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『イヴ・サンローラン』買えないけど、観ることは出来る

        

イヴ・サンローラン [ ピエール・ニネ ]

イヴ・サンローラン [ ピエール・ニネ ]
価格:4,568円(税込、送料込)



2008年に亡くなった世界的デザイナー イヴ・サン=ローランの伝記映画で、プラハで開催されていた国際映画祭で公開されていた一本です。サンローラン映画はこれを含めて三本もあるんですね。二本目は同じくサンローランの伝記映画でギャスパー・ウリエル主演(2014年3月現在未公開)。三本目はドキュメンタリー「イヴ・サン=ローラン」で、このドキュメンタリーは日本でも公開されるようです。

私は勘違いしていて、本作の主演がギャスパー君だと思っていたのです。だからビジュアルを見たときに「うわー・・・本当にサンローランになり切ってる・・・」と本当にビックリしてしまいました。あの高い鼻もメイクだと思っていたので、劇中でキスをするシーンとかプールに飛び込んだりするシーンは「鼻もげないのかな・・・」と心配し ていましたが、この映画に主演しているのはギャスパー君ではなくピエール・ニネイさんというコメディー・フランセーズ(フランスの国立劇団)の俳優さんでした。完全に私の勘違いです。

しかし・・・このピエール・ニネイさんが本当にサンローラン瓜二つ!!!よくこれだけ似ている人を見つけてこられたなあ・・・と感心します。しかも顔が瓜二つな上に繊細な演技がお上手!コメディー・フランセーズは恋に狂った女(アデルの恋の物語)を演じさせたら世界一のイザベル・アジャーニも所属していたらしいです。なるほどフランス中の才能が集まっている凄い劇団のようです。

サンローランの恋人兼ビジネスパートナーだったピエール・ベルジェ役には同じくコメディー・フランセーズのギョーム・ガリエンヌ。エキセントリックで繊細なアーティストをしっかりと支える安定感がある演技でした。この二人は長年恋人関係にあったのですが、ベルジェさんはメゾンのマヌカンで同じく長年の友人であるヴィクトワール(シャルロット・ル・ボン)と浮気をしたりしていたのでバイセクシャルだったようです。

監督は俳優出身のジャリル・レスペールさんという方で、この映画を制作するにあたって実際のピエール・ベルジェに会いに行き、協力を取り付けたそうです。劇中で使われている衣装は実際のサンローランのアーカイブなのだそう。この感想を書くときに色々調べていてこんな記事を発見しました→「イブ・サン=ローラン伝記映画2本が同時進行 関係者を巻き込んだバトルが勃発」。なるほど私がこの二本を取り違えてしまったのも納得です が、ギャスパー君の方もとても楽しみです。

そもそも伝記映画って、やはり難しいと思うんですよ。偉人の人生やキャリアを二時間かそこらで描けるわけがないのですから・・・。シャネルの伝記映画もオドレイ・トトゥ主演とシャーリー・マクレーン主演の二本観ましたが、どちらもファッション的には見所があったのかもしれないけど「う~ん、で、結局シャネルという女性はどういう人だったの?」というのが描き切れていなかったように思えたものです。

しかしシャネルの伝記映画と比べると、この映画はずっと良く出来ていたように思います。まず画面が本当に綺麗。どのシーンを取ってみても華麗で静謐なヨーロッパ映画!という感じで素敵なんですよね~。アトリエやショーのシーンで見るお洋服も目を楽しませてくれるんですが、イヴが仕事をしている部屋や自社ビル(?)の屋上やモロッコの別荘なんかの美術がさり気なく上質な感じがして、いいんですよねえ・・・。

イヴは最初クリスチャン・ディオールで働いていましたが、なんと21歳の若さででディオールから後継者として指名されます。若過ぎると世間から言われたもののディオールの引き継ぎは大成功。しかしメンタルヘルスやドラッグの問題を抱えてしまい一時期は落ち込みます。その後、ディオールのデザイナー職を解雇されますが、ベルジェと協力して自身の名を冠したブランドを立ち上げるのでした。

60年代には映画「昼顔」で衣装を担当していますが、映画界やドヌーヴとの交流に関しては残念ながら触れられていませんでした(まあこの辺りはドキュメンタリー映画を観た方が良いでしょう)。70年代にはサファリ・ルックやタキシード・ルックを発表。有名なモンドリアンの抽象画をモチーフにしたワンピースをデザインするシーンもありました。

その間に、パートナーのベルジェとの関係も山あり谷あり。結局、プライベートでは別れてしまう二人ですが、最後まで友人としてビジネスパートナーとして交流を続けたということが描かれていました。主演二人の演技は素晴らしかったですね。繊細でエキセントリックな天才デザイナー、イヴと彼をひたすら支える包容力のあるベルジェ。セーヌ河畔でラブラブのときもあれば、ハッテン場(ここもセーヌ河畔だったな)で猥褻行為をしてパクられたイブを迎えに行ったりもするんですよ。山あり谷あり、芸術家と付き合うって大変。忍耐力と包容力がいるのだなあと思います。

仏語の聞き取りが出来なくて残念だったのですが、この映画の中に日本人ディスらしき場面が出てきます。YSLブランドを大きくする為にも世界で売って行かなきゃいかん、ということで営業を頑張るベルジェ。ルックを日本人商社マンとおぼしきオジさま方に披露するシーンが出て来るんですね。長年モデルをしていたヴィクトワールはそれが面白くない様です。彼女は日本人商社マンに何か皮肉めいたことを言うのですが、それのセリフが全然理解出来なかった~。

怒りながらアトリエに戻ったヴィクトワールは「なにさ、あんな中国人相手に商売するなんてYSLも落ちたもんだわ!」みたいなことを 怒鳴り散らすのですが、「あの人たち日本人だよ」とベルジェが言うのでした。なんですかねえ・・・やっぱり東洋人には売りたくないんでしょうか。でも商社マンのオジさま方はメガネに出っ歯などの国辱的カリカチュアライズされた方々ではなくて、普通にダンディーな感じの方だったので、そこは安心しました。

映画は1977年のショーの成功を見せた後、イヴの死を控えめに描写して終わります。77年の春夏はアジアと中近東が混ざった様なエキゾチックなコレクションで、モデルも浅黒い肌の人が多かったです。私はこういう異国情緒なテイスト好きですが、70年代だけにちょっとゴッテリした感じの盛った服でした。この度アーカイブを見てみましたが、サファリだったりタキシードだったりモンドリアンだったりエキゾチックだったり、色々なテイストがあるメゾンだったんだなあという感じですね。どれも適度にフェミニン。でもどこかキリっとして媚びがない感じが女優カトリーヌ・ドヌーヴのイメージとも重なりますよ。

現在、ファッションとレザーグッズはイヴ・サン=ローランではなくサンローラン パリとなり、ロゴもシンプルなものに変わっていますね。最近のヒットバッグはダッフルという超シンプルなボストン風のバッグらしいですが、こういうのが1つあると色々便利そうです。もちろんサンローランは買えないので、ザラで似た様なのを探してみたいと思います。

余談:YSLと言えば、私が子供だった頃にライセンス商品がたくさん出回っていました。ハンカチだったりタオルだったり傘だったりペンだったり・・・。実家からもらったYSLのタオル(お中元で頂いたものをずっと使わずに取っておいたらしい)、なぜか夫がプラハに持って来ていて、ジムに行くときに使っています。水をよく吸うので良いのだとか。やっぱり日本のタオルはハイクオリティーですね。

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『300 〈スリーハンドレッド〉 ~帝国の進撃~』エヴァ・グリーンは功労者

        



夫のリクエストで鑑賞。「300」という古代ギリシャをモチーフにした映画がある・・・ということは知っていて「マッチョがお好きなら是非!」とブログを読んだ方から勧められていたのですが、まだ観ていませんでした。「300」には今個人的に一番好きな俳優ファスベンさんも出ているので、いずれかのタイミングで観るつもりではいるんですが・・・もう少しお待ち下さい。

1作目も観ていないのに、いきなり2作目か・・・と思い渋々付き合って鑑賞してみたのですが、このパターンだと「いや〜、バカにしていたけど意外と面白かった!」という着地になることが多いんですよ。「エクスペンダブルズ2」だったり「ラストスタンド」だったり・・・。でも今回の映画は・・・ハッキリ言って近年稀に見るクソ映画でしたね。




※ネタバレします。




舞台は古代ギリシャ。なんかギリシャ軍とペルシア軍(?)が海上で覇権を争っているようなんです(開始して5分くらい経ってから着席)。ギリシャ軍のメンズはみんな筋肉モリッモリで均整が取れたバディーのイケメンマッチョ揃い。上半身裸がデフォルトで、下も短いショーツ的なものを履いています。ウホッ、いい男!がイパーイですよ。ひとりだけ鋭角に切り込んだハイレグみたいなものを履いている人もいて、マッチョでしかもハイレグ・・・どんだけサービス精神旺盛なんだ!と驚きました。

しかしギリシャ側に知ってる俳優が一人もいねえ・・・!主役のテミストクレス(サリバン・ステイプルトン)は、落ち着いた感じのイケメンですが・・・頭がちょっと寂しくなりかけ。彼のお友達のアイスキュロス(ハンス・マシソン)はガエル・ガルシア・ベルナルに似ています。ギリシャ軍の俳優がみなアングロサクソン系や北欧系っぽい人ばかりだったので、な〜んか違和感が。ギリシャ人ってもっと濃い~ですよね。まあハリウッド映画なので仕方ないか。

対するペルシア軍は甘系イケメンマッチョのロドリゴ・サントロが王様です。この彼が父王をテミストクレスに討たれて復讐を誓った後、残酷な王に生まれ変わるのです。なんか黄金の温泉みたいなのに浸かった後、スキンヘッドに全身ピアスで腰ミノという格好でザッバーッ!と泉から出て来るのですが、ここは笑ってしまいました・・・。股間もモッコリしていて気になって仕方がありません。ロドリゴたんは頑張っていたけど、完全に出落ちな感じでした・・・。しかも派手に登場した割には出番が少ないし、エヴァ・グリーンに完全に食われていました。

ペルシア軍の女将軍、アルテミシアがエヴァ・グリーンですよ。彼女はこの映画の中で本当に頑張っていました。彼女の存在なしにこの映画は成り立っていないのでは・・・。クソ映画なことに代わりはないけれども、彼女が脱いでるお陰で意義のあるクソ映画に仕上がってるので、真の功労者ですね。アルテミシアは幼い頃ギリシャ軍に家族を殺されて、自らも慰み者にされた過去を持つ女。行き倒れになっていたところをペルシアの軍人に拾われ殺人兵器として訓練され、復讐の鬼となった百戦錬磨の女戦士です。あれ〜?この設定、どこかで見た様な・・・。ファスベンさんがギリシア軍人役をしていた「センチュリオン」では似た様な役をオルガ・キュリレンコが演じていましたな。エヴァ・グリーン、私は結構好きな女優さんです。顔はファムファタールな魔性系。目力が凄いです。しかしエヴァ・グリーンはシャーロット・ランプリング様に少し似ていませんかね・・・どちらも英仏の映画で活躍しているし、なんだかダブってしまいます。

えーと、エヴァ・グリーンの功績を讃える前にザックリと映画のあらすじでも書いてみましょうか・・・。古代の戦争の話なので、とにかく殺し合いのシーンばっかりなんですよ。殺して、殺して、殺して、殺しまくる!敵を剣でスパーッと切ったりするシーンでカメラの角度が水平から真上に切り替わりスローモーションになって、ミュートになり赤黒い血(ドロっとした感じのテクスチャー)がゆっくりと散る・・・で、スローモーション&ミュートが終わってまた戦闘→スローモーション&ミュートで血がでる、の繰り返しなんですね。映像は頑張ってる感じがするんですが、ひたすらその繰り返しなのでもう刺激を全然感じなくなって来るのがちょっと・・・といったところ。子供には見せられません(おそらくR-15+でしょう)。

繰り返される戦争シーンばかりでだんだん飽きて来るところに、この映画の白眉シーンがあるわけです。ペルシア軍の将軍エヴァ・グリーンが、ギリシア軍の将軍テミストクレスに「ちょっと休戦して、私の船の中で今後のお話でもしませんか?」と使者を送るのです。「そんな手に乗るか!」「無事で帰れる保証なんかないじゃないか!」とギリシア側は言うのですが、テミストクレスは何故か「行きます」と言って敵側の船に乗ってしまうんですよ。

船上では、いつもの鎧姿ではなく胸元パカー、スリットがザックリ入ったエロいドレス姿のエヴァ・グリーンが待っているのです。彼女はテミストクレスにペルシア側に寝返らないかとエロく誘うのでした。真面目そうなテミストクレス、寝返らないでしょう?と思ったら、身体は反応(おそらく画面に映らない箇所では、エヴァ・グリーンの手による別のアクテビティーが行われていたと推測)。ファッ◯シーンに突入するわけですが、ここはエロかったですね〜。なんでしょう、敵と味方、生と死が背中合わせのセックスってなんかゾクゾクしてしまいます!しかし、結局テミストクレスは敵側に寝返らずに交渉は決裂してしまうのでした。

エヴァ・グリーンは出世作の「ドリーマーズ」でもガンガン脱いでいましたが、細面な顔とは裏腹に巨乳なんですよ。出し惜しみしない潔さがいいです。ギリシャ軍が待つ岸辺に戻ったテミストクレス。仲間達が「で、どうだったの・・・?」と心配顔で待っています。しかし特にたいした収穫も披露出来ずに終わったのでした。ここがアッサリしすぎていて、大変にもったいない。いまや大きな市場となった腐女子層を萌えさせる余地がたくさんあるのに・・・。様子のおかしいテミストクレスを見て、友人のアイスキュロスが何かを察してヤキモチを焼くとかさせればいいのに〜。

ホモセクシャルとギリシャという繋がりで思い出しましたが、前の学校でイギリスとギリシャのハーフのメンズがいたんですよ。彼の振る舞いがゲイっぽかったで、他のクラスメート(フランス人)に「彼ゲイだよね」と何気なく言ったところ「ギリシャ人だからって、ゲイってのはステレオタイプすぎ!」と笑われてしまいました。私は彼がギリシャ人だからということではなく振る舞いやリアクションを見て思ったのですが、逆にヨーロッパではギリシャに男色家が多いというイメージがあるのだなあ・・・と思った次第です。

しかしこの映画にはゲイ要素はまったくないので、そこらへんをもう少しイマジネーションが広がるように作れば受けたんじゃないかなと思いました。この後ペルシャ軍に押されて数が半分くらいに減っちゃうギリシャ軍ですけど、なんとか頑張って挽回して映画は終わります。終わり方がブツ切りな感じで「え、ここで終わり?!」と少しビックリしてしまいました。続編があるのかなあ。まあ恐らく観ないとは思いますが・・・。でもファスベンさんが出ている一作目は観ます、必ず!(笑)

『ダラス・バイヤーズクラブ』マコはやっぱり出来る子だった

        



映画評論家、町山さんの「たまむすび」ポッドキャストでこの映画のことを知り、チェックするつもりでいました。観たのはオスカー発表前ですが「ああ、マコ受賞するな」と思いましたよ・・・(既に発表後なので、後だしジャンケンになってしまうことをお許し下さい)。演技はもちろんのこと、極限まで痩せた役作りが近年稀に見る仕上がりになっていて他を圧倒する出来だったと思います。

実はマコの近年のキャリアについては私も危惧していたのです。「評決のとき」で彼を初めて見たのですが「すごい演技派だなあ・・・」と思ったのを覚えています。最終弁論のときの演技は本当に素晴らしかった。イケメンだし演技力あるしで、これからどんどん活躍するんだろうな・・・と思っていたんですが。90年代後半~00年代にかけては本当に コレ!といったヒット作にも恵まれず、BSOL映画のハンサムな相手役ばかりやっていました。古いブログ記事で恐縮ですが「10 日間で男を上手にフル方法」、「恋するレシピ ~理想のオトコの作り方~」、「フールズ・ゴールド/カリブ海に沈んだ恋の宝石」等、毒にも薬にもならないクッダラナイ映画にばかり出ていました。

その間に全米(いや全世界だったか)セクシエストマンのタイトルを獲得したりして、女子人気が爆発したりしていたようですが「ああ、本当はちゃんと演技も出来る子なのに・・・」とモヤモヤしていた映画ファンの方もきっと多かったことでしょう。その後「リンカーン弁護士」で少し再浮上し、「マジック・マイク」でセルフパロディー的なキャラクターを好演して「マコノヒー、いいじゃん!」みたいな空気になったようですね(「ペーパーボーイ」と「MUD」もそのうちチェックしたいと思います)。そしてここに来ての主演男優賞受賞ということで、本当によかったです。

よく「オスカーは痩せたり太ったり、ゲイだったレズビアンだったり、ハンディキャップのある役だったりすると受賞しやすい」と言われています。確かにその傾向はあるでしょう。ここで矮小ながらも自身の経験から言えることを少し書かせて頂くと・・・私も中高と演劇部に入っていた者として感じるのですが、役のキャラクターが強烈なほど役作りはしやすいと思います。逆に本来の素に近い日常的で地味な役ほどその人の地が出てしいがちなので、意外と役作りは難しかったりします。演劇コンクールなどで注目される子は、やはり不幸やピンチに見舞われたりする難役を演じた子。その影で「やっぱり目立つ役は得だよなあ・・・」と思ったりしていましたが、学生の演劇祭でもハリウッドでも同じことを考えている人はいると思います。

しかしハリウッドではリアルに体型を変えたり、髪を抜いたり顔をブサイクにしたりして肉体自身を変化させていますからね。そのアプローチも演技の重要なプロセスなのですから、これは受賞するに価することだと思います。美人女優シャーリーズ・セロンは「モンスター」でブヨブヨのオバハンになり、イケメン俳優のマコはガリガリに痩せた末期のHIV患者になり。「めぐりあう時間たち」の付け鼻で受賞したニコール・キッドマンは、鼻を付けただけだったので少しばかりお手軽感が漂ってしまいますが(笑)。

ということで、映画の感想ですが・・・普通にいいです!やはり実話なだけにガッチリとした感触があるドッシリとした映画ですよ。舞台は80年代のテキサス。荒くれ者のカウボーイ兼労働者の、ロン(マシュー・マコノヒー)はロデオと女遊びに明け暮れていましたが、ある日HIVに感染しており余命約一ヶ月だと知ります。当時、HIVは同性愛者だけがかかると思われていた病気だったで、プロテクションするという意識はほとんどなかったのでしょう。

しかしロンは「俺がエイズだと?ざけんな!」とばかりに病院を飛び出すのでした。そういえば、この映画もかなり英語が難しいんですよね・・・。ロンやカウボーイたちが話しているのはテキサスなまりだそうで・・・。アメリカ人でもよくわからなかったりするそうです。しかしながら、私はなんとな〜く理解出来ます。これは英語が理解出来るという意味ではなく、バイブスで!犬のように空気を読んで「ああ今こんな感じなんだな〜」と理解するのですよ。バイブスから読み取れることも意外と沢山あるので、大事です、バイブス!

ロンは図書館でお勉強してHIV疾患の知識を付けることに。「不特定多数の性行為で感染する」という一文を見つけて「ファック!!!」となるわけですよ。知識がないって恐ろしいことです。逆に知識を付ければ予防出来る可能性がある病気なわけで、普段から見聞を広げておくに越したことはありません。

たくましくも自力でなんとかしようと立ち上がるロン。女医さんのイヴ先生(ジェニファー・ガーナー)は「無茶なことしないで~」と心配そうです。この映画の主要キャストはマコと女医さんと、オカマのレイヨンちゃん(ジャレッド・レト)なんですが、マコとジャレッドはノミネート&受賞したものの、ジェニファー・ガーナーだけ綺麗に置き去りにされてしまった感じでちょっと可哀相っちゃ可哀相です。まあ男優二人は本当に頑張っていたので当然っちゃ当然なのですが。

当時アメリカで認可されていたお薬を飲むことにしたロン。このお薬は命を伸ばす効果があるとされていたのですが、体調が悪くなりまた病院に運ばれてしまいます。そこで同じくHIVキャリアで薬中のオカマのレイヨンちゃんと知り合います。ご存知ジャレッド・レトが扮しているのですが、すごく妖艶なオカマちゃんなんですよね。彼女が付けてるマニキュアの色も可愛いし、頭に巻いたビンテージぽいスカーフも素敵。本物の女であるジェニファー・ガーナーよりもずっと色っぽくてセクシーです。日本でリメイクされるならミッツ・マングローブに演じて欲しいですね。

その後も体調が回復しないロンは自らメキシコの野戦病院のような医療施設に行き、アメリカの医師免許を剥奪されたお医者さん(グリフィン・ダン)から無許可の薬を処方してもらうのでした。このお薬はアメリカで認可されていませんが、服用するとロンの体調はみるみる良くなりました。「これ・・・アメリカで売れんじゃね?」とビジネスチャンスに気が付いたロンなのでした。

大量に薬を買い付け、牧師に変装して国境を抜けるロン。結局税関でバレてしまいますが、自分で個人的に服用するだけだからということで、なんとか抜けることが出来ました(でも結局、商売にするんですが)。でもHIVキャリアの顧客(同性愛者多し)にどうやってリーチするのか?そこでロンは顔の広いレイヨンちゃんに頼んで、薬をさばいてもらうことに。最初は「カマ野郎!」みたいな態度だったロンですが、次第にレイヨンちゃんと友情を育んで行きます。レイヨンちゃんが「あたしにまかせて頂戴」と自信たっぷりに言うシーンで着ていたワンピースとコートが可愛かったです。

二人は事務所を借りて「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立。薬を直接販売するのではなく、会員権を買ってもらって薬を分配するというビジネスモデルです。法律の抜け穴をうまく使っていますね。私が個人的に一番好きなシーンは、スーパーマーケットの場面です。ロンとレイヨンちゃんが買物しているときに、ロンの昔の仲間(典型的なマッチョ主義のカウボーイ)とたまたま出会うんですが、彼が紹介されたレイヨンちゃんと握手したがらないんですよ。「こんなカマ野郎と接触したくねえよ」という態度の彼をロンが「お前ざけんな!」とボコボコにするシーンがいいんですよね~。「え、あらあら、ちょっとそこまでやらなくても~」みたいなテンションだけど嬉しそうなレイヨンちゃん。思わずほのぼのする素敵なシーンでした。

一方イヴ先生は認可されているお薬の有害性に気が付き、医学会でなんとか声をあげようとしますが、なかなか上手く行きません。彼女がダラス・バイヤーズクラブのことを知った時「こんなこと勝手にしてダメじゃないの!」と怒ったりするのですが、次第に新しいお薬の有用性に気が付き彼らをサポートするようになります。クラブの事務所が、場末のモーテルの一室みたいなところなんだけど手作り感溢れる感じでまた泣かせるんですよ。無認可だけど、人の命を助けているお薬であるということは事実。一体、国の認可って何なんだろう・・・とやるせない気分にさせられます。

イヴ先生の上司みたいなお医者さんにバイヤーズクラブのことがバレて、彼が警察にチクりクラブが存続の危機に。無認可のお薬の服用自体に違法性はなかったものの、お上が法律を変えたせいで新しいお薬が違法とされてしまいました・・・。そのせいでクラブの資金繰りもうまくいかなくなってしまい、運営も行き詰まってしまいます。そこでレイヨンちゃんは絶縁していたお金持ちのお父さんにお願いして、資金を集めることに。そのお陰でロンは世界中からお薬を買い付けることが出来るようになるのでした。

世界中を飛び回るロン。なんと東京にもやってきました。渋谷の交差点前が映ったりしていましたが、このショットは最近ぽかったので、ちょっと現代すぎましたね。まあ制約上、仕方がないのかな。あと日本人のお医者さんの日本語がちょっと不自然だったので、東洋系アメリカ人の役者さんなのかなと思いました。でもまあ日本人医師が協力的に描かれていたので良し。

ロンがアメリカに帰って来たら、レイヨンちゃんは既に亡くなっていました。イヴ先生は医学会の方針に疑問を持ち、病院を辞めてしまいます。ロンとイヴ先生の間に絆が生まれ、彼らは新薬摂取のために訴訟を起こすことに。その後、ラストの字幕で新薬摂取が合法として認められたこと、ロンが1992年に亡くなったことが提示されて終わります。余命一ヶ月と宣告されたのが1985だったので、薬のお陰で7年も命をつなぐことが出来たということですよ。しかし・・・何故にアメリカはそこまで新薬を頑に拒否していたのか?映画の中で触れられていたのかもしれませんが、私には何が何やらサッパリでした。そこらへんもあまり頭の良くない観客向けに描かれていると、より良かったのかもしれません。

さてその後のマコですが、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で短いながらも強烈な印象を残しました。しかしまだまだ全盛期のセクシィーバディーには戻り切れていないんですよね。ニュースで読みましたが、この減量で相当健康にも負担があったようで奥さんも心配しているんだそうです。身体を大事にしてまた新たな魅力を振りまいて欲しいものです。BSOL映画はもう出なくてもいいから!

Karine Sultanのピアスが気に入ってしまった件について

Karine Sultan

金属を打ちつけた質感も味わいがあるKarineのピアス。


久々にお買い物ネタです。最近は少し存在感のあるピアスがマイブーム。普段着やシンプルな服に存在感のあるアクセを合わせると、途端にお出かけっぽくなるから重宝しています。

なかでも気に入っているのが、Karine Sultan(カリーヌ・スルタン)というブランドのピアス。例のごとく楽天のジューシーロックさんで見つけたのですが、洗練された民族っぽさがツボでした。フランス人のジュエリーデザイナー、カリーヌさんがアメリカで展開しているブランドでハリウッドセレブの愛用者も多いのだとか。なるほどフレンチなモードっぽさとアメリカンなカジュアルさが絶妙な感じです。ニッケルフリーで大きなゴールドコーティングのパーツを使っているのに、お値段がお財布に優しいのも魅力です。

前はバイボーみたいな繊細な作りのピアスが好きでしたが、どうやら私は夫に「ハワイ人みたい」と言われるどちらかと言うとプリミティブな風貌をしているので、こういうちょっとゴツめのアクセサリーの方がしっくりくるようです。5メートル先からも付けてるのがわかるような大きめのピアスでないと、なんだか最近は落ち着きません。

小さなパーツを繋げたストレートなピアスは某資格試験合格のときの自分へのご褒美に、オーバルのパーツを繋げたピアスはチェコ語の試験をパスしたときの自分へのご褒美として買いました。オーバルのピアスは「007 スカイフォール」のボンドガール、ベレニス・マーロウが日本プレミアのときに着用していたんだそうです。ボンドガール、意外と安いアクセサリーをつけるのね・・・(まあ可愛いのですが)。セレブってみんなショパールとかブシュロンとかを付けているのかと思いました。

次のテストのご褒美にもまたカリーヌのピアスを買いたいと思っているのですが、ジューシーロックではあまり取り扱いの幅がないのが少し残念です。もっと色々な種類を仕入れて欲しいなあ〜。カリーヌさんの公式サイトでも通販出来る様です。

youtubeで見つけた、カリーヌさんのビデオ。




『自転車泥棒』自転車を盗む時は密集している中から

         



久々に友人Iから譲り受けたDVDを鑑賞。他にもX-MENシリーズの旧作DVDなんかもタップリもらったのですが、新作公開(ファスベンさんも出演)の前に観ておかないと・・・本当に大忙しです!

ハリウッド映画ばかり観ていると、たまにこういうヨーロッパの名作も観たくなるもんです。邦画やアジア映画も、観たいんですが中欧だとなかなか機会がありません。国際映画祭なんかではたまにかかりますが、チェコ語字幕だと全て理解出来ないので「だったら帰省のときにチェックしたほうがいいな・・・」となるわけです。

この映画の存在はかなり前から知っていたんですよ。確か大昔に雑誌クレアの映画特集で竹中直人さんと室井滋さんの映画対談があって、その中で竹中さんの泣ける映画として紹介されていたんですね。監督ヴィットリオ・ デ・シーカの名前も聞いたことがあったんですが、この監督で一番有名なのがおそらく「ひまわり」でしょう。マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンの悲恋ですよ。「シェルブールの雨傘」がフランス版、戦争に引き裂かれた二人の残酷物語だとすれば「ひまわり」はそのイタリア版ですね。18歳くらいの頃に観ておいおい泣きしました。テーマ曲だけでググ・・・っとこみ上げて来るものがあります。

音楽は映画音楽の巨匠、ヘンリー・マンシーニ。



そのデ・シーカ監督の初期の作品が「自転車泥棒」なんだそうですよ。戦後のイタリアの小さな街で生きる貧乏な家族のお話です。戦後すぐの田舎町に住む庶民は、もうみんな貧乏でまともな仕事もなくその日暮らしという感じですね。でもイタリアだから、まだ悲壮感がそこまでない気がします。やっぱり暗くて寒い期間が長い中欧よりも、海があって風光明媚な南欧がいいなあ。



※ネタバレします。



主人公のアントニオ(ランベルト・マジョラーニ)は妻と小さな息子のブルーノ、生まれたばかりの赤ん坊を養わなくてはいけないお父さんなんですが、失業中。ハロワ的なところで仕事を斡旋されますが、それがポスター貼りの仕事で自転車が必須なんですね。自転車は質に入れてしまったので手元にないんですが、どうしても仕事が欲しかったアントニオは「期日までになんとかします」と言って職を得るのでした。帰宅したアントニオは嫁と相談して、シーツ(嫁入り道具だったらしい)を質に入れてそのお金で自転車を取り戻します。

その商売道具の自転車が仕事中に盗まれてしまい、息子のブルーノと一緒に方々を探しまわる切ない1日が描かれているんですよ。アントニオが自転車を質屋から取り戻した帰りに、嫁と一緒に怪しげな占いババアが住むアパートに寄るんですが、そこで彼は無防備にも自転車をアパートの入口に立てかけたまま上階へ上がるんですよ。「あ~!鍵、鍵かけな~!」ってなるんですが、ここでは盗まれないんですね。

映画のポスター貼りの仕事を始めたばかりのときにやられるんです。壁に立てかけておいた自転車を若者がサッと盗んで行きます。懸命に泥棒を追いかけるんですが巻かれてしまい、どうしよう・・・と落胆するアントニオ。警察に行ってもまともに取り合ってくれません。次の日が休日だったので息子のブルーノと一緒に市場を回ったりして懸命に自転車を探します。

似ている自転車を見つけたものの、ただ似ているだけだったり。自転車泥棒と思われる男と話していたジジイを見つけたものの「知らない」と言われたり(嘘をついていたのか本当に知らないのかは不明)。自転車泥棒と思われる若い男を見つけたと思っても、地元の人や家族から「この子はそんなことしない!言いがかりはよせ!」とディスられたり・・・。心身ともにクタクタになってしまうんです。

そういえば私も昔、自転車泥棒にあったことがあります。大学生になったばかりの頃、電車通学をするようになって自宅から駅まで歩いていたのですが、歩くのが面倒になって自転車で駅まで行こうと思いついたのです。駅前に駐輪して(もちろん鍵とチェーンをかけた)、学校から戻って来たら自転車が煙のように消えていました。相当ボロかったし警察にも届けなかったんですが、盗まれたのはやっぱりショックでしたね。それ以来自転車とは縁遠くなってしまいました。夫が日本に住んでいた頃、友達の自転車を借りて乗っていたらお巡りさんに職質されたことが何度かあったそうです。渋谷の交差点前で使い込んだ自転車に乗っている外国人、やっぱりちょっと怪しいのでしょうか(笑)。

自転車は見つからないし、昼時になってお腹は空くしで「もうなんか食べちゃおう!」という流れになるんですね。そこでお財布の中身をチェックするお父ちゃん・・・。これもなんか切ない!!!レストランに入り、モッツァレラチーズとハムみたいな簡単な料理をオーダーするんですよ。息子のブルーノはチーズを食べながら近くのテーブルを見るんですが、そこでは裕福そうな家族がランチ中。もちろん食べているのはチーズなどではなくちゃんとしたメインディッシュなんですね。自分と同じ年頃の男の子が澄ました顔してステーキを食べているんですが、その子供の顔の憎たらしさがすごいです。子供なのに「フン、貧乏人が!」という冷たい冷たい目線・・・。これは脇の子役グッジョブでした。

しかし本当に自転車が見つからない。お父さんのアントニオもイライラしてきているので、理不尽に子供にあたったりするんですよ。こういうのを見ていると、自身が親から理不尽に怒られた子供時代のエピソードを思い出したりするわけです。レストランにいたお金持ちの子役も良かったけど、ブルーノくん役の子(今生きてたら70歳くらいか)も素晴らしいんですね。キャストは皆さん素人の方なんだそうですよ。

自転車は見つからないし、犯人だと思われる男とその近所の人たちからはヤジられるし、もう踏んだり蹴ったりです。その日はスタジアムでサッカーの試合が行われており、スタジアムの前には自転車がたくさん駐輪されていました。まさか・・・まさか!そう、お父さん自身が自転車泥棒になってしまうという悲しい展開です。善良な一市民が、犯罪の被害者となったことで自身も罪を犯してしまう。コレは悲しいです、本当に。自転車をじっと見つめるお父さん。ふと視線をはずすと民家の壁に立てかけられた一台の自転車もあります。

家族を食べさせる為には仕事が必要、仕事には自転車が必要、でも泥棒は・・・と少しの間、逡巡しますが背に腹は代えられずやってしまうわけです。息子には「ちょっと向こうで待っていなさい」と言って・・・。しかし、お父っつあんはスタジアム前に停められた大量の自転車ではなく、民家の近くにソロで停められた自転車の方にロックオン。いやいや、そっちじゃない!いっぱいある中から盗らないと!捕まったときに「あ〜ごめんごめん、いっぱいあるし似てたから自分のかと思った(ペロッ)」って出来るじゃないか!と思ってしまうわけです。しかし、ここまで彼の悪知恵が及ばなかったのが善人たる所以なのでしょうか。

ソロの自転車にロックオン、その自転車の方へ走って行き、乗って逃げるお父さん。すると今まで誰もいなかった界隈から「泥棒だー!」という声とともに数人の男たちが出て来てお父さんを追いかけてきました。ええー!今まで人っこひとりいなかったのに!そしてお父さんが自転車を盗まれた時は、周りの人ほとんど誰も助けてくれなかったのに!何この展開、ひどい!と彼の不運を嘆くわけです。

お父さんは捕まってしまい「警察行くかオラ?」という展開になりますが、息子のブルーノくんが泣きながら「お父さ~ん!」と来たおかげで「こんな小さな息子がいるんだから、盗みなんてするんじゃねえぞ」と無罪放免に。盗みは失敗するし、幼い息子には親として人として見られたくないシーンを見られてしまうしで、もう最悪なんですよ。それでも息子はうなだれる父の手をしっかりと握り、彼らはトボトボと歩き出すのでした・・・。

これがネオレアリズモの名作です。ハア~、切ない。ハア~、辛い。最後は胸をえぐる様なエンディングでした。 しかしどうしてこう主人公は不運なのでしょうか。まあ、お父さんの自転車泥棒が成功してたら「自転車泥棒」の映画自体が成立してませんが・・・。しかしこれはイタリアの話なので、悲しい話だけれどもどこか他人事として見ていられるんですよ。DVDジャケットのイタリア語もお洒落な感じさえするし(私達が横文字を見るとコジャレタ印象を受けるのは、これはもう擦り込みなのでしょうがないですね)。しかし、もし日本の話だったら?これが邦画だったら?もっと当事者意識を持てたと思うので、きっともっと落ち込んだことでしょう。

そう考えるとやっぱり邦画が観たいなあ~。帰省時に見る邦画リストを溜めているんですが、オススメがありましたら是非教えて下さい。「冷たい熱帯魚」みたいな実録犯罪モチーフとか「ふがいない僕は空を見た」みたいな現代社会の息苦しさを描いた映画が好きで、そのような作品が観たいと思っています。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ドンマイ、プリオ!

        

ウルフ・オブ・ウォールストリート

ウルフ・オブ・ウォールストリート
価格:1,000円(税込、送料別)


いや~、テンションが高い映画でした。♪ハ~イテンション、ハイテンション♪(出典:「冷たい熱帯魚」の村田byでんでん)この映画を週末観たのなら、月曜日からのお仕事もテンションマックスで頑張れそう!イケイケドンドン、売れ売れドンドン!お客様と電話で話すときに思わず身振り手振りがアメリカ~ンなオーバーアクションになってしまいそうです。

同行した夫が「ディカプリオは、前にもこんな役やってなかったっけ?」と言ってましたけど前は「華麗なるギャツビー」ですね。プリオは貧乏から超スーパー大富豪へと成り上がる役がとてもよく似合います。ところで、これを書いているのは既にオスカーの発表が終わった後。周知の通り残念ながらプリオさんは今回も受賞ならずでした。

確かに「ダラス・バイヤーズクラブ」(感想後日アップ予定)のマコと比べてしまうとね・・・。主演男優の演技どうこうと言うよりも、そもそも主人公ジョーダンのキャラクターに厚みが全然ないんですよ。コメディー色が強い映画だし、イケイケドンドンな感じだしで、演技がどうしても一本調子になりがち。なので「ああ、プリオ今回も頑張ってる・・・。頑張ってるけど、受賞はないだろうな~」と思っていました。

でも別にこれで受賞しなかったからといって、プリオさんのキャリアがマイナスになることもないと思うんですよ。だって彼は90年代から4回もノミネートされているんですよ。それに超絶な演技派だってことは世界中の映画ファンが長年知っていることなんですから。この先、年取ってからもますます演技に磨きがかかるでしょうし。逆に無冠の名優ってのもそれはそれでカッコイイと思いますよ。一回の受賞よりもオスカーの常連になる方が大変だと思いますし。

というわけで映画の感想ですが、長かったけど結構面白かったですね。また海外で洋画を観るときのお約束なんですが、英語が全部、ぜ~んぶ理解出来たらきっともっと楽しめたでしょうに・・・と日本語字幕で見られなかったのが残念です。3時間を越える大作だったので、箇条書きで感想を書いてみたいと思います。



※ライトなネタバレありです。



・少しの登場なのに強烈な印象を残したマコノヒー。「ダラス・バイヤーズクラブ」から日がそんなに経っていないのでしょう、すごく痩せてました。全米セクシーガイナンバーワンだったころのような筋 肉モリモリに、戻って欲しいです。マコは50歳くらいまではそういう対象として君臨していて欲しいですね。

・新人の何の汚れも知らないおネンネちゃんから、セールススキルを発揮して成り上がったプリオは100ドル札を筒状に丸めてコカインをズズーっと吸い込みます。その使用済み100ドル札はゴミ箱にポイ!!!!うおーっ、それ捨てるなら全部くれーっ!とスクリーンの中に入ってゴミ箱をさらいたくなったのは私だけではないでしょう。

・町山さんが「たまむすび」の中で仰っていたように「フェラーリの中でフェラーリをしてるんですよ!」のシーンがありました。アメリカのB級映画なんか観てると車を運転しながらのフェラーリが時々出てきますが、かの国ではポピュラーなプレイなのでしょうか。あらお下品!だなんて言ってるのは誰ですか?私はフェラーリ、という車種を言っているだけですよ。

・ブラックマンデーで会社をクビになったプリオさんが新しい会社を作るということで集めた地元の友達が、全員見事にボンクラテイストで画面がどよ~んとしていて笑えました。小太りの中華系の友達(ケネス・チョイ)はどっかで見たことあるなあ~と思って調べたら「キャプテン・アメリカ」に日系人役で出てた人でした。

・あっという間に大成長を遂げたストラットン・オークモント社。金融のことが何一つわからない私なので「へえ~そんなに上手く行くもんなんかいね~」と不思議です。騙されて投資している人がいっぱいいたっていうことなんですかね。「世の中バカばっかりだ!」と始終イライラしている知人がいますが、そのバカを上手く騙してお金儲け出来るのなら 、バカとハサミは使いようってことなのでしょうか。私はバカだけど投資するお金がないので騙されなくてよかったです。

・羽振りの良いプリオに近づいて「オレにも金持ちになる方法をおしえてくれよ~!」と言ってその後の側近になるチビデブ男のドニーにジョナ・ヒル。彼はこれで助演男優賞ノミネート。まあチビデブな腰巾着コミカルキャラで存在感はあったし頑張ってはいたが、やっぱりシリアスぽい演技の方がアカデミー会員には受けるようなので、こちらも仕方ありませんね。彼に食べられてしまった金魚が可哀相でした。

・寄せ集めチームの同級生で靴デザイナーのスティーブ・マデン、という人が出てきますが、このブランドのサンダル私も持ってますよ!私がこのブランドのことを知ったのは3~4年くらい前で、ELLEの通販サイトや旅先で知ったんですよね。映画が映画なだけに、現在もバリバリに営業しているブランドが実名で登場するのも凄いですね。


・糟糠の妻を捨てて、エロいモデルと結婚したプリオ。この二番目の妻ナオミを演じているのがマーゴット・ロビーというほぼ無名の女優さんなのですが、なんか非常にわかりやすいトロフィーワイフという容姿なんですよね。なんかダッチワイフぽさもありで、そのわかりやすいエロさがよかったです。


・FBIに目をつけられたプリオ。自家用クルーザーでくつろいでいる所に捜査官(カイル・チャンドラー)がやってくるのですが、最初はウェルカムで迎えたものの途中でキレて「帰れ、バーカ!オレはオマエらの年収を超短期で稼ぐんだぜ、バーカ!ほら拾ってみろ!バーカ、バーカ!」と言ってお札をばらまいたり、ロブスターを投げたり。まるで子供です。海産物に飢えている私はパーン!と床に投げつけられた高級ロブスター(ニ尾)を見て、なんともいたたまれない気分になりました。

・そのFBIの捜査官が、仕事の後地下鉄に乗るシーンがあるんですよ。地下鉄の中には一般市民(みんな生活に疲れた感じで微妙に貧乏そう)が皆どんよりとした表情をして乗っていて一瞬「オレ、何やってるんだろうな・・・」みたいな雰囲気になるのが地味にいいですね。世の中平等じゃない、うまくやったもん勝ちなんだよっていうのが絶妙な塩梅で伝わって来るというか。また彼の苦みばしった表情もいいんです。

・隠し財産を預けておくにはやっぱりスイス銀行!ということで、スイスの銀行家(ジャン・デュジャルダン)のもとに飛ぶプリオとジョナ・ヒル。ジャン・デュジャルダンは「アーティスト」にも出ていたフランス男優(彼はオスカー保持者なんですね)。フランスなまりの英語、興奮するとフランス語になってしまう女好きというステレオタイプなフランス系キャラですが、誰かに似ている。夫の上司に似ているのだ、と気付いてしまいました。デュジャルダンさんは、調べたらまだアラフォーなんですね。意外と若くてビックリ。プリオと2歳しか違いません。いや~プリオが童顔だってのもありますが、30過ぎると実年齢って意外とわからないものですね。

・イタリア滞在中、嫁のロンドンにいる伯母さんが亡くなったという知らせを受けて直ちにロンドンに行かなきゃならないのに、船でイタリアからモナコまで行って陸路でスイスに渡り(パスポートにスタンプを押さない為らしい)伯母さんの遺産相続の手続きをしようとするプリオ。非難する嫁に「伯母さんはもう死んでいる。死人にお金は必要ない!」と言ってクルーザーを出航させますが、嵐に直撃され生きるか死ぬかの状態に。でももうここはギャグに徹していてギャーギャー言ってるだけです(笑)。「タイタニック」のセルフパロディーみたいな趣もあったりして。しかも彼らを救出するために派遣されたイタリアのヘリコプターが事故でクラッシュ(三人死亡)。なんなんだ、一体・・・!こんな拝金主義のクソヤローを助け る為に善意で出動した人間が死亡って、世の中どうなってるんだー!と思ってしまいますが・・・。さすがにプリオも「俺って最低・・・」と思ったからよかったものの・・・。

・ラストシーンでセールスのカリスマとしてセミナーに登場するプリオ。参加者に「このペンを私に売ってみて下さい」とペンを渡します。参加者は「えっと、このペンはとても素晴らしい品で・・・」などとリアクションしますが、結局この質問の正解って何なのでしょう。筆者も就職活動をしていた頃に外資系ぶりたい国内系の会社の面接で似た様な質問をされたことがありますが、キラリと輝く応答は出来ずに困った経験があります。アメリカ人も悩んでいるようで、こんな知恵袋的なものも見つけました。このラストの白けた感じもいいですね。エキストラがみんな超普通の一般人(微妙に頭が悪そう)なのもいいし、プリオのうさんくさいバイブスを出しているカリスマぷりも最高でした。

ということでプリオさんは残念だったけど、まだまだチャンスはあるさ!ドンマイ、プリオ!!

チェコ人が知らないチェコ語~プラハのチェコ語教室から2(後編:エピソード集)

チェコ語の漫画

「これで勉強しなよ」と地中海ファミリーの息子(10歳)が貸してくれた、チェコ語のガーフィールド。


前編では、チェコ語が難解な理由について私なりに述べてみました。後半は半年前に前の学校について書いたように「チェコ人が知らないチェコ語」と題して、 私が知る限りではありますが、どのような人がプラハのチェコ語学校に学んでいるのか、どのような教室シーンそして放課後シーンが繰り広げられていたかを チェコっと書いてみたいと思います。



※登場人物の名前はすべて仮名です。



<チェコ語教室の先生>

エヴァ先生
的確な指導力、ユーモア、面倒見の良さと教師に必要なものを全て兼ね備えたパーフェクトな先生。とにかくこの先生に教えてもらったことがラッキー、と生徒から慕われている。背が高くて金髪碧眼の知的美女(ジョディー ・フォスター似)だが、自身の美しさに無頓着。プライベートではティーンネイジャーの息子と二人暮らし、ピクサーアニメのシュレック似の彼氏がいる。

マルケタ先生
金曜日だけクラス担当するセカンドティーチャー。本業は歴史を専攻する大学院生で、歴女というだけではなく文化全般に博識なカルチャー女子。独特の皮肉とブラック なユーモアセンスを持ち、疲れた金曜日のクラスを楽しく彩るムードメーカー。口癖は「ユッピー!」(やったー!みたいな意味の感嘆の表現らしいが、皮肉屋のため、本来の意味で使われることはあまりない)。


<初心者+αコースでチェコ語を学ぶ生徒たち>

aitan(筆者)
国籍:日本
東京からチェコ人の夫とプラハに引っ越して来たのんきな兼業主婦。配偶者はチェコ人だが夫とは日本語で話している為、なかなかチェコ語環境に浸れないことが悩みといえば悩み。いつも高田純次ばりの適当さで授業に望んでいるが、テストの前だけ慌てて勉強し出す。放課後にクラスメートとランチに行くことが楽しみ。


ヨンエ
国籍:韓国
高校生を頭に三人の子持ちとはとても思えない若さの韓国人女性。子供たちの教育の為にソウルからプラハへ移住してきた。日本留学経験があるため流暢な日本語を話すことが出来る。いつも家族の為に韓国料理を三食作りながら勉学に励む姿はリスペクトに価する出来た女性。目下の悩みは家族のために節約し なければならないので、大好きなブランドバックが買えないこと。俳優ソ・ジソブのファン。

ヨンジュン
国籍:韓国
ヨンエの夫。クラスではビールとタバコが好きなキャラクターを確立。字とイラストが異様に上手く、ノートを提出する課題ではいつも先生を驚かせている(イラストは黄桜のCMでおなじみの小島功風)。たまにチェコ語学習の壁にあたると口数が少なくなる一面も(妻のヨンエにも伝染)。「これ、おいしいです」「そこ、行ったことあります」などの簡単な日本語を話すことが出来る。お酒が入るとチェコ語が急に流暢になる。

チアキ
国籍:日本
チェコの文化に興味があって留学してきた変わり者の20代女子。本が好きでチェコの作家の本はほとんど読破している読書家。日本人らしく腰が異様に低く、控えめな性格で、生真面目。特にライティングは素晴らしくテストではノーミスの偉業 を達成。 苦手なのはリスニングと会話で、つまると「え~っと」「なんだっけな~」と日本語でつぶやき皆を和ませている。意外と面食い。

カスミ
国籍:日本
芸術家一家に生まれ、幼い頃からチェコの絵本が身近にあったため、チェコに興味を持って留学してきた女の子。将来はチェコ語の絵本を翻訳する翻訳家になることが夢。ナチュラル志向でヨガを嗜み、季節の素材でジャムや和食を作るのが好き。常にほんわかムードを漂わせている女子だが、なんと学校全体でナンバー2の才女。特に文法の正確な知識は他を凌駕する実力の持ち主。

テヒ
国籍:韓国
チェコに音楽留学しにやってきたバイオリニスト。若さにもかかわらず落ち着いた知的な雰囲気を漂わせているお嬢様。 低音ボイスでなまりのない綺麗なチェコ語を話す。学校主宰のコンサートでは「戦場のメリークリスマス」 を演奏し皆を陶酔させた。イギリスドラマ「シャーロック」が好き。もちろんベネディクト・カンバーバッチのファン。

クリスティーナ
国籍:ドイツ
チェコ人の夫を持ち、現在第一子妊娠中のドイツ人女性。ビスクドールのように可愛らしいルックスで、しずかちゃんのような鈴の鳴るような声でチェコ語を話す。 おやつはいつもリンゴとニンジンのナチュラル派で、プラハ郊外の大きなお家ではなんと馬を二頭飼っている。嫌いなものはテレビ。

ロベルタ
国籍:ベネズエラ
チェコ人の夫を持つお目目くりくりの南米美女。いつもトップスとアクセサリーとアイシャドーの色をリンクさせているおしゃれさん。情に厚く涙もろいラテン気質。子供の様な無邪気な性格で、プラハを雪を初めて見たとき は思わず教室の外に駆け出してしまったことも。チェコ語の文法には苦労しているが、物怖じせずにどんどんチェコ語を話す体当たり実践派。

モハメド
国籍:シリア
シ リアから亡命してきた歯科医。容貌は「ドラゴンクエスト」のトルネコにそっくり。オープンで強引な性格で、宿題もほとんどやってこない自由人。のわりに授 業中はかなり自己主張が強くaitanからウザがられている。スペイン語と英語が話せるのが自慢らしい。実はジェントルメンで気のいいオッサン。ビザの事情などにより、惜しまれながらクラスを途中離脱。


サヨコ
国籍:日本
世界を飛び回るビジネスウーマンだったが、出張先のチェコでチェコ人男性と恋に落ち、現在婚約中。面倒見のいい姉御肌で、日本人学生に日本物資(お菓子、温泉のもと、塩昆布 etc)を惜しみなく分け与える寛容さを持っている。自身も学生だがアジア人にはわかりにくい文法解説にも定評があり、いつもaitanとヨンエに頼られている。アウトドア派のスポーツ好きで彼氏とアイスホッケーを観戦するのが趣味。


ヘレン
国籍:イギリス
在 チェコ10年のベテラン英語教師。ニコール・キッドマンのように背が高い迫力系美女。チェコ語でジョークを言えるくらい流暢に話せるが、文法を知らないか らという理由で初心者+αクラスにやってきた。あけっぴろげな性格で授業中にどんどんイングリッシュジョークを(チェコ語にして)放り込んで来る。自身の英語の生徒だったチェコ人男性と高級住宅地で事実婚中。

※チアキとサヨコはもともと、ひとつ上のレベルにいたが、自ら「もっと基礎を固めたい」と言って私達のレベルに来た為、日本人が多いクラス編成になったのだった。



<教室内エピソード>


・英語は共通語?

私がいたクラス は 初心者+αクラスで、まったくの初心者が集まったクラスではなかったものの、学期始めはかなり教室内で英語が使われていた。授業中、先生は英語で単語の意味や文法を説明し、生徒は英語で質問するという具合だった。しかし授業が進むにつれてだんだんと英語使用の割合が減って行き、一ヶ月経った頃には先生が使うのはチェコ語だけになっていった。単語の意味を説明するのも平坦なチェコ語。生徒が質問するのもたどたどしいチェコ語。ああ、もうチェコ語を使うしかないんだ・・・と震えが来たのを覚えている。

先生は英語を話すがネイティブではないので、よくイギリス人で英語教師のヘレンに「これってこういう意味で大丈夫かしら?」と確認し、ヘレンはチェコ語で大丈夫だと答える。しかし英語は教室内で多数の人がわかる言語ではあるけれども、全員が英語を解する訳ではない。韓国人のヨンジュン、ベネズエラ人のロベルタはほとんど英語がわからない。これは少し衝撃だった。なぜなら、チェコ語を学ぶくらいだから英語は既に習得済みなのだろうと思い込んでいたからだ。

実際、他のクラスでも英語がわからない人は結構いたらしい。ドイツ語は出来るけど、英語は勉強してこなかったというウクライナ人もいた。日本では外国語といえば大部分の人がまず英語を勉強するので、それは他の国でも同じなのだろうと思っていたが、私の思い込みだったようだ。比較的簡単な外国語とされる英語を入れないで、難解なチェコ語を勉強することは無謀のように思え、さぞかし大変だろうと思った。しかし、逆に考えると外国語の中で難しいとされるチェコ語を勉強した後だったら、他の外国語は簡単に感じるだろう。そう考えるとデメリットばかりではない。きっと英語は「こんなに文法がシンプルでいいの?」と思えるに違いない。



・プラハは好きですか?


セカンドティーチャーのマルケタ先生が、初めて教室にやってきたときに私に聞いた質問が「プラハは好きですか?」だった。マルケタは何気なく聞いただけだと思うが、これはなかなかに難しい質問である。プラハの街は綺麗だし、全体的にノンビリとした雰囲気があって比較的安全で、生活するのは悪くないが・・・やはり東京とかパリ、ロンドンと比べると田舎で都会っぽい楽しみ(ショッピングとか、ショッピングとか、ショッピングとか)の場所は乏しいし、大都市が持つ洗練された雰囲気はない。

もともと私はヨー ロッパに憧れていて、特にフランスの映画や音楽が好きだった。しかしそれは学生時代の話で、社会人になってからは東南アジアに足繁く通うようになり、青い海に囲まれた熱帯の島で暮らすことを夢見るようになったのだ。だが、長い紆余曲折の末にプラハに暮らすようになった・・・。でも将来は東南アジアに暮らすのが夢なのだ。しかし当面はプラハで生活していくわけであって・・・結論は「プラハのことは好きでもないし、 嫌いでもない」といったところだ。「プラハは好き?」という質問は在住の外国人女性たちからもよく聞かれる。「好きでもないし嫌いでもない」と答えると彼女たちは一様にフーッとため息をつき「よく、わかるわ」と共感を込めて言う。それぞれに事情はあるだろうが、住んでいるからこそ無邪気に「この街が好き」と言える時期は過ぎ去ったのだろうと推測される。

長くなってしまったが、私がプラハに抱く思いはそんな感じなのだ。しかし初心者に毛が生えた程度のチェコ語でそれを説明出来る訳がなく「好きではないです」と答えてしまった。もちろんその後に「でも嫌いでもなく・・・」と続けたのだが、「好きではない」という決定的な第一声がマルケタにインプットされてしまったようだ。 「aitanがプラハを好きになってくれればいいけど・・・」「aitanは嫌いだろうけどプラハは・・・」と授業中のネタにされるようになり、コース終 了後にマルケタからもらった手紙でも「プラハのことが好きになるといいね」と書かれていたのだった。プラハのことは好きでも嫌いでもないが、クラスは本当に楽しかったよ、とマルケタに返信しなければならない。


・チェコ語を学ぶそれぞれの理由

私のクラスを見てみると、チェコ語を学ぶ人には大きく2パターンある。1つ目が私の様なパターンで「家庭の事情でチェコに住むから、生活のために現地語の習得をしようと思って」(道具的動機付け)という理由で勉強している人。二つ目が「チェコやチェコの文化に興味があって」(統合的動機付け)というパターン。言語学的にこの2パターンは、どちらがより強い動機付けかということは定められていないらしい。しかし、私が感じるに絶対に「チェコやチェコの文化に興味があって」(統合的動機付け)のパターンの方が学習意欲が高い気がする。

私や韓国人のヨンエは新しい文法を習う度に、教科書を見て「ハア~ッ・・・」とか 「アイゴ〜・・・」とため息をつくが、チアキやカスミは「難しいよね」と言いつつもどこか楽しそうだ。実際彼女たちの伸びは早い。一度カスミちゃんに勉強のことについて聞いてみた。「チェコ語ってバビチカ(おばあちゃん)とかミミンコ(赤ちゃん)とか響きが可愛いじゃないですか。勉強が苦痛だと思ったこと?う~ん、ないですね」とのこと。やらなきゃいけないものではなくて、楽しいからやるもの、だから勉強も進む。その理屈はわかるものの、実際に目にしてやはりと実感したのだった。好きこそ、ものの上手なれ。


・ドイツ女性の掃除術

「どのくらいの頻度で◯◯をしますか?」「一週間にX回です」という文型の練習をしたときのこと。スポーツ、映画鑑賞、料理、散歩 etc....を入れるのだが「掃除」を入れてドイツ人のクリスティーナに質問してみた。「とくに決まってない」とのこと。「私は一週間に一回だけど?」 と聞いてみると「本当に決まってないの。汚れたらすぐ掃除をするから」との答え。す、すごい・・・。ドイツ製のお掃除用品は結構充実してるし、ドイツはわりと適当な欧州の中でもいつもピシっとしてるイメージがあるけど本当にそうなんだ。義理の祖母であるドイツ人のバビーチカも同じようなことを言っていた。「台所を使った後はいつも掃除をして、出したものを元の位置に戻すんだよ」と・・・。確かにバビーチカの家の台所はいつもピカピカでモノが出ていることがない。掃除は溜めずに随時、これが美しい家への第一歩なのかもしれない。


・チェコの姑と嫁の関係


私の義理の祖母バビーチカ(ドイツ人)と義理の母マミンカ(チェコ人)は、いわゆる姑と嫁の関係だがとても仲がいい (関連記事:ドボルザーコヴァの集い)。私自身もマミンカとは良好な関係を保っている(と、少なくとも私は思っている)。一方、私の日本の母は姑である祖母のことがあまり好きではないらしかった。だから嫁姑問題は、個人よりも”家”という括りが重んじられる東アジアに特有の現象なのかと安易に思っていた。 しかしながら、ヨーロッパにも嫁姑問題は存在しているらしい。

週末は何をしたか話すのが定番の月曜日の授業でのこと。「姑(マミンカ)の 家の庭を大姑(バビーチカ)と一緒に掃除しました」と私が発言したら、エヴァ先生が「本当?!aitan は勇気があるわねえ」とのけぞった。どうしてそんなに驚くのかわからなかったけれど、つまりそういうことなのだそうだ。チェコ人のエヴァ先生が彼氏のお母さんと会うときはいつも緊張するのだそう。イギリス人のヘレンはパートナーの実家に帰省するのが鬱陶しいと言っているし、前の学校で一緒だったフランス人女性は「夫のお母さんとは、できるだけ会いたくない」とハッキリ言っていた。

「嫁姑」という括りとは別にして、単純に人間として合う/合わないがあるのだろう。私はたまたま合う人だったのだ。日本で仕事運や上司運はまるでなかったけど、どうやら姑運には恵まれたようだ。仕事と違い姑はそう気軽にチェンジすることは出来ないので、これはこれでラッキーだったと言えるのかもしれない。


・チェコの9月は、オチンチ◯?

12ヶ月をチェコ語で言う練習をしたときのこと。なぜか9月(září:ザージー)に来ると、私の隣の席に座っている韓国人のヨンエが辛そうに笑いを堪えている。最初は気のせいかと思ったら、また9月のときにヨンエの様子がおかしくなる。ヨンエの隣に座っている夫のヨンジュンは、あきれ顔で「お前・・・」と言いたげな表情。不思議に思ったので、こっそりと「どうしたの?」と聞いてみた。「だって、だって、ザージーは・・・」と窒息しそうになりながら言うヨンエ。

その刹那に、以前、韓国人の知人に教えてもらったことを一瞬で思い出した。韓国語でザージー/ジャージーは「オチ◯チン」を意味する言葉なのだ!それを思い出し、私も思わず下を向いて笑いを堪える。エヴァ先生が「aitanとヨンエ、いったいどうしたの〜?」と私達を不思議そうに見るが、絶対に説明出来ない(したくない)!一方、もう1人の韓国人のお嬢様テヒのリアクションを盗み見ると、ほんの少し苦笑しているだけ。さすが品がある人は違うと思ったのだった。



・チェコのお金もオチンチ◯?


下ネタ続きでこのエピソードも。チェコでお金は「peníze:ペニーゼ」と言う。しかし、あるシチュエーションで「ペニーゼ」を「ペニス」と発音する場合があるのだ。いや「ペニス」よりも「ピェニス」に近い感じ。だからリアルに英語で男性器を発音しているみたいに聞こえて、そこだけが文章の中で妙〜に浮き上がっているように感じる。お金がキンタ◯・・・(正確にはペニスは袋じゃなくて棒を指すのだが)。なんか日本語とも通じる部分がある。他のクラスのウクライナ人女生徒(オバチャン)が「先生がピェニスって言うたびに、私、ハっとしちゃうのよ!」と言っていた。その気持ち、よ〜くわかる。



・ファックの次はビッチ、ジェ?


前の記事で「本当?」「マジ?」を意味するチェコ語は 「fakt:ファクト」だということを書いた。これが私の耳には「ファック」に聞こえて勝手にドキッとしたものだ。教科書にあったダイアローグに「・・・・・(文章), vid'?」というセリフがあった。最後の「vid'」が私の耳には「ビッチ」に聞こえる。アメリカ映画で本当に仲のいい女同士が親愛の情を込めて「ちょっとビッチ〜、私の服勝手に着ないでよ〜」みたいに言い合ってるシーンを見たことがあるので、そういう感じなのかと勝手に思ってしまったが、チェコ語なのでそんなわけがない。この「vid'」とは「〜でしょ?」みたいなフレーズだそうだ。しかし・・・やはりどうにも慣れない。他に「〜でしょ?」というフレーズで「ジェ?」というのがあるので、「ビッチ」のかわりにこればかり使っている。ジェ?



・まるで小学生 ?シリアのオッサン、モハメド


このクラスで一番強烈だった生徒は、おそらくシリア人のモハメドだ。シリアからチェコに亡命してきたのだが、そんな苦労を一切感じさせない明るさとウザさでクラスに君臨していた。最初のうちは随分と威勢が良かったので、もの凄く出来る生徒なのかと思っていたが、 徐々に彼の実力が明らかに・・・。ほとんど勉強しないし超適当なため、複雑な文法をまるで無視して話し始めるのである。先生が訂正すると「ああ!私はなんて ケアレスミスをしてしまったんだ、本当はわかっていたのに・・・」というテンションで慌てて言い直す(毎回)。文法は無視するくせに、知っている文法だと自信満々に「◯◯を持っています。アクザティブ!」「少しの◯◯です。ゲネティブ!」な どと格の名前をドヤ顔で言う。

一番ウザかったのはドリルの答え合わせのとき。先生が「では1番は何でしょうか?」と問い、みんなで「◯◯ です」というコールアンドレスポンスをしているとき。モハメドは自信があるところは「◯◯です!」と先生を食い気味にひときわ大きな声を発するが、わからないところはみんなが「◯◯です」と言ったのを聞いてすかさず大きな声で「◯◯です!」とかぶせて来る。まるで小学生の男の子のようだ。最初はウゼーな、と思っていたがそのうちに慣れてしまった。

ペアで会話をするときも先生の出した課題を消化しきれない。なぜなら課題から脱線して他のことを 話し始めてしまうからである。モハメドと組んだ人は結局、発表することが出来なくて「途中です・・・ 」と答えるしかないのだった。授業中にモハメドの携帯が鳴り響き(もちろん携帯はマナーモードにする決まりなのだが)、一応教室の外に出てから話し始めるのだが、 廊下にいても「シュクラン、シュクラン!(アラブ語でありがとう)」とデカイ声が教室に鳴り響く。自由過ぎるモハメド。だがなぜか憎めない。きっと中東を旅する途中で出会ったら「腹は減ってないか?オレの家に来い、嫁が夕飯を作るから食って行け!なんなら泊まって行け!」とオファーしてくれそうなオッサンなのである。ウザかったけどいないとちょっと寂しい、それがモハメドなのである。



・夫とラブラブのベネズエラ、一方の韓国は・・・


「◯◯なしでは、生きられません」という文型を練習したときのこと。韓国人のヨンエが「コーヒーなしでは、生きられません」と言う。夫のヨンジュンが「ビールなしでは 、生きられません」と言う。お肉が苦手なカスミが「豆腐なしでは、生きられません」と言う。ベネズエラ人のロベルタが「愛なしでは、生きられません」と言ったときに、教室がどよめいた。「だってそうでしょう?」という濁りのない表情のロベルタ。「ひええ〜」と我々アジア勢。

ロベルタの夫とは実際に会ったことがあるが、南米から来たお茶目で無邪気な妻をそっと見守る包容力のある夫といった感じ。こういう絶妙のバランスが夫婦なんだな〜、 と思ったのを覚えている。愛がなによりも大事、愛がなければ死んでしまう・・・と真顔で説くロベルタ。いや〜、それはわかるけど口に出してはちょっと恥ずかしくて言えない。一方の韓国人夫婦ヨンエとヨンジュンは、エヴァ先生に「あなたたちも愛なしでは生きらないでしょ〜?」とからかわれても、見事に超・低テンションでリアクションがない。ヨンエ曰く「もう私達は17年も一緒にいるから、そんなんじゃないですよ・・・」。しかし私は見た。ヨンジュンの携帯待ち受け画像が、ヨンエの笑顔写真だというのを!



・ある韓国人メンズの結婚観

チェコ語では「結婚する」という動詞が3種類くらいある。男性の「結婚する」は「oženit se」で「(嫁を)取る」という意味を内包しており、女性の「結婚する」は「vdát se」で「(自身を)あげる」という意味を内包している。男性でも女性でも使えるニュートラルな「vzít se:結婚する」という動詞もあるので「結婚する」が3種類あるのだ。ハア・・・。

エヴァ先生がひとつひとつ意味を説明してくれるのだが、女を取るだのあげるだのと前時代的な女性蔑視感がある(日本語でも「嫁にもらう」と言うが)。「なんだか気持ち悪い・・・」と隣の私にささやくヨンエ。するとヨンジュンが韓国語でヨンエに何か熱弁している。ヨンエが訳してくれたところによると「夫婦関係に上下など存在しない。結婚したら対等な同僚として一緒にやっていくもんだ。それが結婚だろう」と言っていたらしい。私は思わず口笛を吹きそうになってしまった。韓国は日本よりも男尊女卑の社会だと聞いていたので、ヨンジュンのモダンな考えに感心したのだ。それと同時に「◯◯人だから◯◯だ」という凝り固まったステレオタイプイメージは、実際に接してみないとなかなか払拭出来ないものだなと思ったのだった。



・質問にもお国柄?

イギリス人で自身も語学教師のヘレンは、質問魔。会話は一番出来るのに、いや出来るからこそいつもエヴァ先生に質問をぶつける。しかし彼女の質問は「英語ではこう言うけど、チェコ語では何て言うの?」みたいに英語ベースの質問なので、比較言語学的に役に立つことも多い。英語をチェコ語に直訳して通じるときもあるし通じないときもあったりで、 なかなかに奥が深いのだ。しかし「ヘレン、それ授業を止めてまで聞く必要ある・・・?」という不必要かつ高度過ぎる質問もいっぱいだ。

一方、日本人のチアキは休み時間や授業後になるとノートを胸に抱えて先生にタタタ・・・と駆け寄り「プ、プロシームヴァース(す、すみません)」と言って非常に申し訳なさそうに質問をする。彼女は背が小さいので、子供が一生懸命勉強しているみたいで本当に可愛らしい。みんなの時間を奪うことなく控えめに質問をするチアキ、日本人らしくてとても好感が持てるのだった。


・おやつ百景

ハードな授業のあとの休み時間には、皆それぞれ持参したスナックを食べて英気を養う。私はサンドイッチ(パンの切れ込みにスライスチーズを挟んだだけ)、りんご、ミカン、チョコレートなどをローテーションで持参して食べ ている。韓国人のヨンエはキンパ(韓国の海苔巻き)、ベネズエラ人のロベルタはバナナのケーキとなんとなく持参するおやつに国際色が出ている。「よかったら、これ食べない?」とおすそわけが回って来るのがとても嬉しい。そんな中で度肝を抜かれたのがドイツ人のクリスティーナのおやつだ。彼女は携帯を見ながら、生のニンジンをポリポリとかじっていた。真のナチュラリストはやることが違う。


・ミクラーシュとトラウマ

12月初旬のチェコの行事に「ミクラーシュ」と呼ばれるものがある。ザックリいうと、聖人ミクラーシュ(英語でニコラス。サンタクロースの原型みたいな人)が天使と悪魔を引き連れて、幼い子供のいる家を回るクリスマスの前哨戦みたいな行事だ。大抵は近所の人がこの三役に仮装をして家々を回る。ミクラーシュは子供にいい子にしていたかどうかを尋ね、 いい子には天使からお菓子が、悪い子には悪魔からジャガイモなどが与えられる。本当に悪い子にはオプションのペナルティーとして悪魔が持っている袋の中に入れられ、連れ去られたりするらしい。

学校でも生徒がミクラーシュ(ウクライナ人男子)、天使(ドイツ人女子)、悪魔(バングラディッシュ人男子)に扮して教室を練り歩き、私達にはチョコをエヴァ先生にはジャガイモを配った(先生はオチ担当)。大人から見ると他愛のない年中行事だが、悪魔の袋に入れられた子供にとっては結構なトラウマを残すものらしく「子供にとって、やりすぎのミクラー シュはいかがなものか?」という結構マジな議論が毎年起こるらしい。しかし悪者の悪魔の他にサンタクロースおじさんのミクラーシュ(彼は中立)と天使がいるのでそこまで怖いものではないような気がするが。チェコの人たちに秋田の伝統行事「なまはげ」を見せたら腰を抜かすんじゃないだろうか。全員が禍々しいワイルドな鬼の「なまはげ」はトラウマどころかPTSDレベルである。


・チェコのクリスマスの遊び

クリスマスの遊びとして学校で教えてもらったゲームがある。お盆の上に6つの小さなマグカップを逆さにして置く。その中には、コイン(富)、 指輪(結婚 )、パン(幸福)、ハンカチ(旅)、人形(子宝)、丸めたティッシュ(不運)が入っていてそれぞれが何かしらの運を象徴している。お盆の上でマグカップをすべらせ てシャッフルし、ひとつ選んで中を見てみるのだ。中の物が来年の運勢を告げるというなかなか面白いゲームである。コインならお金持ちになる、指輪なら結婚できる、パンなら全体的に幸福になる、ハンカチなら旅行が出来る、人形なら子宝に恵まれる、ティッシュを引いたら・・・もう一度チャレンジOKらしい。私は1回目がティッシュで2回目が結婚(既に既婚)、3回目で子宝を引いた。先生は「ホルチチカ(女の子)よ!」と予言していたが・・・。


・年末はエモーショナルな季節

チェコの年末はクリスマスムード一色で終わる。ベネズエラ人のロベルタの提案でクラスでもプレゼント交換をすることにした。クジ引きをしてそのクジに書いてある名前の人へプレゼントを買うというシステムである。これで誰かしらが誰かに贈り物をすることになる。それとは別にお金を出し合って、エヴァ先生とマルケタにプレゼントを買うことにした。ロベルタはそれぞれカードを買って来 て、みんなで寄せ書き(もちろん、たどたどしいチェコ語)。

先生には内緒にして最後にみんなでプレゼントをした。カードを読んで感激する先生。「本当に素晴らしいクラスだわ。みんな仲良しだし、やる気があって・・・」と感謝の言葉を述べる先生。見ると韓国人のヨンエが泣き出している。「みんないい人ばか りなのに、私は今期でお別れです・・・」とヨンエ。彼女と夫のヨンジュンは半期だけ学校に通うことにしていたのだ。思わずもらい泣きする私。泣き上戸のロベルタも大きな目に涙を浮かべている。「良いクリスマスを、良い新年を」と先生と抱き合うとまた涙がこぼれる。年の瀬は普段の感謝を伝える機会だが、 エモーショナルな感情がほとばしるときでもある。



・期末もエモーショナルな季節

年末もエモーショナルだったが、 セメスターが終わるときもそれはエモーショナルである。テストが終わり、修了証を先生から受け取り、皆で祝杯を上げる。5ヶ月間の血と涙の結晶が修了証 (ペッラペラの紙なのだが)。それを「よく頑張ったわね」と先生から暖かい言葉をかけてもらって授与されると、もうこみ上げて来るものがある。涙もろいヨンエの防波堤はもろくも決壊。感慨深げに修了証を見るヨンエとヨンジュン夫妻のツーショットを見て、私の防波堤も決壊。校内で2位(1位は同じスラブ系言語を話すロシア人。アジア人が二位というのは快挙)になったカスミちゃんの感激の涙を見て、決壊。泣いてアイラインがすべて流れ落ちてしまって後悔。最初はチェコ語が田舎っぽいとか色々ゴネたりしたけど、やっててよかった!先生ありがとう、みんなありがとう!このときの熱くピュアな気持ちを真空パックにして保存し、やる気のないときに吸引出来たら・・・と思うのだった。





<放課後エピソード>


・今日は私の誕生日!ケーキをお裾分け


日本で誕生日を祝うというと、テレビの影響かサプライズパーティー的な色合いが濃い気がする。突然電気が消えて、奥からローソクを灯したケーキがハッピーバースデーの歌とともに運ばれて来る。主役は(わかっていても )「え〜!」と驚き感激するのが幸福な予定調和の風景だ。しかし予定調和を行うには友達が自分の誕生日を知っていることが前提になる。大人になってから出 来た友人の誕生日は意外と知らないことが多いし、誕生日をわざわざ聞くというのも事前準備をするようで少し気恥ずかしかったりする。

こちらに越して来てからは、バースデーガール/ボーイ自らが 「今日は私の誕生日!ケーキをどうぞ」とお裾分けして回るのを何度か目にした。そのときに「エッ、そうだったの?いや〜、おめでとう」と驚きつつも「なんか誕生日なのに奉仕させちゃって悪いな〜」などと思ったりする。日本ではご存知の通り、バースデーの当事者は王様なので下々のものがするようは下働きとは無縁だからだ。 しかしこうしてカジュアルに誕生日を伝えることが出来るシステムってなかなか合理的で悪くないものである。当事者が年に一回準備するだけでいいし、友人の誕生日が来る度に準備する気遣いも減って楽といえば楽である。


・子供は語学の天才

子供はスポンジのように知識を吸収し、体得する。この能力を発揮出来るのは若いときの限られた時間のみだ(感覚値だと15歳くらいまで?)。以前の記事でも触れた知人の地中海ファミリーの息子、10歳はギリシャ語、フランス語、英語、チェコ語を操るマルチリンガル。チェコ語はチェコの学校に通うようになって覚えたらしい。最初はまるでわからなかったけど、3ヶ月くらいで耳が慣れて皆が何を言っているのかわかるようになったとのこと。

韓国から移住してきたヨンエとヨンジュンの子供たち(16歳、14歳、10歳)も現地校に通い、1年経った今では全く問題がないらしい。末の子は親のチェコ 語の宿題を見てやっているとか。また現地校では英語/ドイツ語を学習中でトリリンガルになるのは間違いない。すごい、子供は本当にすごい。幼い頃に外国語 を習わせてくれなかった自分の親を恨むばかりである。しかしインターではなく現地 校に入れるって、親としてもすごい決断だと思うのだった。習うより慣れろ、子供にとっては最短の語学習得なのかもしれない。



・チェコ人も語学の天才?

ヨーロッパの真ん中にある小さな国チェコ。前半でも書いた通り、その人口は東京都よりも300万人ほど少ない。周りを外国に囲まれた小国のため、おのずと外国語を話すことが必要となって来る。私自身が外国人のせいもあるが、プラハで知り合ったチェコ人は基本的に数カ国語を話す人が多い。英語、ドイツ語、ロシア語、 フランス語、スペイン語、イタリア語など欧州主要言語のうちの2カ国語は出来る人が多い印象だ(日本語を解するチェコ人もいる)。日本だとバイリンガル で「すごい!」となるが、欧州だとトリリンガルでも別段、驚くことではないらしい。トリリンガル以上だとマルチリンガルとかポリグロットと言う。ロベルタの友人のチェコ人男性はチェコ、英、仏、西、独、伊、露、さ らに少しの日本語が出来る。彼はアイススケートリンクを作る職人で、仕事のため世界中を回り現地で語学を習得したのだそうだ。世界中を旅するためには船乗りにでもならないと無理かと思っていたが、世の中色々な職業があるものである。



・アルコールが語学習得に及ぼす絶大な影響


飲むと饒舌になるのは普通のことだけど、外国語も上手くなる気がする。いや上手くなっている気がするだけだと思うが、シラフのときの気負いや緊張、ストレスなどがなくなり、リラックスして口から言いたいことが飛び出して来るのだ。しかもそれがブロークンであっても同じレベルで勉強する者同士だと通じてしまったりするので勢い盛り上がる。金曜の授業やテストが終わった日、「もう飲んじゃいましょうよ」と連れ立ってホスポダへ向かうことがよくあった。1杯目のジョッキが空になる頃にはテ ンションも上がり、すっかり陽気になってしまう。チェコ語を習い始めて数ヶ月の人ばかりだから、文法を無視どころが文章さえも成立せずに単語を並べただけになることもあるのだが、何故か私達の中では通じてしまう。恐らく先生やネイティヴの人は私達が何を話しているか到底理解出来ないだろう。しかしお酒を飲んでいるときは本当にリラックスして間違えなんて全然怖くなくなる。会話のクラスはすべて飲みながらやるといいのではないだろうか、と本気で思うのだった。



・日本語を操る才媛たち

学校には日本語が出来る外国人女性が何人かいた。まずは韓国人のヨンエ。なまりのない綺麗な日本語をそれは流暢に話す。クラスが始まった ばかりの頃、彼女と会話のペアになり「日本に住んでいたことがあって、韓国では日本語の先生をしていました」とチェコ語で聞いた時は、私の聞き取りが変なのだろうか?と耳を疑った。その後日本語で話してその上手さに仰天したのだ。もちろん授業以外で彼女と話すときは日本語に決定。いや授業中も「難しい・・・」とか「マズそう・・・」(チェコのクリスマスは鯉を食べると聞いて)とか日本語でつぶやくヨンエなのだった。

もう1人は台湾から来た女の子、スーちゃん(仮名)。もともとロシア語専攻で、チェコ語に興味があって留学してきたこれまた変わり種の女子である。チェコ語は私よりも上のクラスにいてかなり流暢。彼女の日本語は少し台湾なまりがあるが、何かを日本語で理解した瞬間に 「あ〜はいはいはいはい!」とか帰り際に「おつかれさまです〜」と言ったりしてかなり日本人っぽい。スラっとしたスタイルにロングヘア。「レッドクリフ」に出ていた台湾女優のリン・チーリンに似てめちゃくちゃ可愛い。彼女にそのことを言うと「リン・チーリン、何歳か知ってますか?」と言われた。リン・チーリンは39歳、スーちゃんはまだうら若き25歳なのだった。なんかごめん、スーちゃん。

最後の1人はロシアからやってきたエカテリーナさん(仮名)。学校の廊下でサヨコと日本語で話していたら「すみません、日本人ですか?」と話しかけられた。ロシアの綺麗な女性から急に日本語で話しかけられたので驚いた。旦那さんの仕事の都合で日本に数年住んだことがあって、日本語で読み書き会話が出来そうだ。チェコに住んでいると、なかなか日本語を使う機会 がないので私達と日本語会話をするのがとても嬉しいとのこと。いや〜、そんな風に言ってもらえるなんて・・・。ちなみにエカテリーナさんのチェコ語のレベルは私と同じなのだが、スラブ語圏の国から来た人は理解速度が早いのでスラブ系学生のみを集めたクラスで勉強している。文法がほぼ同じなので、進み方が高速なのだそうだ。

まさかチェコ語の学校に日本語を話す人が三人もいるなんて!これは本当に驚きだった。しかも皆綺麗な女性。美人だし知的で頭もいい、天はニ物を与えるのですね。


・密接になるチェコと韓国の関係

プラハの街を歩いていると、韓国人とすれ違うことが多い。観光で来ているのか在住なのかはわからないが、日本人よりも多い気がする。「プラハの恋人」という韓国ドラマ(未見)の影響ってすごいんだなあ、とボンヤリ思っていたのだが、どうやら理由はそれだけではないらしい。韓国人のヨンエ曰く、サムソンを初め韓国系企業がチェコに進出し始めたことによるらしい。チェコはヨーロッパの中心にあるので西側と東側の両方で業務展開をするには都合がいいのだとか。なるほどである。大韓航空がインチョンとプラハの間を飛んでいるのも、チェコ航空の株をたくさん買ったりしているのも韓国系企業の進出と関係があるのだそうだ。在住の日本の先輩に聞いた話だったか、2006年頃に日本企業のチェコ進出ブームがあって、たくさんの企業(主に製造業)がチェコに進出して在住の日本人も増えたという。しかしその後のリーマンショックなどのあおりを受けて撤退した企業もあり、ピーク時よりだいぶ日本人の数も減ったとか。在チェコの日本人は減ったけれども、韓国人の数は増えており、人数は日本人を抜いたのだそうだ。

ヨンエ一家がチェコ移住を決めたのも、韓国企業がチェコに進出していることが主な理由だという。「チェコで子供に教育を受けさせて、こちらにある韓国企業に就職して欲しいんです。教育のシステムは韓国よりチェコの方がいいですから」とヨンエ。チェコ語学校に通う韓国人学生も「将来はサムソンで働きたいから、チェコ語を勉強してます」という子が多いらしい。なるほど、就職ありきなのか。しかし、知人もあまりいない上に言葉もまったくわからないヨーロッパの小国に一家で移住してくるなんて、そうとう凄い決意だ。しかしヨンエとヨンジュンはわりにケロッとしている。しかも彼らは自営で生計を立てようとしているのだ。しかし子供たちはもうチェコに馴染んでおり、一番上の子は医者を目指して勉強中なので、彼らの計画は今のところ上手くいっているようだ。


・カスミちゃんとお料理交換日記・・・のはずが


お 料理上手のカスミちゃんは、プラハのファーマーズマーケット で買ったお野菜を使って和食を作ることが出来る。いつも「ひとりでは食べきれないから・・・」とタッパーにつめて学校に持参し、私達に振る舞ってくれるの だ。きんぴら風のお総菜や煮物に感激する日本人学生たち。私が男だったらカスミちゃんのことを好きになってしまうかもしれない。美味しく頂いた後タッパーを洗って返すことになるのだがカラのタッパーを返すわけにはいかないので、その中に私が作った料理を入れて返すようにしている。トマトのタブレ、ミネストローネ、トマトと卵の炒め物・・・私、気付いちゃったんですよ。私の料理、ほとんどトマトばっかりだってことに!彼女より随分と年上なのに、料理初心者なのがバレバレで恥ずかしいのであった。



・ホンザという名前の彼氏

バイオリンを学ぶ韓国人の女の子、テヒがビザの関係でドイツまで行かなければならなくなった。テヒがヨンエとそのことについて韓国語で話しているのを横で私は聞いていた。私は 「カッカジュセヨ」「ケンチャナヨ」「サランヘヨ」「マシッソヨ」というツーリスト韓国語しかわからないのだが、勉強しなくてもいい外国語をネイティブが話しているのを聞くのが大好きだ。エキゾチックな気分になる。「ドイツまでどうやって行くの?」みたいなことをヨンエが韓国語で聞いたら、テヒが「ホンザ」と答えた。チェコ語でホンザというのはヤンという男の子の名前の愛称である。「はは〜ん、テヒにはホンザっていう彼氏がいるのか〜」とニヤニヤした私。

その後、みんなで飲みに行ったときに「テヒってチェコ人の彼氏いるんでしょ?」とヨンエに聞いてみた。「え・ ・・?テヒは今シングルですよ」とヨンエ。「だって、ホンザって言ってたじゃない」と言うと、夫のヨンジュンが「あ〜、アローン、アローン」と英語らしき単語を口にした。んん?一体どういうこと?「ホンザって、韓国語で1人って意味なんですよ・・・。テヒはドイツまで一人で行くんです」とヨンエ。え、そう だったのか・・・。私、勝手に誤解して恥ずかしい!テヒに変なこと言わなくて本当によかった・・・と思ったのだった。



・チェコにイケメンはいない?

前の記事にも書いたが、チェコの女性は綺麗なことで有名だ。他のEU圏から来たメンズが国の友達に「オレの彼女、チェコ人なんだ」って言うと、かなり羨ましがられるらしい。実際にチェコ出身のスーパーモデルは多いので、まあそうでしょうね〜という感じである。だからか一般の女の子も可愛い子が多い(でも容姿に無頓着な子も多く、磨けばもっと光るだろうに・・・と思うことも多い)。チェコの子供もお人形さんみたいに可愛らしい。小学生の男子なんかも美少年揃いで「将来は、一体どんな不埒な美男子に成長してしまうのだろうか・・・」と思ってしまう子がたくさんいる。

しかしである。プラハの街にイケメンがいないのである。本当にいないのである。何て言えばいいのか、20代〜30代くらいのメンズ自体もあんまりいないのである。子供か高校生か、オッサンか。これは私の行動範囲の問題かもしれないが・・・。トラムやメトロでイケメンを探してみるが、本っ当に見当たらない。そういえばプラハ城の兵隊さんにもイケメンは少ない。妙〜に変だな〜と、この疑問を学校の女子にぶつけてみたところ「わかる!」と圧倒的な同意を得られた。

しかも「あら、イケメン?」と思って見てみると、ファッションとか佇まいがゲイっぽかったりする。む、難しい・・・。なんでこんなにストレートのイケメンがいないのか!しかしEUの他の国でもイケメンって思ったより全然いないかも。世界的に見て美女の人口の方がイケメンよりも多い気がする。イケメンは貴重だ。みんなの共有財産として保護しないとそのうち滅びるのではないだろうか ・・・とわりと本気で心配である。えっ、私の連れ合い?もちろんイケメンだと思ってますよ。でも友達は彼のことを「そうでもない」と言ったりしてます。結局、美というのは主観的なフィルターの問題なのでしょうね。


・日本人が好きなチェコ語、チェコ人が好きな日本語

日本語を学ぶチェコ人学生と、チェコ語を学ぶ日本人学生とでパーティーが開かれた。無論彼らの方が話せるので会話はおのずと日本語になる。お互いの言語で好 きな単語はどういうものかという話題になった。私が好きなチェコ語は「písnička:ピースニチカ」。歌という意味の単語で、なんだか夜空に輝くお星さ まのようにキラキラしたファンシーさを感じるからだ。他のクラスの日本人メンズ(学習歴ニ年)は「zakázan:ザカーザン」らしい。これは禁止という意味で、よく侵入禁止という札に書いてあるが、ザカーザンという硬質な響きがロボットアニメのタイトルみたいでカッコイイとのこと。

一方、チェコ人の女子学生が好きな漢字は「嵐」。「山に風が吹いて、嵐なんてカッコいい〜」と言っていた。チェコ人の男子学生が言った。「僕が好きな日本語は・・・夕焼けです!」理由は「とても・・・綺麗です。空が真っ赤に焼けているという表現はとても風情があって・・・」とウットリとした目つきで語る彼。説明はもちろん日本語である。その他にも彼らは村上春樹や大江健三郎、安部公房などの本を読破し、日本語で文学を味わっているのだそうだ。私、日本人だけどこの三人の作家どれも読んだことない・・・。いや〜、恐れ入りました。やっぱり好きこそものの上手なれですね。

チェコ人が知らないチェコ語~プラハのチェコ語教室から2(前編:なぜチェコ語は難解なのか?を自分なりに考えてみた)

チェコ語の格

格変化の千本ノック練習。前にある動詞を見て、どの格が来るか判断する。
後ろに付けられたアルファベットは7格のそれぞれの頭文字。


チェコ語を学び始めて約1年が経ちました。昨年9月からは新しい学校に通い、毎日チェコ語を勉強するようになりました。今現在の私が体験したチェコ語学習の状況を書き留めておこうと思います。

前回の記事「チェコ人が知らないチェコ語〜プラハのチェコ語教室から」では、現在形・過去形を使っての簡単な会話が出来るようになった、とドヤ顔で書いていましたが・・・実は頻出フレーズを脳内にストックしていただけで、7つあるチェコ語の格のことはほとんど知らなかったのだ・・・ということに気が付きました。恥ずかしいです。まあ前の学校は週に二回だったし、ゼロから始めた訳だから、習い事の域を出ない学習だったということはあるのですが・・・。

チェコ語は難解な言語である」 という定説をよく聞きますが・・・ぶっちゃけ何がそんなに難しいのよ?ええっ?と思っていたんです。その難しさの正体がこの「格変化」です。前の学校ではキチンと格変化を習っていなかったのです。格変化が必要な場合は先生が「そこは"マミンカ"ではなく、"マミンク"って言うのよ」などといちいち訂正していたのですね。「なんか名詞が色々と変化してるんだなあ〜」とボンヤリ思っていたくらいだったので、クラスメイトが教室にある格変化表を指差し「これがチェコ語でいちばん難しいとされているやつだよ」と言ってたのもイマイチ、ピンときていませんでした。

先生がチェコ語で言うことを聞いて理解したり、教科書にあるチェコ語の平坦な文章を読んだりすることは、実はそんなに難しくはないんですよ。何が難しいかって、7つある格を活用させて話したり文章を作ることが非常に難しいのです。非常に難しいと書きましたが、私にとってはこれが鬼のように難しい。チェコ語って、外国人から話されるのを拒んでいるのではないか・・・と思うくらい複雑です。

ここで私なりにチェコ語の7つある格変化を説明してみたいと思います。以下がザックリとまとめた概要ですが、学習して 1年目なのでザックリした説明であることと、専門家ではないので100%正確なものではないことをご了承下さい。


※(チ)-チェコ語、(英)-英語、(日)-日本語
※格の該当する部分に下線を引きました。
※Petr(ペトル)は英語のPeter(ピーター)にあたるメジャーな名前です。


・主格(1格)ー Nominativ
 主語として使うノーマルな格。
(チ)Petr je student.
(英)Peter is student.
(日)ペトルは学生です。

・属格(2格)ー Genitiv
 「◯◯が所有しているもの」「〜(場所)から」「〜(場所)へ」
 「〜(量)程の」というときに使用する格。ザックリ言うと英語の「of」「〜’s」「from/to」などにあたる。
(チ)To je kniha Petra.
  (英)This is Peter's book.
  (日)これはペトルの本です。

・与格(3格)ー Dativ
 「◯◯はX歳です」「◯◯に/を〜(買う、助ける、書く、送る、電話)する」など
  コミュニケーション関係のときに使う格。
  ザックリ言うと英語の「to/for〜」みたいな感じ。
(チ)Zavolám Petrovi.
(英)I call to Peter.
(日)私はペトルへ電話する。
 
・対格(4格)ー Akuzativ
 「私は、◯◯を〜(愛する、食べる、飲む、見る、聞く、作る、着る)する」など
  目的語となるものを表すときに使う格。一番使用頻度が多い。
(チ)Dívám se na Petra.
(英)I look at Peter.
(日)私はペトルを見る。

・呼格(5格)ー Vokativ
 「お〜い、◯◯!」「こんにちは、◯◯!」など名前を呼びかけるときに使う。
(チ)Ahoj, Petře!
(英)Hi, Peter!
(日)やあ、ペトル!

・前置格(6格)ー Locativ
 「〜で(場所)」「〜について話す(話題)」など位置と話題について話すときに使う格。
     いつも前置詞とセットで使われる。
(チ)Bavili jsme se o Petrovi v kavárně.
(英)We talked about Peter in the cafe.
(日)私達はカフェで ペトルについて話した。
  
・造格(7格) ーInstrumentál
  「〜と一緒に」「〜の間、前、後、上、下に」など一緒に存在するものと、位置的な情報を伝達するときに使う格。
  ザックリ言うと前者は英語の「with」にあたる。
(チ)Čekám Evu s Petrem před kinem.
(英)I wait for Eva with Peter  in front of the cinema.
(日)私はペトルと一緒に 映画館の前でエヴァを待つ。


チェコ語の「Petr」が格ごとに「Petra」「Petrovi」「Petře」「Petrem」・・・と、変化しているのがわかりますか?

Petr (男性名詞、生命があって動くもの)でこの7通りの変化があります。さらにチェコ語の名詞は「男性名詞、生命がなくて動かないもの」「女性名詞」「中性名詞」があり、これらももそれぞれ異なった7変化をします。7格×4タイプの名詞で28通りのバリエーション。しかし驚くなかれ4タイプの名詞の中でも語尾によってザックリ3通りに分けられ、それぞれ異なった変化をします。男性名詞(生命があるもの)×3、男性名詞(生命がないもの)×3、女性名詞×3、中性名詞×3、だから7格×12パターンで、えーと・・・バリエーションはザックリで84通りです。どうです、気が遠くなってきませんか・・・?(84通りですが、変化がダブっている部分も多少あります)。


そもそも、なぜチェコ語はこんなに複雑な格変化を持っているのか?先生はこのような理由であると説明します。

この英語の文章 Eva loves Peter. (エヴァはペトルを愛する)
を、チェコ語にすると Eva miluje Petra.(対格-Akuzativ)になります。

英語はS(主語)+V(動詞)+O(目的語)の語順が決まっていて、そのルールに沿って話す言語です。SVOの順番を無視したら通じません。ところがチェコ語はSVOの語順を重視しない言語です。Eva miluje Petra.(対格-Akuzativ)の語順をメチャクチャに変えてみましょう。

Petra miluje Eva.
Eva Petra miluje.
Petra Eva miluje.
Miluje Eva Petra?(質問)
Miluje Petra Eva?(質問)

このようにSVOを守らずに語順をメッチャクチャに入れ替えても、目的語となる Petr が Petra(対格-Akuzativ)になっている以上「エヴァがペトルのことを好きなんだな(つまり、愛されているのはペトル)」ということが明確になるんだそうです。

先生はこのようにエクスキューズし、フレキシブルに語順を入れ替えられるチェコ語の利点(!)を説明しますが、外国人からしてみれば「ハア?なんじゃそれ?英語と同じくSVOの語順を守ってれば、複雑な格変化なんていらねえじゃん!」という感じなのであります。しかし英語のSVOに沿ったところで、格変化なし(主格のみ)で話しても、チェコ人には通じないんだそうで・・・。


さて、ここからは私の愚痴になりますので興味のない方はどうぞタブを閉じて下さい・・・。


チェコは小国なので昔はドイツやロシアに侵略されて、チェコ語が禁止されている時代もありました。けれども伝統芸能であるマリオネットの中でだけはチェコ語の使用が許可されていたそうな。今のチェコ語があるのは脈々と続いて来た人形劇のおかげ・・・なんだか胸熱なカルチャー話ですね。しかし、ぶっちゃけ「ドイツの傘下に入っちゃって、完全なドイツ語圏になってた方が、経済的には色々メリットがあってよかったんじゃね?」と思うこともしばしば・・・・。チェコ愛国者が聞いたら卒倒しそうな危険な思想が頭をかすめる私を誰が責められようか、それくらい文法の勉強が大変だったのです。

そもそも・・・文法が複雑すぎて習得難解な上に、仮に習得出来たところで人口たったの1,051万人なんと、東京都より300万人ほど少ない・・・の中欧の海なし小国でしか通じない言語を学習って、どんな罰ゲームよ・・・?!と気絶しそうになります。

チェコ語に使う労力をなー 、フランス語(習得半ばだがチェコ語のためにお休み中) に使えたら、私きっと滝川クリステルも真っ青な仏語力身につけているのではないかと思う訳ですよ・・・。なんならドイツ語でもいい、スペイン語でもいいし、中国語でもいい(学生時代に挫折した経験あり)。もっと世界で使える機会がたくさんあるメジャー言語にこの心血を注ぎたい!

チェコという国にさしたる興味関心もなく、そんなことばかり考えていたので学習に身が入るわけはなく、途中で放り出したフランス語に未練タップリ。「私、チェコ語のコースが終わったらフレンチ・インスティテュートにフランス語習いに行くんだもんね・・・」とインスティテュートのHPをチェックしたりしたこともありました。だってフランス語の音は本当に綺麗。それに比べてチェコ語の音はダサイ、田舎っぽい!この文章を見て下さい。


(日)人生は美しい。
(仏)La vie est belle. (ラヴィ エ ベル)
(チ)Život je krásný. (ズィーヴォット イェ クラースニー)※カタカナ発音は自己流です


ズィーヴォット イェ クラースニー」・・・このチェコ語の田舎っぽさったらないです。フランス語の人生は「ラヴィ」と軽やかで甘く、まさにラヴィアンローズなバラ色の響きですが、チェコ語の人生は「ズィーヴォット」・・・。なんか肥だめにズボっと、いや「ズィヴォ」っとはまってしまったようなトホホホホ〜な人生です。「フランス語と比較しちゃダメよ」と友達にも言われましたが、にしたってダサい、ダサすぎる(そしてフランス語に比べると発音も長い)。

そんなに嫌ならやめれば良いじゃない・・・と呆れ顔で日本の母親は言いますが・・・。しかし、今自分が住んでいるのはプラハというチェコの首都であり、この国の公用語はチェコ語。その国のことを真に理解するにはその国の言語を解し話せないと、 どだい無理な話だと思っているので、腹をくくってやるしかないわけです(学費も納入してしまったし)。嫌よ嫌よも好きのうち、になればいいんですけどね・・・。

ハア〜・・・、と毎日ディープなため息をつきながら教科書を見ているのですが、そんな私にも、ちょっとしたご褒美の瞬間というものが天から与えられる瞬間がないわけではありません。「アッ、通じた・・・!」そう、言いたいことが言えて、ネイティブに理解してもらえた瞬間です。「できた・・・できたじゃん、この私にもできたじゃん!!!」それは幼い頃、バランスを保ちつつ、初めて補助輪なしの自転車をこいだときの開放感に似ています。このままどこまでも走って行きたい・・・と感じ、無限の可能性が目の前に広がっていると錯覚するのです。

そのご褒美な瞬間は本当にささやかなものですが、学習しているからこそ得られる達成感なのでしょう・・・。チェコ語の悪口を言ってばかりで、決して勤勉な学生ではなかったものの、辛抱強く指導して下さった素晴らしい先生方に1,000回のジェクユを捧げたいと思います。また同じ苦労を分かち合い、時に励ましあい、愚痴りあい、共に助けあったクラスメートのみんなにもお礼を言いたいです。毎日学校へ行くモチベーションを引き出してくれたのは、ひたむきに頑張っているクラスメートに良い刺激をもらったから。みんなのおかげで、学内で非リアみつるだった 大学時代の思い出も素敵に上書き保存されました。ということで、私の文章もウエットなキモさを帯びて来たため、エピソード集に映りたいと思います。


後半のエピソード集へ つ・づ・く


追記:チェコ語が難解だというメインの説明として、7つの格変化を挙げましたが、それだけではありません・・・。以下に、私がわかる範囲で難解だと思われる点を追記しておきます。

・疑問詞(WhoとかWhatとか)もそれぞれ7格で変化します。 
・代名詞 (me とか him とか herとか)もそれぞれ7格で変化します。さらに前置詞があるかどうかで2パターンあります。
・形容詞(goodとかbadとか)も7変化します(7格×4タイプ名詞だから28通りか。ダブりもありますが・・・)。
・名詞の複数形も男性、女性、中性で変化します。
・再回帰動詞(seとsi)は二つあり意味によってどちらを使うか違う上に、
 文中での順番(基本的に最初から二番目にくる)に注意を払う必要があります。
・動詞に完了体/不完了体があり、どの体を使うかで意味がかわってきます。
・「行く」が徒歩なのか、それとも乗り物(車、バス、列車/飛行機)に乗るのかでも使用する動詞が違います。

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