいの独身女性。お菓子作りが好きで婚約者とパティスリーを営んでいたのですが恋愛もビジネスもうまく行かず、今はシングルで母親のツテで見つけた宝石店で働いています。アニーにはセックスフレンドのテッド(ジョン・ハム)がいますが向こうはシリアスな関係になる気はさらさらない様子。そんなとき幼なじみで親友のリリアン(マーヤ・ルドルフ)がボーイフレンドと結婚することになり、メイド・オブ・オナー(花嫁介添人のリーダー)を頼まれました。複雑な心境ながらも親友のために奮闘するアニーですが、同じくブライズメイドとして加わったリリアンの婚約者の上司の妻ヘレン(ローズ・バーン)と張り合うことに。他にも一癖あるブライズメイドたちが集まり、この結婚式は一体どうなる?!そしてアニーは幸せを掴めるのか?!というお話です。


※ネタバレします。


BSOL映画のヒロインはだいたいにしてトホホな境遇に置かれることが多いですが、アニーはちょっと気の毒なくらいトホホです。デブな兄妹とフラットシェアしてるんですが、言いがかりをつけられて追い出されちゃうし(ちなみに妹の方は「バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!」にも出演しているおデブ女優のレベル・ウィルソン)、仕事場の宝石店でも婚約指輪を買いに来たカップルについ悪態をついてしまって上司に怒られるし(「愛してるからと言ったって所詮は他人。誰も、誰も信用出来やしないのよ」という囁きがかなり笑えるが)。母親(ジル・クレイバーグ)には「今が一番のどん底だと思いなさい、後はよくなるばかりよ」と励まされるも、アニーの場合まだまだ底があって落ちて行くという可哀相さ。親友リリアンにとって、よかれと思ってしたことが思いもよらない形で裏目に出てしまい大勢の前で醜態を演じてしまったりと、自分の人生だけじゃなくて親友との長年の友情にまでもヒビが入る始末です。さすがに私はアニーほどのどん底に落ちたことはないですが、仕事なし(面接してもしても採用されない)、彼氏と破局、高校時代からの友人二人と絶交、ひどい肌荒れに次々と襲われて、やることなすこと絶不調だった24歳の頃のことを思い出したのでした。でもまあ24歳なんて全然若いし、いくらでもリカバリーが可能だと今になって思います・・・。

でもアニーには素敵な出会いもあるんですよ。バックライトが壊れたままフラフラ運転をしていたら、警官のネイサン(クリス・オダウド)に止められてキップを切られそうになるんですが、この警官がアニーのパティスリーの常連だったことからキップを免れるんですね。で、偶然にコンビニや道で彼に会ううちにイイ感じになってベッドインするんですよ。このお巡りさん、セフレのジョン・ハム(絶倫なんだけどデリカシーゼロっていう、このキャスティングがいかにもでまたイイ)よりまともで良さそうな男じゃん、よかったのうアニー・・・と思うんだけど、ネイサンからまたケーキ作りしなよ!と励まされて嫌になって逃げて来るんですね。うーん、そんなことで逃げなくても、と思うんだけどまあアニーにとっては触れられた くなかった古傷ってことなのかな。

しかし米国の結婚式ってのは披露宴だけじゃなくてその前に色んなイベントがあってしち面倒くさいものだなあ・・・と今回思いましたよ。この映画でも婚約パーティー、花嫁とブライズメイドたちの食事会兼打ち合わせ、バチェロレッテパーティーや旅行、ウエディングシャワー(新婚カップルへの贈り物をあげるパーティーらしい)などなどが出て来ます。しかもいちいち着ていく服だとかプレゼントだとかを考慮しなければならなそうな、ちょっとワンランク上のパーティーばかりなんですわ。またパーティーのテーマが決まってたりすると、ドレスコードもそれに合わせたものが設定されたりでこれも超面倒くさそう。それならば休日を半日または一日犠牲(失礼)にして一張羅を着込み、 3万円を払っておけば立派に義理を果たすことができる日本の結婚式のがいくらかマシかもなあ、と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

こんなしち面倒くさい風習がいくつもあるからこそ「私のセンスの見せどころ!」と張り切る女性というのもいるわけで、ローズ・バーン演じるセレブ妻のヘレンなんかはその典型なんでしょう。ヘレンはSATCでいうとシャーロットみたいなコンサバで良家の奥様スタイルの女性。根は悪い人じゃないんだけど財力にモノを言わせたパーティーを開催したり法外な価格のプレゼントを選んだりと、ヒロインのアニー(シングル、失業中、貧乏)をイライラさせるキャラクターでした。でもそんなヘレンには女友達がいなかったし、ステップマザーとしても夫の連れ子たちから軽んじられてたんですよね。だからその穴埋めとしてパーティーのオーガナイジングに必死になっていたのかなという感じでした。しかし招待客へのお土産が子犬って、ちょっと常軌を逸してる気が・・・。金持ちの考えることはわかりませんな。

にしてもアニーが出したパーティーのアイディア(テーマはおフランス)をヘレンに勝手に使われるし、アニーのお金はかかってないけど心づくしの手作りのプレゼントを開けた後にヘレンからの金にモノを言わせたプレゼント(パリご招待のエアチケット)が出て来るってのは可哀相・・・。私だったらパーティーのテーマ盗用は責めるかもしれないけど(しかもアイディアを出した時にヘレンは乗り気じゃなかったくせに)、100歩譲って親友が喜んでくれるならヨシとしよう。でもプレゼントの引き立て役になったら、恥ずかしいやら自分が情けないやらでその場から消えてしまいたくなっちゃうかも・・・。これはコメディだからアニーがウオリャー!とブチぎれてマリー・アントワネットが食ってそうなそびえ立つケーキをグチャグチャにしたり、お庭にあるチョコレートの吹き出る噴水をぶっ壊したりするんですが(笑)。しかしその所業の前にアニーは小汚いレストランに皆を連れて行って食中毒騒ぎを起こしてるし、ラスベガスへのバチェロレッテ旅行を台無しにしているし(お酒を飲ませたヘレンも悪いのだが)、さすがにその後にコレかよ・・・ってことで親友リリアンも怒ってしまうんですよね。

お洒落なドレスショップでの上からゲー、下からブー、の惨劇シーンは悪趣味ながらも面白かったですね。今までもみ手をしていたドレスショップのマダムが「ここではやめてー!」と手のひらを返す態度になっていたのもうけたし、食中毒になったアニーとヘレンが滝の様な汗を流しながら我慢し合うのも見応えがありました。しかしリリアンは超高級のウェディングドレスを着たまま道路の真ん中で失禁(しかも大きい方)・・・。可哀相ですが、もちろんドレスは買い取りですね(苦笑)。

しかし親友のリリアンも、もう少しアニーの気持ちや今どんな状況かを汲んであげて寄り添ってあげられないものかのう・・・と思うんですが。ちなみにリリアン役のマーヤ・ルドルフのお母さんはあの名曲「ラヴィンユー」のミニー・リパートンなんですね!「ラヴィンユー」はマーヤ・ルドルフへの子守唄が原曲で、お母さんのミニー・リパートンは31歳の若さで夭折しているとか。それを踏まえて再び「ラヴィンユー」を聞くと涙がちょちょぎれます。ちなみにマーヤ・ルドルフのパートナーは映画監督のポール・トーマス・アンダーソンらしい。有名な家族がいる女優さんなんですね。

親友とも最悪の形で決裂してしまったアニー。そんなアニーが宝石店に立って、親友へのプレゼントを探しに来たローティーンの少女の接客をするシーンも最高です。「永遠に友達なんて、幻想なのよ」と言うと少女と醜い言い争いになり(相手は子供なのに・・・)最後には「うっせー惨めな独り身のババア!」と言われ、思わず放送禁止用語で返したら仕事もクビ(しかしアメリカで哲学者のカントの話をするときはどうするのだろうか)。もうここまで来たら「毒を食らわば皿まで」で、とことん落ちたらいい・・・とも思ってしまいます(笑)。

さてそんなどん底のアニーにハッパをかけてくれたのが同じくブライズメイドで、リリアンの婚約者の妹であるメーガン(メリッサ・マッカーシー)です。デブで残念なキャラクターなんですが、ブライズメイドの中では一番のキャリアウーマン。そんな彼女が「何しょげてる、オラ、友達がいないって?そんなお前に語りかけてる俺が友達じゃないってのか?オラ、オラ、オラ!」と相撲部屋のぶつかり稽古みたいにしてドンドン攻撃して来るんですよ。メーガンは高校時代からいけてなかったし、友達もいなかったけどそれを強さに変えて猛勉強し政府関係のセキュリティーの仕事で重役についていたのでした。恐らくはこのハッパ演技で評価されて助演女優賞ノミネートなのかなって思うんですが、にしては短いシーンなんですよ。でも温かみがあっていいシーン。しかしそもそもメーガンはそこまでアニーと友達だったっけ?ってのも思ってしまうのでした。ちなみにその年に受賞したのは「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」で黒人メイドを演じたオクタヴィア・スペンサーでした。メリッサ・マッカーシーはずっとノーメイクで出ているのでデブだけどイマイチこの人がゴーストバスターズと同じ人か自信がなかったんですね。でもラストでバッチリアイメイクをしているのを見て「ああ同じ人だ」と思ったのでした(笑)。

同じく引っかかったのが、アニーにむげにされた後のお巡りさんですね。彼、ちょっと強情すぎやしませんか?玄関前でアニーのお詫びケーキを見つけたもののすぐに家の中に持って帰らないし(その後の説明セリフで食べたことがわかったけど)、リリアン行方不明で助けを乞うアニーたちにガンとして反応しようとしないし(まあそれがギャグのトリガーになるのだが)。こんなに頑固な男だったんだ、もし付き合うとなっても色々と大変そう・・・などと思ってしまったのでした。

しかしやっぱり冠婚葬祭シーンってのは、人間ドラマの宝庫なんですよね。みんな慣れないことに一生懸命取り掛かって滞りなく終えよう、末永く思い出に残るものにしようと心を砕くわけだから、時にうまく行かなくなったり諍いも起こったりする。思わぬ人間の本性が垣間見えてギョッとしたりもするわけです。結婚式ではないですが伊丹十三の「お葬式」を思い出してしまいました。最後は歌って踊ってのエンディング。色々あったけどめでたい!歌って踊ろうというラストはインド映画の「モンスーン・ウェディング」みたいでした。

さて、私が気になったのがヒロインのアニーが劇中ほぼずっと着用していたネックレスです。金のりんごを図案化したようなチャームが付いているそれはキュートなネックレスなんですが、てっきりティファニーのアップルだと思ってたんですよね。でも実はA.P.C.のものらしく、残念ながら現在は入手できないようです。アニーのキャラクターにすごく合っていて、思わず私も欲しくなってしまったのでした。ところでBSOL映画でティファニーといえば、最近では「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」でブリジットがずっとプラチナのオープンハートを付けていたのが印象的でした。結婚式にまで付けていたので本当にお気に入りだったんでしょうね。

関連リンク:
Where to get Kristen Wiig’s 'Bridesmaids' necklace (or something just like it)

リンク先でも「これが似てるよ」って紹介されていた。欲しくなってしまう。




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『赤線地帯』ライフ ゴーズ オン



      
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名画座で開催されていた溝口健二特集、四作目です。これまで「雨月物語」、「楊貴妃」、「山椒大夫」を観て来ましたが、本作は唯一の現代劇(といっても売春が合法化されていた時代の現代だけど)。本作が一番面白かったです。吉原の「夢の里」という売春宿に所属する五人の売春婦たちの生活を描写した群像劇です。それぞれに売春せざるおえない事情と借金を抱えている女たち。しかし売春宿に身を落とした女性と聞いて想像されるような湿っぽさはほぼなく、時に淡々と時に小さな諍いを起こしながら「夢の里」の営業が粛々と続いて行く・・・という感じ。しかしそれゆえに一抹の哀愁が漂う、何とも言えない渋さが漂う佳作だと思います。ちなみに本作は溝口監督の遺作だそうです。

五人の娼婦たちはそれぞれに年齢やタイプが違っていて、娼婦という特殊な職業だけれども女性ならば「私はこのタイプだな・・・」とか「私は彼女みたいかも・・・」などと無意識にキャラクターを当てはめたり共感したりしてしまうかも。そういった人物造形も素晴らしかったと思います。YouTubeでフルムービーが上がっているので、ご興味のある方は是非ご覧になってみて下さい。


※ネタバレします。



まずはメンバー紹介から。溝口作品常連の京マチ子様が演じるミッキーは都会の派手な遊び人で、若くて勝ち気なモダンガール。いつも抜群のスタイルを強調した洋装で「ウチはいい女」とお高くとまっており、他の娼婦のおなじみさんも平気で奪ったりするビッチです。しかし実は神戸のお金持ちの娘で、体裁を気にした父親が連れ戻しに来たりして修羅場を演じることになるのでした(しまいには父親に自分を買えという衝撃のセリフも)。女癖が悪く母親を苦しめた父への気持ちが彼女をこうさせているのかと思いました。私が今まで観て来た京マチ子様は時代モノの貴婦人役ばかりだったので、こういうイマドキなズベ公(昭和の死語)のマチ子様は新鮮!でもはまってる!馴染み客を奪われて文句を言う娼婦に「そやかて、ウチの方が若いから当然やろ?」などと歯に衣着せぬ物言いも実に爽快なキャラクターなのでした。

平凡な結婚をして専業主婦になることを夢見るより江(町田博子)は、一番の堅実派。めでたく身請け先が決まり仲間に祝われて寿退社をしますが、婚家で壮絶にこき使われて吉原に出戻って来るのでした。今も昔もこのより江さんみたいな人はおそらく一番多いタイプなのではないかと思います。結婚に夢を見すぎちゃって現実を見た後「こんなはずでは・・・」となってしまったという。おそらくそれでも我慢している女性も多いのでしょうが、彼女は耐えきれずまた戻って来ます。しかし当時売春は合法化されて いたので見方によっちゃ自立した職業婦人ってことになるのではないでしょうか。それでも彼女にはいつか夢見た通りの幸せを掴んで欲しいなと思わずにいられません。

通いの娼婦であるハナエ(木暮実千代)は働くことの出来ない病弱な夫と幼い子供を抱えての奥さん娼婦。部屋を追い出されたりして貧乏のどん底で絶望した夫が自殺未遂をしてしまいます。この五人の女達の中で、私が共感したのはこのハナエさんですね。娼婦といってもケバケバしさとは無縁。もたいまさこを若くしたみたいなすごく地味でまっとうな女性なんですよ。メガネをかけていてかなり年配に見える(それでも30は行ってないのかもしれない)。病弱な夫と赤ん坊がいて生活に苦労してるんですね(夫はもちろん妻の職業を知っている)。私の夫は病弱じゃないし赤ん坊もまだいないけど、私がこの映画に出るのだったらきっとこの役・・・などと何故か勝手に思ってしまったのでした。

しかしハナエさんの夫がちょっとひどい。役所をリストラされたということですが、病弱で働かないのは差し置いて、妻が身体を売って暮らしていると言うのに結婚していくより江に向かって「もうこんな仕事に絶対もどっちゃダメだよ。こんな仕事している女性はね、社会の屑だ」みたいなことを言うんですよ(妻も聞いているというのに)。彼はここまでして家計を支える奥さんをもらったってことに死ぬ程感謝した方がいいですね。仕事から帰った妻ハナエさんが幼い息子を抱きながら「もうこんなに可愛くなって、『ママ』って言うのよ。こうなっちゃ心中も出来ないわね・・・でもね、いつかきっと生きててよかったって思うときが来るわ」としみじみ言うシーンが切ない!

ゆめ子(三益愛子)はいつか一人息子と一緒に生活出来ることを夢見て働くかなりトウのたったオバチャン娼婦(いつもお声がかからずに、お茶をひいてばかりいる)。年頃になった息子に職業の実態を知られて絶縁宣言され、ついには気が触れてしまいます。ゆめ子役を演じた女優さんは当時の母子もので人気だった方らしく、この愛息に裏切られるという展開は結構辛いものだったようです。もうひたすら息子ラブで息子だけが生き甲斐だったんだけど、客引きで男に媚びているところを高校生くらいの息子に見られてしまい「汚い!もう会いに来るな!」と罵られるんですね。息子をここまで大きくしたのもこの仕事があったからなんですが、これもまた切ないです。最後には気が狂ってしまうという悲しい悲しいキャラクターでした。

やすみ(若尾文子)は若くて美しく売上ナンバーワンですが打算的な娼婦で、馴染み客から金をせびってはせっせと貯金に励む日々。彼女は父親が犯罪で捕まってその保釈金の為に売春をしており、とにかくお金がすべてというキャラクター。確かに信用できるのはお金だけってのは社会の真理かもしれません。しかし、横領してまで彼女につぎ込んだ馴染み客から殺されそうになるのでした。そんな修羅場をくぐり抜けたやすみは馴染み客の商売(貸し布団屋)をそっくりそのまま引き継ぎ、女主人の座におさまります。演じるのは若尾文子様ですよ。さすがにお綺麗で、この方に「ねえちょっと都合して欲しいのよぉ・・・」などとしなだれ掛かれたらそりゃ横領もしてしまうでしょう。そのしたたかさで唯一、カタギに戻ることが出来るというたくましいキャラクターでした。

とにかくほとんどの娼婦にいいことなんか起きないんですね。特に私が共感するハナエさんと息子に絶縁されて発狂してしまったゆめ子さんには悲惨な末路が待っているのでしょう。しかし彼女たちが愚痴を言い合いながら、おでんをつつき店屋物の丼をかきこみ自らのいけてない人生をひたすらスルーしていく描写に、ごく普通の人間が持っているたくましさとか力強さが滲んでいてなんか力づけられるというか、まあこうやって仲間と仕事や境遇を愚痴りながら食べ物にありつける状況ってのもそこまで悪くはないんじゃないか・・・みたいな感じもするんですね。どんな辛いことや嫌なことがあっても、おまんま食べて生きて行くしかない、Life goes on and on....みたいな開き直って、諦めの境地を越えてのタフネスのようなものがあるんです。

時代やシチュエーションは全然違うんですけど、自分が東京のチャコールグレー企業(ギリギリのところで遵法してるからブラックではないが労働条件&環境悪し)で働いていたときのことが少しオーバーラップするのでした。当時私の夫は無職だったし、狭い部屋に住んでたし、働いて働いて目標達成しても給料はガンとして据え置きだしで辛かった(だからハナエさんに共感するのかも)。でも友人と一緒に美味しいものを囲みながら愚痴りあったり、励まし合ったり、ダラダラと話したりすることでホッとしたりしてたんですね。まさにこの映画で娼婦たちがお茶を飲んだり何か食べたりしながらダベり合うのと同じです。そんなようなことを思い出したのでした。

当時の国会では売春禁止法案が可決されるかどうかの瀬戸際だったようで、売春宿の旦那さんや奥さんが始終ラジオをつけて動向を気にしているのでした。確かに法案が可決されれば商売あがったり。女たちは職場を奪われるのですよ。だからうちら売春屋は必要悪だ、いやむしろ社会的事業なんだ!と旦那さんが開き直るシーンが度々ありましたが、確かにそういう側面もあるんですよね・・・。しかし合法化されていたぶん、商いの様子は思ったよりずっと健全な感じ。旦那さんは同業者との会合に出かけたり、見回りの駐在さんが店に来たりと本当に普通の飲み屋さんみたいな感じでした。

ラスト近くで新しく売春宿にやってきた素朴な若いオナゴしず子(川上康子)が、女将さんから化粧を施され客引きをするシーンで終ります。まだ処女なのに客を取るというハードさですが、彼女からはそういった悲壮感はあまり感じられません。それより住む所と食事があってよかったという感じにも見えます。初仕事にあたってミッキーから「そんなん簡単や。はよ捨て」的なアドバイスをもらい、道に立つしず子。彼女がぎこちなく「ちょ、ちょっと・・・」と道往く男に声をかけるところで映画は終ります。ドヌーヴ様の「昼顔」では売春婦になるまで結構迷うシーンがあってそれがまたグっと来る感じになっていたのですが、この映画ではそういう逡巡とか耽美がバッサリ切り捨てられていて、それがまた娼婦として働く女のリアルな感じを浮き彫りにしていたような気がするのでした。身体を売ることが何か淫靡な秘め事、ではなく日々の労働なんですよね。

とにかく各女優が本当に現実に存在している人みたいに役にピッタリだったし、逆境の中を生きて行く女性映画としてもすごく良く出来ていて溝口作品の最高傑作と言われているのも納得です。娼婦たちを妙に美化したり悲劇ぽく描いたり、ポジティブ/ネガティブがハッキリわかるような着地にしたりしていないのも素晴らしいのでした。現代劇だしこの映画が一番ゴダールぽいかも(もちろん影響を受けているのがゴダールなのであるが)。ゴダールがアンナ・カリーナ主演で撮った娼婦映画の「女と男のいる舗道」は、本作の影響を受けているという指摘もあるようです。観たけどアンナのボブヘアとシャツとスカートという衣装しか覚えていません。大体私にとってゴダール映画ってそんな感じです・・・。


『山椒大夫』a.k.a.安寿と厨子王



       
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名画座で行われていた溝口健二特集の三作目です。拙ブログの記録を見ていると最新ハリウッド人気映画と日本の古い映画がまぜこぜになってて「この人二重人格?」と思われてしまうかもしれません・・・まあ雑食ということです。「山椒大夫」ってタイトルだけは子供の頃から聞いたことがあったんですね。「大夫(だゆう)」の意味がわからなかったけど、なんとなく山椒がついているから、なんか美味しそうな話なのかなあ、などとボンヤリ思っていました。山椒はやっぱり鰻には欠かせません。親子丼にかけても美味しいですな。

森鴎外の小説が原作なんだそうです(今は青空文庫で無料で閲覧可能)。冒頭でお母さんが少年のことを「厨子王」と呼ぶので「安寿と厨子王」っ て昔話だ、と気が付いたんですね。でもこれもタイトルだけで内容をまったく知らなかったんですよ。「ズシオウ」という響きから「寿司王」と連想していた私は、このお話のことも「なんか美味しそうだな」と長年思っていたのでした・・・。「寿司王」という名の回転寿司屋は色んなところにありそうですね。

山椒大夫はこの安寿と厨子王というおとぎ話をベースにしたお話だそうで。そりゃもう悲惨な運命に翻弄されまくる親子の悲劇です。ひたすら悲劇しか起こらず、不憫でいたたまれない気分になる話ですが、最後は一応ハッピーエンドってことになるのかなあ・・・。この作品も内外での評価が高く、ベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞。ゴダールはこの映画が好き過ぎて「気狂いピエロ」のラストシーンでまったく同じ構図の海のショットを撮ってオマージュを捧げているんだそうです。

時は平安くらい。ある貴族が没落してしまい夫はどこかへ左遷、妻子は夫に会いに行くため歩いて旅をすることになります。お母様の玉木(田中絹代)、少年の厨子王とその妹の安寿、そしてお付きのばあやという女子供だけの心もとない旅です。後から知ったんですが少年時代の厨子王を演じたのは子供の頃の津川雅彦だそう!すごいセリフまわしに学芸会感があったんだけど、まだ新人だったのね。津川雅彦、今は死にそうなお爺さん役やってますから、この映画も相当古いわけです(54年)。



※ネタバレします。



妻子は野宿をしているところ尼寺に住む老婆に出会います。老婆の親切で寺に泊めてもらい、その老婆が手配してくれた船に乗って旅を続けることになっていましたが悪い船頭に騙されて、親子が離ればなれになってしまいます(ババアもグルだった)。子供は人買いに連れられて都へ。山椒大夫(進藤英太郎)という長者の荘園で強制労働されるために売られてしまうのでした。この荘園がもう超絶ブラック企業で、可哀相な兄妹はクタクタになるまで日夜働かせられます。ただ1人、山椒大夫の息子である太郎(河野秋武)だけが兄妹を不憫に思い、新しい名前をつけてくれ親切にしてくれたのでした。

成長した厨子王(花柳喜章)と安寿(香川京子)は相変わらず強制労働に明け暮れる日々です。厨子王は荘園を抜け出そうとした者に焼印を加えるまでに変わってしまいました。ある日、安寿は新しく佐渡島からやって来た奴隷が歌う歌で、母親の玉木が生きていることを知ります。その歌には安寿たちの名前が歌詞になったものなのでした。もう労働力として見なされなくなった老女を姨捨山に捨てに行く役を言い渡された厨子王は、山の中で見張りをまいて安寿と逃げ出す作戦を立てます。しかし2人一緒に逃げるより厨子王だけで行った方が助かる確率が高いと考えた安寿は残って追っ手を止める係を志願するのでした。逃げ出した厨子王は、山椒大夫の息子で今は出家して山寺の住職になってる太郎のもとへ行き身を隠します。一方、安寿はこのまま残れば拷問され兄の行方を吐いてしまうと懸念してか、入水自殺を図るのでした。

という前編です。ここまでだけもかなりドラマですね。親子が湖のほとりで引き離されるシーンは「ええ~っ!」とビックリ。今まで静的な絵巻物風のシーンばかりだったので、急にこんな動的で心を揺さぶる様なシーンになって驚きました。可哀相すぎる!!!(最初から何やら怪しげな船頭だったが)そういえば「雨月物語」のときも湖畔で家族が別れるシーンがとても印象的でした。「おしん」で奉公に行くおしんと泉ピン子のおっかあが別れるシーンも思い出しますね~(古い)。 溝口作品がちょっと意識されていたのかな。

成長した厨子王(花柳喜章)と安寿(香川京子)。厨子王の花柳喜章は顔と芝居が濃くて、今の俳優で言うと山田孝之っぽい。安寿の香川京子様は昔から品があったんですね。強制労働の掃き溜めの中でもこの上品さをキープしてるってのが凄いです。今の女優で言うと堀北真希っぽい感じかな。私は美しく成長した安寿が山椒大夫に手籠めにされやしないかとヒヤヒヤしていました。

逃げた厨子王は太郎の勧めで関白に直訴し、父から別れる時にもらった家に伝わる小さな観音様のお陰で高貴な出だと認めてもらいます。そして山椒大夫の荘園を管轄する国司に就任します。国司としてまず着手したのが人の売買禁止、荘園での労働には相当の賃金を払うことなどでした。つまり奴隷解放を行ったのです。周囲からは前代未聞だと言われますが、書状を持って山椒大夫の荘園に行き皆を解放します。しかし妹安寿の姿が見えません。安寿は入水自殺をしたと知らされて悲しみに打ち拉がれる厨子王なのでした(どのタイミングだったか、左遷された父も亡くなっていることを知る)。その後、務めを果たした厨子王は国司を辞任して母親探しの旅に出ます。母は佐渡島の漁村にある売春宿に売られたという噂を聞き、漁村を訪れる厨子王。浜辺に腰掛けた盲目の老婆が変わり果てた母親の玉木なのでした。

ここから後半のリベンジ編なんですが、超絶ブラック企業の山椒大夫荘園から皆を解放する展開も、溜飲が下がるという感じにはあまり描かれていません。いまいち山椒大夫の腹黒さ描写が弱かったからかなあ・・・。国司になった厨子王にとたんにペコペコし出すとか卑屈極まりないところなど描かれていたら、また違った印象になったかもしれません。お母さんの玉木さんはやはりソープに沈められて、もとい遊郭に売られていたんですね。年老いた今は漁村で海苔を干したりするのを手伝っていたんですが、もう完全に人が変わっていて、厨子王が「お母さま、僕ですよ」と言ってもからかわれていると思って相手にしません。でも父の形見である観音様を触らせると、本物の厨子王だということがわかるんですよ。そうして固く抱き合う親子なのでした。

いや~、本当に可哀相な話でした。ハッピーエンドと言ってもいいのかなという感じですが、最後が少しでもポジティブに終ってよかったですよ。しかし、不思議に思ったのが何故タイトルがブラック長者の「山椒大夫」なのでしょうか・・・?なぜ彼がタイトルロール?主役でもなんでもないヒールなんですが。原作を読むとわかるのかな。この話から得られる教訓は、いくら親切で無害そうなババアから宿をオファーされても決して泊まってはいけない・・・ってことでしょうか。あと親からもらったギフトがピンチのときに助けてくれるから肌身離さず大事に持っとけ、とか?(「グリーン・インフェルノ」では父親からもらったネックレスがいい仕事をしてた気がします)無理矢理ですが、そんな感想を持ったのでした。

『ドクター・ストレンジ』3D以上の鑑賞を強くおすすめ



       


なんだか世界中で大ヒットしているらしいという噂を聞いて行って参りました、ドクター・ストレンジ。まあマーベルなのでいずれにせよ行くつもりだったのですが。今回新たにMCUに参加するヒーローなんですね。で、演じるのはベネ様。正直、ドクター・ストレンジしてるときの彼はヒゲだし白髪見えてるしで、あんまり個人的にはグっと来ないのですが・・・。やっぱりどうしたってシャーロックの印象が強いし、シャーロックのときが一番イケメンだからかな。そいや相棒のジョン(マーティン・フリーマン)は「シビルウォー」に役人みたいな役で出演していましたね。

面白くなかったわけじゃないけど、正直私はそこまで刺さる映画ではありませんでした。ドクター・ストレンジのキャラクターはちょっとマイルドなトニー・スタークって感じ。ものすごい自信家で皮肉屋。一度打ちのめされてドン底に落ちたものの、努力の末に這い上がってヒーローになるという展開も似てる。合間合間に小さいギャグが入るみたいな展開もアイアンマンぽいっちゃぽい。でもトニー・スタークほどの人間的魅力があるかと言うと、それはちょっと疑問。俳優としてということなら、ベネ様の方がダウニーたんより好きなんだけど、どうしてかなあ・・・。というわけで私はそうでもなかったのですが、夫には面白かったようで「続編も絶対に観に行く!」と申しておりました。

それはさておき、この映画はとにかく特殊効果が凄い。これは・・・さぞやお金かかってるんだろうな~とマーベル側の気合いみたいなものを感じました。「インセプション」みたいに街がブワーっと折り畳まれたり折り紙みたいになったり、もう色んな方向に広がって展開していったりするスペクタクルがふんだんに入ってるし、未体験の異世界へ飛ばされるシーンなども映像として見応えタップリ(手の五本指が手になりさらにその指から手が出て・・・みたいなシュールな映像も)。私達は2D鑑賞だったのですが(貧乏だからいつも2D・・・)この映画は3D以上での鑑賞を強く強くおすすめ致します。




※核心部に触れるネタバレはなしです。




天才神経外科医のスティーブン・ ストレンジ(ベネディクト・カンバー バッチ)は、難しい手術を次々と成功させて万能感に酔っていました。ところがある日、交通事故で負傷しなんとか一命は取り留めますが、外科医の命とも言うべき指が麻痺して思うように動かせなくなってしまいます。同僚で恋人のクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)は献身的に彼を支えますが、時間が経ってもなかなか現実を受け入れられないスティーブンの元を去って行くのでした。

スティーブンは同じく麻痺に苦しんでいたもののそれを治癒させたジョナサン(ベンジャミン・ブラット)という男から、ネパールのカマル・タージに行けというアドバイスをもらい旅立ちます。そこで会ったのはアンシエント・ワン(ティルダ・スウィントン)という高僧のような女性でした。彼女の特異な能力を見たスティーブンは弟子にしてもらうことを頼みます。最初は断られたものの受け入れられ、弟子のモルドー(キウェテル・イジョフォー)やワン(ベネディクト・ウォン)と共に修行に励むことになります。一方、アンシエント・ワンにはカエシリウス(マッツ・ミケルセン)という敵がおり、一味は虎視眈々と世界の破滅を狙っていたのでした。特殊能力を身に付けたスティーブンはカエシリウスたちを阻止する為に立ち上がります。

・・・というザックリ導入部です。

おしゃれなマンションに住んでいて、高級時計も死ぬ程持っているスティーブン。高級車を飛ばしデートへ向かいますが、ものすっごい見通しの悪いカーブ連続の山肌の道路で、スマホに出ながら運転(それも複数台追い越しながら)という危なっかしさ。あー、このままじゃ事故るよアンタ、事故る・・・と思っていたら案の定クラッシュなのでした(まあ事故に合わないと始まらないんだけど)。このときにしていた高級腕時計の裏にクリスティーンからの愛の言葉が掘ってあるんですね。ガラスが割れて時が止まったままになってしまうんですが、スティーブンはその時計をネパールでも大事に持っているんですよ。この時が停まった時から彼の人生がまったく変わってしまったということなんでしょうね。ちなみにブランドはジャガー・ルクルト。モノにもよりますが、だいたい安いもので100万円くらいする時計です!

ネパールへ渡ったスティーブンですが、中の人ベネ様は若い頃にインドのチベット仏教寺院で英語を教えた経験があるそうな。意外とスピリチュアルなものにもオープンな感じがしますね(理詰めのシャーロックなイメージと逆だからかな)。裏通りで泥棒に囲まれ襲われたスティーブンを助けたのがモルドーというカマル・タージの修行者でした。モルドーを演じるのはベネ様と「それでも夜は明ける」で共演済みのキウェテル・イジョフォーです。彼は生真面目な役とそうでもない/全然違う役をやることがありますが、やっぱり生真面目な方がなんとなく合ってるかなあ。でもちょっと真面目で潔白過ぎるかも、と思ったらこれが伏線になるんですね。

モルドーに連れられて師匠のアンシエント・ワンとの対面を果たすのですが、原作ではこのキャラクターはチベット人男性らしいんですね。うーん、そう言われると私の頭に浮かぶキャスティングはケン・ワタナベ、チョウ・ユンファくらいかなあ・・・真田広之はちょっと違うという感じ。しかし、監督のスコット・デリクソンはアンシエント・ワンを男性じゃなく女性にしたかったらしいです。しかしアジア人のオバチャンだといわゆるドラゴン・レディ的女傑なステレオタイプになっちゃうし、若いとオタク受けする萌え系になっちゃいそうってことで、西洋人の俳優にしたんだそうです。ホワイトウォッシングだという批判もあったそうですが、ティルダ・スウィントンの起用は慧眼であったと思います。もともとストイックで両性具有的な魅力を持つ女優さんですし「オルランド」で女性も男性も演じています。それだけではなく、浮世離れした凄い何かを持っている人というキャラクターは彼女以外考えられないのではないでしょうか。

カマル・タージの図書室で司書的なことをやっているワン役にベネディクト・ウォン。この中華系の俳優さんは色んな映画で見ますね。「オデッセイ」で科学者の役をやっていました。フィルモグラフィー調べたら 「堕天使のパスポート」にも出てる。てことはキウェテル・イジョフォーとも共演してるんだ(ティルダ、ベネ様、キウェテル、ウォンと全員イギリス人ですね)。デブなんだけど、いわゆるただのデブキャラではなく、何かしらのソリューションを運んで来る知性派という感じの人ですね。ハリウッドの伊集院光的な・・・?

敵役は「鳥顔のナイスミドル」マッツ・ミケルセンですよ。悪くないけど、ちょ~っとだけ太ってて身体が重そうかな・・・と思ってしまいました。鳥顔のシャープさが活かし切れてないというか・・・。マッツの実兄、ラース・ミケルセンも悪役としてベネ様と共演済み。「SHERLOCK」のシーズン3で恐喝王マグヌセンという悪役をしてました。兄弟ということで同じDNAを持ってる感じはするんだけど、マッツのがやはり鳥顔でエロいフェロモンが出ていると思います。でも本作でのマッツ・ミケルセンの悪役、ちょっとインパクトが足りな いんですね。お付きのものも何人か従えてるんですが、彼らは完全に書き割り的な感じだったし、悪の野望ってのがイマイチよくわかりませんでした(私の英語力不足もあるけど)。

ベネ様の彼女役はレイチェル・マクアダムスですが。彼女も優秀な医者なんだけど、ドクター・ストレンジになったベネ様に何回もオペを頼まれてドタバタしてたりするところがちょっとBSOL映画のキャラクターぽい感じ。しかしレイチェルは、ちょっぴりドジで可愛いんだけど医者役をやっても違和感ないんです、というラインを体現できる女優さんなんだと思います。衣装がほとんど緑の手術着でちょっと可哀相だったけど・・・。レイチェルはガイ・リッチーの「シャーロック・ホームズ」でホームズの宿敵兼訳ありの女、アイリーン・アドラーをやっていました。本作で間接的にシャーロック(ベネ様)とアイリーン(レイチェル)という作品をクロスしたホームズ&アイリーンのカップリングになっているんですね。そう考えるとしっくりくるキャスティングです。まあ原作のアイリーンはドジ可愛い女じゃなくって、ホームズと互角以上に渡り合う頭の良い女性なのですが。

今更ですが、ドクター・ストレンジってのは本名なんですね。スティーブン・ストレンジという名前の天才外科医がヒーローになったから、すなわちドクター・ストレンジ(ヒーローにならなくても同じか)。キャラクターやアクション自体よりもその舞台となる不思議な世界の描写の方が魅力的に見えるのはいいのか悪いのか。さすがに扇子を持って戦うティルダ・スウィントンはかっこ良かったけど、その他のキャストのアクションはあまり印象に残らないんですよね。東洋的思想がベースにあるヒーローだから、空手やカンフーみたいな型を使ってもっとカッコ良く火の輪っかを出したりしたら良かったのかな〜。う〜む・・・。ということで、大ヒットしているようですが個人的にはあまりピンと来ない映画でした。俳優さんは好きな人ばかり出ているんですけど、なんかもうちょっとの工夫でもっともっと良く出来たんじゃないかなあ〜と思ってしまったのでした。

ちなみに私がマーベルで好きなのはぶっちぎりで「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」。で次点だと「マイティー・ソー」です。どちらもキャップとソーの一作目ですね。この二作はヒーローも魅力的だったし、話の展開もすごく好きでした(そういえば、どちらもプラトニック・ラブがある)。さて今回はおまけシーンがふたつ。ひとつはタイトルやメインキャストのクレジットの後で、もうひとつはいつものようにすべてのクレジットが流れ終わった後です。これからのアベンジャーズにドクター・ストレンジが絡んで来る感じの作りになってました。うーむ、そうだとしたらストレンジはトニー・スタークと似てるからぶつかるのかな、それとも仲良くなるのかな。あとは忘れちゃいけないスタン・リー様のカメオシーンですが、後半に出て来ます。相変わらずキュートでいらっしゃるのでした。


『ゴーストバスターズ』新チーム+クリへムの心地よいハーモニー、続編希望!



        



いや~、楽しい映画でした。
エンドロールのときまで工夫が凝らされていて笑顔で映画館を出られる、清く正しい娯楽映画でしたね。町山智宏さんのたまむすびによると、公開直前にアメリカではこの映画が女性差別のネタとして使われていたりしたらしいですが・・・本当に残念なことです。そんなネタにされるような映画じゃないですよ。純真無垢に人を楽しませようとしていて私は非常に好感が持てました。今年のハロウィンは何もやらなかったけど(毎年か)、もし仮装しなければならないのなら、オールインワンを着て小型掃除機を持つコスプレにしようと思ったのでした(市販のコスチュームを買う気はナシ)。

トレーラーが公開されたとき「みんなブスでババアじゃん!」というコメントが殺到したそうですが。ええ?そうかな・・・。主演的なクリステン・ウィグは可愛いし(失敗したジェーン・バ ーキンみたいだったけど)、マッド・サイエンティストなケイト・マッキノンもヤバ可愛いし、残りの二人の太ったおばちゃんのコメディエンヌぷりも素晴らしかったですよ。十分に魅力的な四人じゃないですか。そもそもオリジナルはくたびれたオッサンだったし・・・。まあしかしこの四人がNYを並んで歩いているシーンは「何このいけてないSATC・・・」って思っちゃいましたが!(笑)

それになんと言ってもこの映画には神カッコいいソー様もといクリへムが出てるんですよ!前にTwitterでクリへムが受付嬢役と知り、やべえ・・・と浮かれていたのでした。にしては鑑賞するのが秋になっちゃったけど。バービーのボーイフレンド、ケンみたいなイケメンだけど人智を越えたバカという役です。騒音を聞いて 耳じゃなく目を押さえたりする超超古典的ギャグから、「デッドプール」みたいに今トレンド?の第四の壁を軽々と越えるようなギャグまで、水を得た魚のように嬉々として演じる彼に五億点なのでした。

オリジナルは一応どちらも観たはず・・・なのですが、なにぶん子供だったのであんまり覚えていません。盛大にゲップをする大食漢のデブゴーストは前のにも出てましたよね?オリジナルキャラを演じた俳優さんが出演してるのもビル・マーレイとシガニー・ウィーバーしかわかりませんでした。記憶としては2の方が鮮明ですね。これは確か親と一緒に劇場で観たんですが、ビル・マーレイとシガニー・ウィーバー(子持ち)が昔から好き合ってるけど、付き合ってないみたいなんだったと思います。幼かった当時「おじさん とおばさん、しかも片方子持ちなのに恋愛してる!!」ってのが子供心にすごく衝撃でした。美男美女のプリンスとプリンセスが登場するディズニーとかおとぎ話の恋愛しか知らなかったので・・・。

今回はタイトルに「3」が付けられてなくて、オリジナル第一作とまったく同じタイトルなんですね。完全なリブートだけどオリジナルへのリスペクトが余すところなく見られて、それも好感度が高いのでした。



※ネタバレします。




物理学者のエリン(クリステン・ウィグ)は名門大学で心霊現象を科学的に証明する研究を行っていましたが、昔に出したオカルト色の強いゴースト本や幽霊を信じているとコメントしたビデオが大学側にバレてクビになってしまいます。そこで本の共著者で幼な じみのゴースト研究家アビー(メリッサ・マッカーシー)、エンジニアのホルツマン(ケイト・マッキノン)と共に幽霊退治の会社、ゴーストバスターズを起業。イケメンだけどバカなケヴィン(クリス・へムズワース)を受付嬢に雇います。ある日、NYの地下鉄職員のパティ(レスリー・ジョーンズ)から線路内にゴーストが出たという通報をもらい駆けつけたバスターズたち。そこでNYがゴーストを操る何者かに乗っ取られようとしていることを知るのでした。


というザックリ導入部です。ホーンテッド・マンションぽい全然怖くないゴーストのCGや、ゴーストが消えた時に出る大量の緑ゲルなど、80年代の雰囲気がぷんぷん!ケミカルなネオングリーンの感じとか本当に懐かしい~。たしか蛍光色って当時服とかにもワンポイントで入れるのが流行ってなかったっけ。エリンが必ず緑ゲルを大量に浴びる役なのもオチがついていて面白かったです(サム・ライミ監督の「スペル」を思い出した)。

心地よいのがゴーストバスターズたちのテンポの良い会話。最初からこなれたチーム感が出ていて楽しかったです。女優たちの間にケミストリーが起きてるんですよ。そこに絡まるおバカなケヴィンのボケがもう最高。エリンがケヴィンのこと好きで、彼が吐いたコーヒーをもったいないから飲むと言ったり、エイエイオー!と手を合わせる時にちょっと長めにケヴィンの手を握ったりしてるのがまた地味に可笑しかったです。

バスターズたちのキャラ分けもよかったと思います。真面目で一本気なエリン(レトロでオーソドックスなファッション)、口からコメディエンヌな感じのアビー(黒縁メガネにチェックシャツ)、ちょっとマッドでアブナい機械オタクのホルツマン(スチーム・パンクなファッション)、アフリカ系関西おばちゃんのパティ(原色カラフルファッション)という各自のキャラが衣装からも明白にわかるようになっている。余計な説明セリフがいらないというのも結構簡単でいて優秀な作りなのではないかと思いました。エリンのレトロなワンピースとかアビーのチェックシャツにミリタリージャケットを合わせたのとか可愛かったです。

ゴーストを操ってNYを支配しようとしている悪役ローワン(ニール・キャセイ)の印象がイマイチ弱かったのが残念でした。この人もベクトル の違うマッドサイエンティストなんですけど、ルックスとか野望とかにインパクトがないんですよね。しかも途中からケヴィンの身体を借りて悪さをするので、最初の俳優の顔ももはや思い出せない。イケメンのケヴィンを乗っ取るなら、最初はものすごいブサイクとかオタクとかのルックスにして、積年のルサンチマンを晴らす為に悪さをするみたいな分かりやすい方がよかったんじゃないかな~などと思いました。

あとゴーストバスターズ始動からNYがカオスになるまでは結構ぬるい感じなんですよね。ロックコンサート会場にゴーストが出現ということで退治するんですが、ゴーストがマネキンに取り憑いて動き出したり、なんかもう微笑ましささえ感じるアナログ感。そういえばお化けがあれだけ出て来るのに子供の頃 から全然怖いと思ったことがありませんでした。お化けのビジュアルも緑色のデブだったりするので、ちょっとしたアメリカ駄菓子/雑貨みたいなポップ感覚。でも拠点となる元中華料理店からゴーストバスターズが車で出動し、あのテーマがかかるとやっぱり「ゴーストバスターズ!」とコール&レスポンスしたくなっちゃう。

中華といえば、アビーがテイクアウトしたスープの中のワンタンが足りないというギャグも地味に面白かったです。最初は1個しか入ってなかったのに有名になった後では容器の中に死ぬ程ワンタンが入っている。それでも逆に文句を言うアビー(笑)。中華配達のお兄ちゃんがパキスタン系に見えるのもなんか都会って感じ。外国の都会では外国料理で働いている人が その国出身じゃないということがよくありますよね。寿司屋なのにアラブ系が働いていたり(笑)。

気が付いたらNYが巨大怪獣もといゴーストに襲撃されて大変なことになっていたんですが、ここでホルツマンの活躍に痺れました~。2丁拳銃を持って「さあ、いっちょ行くか!」と片方の拳銃をベロ~っと舐めるんですよ。ここでカッコいい・・・!抱いて!となった方は多いはず。あとやっぱり英語のセリフの情報量がすごく多いしギャグ盛り込まれているから、字幕だと大意だけなのでなんか物足りないかもしれませんね。女芸人の方々が吹き替えたバージョンも機会があったら観てみたいですね。

異空間に引きずられていくアビーをエリンが助けに行くシーンも単純だけどちょっと感動。ここでエリンはアビーと の長年の友情に報いるんですよ。そして戻って来たらなぜか白髪になっている二人(笑)。すべてが終わり「やった!」と喜ぶバスターズたちに何もしてないケヴィン(身体を乗っ取られていた)がサンドイッチ片手にジョインするシーンも最高です。アクション映画としては、ちょっとゆるいんですが、そのゆるさが魅力的なキャストと相まって心地よいという感じなのでした。

そしてケヴィンとゴーストたちが舞うエンドロールと流れるテーマソング。「誰を呼ぶ?」「ゴースト・バスターズ!」と私のテンションもマックスに。なんか、こういうの、いいな~、ウフフ♪とほっこりするのでした。その後のバスターズたちとケヴィンの様子が挿入されるのも楽しい(ケヴィンがやっと普通に電話を取って、会社の名前を言えるように進歩している!)。ずっとこういう事務所の風景を見ていたいくらいですよ。ポストクレジットシーンもちゃんとあるのですが・・・気になる続編は?Wikiによるとまだ何も決まっていないようですが、この先またどうなるかはわからないみたいな感じですねえ・・・。私はまだまだバスターズとケヴィンのドタバタを観たい~!ソニーさんっ、どうぞよろしくお願いします。


『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』邦題は「アウトロー2:子連れ狼」でどう?



        


1作目「アウトロー」も観ていたので続編もチェックしてみました。我が家ではトム・クルーズ映画とマーベル映画はなるべく劇場で鑑賞するという不文律が出来上がっているようです・・・。しかし、Twitterでもポロリと書きましたが思ったよりつまらなくてガッカリしました。これだったら「ドクター・ストレンジ」(感想後日)か「ドント・ブリーズ」行った方がよかったなって感じ。監督は日本でもヒットした「ラスト・サムライ」のエドワード・ズウィックなんですが、思ったよりもずっと小粒な出来でした。

良く言うとと地に足がついたリアルさがあるアクション映画なんですよね。すごく現実に即していて荒唐無稽さがない。アゲられない。ヌケない。そういや前作もそんな感じだったのでした・・・(今改めて感想文読んでみたら、やっぱり満足してない。行く前にちゃんと読んでおくのだった)。やっぱりトムのアクション映画だから「ミッション・インポッシブル」的な「どんだけー!」って展開やアクションを無意識のうちに期待してしまうんだと思います。それで肩すかしをくらってガッカリ・・・みたいな。恐らくジャック・リーチャーのシリーズ化を考えた上で制作されているんでしょうが、次回作あってももう見ないかも・・・。

元軍人で今は凄腕のはぐれ者、ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)が悪や不正をぶった斬る!というアクション映画なのは変わりないんですが。今回は一匹狼で行動するんじゃなくて陰謀にはめられた 女軍人ターナー( コビー・ スマルダーズ)と、ある理由で悪に狙われる少女サム(ダニカ・ヤロシュ)と行動を共にしながら陰謀を暴くというお話です。



※ネタバレします。




メインビジュアルとして使われていた本作のポスターなんですが(上にあるものと同じ)、トムちんと背中合わせである女性が写っているんですね。恐らくこの女性が今回の新キャラということは予想がつくのですが・・・顔が全然ハッキリ写ってないんですね。横顔ですらない。振り向き途中のような実に中途半端なアングルの写真なんですよ。この人がコビー・スマルダーズ演じる女軍人のターナーなんですが、この扱いはかなり可哀相。契約的にトムちんと二枚看板になるのに問題でもあったんでしょうか。

ターナーを演じるコビー・スマルダーズはキリリっとした感じの男顔知的美人で、軍服やアーミールックが似合いまくり(私服時は革ジャンにパンツスタイルというマニッシュさ)。ものすごいユニフォーム美人なんですよ。彼女で同じ様な軍服チックなものを着た役をどこかで見たことがある・・・と思ったらアベンジャーズの本部にいてニック・フューリーとよく話しているマリア・ヒルと同じ女優さんなのでした。アベンジャーズのときから気品があって素敵だな~と思っていましたが、そんな彼女の活躍を存分に見られたのがこの映画の収穫でしょうか。

トムちんはいつものトムちんでしたね。最初の登場シーンではどんな立ち回りを見せてくれるのかと思いきや、すでにケンカし終った後でした。勾留されていた女軍人ターナー(アーミーグリーンのTシャツと迷彩柄パンツがまた似合う )を助けるシーンは軽く変装も入ってちょっとミッション・インポッシブルみがありましたね。いかん、やはりイーサン・ハントを重ねている。やっぱりイマイチ、ジャック・リーチャーはキャラ立ちが弱いんですよね~。前作のときも書いたけどいまひとつ人間的な魅力に欠けてるというか・・・。

そんなジャック・リーチャー、今回は自分の血を分けた娘かも?という少女サムと行動を共にします。この子が15歳くらいなんだけど、ジャック・リーチャーの尾行に気付いて逆に待ち伏せしてたり、自宅に襲撃しにきた敵を機転でまいたり、逃亡に必要不可欠なクレジットカードをさっと盗んだり、と驚く程サバイバル能力に長けたストリートワイズな少女なんですよね。だから「これだけのタマならば、ジャックの娘でも不思議じゃない・・・」と思わされるわけです。ぶっちゃけ顔はあんまり可愛くないんだけど。でも物語が進むにつれて魅力的に見えだし、最後はちゃんと可愛らしく見えたのがよかったです。

もしジャック・リーチャーがゴリゴリのマッチョ野郎だったら「どうしてこのハードボイルドな俺様が女子供なんかと一緒に・・・」とかぼやいてると思うんですが、中の人トムちんがフェミニストなのもあってか、全然そういう感じにはならないんですよね。普通に女系家族のいいパパみたいに見える。これはジャックの性格設定をもっと古くさくして、女子供と協力せざるおえない状況で見くびっていた彼女たちに助けられるみたいな面白みが出て来る様な気がするんですが、原作小説がそもそもそういう感じじゃないのかな。ジャックは十分に女性をリスペクトしていると思うんだけど一方のターナーは「女だからってバカにしないで!」みたいなテンションだったのがちょっと違和感がありました。

あとはジャックとターナーが恋愛にならないところがよかったですね。バスローブ姿のターナーがベッドの上でジャックが食べていたファストフードを一緒に食べるシーンはちょっとドキドキしましたが。そういえば前作でもロザムンド・パイク演じる女弁護士(だっけ?)とも何もなかったような。まあヒーロー全員がジェームズ・ボンドというわけじゃないですしね(笑)。ラストでターナーが軍に復帰するシーンが、安易にロマンスに転ばずに戦友として戦った感があってよかったです。

しかし不満なのがアクションシーンと悪役(パトリック・ホーシンガー)なんですよ。なんか悪役が「いかにも悪 役でござい!」という外見とキャラで、そのまま過ぎて面白くない。というより陳腐。こういう悪役は今までに一万回以上も見て来ています。ものすごいサドっ気があったり、ロリコンだったり(娘かもしれない少女を付け狙っているわけだから活きる設定かと)こちらもフックがあればあるほど話が面白くなったんじゃないかと思うんだけど・・・。軍の上役のおじさん俳優たちも「いかにも不正やってんな~」という感じでしたね。まあこっちはそれで別にいいんですが。

アクションも普通。軍上部の陰謀自体も新鮮味がゼロ。えっ、これ2016年の映画なんだよね・・・?ってくらい普通です。このシーンのこのアクションが印象に残ってる!ってのが思い浮かびません。そしてすべてが解決し、結局サムはジャックの娘ではないことがわかったけど、2人の間には親子のような絆が芽生えてめでたしめでたしになった後、ジャック・リーチャーはまた流れ者生活に戻り旅に出るのだった・・・ということですが、ジャックは今回のお手柄でちょっとくらいお金もらってるのかな~?となんだか彼の懐具合が心配になってしまいました。アクションに比べてドラマ部分はいくらか良い出来ではあったと思うのですが、そもそもアクションが全然なんでドラマ部分もまあ普通の映画以下なんですよね~。女優陣は魅力的だったし好演してたのに、な~んかもったいない。

邦題の付け方が前作とリンクしてないので大丈夫なのかな?ってそれもちょっと心配。アウトロー2:子連れ狼」みたいな分かりやすさのほうがいいのでは・・・などと余計なお世話ですが思ったのでした。トムちんの大ファンならば劇場へだけど、これはDVDになるまで待っても大丈夫、それも新作落ちになってからでも問題ないと思います。今後ですが老婆心ながら「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」のタイトル通り、本当に次がなくてジャック・リーチャー戻って来ない状況にならないといいんだけど・・・。



『楊貴妃』京マチ子様は美しいが・・・



       
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名画座で行われていた溝口健二監督の特集、二本目は「楊貴妃」です。ハリウッド映画「SAYURI」(「メモワール・オブ・ゲイシャ」の映画化。日本からは渡辺謙と桃井かおりが出演していた)のとき、日本人の芸者役がなんで揃いも揃って中国人なんだよ、しかも言語は英語!おかしいだろ!って憤慨していたけど、中国の歴史ものを日本人監督、日本人キャストでとおの昔にやってたんですね。

中国、唐の時代に傾国の美女とされた楊貴妃が玄宗皇帝の元に召され、自ら命を絶つまでの話です。私は受験の時世界史選択だったので、玄宗皇帝といえば良い皇帝として絶頂期の唐を治めていたけど楊貴妃を寵愛しすぎのせいで文字通り国が傾き安史の乱を招いた・・・というザックリ情報はなんとなからく覚えています。あと楊貴妃は豊満な美女でお肌ツルツル、フルーツのライチが大好きでひとたび「ライチが食べたい・・・」と呟けば、家来のものが馬を走らせ季節でなくてもどこからか調達してきたというエピソードが有名です。

楊貴妃を演じるのは京マチ子様、玄宗皇帝を演じるのは森雅之で「雨月物語」のコンビですね。この映画での京マチ子様は目鼻立ちのクッキリとした風貌に見えます。最初は田舎から出て来た料理番の娘だったのですが、親戚の楊国忠(小沢栄)に目を付けられ後宮にあがることになります。まあ最初から品があって綺麗なんですよ。話し方も綺麗だし。そうして楊国忠の政治的足がかりとして皇帝の側に配置されるのですが、お妃を亡くして失意の玄宗皇帝から拒絶されるんですね。でも芸術に通じた楊貴妃はすぐに皇帝の心をゲットし、貴妃の座に収まるのでした。

映画の時間にして90分そこらなので、とにかく展開がスピーディー。だからその分濃度が薄い映画になってしまっていたのが残念でした。皇帝があっという間に楊貴妃を気に入るシーンでは笑いが起きていましたし・・・。歴史のスケールが大き過ぎて誰にも感情移入出来ないし、気が付いたら国が大変なことになってるしで、え、これで終わり?なんだかなあ〜と不完全燃焼な感じ。あとやはり中国史劇なのに言語が日本語ってのも妙に変でした。まあ京マチ子様は気品があってお美しかったですが、それだけっちゃそれだけな映画かも。本国中国ではファン・ビンビン主演で楊貴妃の歴史ドラマが作られているそうで、こっちの方が面白そうです。やはり歴史上の人物の一生を描くにはまとまった尺が必要なんだと思います。

映画の感想が薄くなってしまったので、ジャズミュージシャンの菊地成孔さんによる「京マチ子の夜」のクリップを貼っておきます。


『雨月物語』分不相応な夢を見て大失敗するのはこの世の普遍なり



        
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久々の名画座です。先月に溝口健二特集が行われており「名前だけは知っている日本映画の巨匠だから、勉強だと思って観に行こう」と観て来ました。私は全然しらなかったのですが、名画座のパンフレットによるとゴダールが溝口の大ファンらしく影響を受けているとのことで、彼のコメントも載っていました。へえ~知らなかった・・・。ということで何本か観たのですが、最初は「雨月物語」です。この古典の名も中学か高校の頃に聞いたことがあるような。平安時代かな?と思ったら江戸時代に作られたホラーアンソロジーみたいな本らしいんですね。各物語の舞台は戦国時代だったりするみたいです。

戦国時代、近畿地方にある村で焼き物を作りながら細々と生きていた農民の源十郎(森雅之)とその妻宮木(田中絹代)。近くには源十郎の妹阿浜(水戸光子)とその夫藤兵衛(小沢栄)が住んでおり、源十郎の仕事を手伝っていました。ある日、戦になり村が焼き払われてしまいます。命からがら逃げた一家は、湖(琵琶湖?)を渡り、栄えている町へ行って焼き物を売ることに。しかし湖には海賊が出ると聞き、妻の宮木とまだ幼い子供は残ることになります。なんとか町へついた源十郎たち。藤兵衛は侍になるという長年の夢が捨てきれず、妻阿浜の静止を振り切って町へ飛び出して行くのでした。一方、道で焼き物を売ってひと財産稼ぐことのできた源十郎ですが、高貴な婦人、若狭(京マチ子)から焼き物を納めることを依頼されて彼女の屋敷へ向かいます。若狭に気に入られ屋敷に留まることを勧められるのですが・・・。



※ネタバレします。




大雑把に言うと源十郎と宮木、藤兵衛と阿浜の二組の夫婦の話で、立身出世や金持ち美女との甘い生活というどちらも夫が分不相応なものに夢を見たりしたおかげで妻も散々な目に合うというストーリーです。だから「そんなことがあるわけないだろ!目を覚ませ!」と思いつつも簡単に足下をすくわれ、そして見事にその後でしっぺ返しをくらう夫たちを見て「ほら~、だから言わんこっちゃない・・・」となるんですね。夫を信じて待っていたり、心配したりしていた妻が本当に可哀相。彼女たちには命を落としたり身体を売ったりという「夫がいたらない為にそこまで?」という転落が待っているのですから。しかしこういった話は設定やシチュエーションやシリアス度合いは異なるものの、現在でも色んなところで起こっている普遍的なもの。だからこそ内外で高く評価されているのでしょう。

広い湖に漕ぎ出すシーンなんかは幽玄で美しく、まるで三途の川のほとりのよう(実際、源十朗と妻にとっては今生の別れとなる)。DVDはどうかわかりませんが、フィルムの状態がものすごく悪くて輪郭がにじんでよく見えなかったり、途中でブツッと切れたりするのも地味に恐ろしかったですね。50年代の映画なんですが、もっと昔に作られているような感じがしました(なんだったら本当に戦国時代なんじゃないか・・・と思うほどリアル)。1953年といえば「ローマの休日」なんかも作られている年です。「ローマの休日」はあんなにコンディションがよくて今もじゅうぶん綺麗な映像なのに・・・やはり戦勝国と敗戦国の違いなのでしょうか。しかし「雨月物語」はそんなフィルムコンディションさえも作品のなんともいえない味になっているような気がしました。

特筆すべきはやはり若狭を演じた京マチ子様ですね。お姫様なんですが実は物の怪であったという設定が難なくなじんでいます(ばあや役の人も怖かった)。京マチ子様って映画によって顔が全然違う様な気がするんですよね。本作だと、おかめのような歴史的な日本の美人(笠をあげてドヤ顔を見せるシーンで「うーん、美人かな・・・。まあ映画の中では絶世の美女なんだろうな・・・」と脳内補正が求められる)。「羅生門 」(50年制作。てか本作よりこっちの方が古いのか!衝撃)では女優の川上麻衣子っぽい感じの上品なアッサリ顔。「楊貴妃」(感想文のちほど)では目鼻立ちがクッキリした現代的な美人。役によって全然印象が違って驚きました。どの役も高貴な婦人という共通点はありますが。

色々と溝口監督についてのエピソードを読むと、かなりエキセントリックというか芸術家肌の方だったんだなと思います。本作で、侍になるといって消えてしまった夫の藤兵衛を探しに行った阿浜が賊に襲われるというシーンがあるのですが、なかなか満足できるテイクが取れずにイライラした監督は阿浜役の水戸光子に「あんたは輪姦された経験がないんですか!」と怒鳴ったとか。こういった仰天エピソードには枚挙にいとまがないようです。こちらで芸術を勉強している友人が国家芸術家(日本で言ったら人間国宝級のすごい方)の先生についてレッスンを受けているのですが、そのような先生方も指導で「ええっ?」と仰天するようなことを仰るそうで、ああやっぱり巨匠ってのは常人とは違う世界に生きている人たちなんだなあ〜と思います。

でもゴダールっていったいどこが溝口に影響されているのだろうか・・・?と不思議でした。この映画自体はなにしろ70年近い前の作品なのでテンポがゆったりしている部分はありましたが、普遍的なテーマと人間の弱さが描かれていて面白かったです。

『ねじの回転』前日譚「妖精たちの森」を観たので



                                 


本作の前日譚である「妖精たちの森」を観たのでこちらも鑑賞してみました。60年代のイギリス映画です。まず何に驚いたかって、英語がとてもやさしかったこと。いつも英語の映画を観る時は空気で「まあ、こんなようなこと言ってんだろうな・・・」って脳内補完することがあるんですが、今回はセリフが一言一句もれずに聞き取れたのです!舞台はヴィクトリア朝のころなんですが、時代ものの英語の方が簡単なこともあるんですね(登場人物が属する階級とかにもよるかもしれない)。



※本作と「妖精たちの森」のネタバレします。



それはさておき、映画の話ですよ。話の内容的に私は「妖精たちの森」を先に観ておいてよかったと思いました。「妖精たちの森」が時代的には後に作られた映画ですが、私のようにあまり頭が良くない観客は「クイントって誰なん?それにそんなに怖い存在かな?」と本作を観て置いてきぼりにされかねない内容だったので・・・。あとデボラ・カー演じる後任家庭教師よ、下男クイントと前任のジェスル先生を殺ったのはこの子たちなんだよ、早く逃げてー!という視点で ハラハラできました(笑)。

「妖精たちの森」では純粋さのリミットが振り切れてしまったがゆえにクイントとジェスル先生を殺ったというように見えた子供たち。その子たちが再びいかにもイノセントな子供です♪というように登場するのでデボラ・カーのことを心配していたんですが、今回の映画は屋敷の中にいるクイントとジェスル先生の亡霊に取り憑かれて勝手に狂っていってしまった家庭教師の先生というように見えました。そう考えると「妖精たちの森」を観ていなくても別の恐ろしさがゾワゾワとやってきたのかもしれませんね(というか、普通の順番で観ている人がほとんどか)。

不気味だったのがジェスル先生の幽霊の写し方です。池から群生している葦の上にボーっと佇んでいるんですが、もちろん足場はないだろうし、なんかドス黒いし、恨みがましい視線を感じるしで「ほら、あそこに何かいる!えっ、見えないの?そんなわけないわ!見てっ!」と子供たちの頭がもげそうになるくらい揺さぶるデボラ・カーに同調してしまいました。「妖精たちの森」のジェスル先生を演じたステファニー・ビーチャムは美人でちょっとエロくてシズル感が溢れる感じだったんですが、この映画のジェスル先生は遠目からの印象でも痩せぎすの恐ろしい女です。そんな先生が下男クイントに調教され恋の奴隷(奥村チヨ)となっていった・・・と考えるとまたグっとくるものがありますね。そこにはちょっと週刊新潮の「黒い報告書」的なロマンがあるわけです。

子役たちの演技も素晴らしかったですね。町山智宏さんの解説Podcastによると、お兄ちゃんのマイルズも妹のフローラもホラー映画界で有名な子役だった人だそうです。脚本もトルーマン・カポーティーとか、他にも英米文学のすごい人が関わっているとのこと。三十路の独身女家庭教師(未婚の女性なので時代的に男性経験なし)と10歳くらいの男の子の関係がキーになっているんですが、鈍 い私は「あれ~、ちょっとショタコン気味なのかな~」と思ったくらいでしたね。さすがに男の子が先生の唇にキスしたのは「えっ」と思ったけど、私にはそこまでブチューって感じには見えませんでした。しかし現在だとこういう描写は本当に厳しそうですね。

ラストで男の子は死んじゃうんだけど、それは唐突でなんか「えーっ」て感じ。町山さん解説にあった、家庭教師がクイントの首を締めるだか階段から突き落として殺すと、実はそれはクイントではなく男の子だった・・・という絶望的なラストの方が出来が良い様な気がしてしまいました。しかし英国のゴシックホラーってのは本当に大きなお屋敷ありきの話ですね。広い広いお屋敷、天蓋付きのベッド、燭台を持ってネグリジェで夜の廊下を彷徨うヒロイン・・・。「クリムゾン・ピーク 」も少し本作に影響されていたのかな?



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