@itan-journ@l praha

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『パシフィック・リム』暫定で今年のベスト(by友人I)


        



いや〜、面白かった・・・。なんか、久しぶりに劇場で満足感を得る体験をしましたよ。劇場でこれだけテンションがあがったのって「キャプテン・アメリカ」以来かも〜。同行した友人Iは「今年、暫定ベスト1」とかなり気に入った様子。「パシフィック・リムについて3時間は語れるよ!」と言っていたのでした(ちなみに友人Iはオタクでもない普通の映画好きのオナゴです)。私達は2D鑑賞だったんだけど、3Dでもう一度観たいかも・・・。

土曜のバルト9で昼の回を鑑賞しましたが、場内満員。ソロで来ているオタ・・・もとい、趣味人の紳士の方が多い劇場なのでした。あらかじめ買っておいたポテロングといちごポッキーを友人Iとの間にあるドリンクホルダーにセットし、いざ鑑賞!

舞台は近未来の地球で、太平洋の海底に空いた穴から怪獣が出現。地球をめちゃくちゃにし始めたので、対抗策として全人類が持てる限りの技術力を結集した巨大ロボット(イエーガー)を作り、地球を防衛することにしました。しかし高機能な巨大ロボットを動かす為には1人のパイロットでは負担がかかりすぎてしまうため、パイロットを二人にして負担を減らすことになりました。二人のパイロットの脳を同調(ドリフト)させてイエーガーを操作するシステムになり、怪獣退治は成果を上げるようになりましたが、次第に戦局は人類側に不利になっていきます。

ロボットアニメにはうといんですが、エヴァンゲリオンもそんな感じの話ではなかったでしたっけ?「使徒」とか「シンクロ率」とかありましたよね。前触れもなく急に敵が現れて戦闘シーンになる感じも似てますよ。パシフィック・リムでは選ばれた二人のパイロットでイエーガーを動かすわけなんですが、兄弟とか親子とか夫婦とかいかにも同調するのに向いていそうなペアで動かすんですよ。ロボット映画でしょ、いかにもオタ・・・もとい、趣味人紳士向けでつまらなそ〜!って思っていたんだけど、意外と中に入るパイロットの人間ドラマも充実しているわけなんです。ちょっとでも気になっている方は、是非劇場でかかっているうちに観に行ってみて下さい。



※ネタバレします。本当に未見の方は読まない方が・・・。



主人公のローリー(チャーリー・ハナム)は兄のヤンシー(ディエゴ・クラッテンホフ)とペアを組んでイエーガーを動かすパイロット。ところが怪獣にやられて彼らのイエーガーは大破。お兄さんが乗っていた部分は怪獣にもぎ取られてしまうのです。1人になってしまったローリーはなんとか一命を取り留めたのでした。その後、トラウマを背負ってしまったローリーはパイロットを辞めて、巨大な防怪獣壁を作る現場で働いたりするんですが、環太平洋防衛軍の司令官ペントコスト(イドリス・エルバ)に要請されて再び前線に立つことになります。

劇中では怪獣のことを「Kaijyū」って呼んでるんですよ!「カイジュー イズ アプローチング!」みたいに誰も彼もみんなが「カイジュー」を使っていて、まさにユニバーサル言語「カイジュー」なんですよ。でも「カイジュー」は人と人を繋ぐ魔法みたいな言葉ではないんですが・・・。笑う門にもカイジュー・・・いたら嫌ですが!

ニュースでは色んな国が怪獣襲来をレポートしているんですが、ニュース見出しの日本語が妙に〜変!!なんかグーグル翻訳を通した文章をそのままコピペしたような・・・。これ、言ってくれれば自然な日本語にしてあげるのに〜!!ちょっとそこが残念でした。

ローリー役のチャーリー・ハナムさんはこの映画で初めましてなんですが、チャニング・テイタムばりの肉厚バディを持つ、そこそこのイケメンです。でもちょっと印象が弱いって言うか、割りと普通っちゃ普通の白人メンズという感じ。お兄さんの乗っていた部分が怪獣にもぎ取られちゃうシーンは、結構衝撃で「ええ〜!!」って思ってしまいました。私がローリーだったら、その時点で心が折れちゃうかも・・・。それで壁を作る工事の人としてひっそりとしているんですが、ペントコストさんに「壁の建設現場で死ぬか、イエーガーの中で死ぬか、どっちがマシなんだ!」って言われて決意するんですよ。ここ、結構グっと来ちゃいますね〜。「君に読む物語」のライアン・ゴズリング並みに、シンプルだけど心に響く名言ですよ。

そんな名言を吐く、上司のペントコストさんはかなり理想の上司。リーダーシップがあるし、部下思いだし、自己犠牲精神もあって、S.H.I.E.L.D.のニック・フューラー(サミュエル・L・ジャクソン)や、007のM(ジュディ・デンチ様)ばりに思わず付いて行きたくなる上司です。演じるのはイドリス・エルバさん。フィルモグラフィーを調べたら「マイティ・ソー」で時の番人みたいなセーラープルートっぽい役をされていた俳優さんでした。まだ40歳くらいなのに、彼の醸し出す信頼感が半端ないです。

再び前線に立つことにしたローリーは香港にある基地へ。そこで彼を出迎えたのが森マコ(菊地凛子)という日本人のイエーガーの研究者でした。香港の基地には中国の3つ子(イケメンになったトン吉、チン平、カン太風)が動かすイエーガーとロシアの夫婦(妻がグエン・ステファニ風)が動かすイエーガー、そしてオーストラリアの親子が動かすイエーガーが待機していました。ローリーのパートナーは適合性が高いマコに決定。いよいよ、実戦のときがやってきますが・・・。

菊地凛子、キター!という感じで日本人なら思わず応援したくなっちゃいます。髪に青いメッシュを入れた赤い口紅のパンキッシュなオナゴで、ほほう、クールなキャリアウーマンなのかな〜と思ったら、意外とドジッ娘でBSOLっぽいオナゴでしたね。部屋のドアについているスコープからローリーの様子を伺ったり、自室と間違えてローリーの部屋を開けようとしたりしてましたから。凛子さんは、声が顔に似合わず可愛いんですよね。

ペントコストさんとマコはたまに日本語で話しているんですが、ペントコストさんの日本語がカタコト過ぎて妙に浮いてるんだよな〜。「ああ、ここだけ覚えた台詞なんだろうな〜」って感じがするんですよ。ここは日本語のコーチを付けて、台詞回しを滑らかにしておいた方が良かったですね。後々、ペントコストとマコの絆問題に関わってくるのでね。ギレルモ監督はロボットフェチだけど、言語フェチではない様子。

基地には百戦錬磨のパイロットたちがいるんですが、オージーのハンセン親子が通算6年でずっと無敗なんですよ。お父さんのハーク(マックス・マルティーニ)と息子チャック(ロバート・カジンスキー)のコンビで、ずっと好成績だから息子がテングになってるわけです。でもお父さんはあんまり息子のことを怒らないと言う。息子がローリーのことを小馬鹿にしたりしてるんですが、息子とローリー、二人とも金髪マッチョだったので欧米系の顔を識別するのが苦手な私は「あれ?どっちがどっちなの?」と迷ってしまいました。父ちゃんと家族の会話している方が息子なんだな、という大雑把な認識・・・。ローリーの兄ちゃんとローリーの区別もつかなかったし、似ている人が二人だと認識出来ないので、どっちかが黒髪とかにして欲しかった(笑)。ローリーがいまいち印象薄なのも原因なんですよ。

基地には科学者もいます。怪獣オタクの怪獣研究者ニュートン(チャーリー・デイ)と杖をついた数学者のハーマン(バーン・ゴーマン)の二人組が色々なデータを解析したりしてるんですが、この人達が結構いい味出してましたね。私はイギリス英語の数学者ハーマンさんがお気に入り。いっつも杖をついてセコセコ動き回っていて「私の出したデータに間違いはありません!政治や芸術は嘘を付くけど、数字は嘘をつきません!数字は神が書いた直筆のご信託ですよ!」とか言ってるんですよ。確かに数学が好きな人に「どうして好きなの?」って聞くと「正解がひとつしかないから」って答えが帰って来たりしてるしな〜。なるほどですよ。このハーマンさん、誰かに似てるな似てるな〜って思ったら、爆笑問題の太田さんとスターウォーズのC-3POに似ています。

怪獣オタクのニュートンの方は、怪獣の脳みそだの組織だのをホルマリン浸けにして、うっとりしている変態です。演じているチャーリー・デイさんは「モンスター上司」で、ジェニファー・アニストンのエロ歯医者にセクハラされている歯科衛生士の役をやっていました。この研究者二人組はドイツ人って設定だったので、二人でいるシーンはドイツ語で話してもよかったのでは、と思うのでした。やっぱり言語フェチじゃないのね、ギレルモちゃん。

さてローリーの相方選びが始まり、棒術みたいな武道で一人一人適合度合いを計測していくのですが、どうもピンと来る相手がいません。不満そうな顔をして記録を取っているマコに「お前がやってみろよ」とローリー。ペントコストさんの許しを得て、棒術で対戦するローリーとマコなんですが、ものすごく適合度があることがわかります。「僕たちは合うんだよ、わかるだろ」とローリー。ここ、なんかエロい!棒術だし、セックスのメタファーか?って中学生みたいな脳みその私は考えてしまう訳ですが(笑)。しかし、菊地凛子はアクションスターではないので、動きにキレがなくってモッタリしていたなあ〜。ここがちょっと残念なのでした。やっぱりルーシー・リューってすごいのね。

他のパイロットが血縁関係だったり夫婦だったりして、濃い〜人間関係なので、この二人もっさとやることやっちまいな!って思っていた訳なんですよ。小さい頃、アイスダンスやフィギュアでペアの男女ってみんな夫婦か恋人同士だと思っていたので、それと同じ感覚ですね。まあ最後までプラトニックなんですが、友人Iが「あの二人さ、あのあと付き合うんだろうね〜」って言ってたので、羨ましいです。何が羨ましいかって、仕事で出会って色んな障害を共に乗り越えて最後はプロジェクトもラブも成功するってパターンが私のア↑コガレだったからですよ。詳細は「砂漠でサーモンフィッシング」をご覧下さい。

めでたくペアを組むことになった二人は試運転するんですが、マコがドリフトの時に過去のトラウマに捕われてしまうんですよ。どうやら彼女は幼い時に怪獣の攻撃を受けて、家族を亡くしているようなんですね。で、幼いマコが芦田愛菜ちゃんなんですが・・・もう、びっくらこいたよ!天才子役でこういう子がいるってことだけは知っていたんですが、まさかここまでとは・・・。泣く芝居だけなんだけど、なんだこの上手さ!・・・演技がワンパターンじゃないし、なんだか観客を引き込む力がある!「あの子、怖い・・・。だってあれ、全部演技なんでしょ?」と友人Iも驚いていました。実はペントコストさんは、その当時にイエーガーのパイロットをしていて、そこからマコとの関わりが続いていた訳なんです。で、トラウマにとらわれたマコが暴走しそうになったりするんですが、間一髪のところで司令室がイエーガーの電源オフにしたので惨事を逃れることが出来ました。しかし、巨大なコンセントみたいな電源だったなあ・・・。

その後、大物怪獣が数匹攻撃してきて、すべてのイエーガーが戦うんですが、中国とロシアのイエーガーは大破しちゃってパイロットも死んじゃうんですよ。そうそう、バトルシーンのことを書くのを忘れていました。とにかく今までに見た経験がないシーンの連続で、大迫力なんですな。「アベンジャーズ」でニューヨークがめちゃめちゃに破壊されてしまいますが、恐らくその10倍はグチャグチャになってると思います。また雨が降ってたりして、全体的な画面の色調がダークなのも大人っぽいんですよ。友人Iは、パイロットペアが同じアクションで戦うのに萌えていたような。確かに二人で頑張ってるシーンは結構グっとくるんですよ。

それと平行して、怪獣オタク博士ニュートンが怪獣の脳みそと自分の脳みそをドリフトして怪獣退治の手がかりを探るんですね。怪獣と同調って・・・さすが変態、思いつくことが斬新ですよ!怪獣のメモリーを覗き込んだら、怪獣はクローンで、太平洋の海溝から繋がった怪獣世界から送り込まれているので、そのトンネルを破壊すればどうやら助かりそうってことがわかるんですね(確か)。で、もう1つ怪獣の脳みそが欲しいってことで怪獣の生体サンプルの闇ディーラー、ハンニバル・チャウ(ロン・パールマン)のところへ出かけて行くんです。

バトルで残ったのはオージー親子のイエーガーとローリーとマコのイエーガーだけでした。中国とロシアはあぼん・・・。なんか(旧)共産主義ダメ!って感じなのかしら・・・深読みし過ぎですかね。このバトルでだったかは忘れちゃいましたけど、ローリー&マコのイエーガーがピンチになって、背中にしょってるソードで怪獣を斬るシーンがあるんですよ。そこで、斬る前にマコちゃんが「家族のために」って日本語で言うんですよね。ここは復讐萌えだったと思います(しかし萌えには色んなジャンルがあるんだなあ・・・)。

生き残った二機のイエーガーは拍手喝采で基地に迎えられるのでした。しかし一息つく暇もなく、最大カテゴリー5の怪獣がやってくるんですよ。一方、怪獣オタクのニュートンは赤ちゃん怪獣に食べられそうになりながらも、新しい脳みそをゲット。再びドリフトしようとしますが、杖をついた数学者ハーマンさんが「1人で危険をおかすな!私も一緒にドリフトする!」って言ってくれたので、3人でドリフトするんです。すると、地球と怪獣世界を繋ぐトンネルには怪獣しか入れないことが判明(怪獣のDNAかなんかをスキャンして通しているシステムらしい)。だから、トンネルに爆弾を落とすには怪獣と一緒にそこをくぐらなきゃならないんですね。慌てて二人は、そのことを司令室に伝えに行きます。

先のバトルで負傷したオージーの父ちゃんに変わって、ペントコストさん自身がイエーガーに搭乗することに。彼は昔パイロットだったのですが、旧型イエーガーは被爆量が高く、次に乗ったら死んでしまうと言われていたのでした。「先生、そんな・・・」とマコちゃん。しかし「私がやるしか道はないのだ」とペントコストさん。この瞬間に理想の上司ランキング、ナンバー1がペントコストさんに決定(笑)。オージーの息子は父ちゃんとの別れを惜しみます。ちゃんとお別れを言う時間が取られてるってことは死亡フラグですよ(泣)。

最大カテゴリーの怪獣なので、戦局は圧倒的に人類側に不利です。そうそう、怪獣のビジュアルを書くのを忘れていました。種類は色々あるんですが、だいたいみんなイグアナと深海魚が合体したみたいなビジュアルをしていて、やたら手足が長かったりするんです。ギレルモ監督の「パンズ・ラビリンス」に出て来たトラウマレベルの人食い鬼みたいなのもいましたね。太平洋に空いた穴からザバーッと出てくるのでみんな魚くさそうな感じ。皮膚とかヌルヌルしてそうでしたね。死骸を解体すると寄生虫みたいなものもイッパイ出てくるんですよ。ダンゴムシみたいな足がいっぱいある感じのやつで。怪獣の生体サンプルはもっとドロドロしてたりゲロゲロしてたりドドメ色してたりしててもよかったんじゃないかな〜っと思いましたが。

ペンタコストさんとオージー息子の乗るイエーガーには爆弾が積んであって、彼らがトンネルにそれを落とす予定だったんですが、任務遂行出来ないくらい大破してしまったので2匹の怪獣を巻き添えにして自爆する道を取ることにします。ローリーとマコは、残る1匹を仕留めてトンネルに爆弾を落とさなければならないことに。もう彼らに全人類の運命がかかってる状態ですよ。あれ、「家族のために」と言ってソードで怪獣をぶった切るのはここだったでしょうか。ちょっと記憶が曖昧です〜。あとは怪獣の死骸とともにトンネルに入り、イエーガーについている原子炉をメルトダウンさせるだけです。一瞬、怪獣は死んでいてもトンネル通過出来るの?!って心配になりましたが、どうやら大丈夫な様子。

原子炉をマニュアルで爆発させなければならず、ローリーはマコを先に脱出させます。マニュアル爆破を起動させ、カウントダウンがスタート。ローリーもギリギリで脱出し、トンネルは爆破成功。しかし、爆破の衝撃などでローリーは大丈夫かどうか微妙な感じです。一足先に海面につき、ポッドから出たマコはローリーのポッドを探します。少し遅れてローリーのポッドが浮き上がってきました。マコは海に飛び込み、ポッドを開けてローリーの安否を確認します(重そうなスーツ着てたけど泳げるのね)。しかしローリーは目を開けません。彼を抱きかかえて泣くマコ。すると「苦しいんだけど・・・」とローリー。やっぱり生きてた!このパターンは「ブラザーズ・グリム」でも見ましたぞよ。

歓声に沸く司令室。「すぐに救援のヘリを行かせるから!」という声は、二人の世界に入っているローリーとマコには届きません。「おーい、聞こえるか?もしもし?」無線を無視して見つめ合う二人。で、ハッピーエンド・・・。そして友人Iの友人Iが「あの二人さ、あのあと付き合うんだろうね〜」に続く訳です。どうです、面白いでしょう?え、そうでもない?先に注意書きしておいたので、このネタバレを読んでいるあなたは既に鑑賞しているはず・・・面白くないと言っているアナタ様は未見ですね!あーあ、aitan語りでパシフィック・リム バージンを失うとは・・・。ここで普通の洋画だったら、ローリーとマコがもうベロチューとかしているのがスタンダードなんですが、ただデコとデコを合わせて微笑んでいるだけってのがなんかいいんですよ!ギレルモちゃんわかってる。過度な恋愛要素はいらないんです!

そしてイエーガーの設計図風の画にのせてエンドロール・・・タララン、タララーン!フーウ!最高!(手をグーにして上へ)。赤ちゃん怪獣に食べられたと思ってたハンニバル・チャウさんが生きてたりして、最後の観客サービスも忘れませんよ。「ギレルモちゃんのフィルモグラフィー制覇をライフワークにするわ!」と言う友人Iなのでした。要所要所にテーマソングみたいなのが流れるんですよ。「タララン、タララーン!」って。劇場を出てお茶飲んでるときも「タララン、タララーン!」と言い続けている私達なのでした(中学生男子か)。私的には、劇中の日本語(文章、話し言葉共に)をもうちょっとなんとかしてもらえるともっとよかったんだけど、まあこれくらいだったらお茶目の範囲内かな。うギレルモちゃん、面白い映画をありがとう(ちなみに「ギレルモちゃん」という呼び方は三池崇史監督が使っていたので真似しているのでした)!



秋葉原でカイジューフィギュアを大人買いするギレルモちゃん↓





テーマ曲。タララン、タララーン!↓

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『愛のむきだし』安藤サクラの怪演がすごい

        

愛のむきだし【Blu-ray】 [ 西島隆弘 ]

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つ、疲れた・・・。237分、およそ4時間の映画ですよ!DVDは上下巻の2枚組。「美しき諍い目」(238分 ジャック・リベット監督)「ママと娼婦」(220分 ジャン・ユスターシュ監督)と並ぶ長尺映画です。監督は園子温さん。「恋の罪」、「冷たい熱帯魚」、「ヒミズ」が面白かったので本作も・・・と思って借りたのですが、途中でどうしても眠くなり昼寝。目が覚めたらご飯時だったのでそのまま夕食。その後に入浴をしてストレッチと、多大なるインターミッションを挟んでしまいました・・・。

やっぱりな〜、長い映画を観る時って体調を整えとかなきゃいけないですね・・・。まあ家でDVDだったから、好きなときに止められるんだけど、私はすぐにトイレに行きたくなる性質なので劇場だったら実に面倒くさいことになっていたかも。それに椅子とか座り心地が悪かったらもう地獄ですよ。

ということでリアルタイムで一気見出来なかった為、映画のテンションに付いて行くことが出来ませんでした。パワフルな映画であり長尺なので、そこで一旦振り落とされてしまうと後から挽回することが難しいのですよ。まるでフルマラソン!しかし、日本映画界において重要な作品であることは間違いないかと思います。「CUT」のアミール・ナデリ監督もきっと気に入る作品なのではないでしょうか。

どんなお話かというと・・・書き終わらなそうなので、あらすじを追いながらの感想文はやめにして、メインキャスとのユウ(西島隆弘)、ヨーコ(満島ひかり)、コイケ(安藤サクラ)について思ったことを書きたいと思います。

主人公のユウを演じるフェミニンな感じのDKの西島隆弘さんですが、AAAという音楽グループのメンバーなんだそうです。全然知らなかった・・・。DVDのパッケージに「西島」ってあったので、えっ西島(秀俊)さん?!と一瞬思ってしまいましたが。清潔感があって可愛らしい男の子なんだけど、満島ひかりと安藤サクラという演技派に挟まれてしまうと、演技力不足な感じに見えてしまうのが残念でした。この役を染谷将太さんが演じていたらどうだったかな〜と少し思ってしまいましたよ。ただ、すごく清潔感があって女装も似合うから盗撮してても勃起しててもキモくないんですよ。このピュアさは得難いものだと思いました。あと、盗撮のときにすごいアクションをしながら撮るんだけど、動きにキレがあって美しかったです。そのギャップが面白かったですね。

ヨーコの満島ひかりさんは、もうすっかりおなじみの顔も可愛くて演技も上手という女優さんですよ。白いパンチらが眩しかったな〜。チンピラを倒す武闘派でありながら、助けてくれた女性(さそりさん=変装したユウ)に乙女な想いを寄せるというツンデレな役です。ひかりさんは、可愛いんだけどちょっと顔が濃すぎるんだよな、と思ったら沖縄出身でおじいさんがアメリカ人なんですね。なるほどですね。弟さんの満島真之介さんも俳優で、弟さんはもっと外国人風な顔をしてるんですよ。姉弟でも混じり方は色々あるんですな。日本の女優さんは、ほとんど脱いだり(重要な部分を隠す脱ぎは論外)リアルな濡れ場を演じたりしない人が多いですが、若いときにパンツを見せられるかどうかが今後の試金石になるような気がしています(安藤サクラさんもパンチラ・・・というより自ら見せていたシーンがあったな)。すごく可愛かったんだけど、髪が微妙な長さでだったので思い切ってボブとかにした方がもっと可愛かったのではと思いました。

新興宗教団体のボス、コイケを演じていたのが安藤サクラさんですよ。「クヒオ大佐」にも脇役で出ていましたが、私が安藤さんのことをはっきりと認識をしたのは今回が初めてです。最初の印象は・・・「なんだ、このブス」。お父さんが奥田瑛二でお母さんが安藤和津で、この顔かよ・・・残念だな・・・と気の毒にさえ思いました(自分を棚に上げてすみません)。でも、観ているうちに不思議と妖艶に見えたり、角度によっては雰囲気のある美人に見えたりして、3人の中では一番引き込まれるキャラクターになっていきました。そして、なにより演技が史上最高に上手です。実の親(板尾さん)に虐待されて、モンスターになっちゃった女子高生で新興宗教団体の重役という難役を、努力の跡をまったく感じさせずにサラリと怪演されてました。いや〜、すごい。すごい人ですよ安藤サクラさん!これから邦画を観るときに「この人が出てるから観よう」と思う女優さんになりました。今回初めて知ったんですが、旦那さんが榎本佑さんなんですね!個性派二世俳優同士で、すごいお似合いだな〜って思いましたよ。こういうカップリングを見ると、なんだか世の中上手く出来てるよなあ〜と思うのでした。

『ノーコメント by ゲンスブール』世界一ダンディーな男、セルジュ

         



帰省中、夕刊を読んでいたらゲンスブールとジェーン・バーキンの写真が目に飛び込んできました。ゲンスブールのモノローグで構成されたドキュメンタリー映画が公開中、ということで「これは帰省中に行っておかねば・・・」と思い、渋谷のアップリンクへ出かけました。

アップリンクという映画館があるあたりは、学生時代していたバイトの行き帰りでよく通った道です。当時はまだ映画館はありませんでした。小さいカフェの上が映画館になっていて、チケットを買ってトイレに入りましたが・・・トイレが古い上に激狭(おそらく昭和の時代からあるトイレなのだろう・・・)。同じく狭い廊下には公開予定の映画のチラシがたくさん貼ってあります。階段で二階に上がると本屋やCDを売るスペース、カウンター、そして劇場となっているんですが、劇場というより部屋。椅子も市販のアームチェア(デザインばらばら)を並べた状態で、趣味で開催した自主上映といった感じです(プラハの映画館、BIO OKOを思い出す)。こじんまりとしていつつも文化的な香りぷんぷんの個性的な映画館でした。

映画を鑑賞した後は、本やCDの棚を冷やかしてみました。上映中の映画の関連本なんかも置いてあるのですが、本棚にずらっと並んだ書籍のセレクションが・・・濃い!!雑誌「えろちか」の古本も並んでいましたよ(500円くらいだった)。なんか「狂人の本棚」という賛辞が相応しい実にディープなコーナーでした(映画を観なくても本コーナーを見ることが出来ます)。

さて映画ですが、ゲンスブールのモノローグに合わせて当時の映像やイメージ映像を入れたドキュメンタリー映画です。伝記映画「ゲンスブールと女たち」を観ていたので、「リアルではこんな感じだったんだな〜」と後から確認する感じでした。

なによりゲンスブールが自らの言葉で自身を語るのが貴重!天才肌で鬼才でという印象が強いのですが、ちゃんと普通に喋ってるよ・・・みたいな。彼のミューズたちとの映像はもちろんのこと、幼い頃のケイトやシャルロット、ルルや愛犬ナナ(ブサ可愛いブルテリア)とのプライベート映像も見られて嬉しいです。

印象的だったのは「自分はスラブの魂を持っていることを強く意識している」「フランス語は最も美しい言語だと思う」と語っていたことです。両親がロシア系ユダヤ人なんですね。でメンタリティーはフランス人。確かに歌詞には「スラブ」とかよく出て来るし、映画「ジュテーム・モワ・ノンプリュ」の中で、ジョー・ダレッサンドロ演じるポーランド系青年と恋に落ちたジェーン・バーキンに「スラブって素敵」みたいな台詞を言わせていましたね。あと、ゲンスブールの歌詞がフランス語以外の言語で歌われているなんて想像も出来ません。英語歌詞のトリビュートアルバムがありますが、やっぱりなんか違うんだよなあ〜って気になっちゃうんですよ。曲と歌詞が切り離せないくらい強く結びついているからかな。

世間では醜男だって言われていたそうですが、私は全然そうは思いませんよ。イケメンとは言いませんが、ダンディで孤高の芸術家なんだけど、愛を求め続ける少年のようでもあり・・・めっちゃカッコイイじゃないですか。「ゲンスブールと女たち」で、ジェーン・バーキンが「Tu es beau...Tu es beau!」(あんた、ハンサムよ!)って叫んでメロメロになっているシーンがありましたが、その気持ちが今回よ〜くわかりましたよ。

親切なことに、公式サイトには使用曲のリストも!これを編集すればサントラになるわけですね。来る秋は、またゲンスブールに浸っちゃおうかと思います。フランス語の勉強も・・・続けなきゃなあ・・・ハア・・・。

『CUT』シネフィルでドMで

        

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私、気付いちゃったんですよ・・・(稲川淳二風)。西島秀俊の出演している映画は、つまらないってことに!!!「ストロベリーナイト」も超つまんなかったしな〜。「セイジ 陸の魚」も意味わかんなかったし・・・。いや、つまらないというか・・・きっと、高感度な通好みの映画に多く出演されているのでしょう。だから単純な観客の私には、♪わかぁ〜らない〜♪(荒井由実「ひこうき雲」)




※ネタバレします。




さて「CUT」ですが、映画狂の売れない映画監督兼、劇場主の主人公の秀二(西島秀俊)がヤクザに殺された兄の借金を返す為に、一発一万円でひたすら殴れ列づけて借金を返済するというお話です。あらすじ2行で完了!実に単純なストーリーなんですよ。映画が好きで好きで、自主上映なんかもやっている秀二さん。拡声器を片手に上映会のビラを配りながら「シネコンに巣食う商業主義の映画ばかり観ないで、映画が真の芸術と娯楽であった時代の映画を観て下さい!!!」って魂の叫びを発しているんですね。上映会のラインナップも、いかにも映画通の人が集まりそうなセレクションなんですよ。娯楽というよりも学術的、映画史的に重要な作品をチョイスしたみたいな、大学の授業っぽい感じですかね。欠かさず観に行ったらかなりの映画通になれそうです。

小さな劇場によく足を運ぶという友人の友人から聞いた話なのですが、西島さんは普通におひとりで映画を観に来ているらしいです。たびたび目にすることがあるのだとか。なんか、わかる〜!西島さん本人も映画が大好きな方なのは有名ですよね。なので、この映画狂人の役は本当にハマっています。

最初の方の説明台詞がウザかったり、上映会に集まった客が笑いすぎていたりして「なんか微妙だな〜」って思ったりしました。笹野高史さんと常磐貴子がやっている、ボクシングジムに併設されたバーみたいなところのシーンになって、ヤクザたちがお兄さんの残した借金の取り立てにやってくるんですよ。そこで、秀二さんが殴られてお金を得るアイディアを思いつく訳なんですが。あれ、なんだかすごく耳なじみのある罵声が響いているぞ?と思ったら・・・でんでん光臨!思わずテンションが上がってしまいました。私、もしかしたら西島さんよりでんでんさんのことが好きなのかも・・・と思ってしまいましたが(笑)。でんでんさんは、グッチか、トム・フォードか?ってくらいファッショナブルなダークブルーの光沢のあるスーツを着用していました。

しかし、一発一万円ってけっこういい商売ですね。顔はボコボコになるけど、これをやって借金返したいって人はきっと大勢いると思います。人間サンドバッグになった秀二を支えているのは映画への愛、ただそれだけなんです。殴られてボロボロになった身体に、好きな映画を映写させて寝転んでいるんですよ。これはきっと、映画による治療なんですね。黒沢監督や溝口監督のお墓参りに行って、巨匠の墓石に触れて英気を養ったりもするんです(私もトリュフォー監督のお墓参りに行ったことが・・・)。殴られている時は、「東京物語・・・1953年・・・小津安次郎・・・」みたいに映画の歴史を暗唱。く、狂ってる・・・。まさにシネフィル(映画狂)のドMなんですよ!大好きな映画のことを思い出して痛みを緩和させているのでした。

ラストあたりまで、こんなシーンの連続で「眠い・・・やはり西島映画・・・」と気を失いそうになるんですが。しかしカタルシスはラスト近くに突然やってきます。「グレーテストな100本」みたいな字幕だけが出て殴られるごとに作品名と監督名が出てくるようになるんですよ。なんだこれ!90・・・80・・・70・・・みたいに10本刻みで数字だけの画面が挿入され、ラストに向かってのカウントダウンが始まります。斬新な試みですね〜。ほとんどが観たことのない映画ばかりでしたけれども。100本の映画リストを探してみたところ、タマガワジョウスイニッキさんのリストが大変見やすかったのでリンクさせて頂くことにします。ほとんど知らない映画ばかりですが、チラホラ観たことがあるものも見つかったので、個人的な備忘録としてメモ。

女と男のいる舗道/ ジャン=リュック・ゴダール
美しき諍い女/ ジャック・リヴェット
・サンセット大通り/ ビリー・ワイルダー
・野性の少年/ フランソワ・トリュフォー
・2001年宇宙の旅/ スタンリー・キューブリック
8 1/2/ フェデリコ・フェリーニ

ちなみに100本のセレクションはアミール・ナデリ監督によるものだそう。アカデミックでお洒落なセレクションだな〜という印象ですよ。私が書いた感想文があるものはリンクをつけてみましたが・・・まあ〜、どれも眠たくなる作品ばっかりですね。この中で一番感動したのは「野生の少年」かなあ〜。「ダメな子でも、やれば必ず出来るんだ!」という映画で、就職活動時に観て泣きました。ジャングルで育った狼少年を社会復帰させる話なんですが、ヘレン・ケラーのサリバン先生のように少年をケアする児童学者の役でトリュフォー監督自身が出演しているんです。トリュフォー監督の「やれば出来るんだ」と噛み締めるように言う台詞で大泣き。だからと言って私の就職活動は全然うまくいきませんでしたが・・・。

「CUT」はベネチア映画祭で大絶賛されたということですが、映画を生業にしている人から熱狂的に支持されているのは、よ〜くわかります。ピュアすぎてマッドネスな映画愛に皆さん胸アツなのでしょう。暇があれば、自分セレクションのグレーテスト100本も作ってみたら楽しいのではないかな〜と思うのでした。

『幸福の罪』二重構造になった重厚人間ドラマ

        

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ツタヤの新作コーナーを物色していたときに発見した一本です。タイトルが「幸福の罪」ということで、なんとなく「幸せの行方・・・」みたいなイヤ〜な話なのかなと思って手に取ったら、なんとチェコ映画でした。「こりゃあ借りるしかねえべ〜!」とレンタル。

チェコの映画ってなかなか観る機会がないではないですか。見つけたら観るようにはしているのですが、今までに観たチェコ映画ってたぶん10本行くか行かないかくらい。思い出せる限りだと「悦楽共犯者」、「ひなぎく」、「火事だよ! カワイ子ちゃん」、「ブロンドの恋」、「コーリャ 愛のプラハ」、「プラハ!」・・・くらいでしょうか。10本行きませんでした。

この映画はチェコ独特のシュールな感じとか、プラハの美しい街並とかは出て来ません。どこの国でも成立しそうな人間ドラマです。サスペンス&スリラーが要素が入った人間ドラマで、一見幸せそうな家族の裏には複雑に絡み合った愛憎劇が・・・というディープで見応えのある映画でした。今回はあらすじを追いながら箇条書きで感想を述べて行くスタイルで行ってみたいと思います。



※ネタバレします。



<あらすじ その1>

リハビリ医のトマシュ(オンドジェイ・ヴェトヒー)は妻のミラダ(ズィタ・モラヴコヴァー)と娘を持つ良き家庭人。義理の父親(ルデック・ムンザー)と義理の妹リーダ(アンナ・ゼイスレロヴァー)と同居しており、みんなで仲良く暮らしています。妻のミラダは元夫で刑事のラダ(ヒネック・チェルマーク)の間に障害を持った息子がおり、交代で息子の面倒を見ているのでした。義理の妹リーダは歯科医を目指していましたが、現在は勉学を中断して病院や施設でレクリエーションのボランティアをしています。プールのある大きな邸宅に住み、仲睦まじい一家でしたが、ある日妻のミラダが夫宛の怪しげなメールを読んでしまいます。それは夫トマシュと浮気相手の女性との情事の模様が描写されているポルノ小説風のメールでした。取り乱す妻に夫は「心当たりがないし、ただのイタズラだと思う」と言うのでした。

・医者の家系である裕福で幸せな家族の日常風景が綴られます。ステップファミリー&義理の家族というちょっとややこしい人物相関図ではありますが、彼らの日常風景をじっと見ているうちに「ああ、奥さんが再婚していて、旦那さんはマスオさん(義理の家族と同居)なんだな」ってことが、なんとなくわかってくるんですね。説明台詞、一切ナシなのがなんだか大人な感じですよ。

・季節はいつくらいの話なのか不明ですが、長袖着用だけどプールや湖に入ったり出来る季節ということで、おそらく晩夏くらいなのかな?チェコに限らずヨーロッパは少しでも陽が出るとみんな薄着になって太陽を浴びたり、プールに入ったりします。女子はタンクトップやノースリーブになりますが、男子は上半身裸の人が道を歩いていることも。

・義理の妹リーダは精力的に小児病棟や障害者施設を回って、本を読み聞かせしたり歌ったり、ピエロに扮したりして、患者さんのレクリエーションを担当したりしているんですよ。演じているアンナ・ゼイスレロヴァーさんは、少女っぽいあどけなさが残るスキニーな女性。少しもの悲しそうな青い目と、薄い唇が印象的な人です。一生懸命ボランティアしていて偉いなあと思っていましたが、実はこの行為は彼女にとっては「つぐない」だったのでした。

・妻ミラダの元夫ラダは刑事です。二人の間には高校生くらいの息子がいて障害を持っているため交代で彼の世話をしています。家で息子に晩ご飯を食べさせて、おとぎ話のテープを聴かせて寝かしつけた後、ラダは仕事を続けます。彼のPC画面にはロリータの文字と少女の顔写真。未成年の少女を監禁して売春させている犯人を追い詰める為の調査です。実際に売春組織のアジトを家宅捜索するシーンがあるんですが、1人バスタブで血だらけになって死んでるし、あとのロリータは手錠をかけられて動物みたいに飼われているしで、結構衝撃的でした。

・妻ミラダが偶然見てしまった夫宛のメール・・・。それは浮気相手と思われる女性が書いた夫との情事の様子が描写されていました。これが綺麗目なポルノ小説風(いや読んだことはないんですけど、イメージで)。「アンタ、いったいどういうことなの?!」と夫を問いつめますが、夫は「イタズラだろう」と言うのでした。私はこの時点で「夫はクロじゃないか?」と思ったんですがね。なんか妻のなだめ方に、シュミレーション済みみたいな手際の良さ感があるんですよね。実際には半分クロ、半分シロだったわけですが・・・。


<あらすじ その2>
リハビリ医であるトマシュが担当している患者の中に、オリンカ(アンナ・リンハルトヴァー)という14歳の少女がいるんですが、どうやらトマシュのことを好きになってしまったオリンカが例のメールを送りつけたようなんですね。オリンカの経過は良好で退院することになり、オリンカのお母さん(アレナ・ミフロヴァー)はトマシュに感謝します。オリンカがメールの送り主であることを知ったトマシュは、今後このようなことは一切しないようにと彼女に警告するのでした。オリンカが退院してしばらくしたある日、彼女の日記帳から例の性行為描写がある文章を見つけたオリンカのお母さんが警察に連絡。トマシュは連行されてしまうのでした。

・下着姿で診察台の上に横たわるロリータのオリンカ。トマシュが彼女の腰や脚を触ってチェックします(DVDパッケージがこのシーン)。見ている方も妙な緊張感が走ったり、居心地の悪さを感じてしまったりするのですが、ここは病院の治療室で、これは治療の一環なのです。このオリンカちゃん役の子がイイですね。妄想癖のある暗めの美少女なんですよ。彼女の顔を見ただけで、「あ〜こりゃ危険物件だな」って一発でわかるのがいいんです。

・自分よりも年上で、見込みのない相手を好きになってしまった文才のあるロリータほど危険なものはありません。恋慕と憎悪は紙一重。「どうせ自分のものにならないのなら、地獄に落としてやる!」と、攻撃してくるんですから・・・。このパターンは「つぐない」でもありましたね。あれもホラーじゃないけど実に怖い話でしたよ。

・しかしオリンカちゃんによるソフトタッチなポルノ描写の文章は秀逸で、劇中で「作家になれるわね」と言われていた通り、妄想力を活かして創作の道に入った方がいいのではないかと思いましたよ。エロいんだけど、なんだか品がある文章なんですよね。

・お母さんの通報により警察が動き、あっちゅー間にトマシュ先生は警察に連れて行かれてしまいます。これには家族もビックリ。事件を担当するのは妻ミラダの元夫ラダです。ラダさんは同僚の刑事からこの事件を担当して欲しいと指名されてしまうんですよ。どうやらラダさんとトマシュ先生は幼なじみで、奥さんのミラダがトマシュ先生と不倫して妊娠してしまい、ラダさんと離婚したという経緯があるみたいなんですね。ラダさんに残されたのは障害がある息子だけじゃないか、それでもいいのか?トマシュに復讐してやらないか?と同僚がそそのかすんです。ラダさん、一度は断るんですが、結局トマシュの事件を引き受けることになります。

・映画では双方の話を聞かずに通報だけでトマシュ先生を勾留してしまうので、ちょっと可哀相(たぶんフィクションだからと思うのですが)。トマシュ先生は逃亡の恐れも薄い被疑者だし、お家に帰してあげてもいいのでは・・・と思ってしまいました。


<あらすじ その3>
無実の罪に問われたトマシュ。ラダはオリンカへ事情聴取と性的虐待が行われたというトマシュ自宅での実況見分を行います。トマシュ自宅内部の様子を詳細に述べるオリンカ。妻ミラダと義理の妹リーダはラダへ直談判し、個人的な感情を調査に持ち込まないで欲しいと頼みます。調査を続けるに従ってオリンカの証言に矛盾点が出てきました。そのためトマシュは無罪で釈放され、家族に平安が訪れたのでした。しかし・・・。

・観ていて「どうせオリンカの妄想なんだし、調べればすぐわかるだろう」と思っていたんですよ。しかし、オリンカは知らないはずのトマシュの自宅の様子をスラスラと述べるのでした。詳細は一致しています。あれ・・・?一体どうして?!とこちらもキツネにつままれた気分に。トマシュの娘の誕生日会でいっぱいロリータ来てたけど、オリンカはその中にいなかったしなあ〜。聴取のシーンで、ラダ(心理学の専門でもあるらしい)がオリンカに色々と質問をするんですが、つまり聞きたいのは性的暴行が本当にあったのかどうかってことなんですよ。でもオリンカは、はぐらかすんですね。「じゃあ僕を5歳の子供だと思って説明して」と言うラダに「あんた、5歳なの?」とオリンカ。思ったよりも手ごわいです。

・トマシュ逮捕の噂が広がり、彼の娘も学校で孤立してしまいました。義理のお父さんには「トマシュは出張に行った」ということにしてあります。「トマシュはこんなに長い間、一体どこに行ったんじゃ?」とおじいちゃん。「日本よ」と嘘をつく家族。うん、きっとチェコ人にとって日本は遠い遠い異国ってことなんだろうなあ・・・と思いました。

・形勢不利になったトマシュ側の家族はいてもたってもいられません。妻ミラダと義理の妹リーダはラダの家を訪て「トマシュは絶対そんなことしてない」と言うんです。最初は冷静に話していたミラダが、「私が浮気したから仕返しのつもり?!」ってラダに食って掛かるんですよ。さらに「トマシュのセックスライフは私が一番よく知ってるわ。はっきりいって、トマシュを知る前は、私セックスってたいしたことないって思ってたのよ!『みんな、こんなことで大騒ぎしてるの?』って思ってたけど、トマシュとセックスして良さが始めてわかったわ!」ってぶちまけちゃうんですよね。あ〜・・・こりゃ、言ってはいけない激辛な一言。しかし、ラダさんは傷つきつつも落ち着いて「そうか、わかったよ」って言うんですよ。

・ラダさんは別に同僚刑事にそそのかされて、トマシュに復讐しようとしているわけでは決してないんです。本当にただ調査しているだけで。オリンカの証言の裏も確認しようとしてるし(実は、年老いた義理のお父さんが1人で家にいるときにオリンカが「孫娘の友達です」と言って家の中に入り、バスルームを借りていたのでした)。よく考えてみれば、この映画の中で実に出来た人として描かれているんですよ。振り返ってみれば、劇中で一番の真人間はラダさんなのでした。

・ラダさんに「夫との性生活はうまくいってる」とぶっちゃけたミラダですが、実は最近ご無沙汰だったことをリーダに告白します。そして「実際、トマシュはやったのかしら・・・?」と気持ちが揺れてしまうんですよね。「何を言っているの、トマシュは絶対そんな人じゃない」と励ますリーダなのでした。


・そして医学的調査が行われ、オリンカちゃんは処女ということがわかります。ってか捜査の順番が逆じゃね?って思いますが・・・。しかし「小さい男性器だと処女膜がやぶれないことがある」ということで、焦点となるのが、トマシュの男性器のサイズ。なんかここらへんの展開は「え〜?!」って感じなんですが。で、病院でサイズを測定するんですよ。男性のお医者さんがいるのにも関わらず、わざわざ休憩中の看護婦さんが呼ばれて測定されるんですが、ここはギャグなのか?笑ってもいいのか?!と戸惑います(笑)。ここで豆知識です。「16センチ、平均よりもやや大きめ」これがチェコのサイズ感だそうですよ。

・無事に釈放され、お家に帰ったトマシュ。義理のお父さんは「京都へは行って来たのか?」とトマシュに聞きます。幸せが戻った一家。よかったのう〜と思うも、義理の妹リーダの様子がなんだかおかしいです。このリーダさん、主要登場人物っぽいのに今までそんなに出ている場面がなかったので、なんか変だなあと思っていたのですが・・・。



<あらすじ その4>

実は、トマシュは義理の妹リーダと不倫をしていたのでした。湖畔のコテージでおちあう二人。トマシュとリーダは若い時から付き合っていたようです。トマシュが勾留されている間、色々なことを考えたリーダは少し精神が不安定になっていました。しかし、ドロドロになった上に膠着してしまったこの関係はどうしようも出来ません。その後リーダの遺体が湖から上がり、トマシュが逮捕されるのでした。

・実は、ロリータ暴行疑惑は前説みたいなもので、最後の数十分がこの映画のメイン部分だったのです。ズドーン!お、お、お、重い・・・・。そうだったのか・・・と言う、何とも言えない気分に。1つ屋根の下に妻と愛人がいた(その二人は姉妹)ってことで、エグすぐる展開ですよ。どうやらトマシュとラダとミラダ&リーダ姉妹は幼なじみで家族ぐるみの付き合いがあったようです。夏休みは一緒に湖畔でキャンプとかしてたんですね。で、トマシュとリーダはそのころから付き合っていたと。トマシュは推定20歳くらい、リーダは14歳くらいでしょうか。たぶんヨーロッパでもこれはアウトかと思うんですが・・・。

・リーダはずっと日陰の存在で、トマシュの子を妊娠しても中絶するしかなかったという話が語られます。そして姪にあたるトマシュとミラダの娘が幼い頃に、その子を危険にさらすようなことをして、ギリギリのところで思いとどまったみたいな話も。うわ〜、もうなんか息苦しくなってくるんですよ。だからこそ、リーダは病院や施設でボランティアをやって少しでも過去をつぐないたかったわけなんです(トマシュの側にもいられるという理由もあったのでしょう)。そうだったのか・・・。

・湖畔のコテージで二人が密会するシーンは、本当に美しく撮られているんです。薄紫に染まる空と湖面。水草を優しく揺らす風。これが何も隠す所のない普通のカップルだったら、どんなにか幸せな旅行になったことでしょう・・・。二人を取り囲む、美しい自然が残酷なんですよ。そして、そこはかとなく漂う破滅の予感・・・。このシーンは唸ってしまいましたね〜。

・その後、諍いがあり暴れるリーダの首をトマシュが押さえる場面も。結局トマシュも一皮むけば、完璧な男ではなかったってことなんでしょうか。嫌だな、嫌だな〜。この二人の演技が、前半のトーンと全然違うんですね。特にリーダは、家族思いで優しいハツラツお姉さんって感じだったのに、後半はもう人が違ったように病んでる感じになっちゃうんですよ。女優さんの演技が素晴らしいです。

・アリバイ作りのために先に帰ったトマシュ。リーダは下着姿になり湖の中に入ります。ただ泳ぎたかっただけかもしれません。しかし、帰らぬ人となってしまったのでした・・・。殺人事件として再びラダさんが調査し、トマシュは逮捕されてしまいます(ロリータ事件のときにトマシュ指紋を取るカットがありましたが、これが伏線でした)。なんだかなあ〜・・・。ここで残された家族のリアクションはすべてカットされ、自室の机に座るオリンカちゃんが出てきます。「あなたが出てくるまで、私はずっと待っています・・・」とトマシュに手紙をしたためるオリンカちゃん。怖いな、怖いな〜。手紙を書き終わり、キスマークをつけるために赤いルージュを引くオリンカちゃん。するとだんだん、彼女の顔がリーダの顔に変化して行くのです。実に良く出来たラストシーン!最後まで「うわ〜・・・」という気分にさせてくれる映画でした。

・オリンカちゃんのことは別として、結局はトマシュの自業自得なんですよね。精神的に不安定な女性を惹き付けてしまう不埒な男の、考えうる限りで最悪の結末ということでしょう。教訓は・・・不倫は妻の知らない相手とやれ?面倒くさい物件に手を出すな?いや違うな多分(汗)。監督のヤン・フジェベイクさんは「この素晴らしき世界」(未見)などで日本でも知られている方のようです。他の作品がオスカーの外国語映画賞にノミネートもされたことがあるそうで。本作のような「うわ〜・・・」って言う作風の監督さんなのかは分かりませんが、機会があったら観てみようと思います。

余談:原題の「nevinnost」は、英語で言うと「innocence」に相当する名詞だそうです。オリンカとリーダが持つ純粋さが、悲劇を生んでしまったと思うと、またちょっと背筋がブルっとするタイトルですね。



『007 慰めの報酬』スカイフォールの前日譚としてならアリ

         


スカイフォール」がとても面白かったんですが、私、気付いちゃったんですよ。「慰めの報酬」まだ観てなかったってことに・・・!ダニエル・クレイグのボンド映画3本の中ではたぶん一番地味なんですよね、これが。しかし「スカイフォール」の前日譚だと思うと結構グっとくるシーンがあるわけです。やっぱりボンドとMの関係がいいんですよ。

地味なのは恐らく敵役(マチュー・アマルリック)とボンドガール(オルガ・キュリレンコ)が地味なせいかなあ・・・?でも「カジノ・ロワイヤル」の敵役(トリ顔のナイスミドル、マッツ・ミケルセン)とボンドガール(エヴァ・グリーン)も当時はそこまの知名度がなかっただろうしな〜。なんでしょうね、「慰めの報酬」全体に漂う地味〜な感じは。敵の隠れ蓑がNPOだとか、悪事が天然資源独占とかだからでしょうかね。あとアクションもあまり印象に残ってるシーンがないし・・・。

ストーリーとシチュエーションにゴージャス感が足りない感じ。DVDパッケージが、砂埃だらけになったボンドとボンドガール。しかも肩で風切ってメンチも切っていて、いつものゴージャス&ワールドワイド感がない。国は色々と移動してるんですけどね〜(新しい国に移動したときに出る都市名の字幕フォントは各自カスタマイズされていてお洒落でした)ボリビアの高級ホテルとか、セレブが集まるパーティーとかはまあ豪華っちゃ豪華でしたけれども、なんかリゾーティーな意味でのワクワク感が足りなかったような気がします。「こ、ここ行ってみてえ・・・」みたいな場所もなかったしなあ〜。

「カジノ・ロワイヤル」でエヴァ・グリーンが死んでしまった直後から話が始まるんですよ。もうボンドは彼女が死んでしまったことが悔しくて悔しくて、敵に絶対に復讐してやる!って思ってるんですね。エヴァ・グリーンの彼氏が悪い奴につかまっていて殺されてしまったらしいのですが、実は上がって来た死体が別人だったと。その件とマチュー・アマルリックのNPO団体がどういう関係だったかちょっとあやふやなんですが、偽善エコ団体の闇を暴くということで任務につくボンド。

しかし、愛するヴェスパー(エヴァ・グリーン)が死んでしまったからボンドは荒れて荒れてしょうもないんですよ。MI6的には生け捕りにして聴取にかけたかった人をどんどん殺しちゃうし。「ちょっとアンタ、最近荒れてるわよ」とMにも言われてしまう訳です。彼が殺してしまったのは、敵側のなりすましMI6職員なんですが、そいつが長年Mのボディーガードを勤めて来た信頼されている人物だったのです。もうここで、「うわ〜っ!」てなるわけですよ。「Mの身の安全を守る立場にそんな裏切り者がいたとは、どうしても許せなかったのです・・・」って感じじゃないですか〜。

その後、カミーユ(オルガ・キュリレンコ)との会話の中で「Mは自分にとって母親みたいな人だから」みたいなことを言うんですよ。「スカイフォール」で、もしかしてMとボンドは親子なのでは・・・と想ってしまっていた私にはビンゴ!な台詞。前作からさりげなくこういう感じはちりばめられていたんですね〜。で、荒れてるボンドを見てたMI6の組織的にも「ボンドはもう任務から外した方が・・・」みたいな空気になるんですが。しかしMはボンドを続投させるんですね。「私は彼を信頼しているので」ってMがキッパリと言うんですよ。世界で一番上司運のよい男はボンドではないのかと思う瞬間ですよ。逆を言うならMは部下運に恵まれているか。色々フォローが大変な部下ではありますが、いつもその苦労を上回るパフォーマンスを上げてくれますしね〜。

敵のNPO代表のドミニク・グリーンはマチュー・アマルリック。私が最近観た映画だと「ジャック・メスリーヌ」で脱獄を繰り返す犯罪者の役をやっていました。いい俳優さんだけど、ボンド映画の悪役にしてはちょっと小粒かなあ〜?という気もしますね。まあ偽善的なNPOの代表ということで、こんな感じの人でいいのかもしれませんが。今回、悪役の凶暴パートは南米の独裁者が担ってましたね。マチュー・アマルリックは最後、ガソリンのカンと一緒に砂漠に置き去りにされてしまうんですよ。ちょっとトホホでした。

今回のボンドガール、カミーユ役はオルガ・キュリレンコですよ。彼女はウクライナ人なんですが、真木よう子にそっくりな女優さんです。今回は真っ黒に日焼けしてアフリカ系に見えなくもないエキゾチックな人です(ロシアとボリビアのハーフという設定でした)。カミーユは幼い頃に家族を独裁者に殺された過去があり、復讐に燃える女性ということで、ヴェスパーの敵を取りたいボンドと行動を共にする美女なんですね。私が最近観た映画だと「オブリビオン」や「センチュリオン」にも出ていました。モデル出身で顔も身体もすごく綺麗な人なんですが、演技力は正直まだちょっと未知数かも・・・?

途中で「ボンドやっぱり任務から外そう」ってことになって、彼のクレジットカードが停止されちゃうんですよ。助けを求めに、MI6のOBであるマティス(ジャンカルロ・ジャンニーニ)の地中海あたりにある別荘へ行くんですね。すっかり忘れていたのですが、マティスは「カジノ・ロワイヤル」にも出ていたんでした。そこから二人はオーストリアへ(ヨーロッパの方)。オペラを鑑賞しながらグリーンが悪いお友達と水資源の取引をするということで、妨害します。しかしな〜わざわざオペラの劇場で、耳に特殊なイヤホンを入れて複数の人と取引って、なんか変でした。

そして今度はボリビアへ飛ぶボンド。既にMI6はボリビアにも手を回していて、現地職員のフィールズ(ジェマ・アータートン)がボンドをロンドンへ帰らせようとしているのでした。しかし飛行機は明日の便なので、一泊ボリビアにお泊まりしなければなりません(もちろんボンドは帰る気ゼロ)。そしてミス・フィールズとしっぽりするボンドなのであった。いや絶対そうなるだろうと思ってましたよ。ミス・フィールズはちょっとボーっとしているような感じの若いイギリス女性で、演じているのはジェマ・アータートン。私が最近観た映画だと「ヘンゼル&グレーテル」でグレーテルを演じていました。とても可愛らしい感じの女優さんです。しかしボンドと寝るということは死亡フラグなので、殺されちゃうんですよね。後に、現場へやって来たMから「彼女はスパイではなく事務処理を担当する普通の女性よ。たいした魅力だわね、ボンド」ってイヤミを言われてしまうんですが。

グリーン主宰のパーティーに潜入したボンド。そこにカミーユも来ていました。悪い奴らが独占しようとしていた水源に飛行機で向かう途中に攻撃され、なんとか一命を取り留めます。砂漠の洞窟の中で語り合うボンドとカミーユ。愛する人を殺された二人は復讐を果たす為にまた立ち上がるのでした。カミーユはボンドガールなんですけど、ボンドとは寝ないんですよ(だから死なない)。恋愛感情はなくって、復讐という目的がある同志という感じで絆が出来るんですね。朝が来て砂漠から街へ戻る二人。タキシードもドレスも砂埃だらけになってボロボロですが、勇ましく肩で風を切ってメンチ切りつつノシノシと歩いてくるんですよ。これがDVDのパッケージにもなったシーンですね。しかし街へ出るのはローカルのバスという・・・。ここをあえて入れたのは何故だろう?

そこからの砂漠のホテルを舞台とした復讐劇が始まるんですが、まあ途中でピンチになるものの、全てうまくいって終わる訳です。ヴェスパーを騙していた元カレも始末出来たし(しかし彼は同型のネックレスをターゲットの女に贈るのがセオリーらしい)。エンドクレジットの前にお約束の、銃口にバーン!と発砲するボンドのシルエットが。あれっ、なんか最後の方にそれが来るのってお洒落かもと思ってしまいました。本作の地味要素の中に、主題歌が地味ってのもあるのではないかと・・・。「スカイフォール」はアデルの主題歌が大ヒットしましたが、「慰めの報酬」って誰が歌ってたんだっけ?アリシア・キーズとジャック・ホワイトのデュエットですよ。やっぱり歌い上げる系のソロシンガーの方が007には合ってる様な。歴代主題歌シンガーの中ではトム・ジョーンズが好きです(昔、雑誌に「土建屋風ナイスガイ」って書いてあって笑ったのを覚えています)。

ということで地味な「慰めの報酬」ですが、確かにこれ一本だと「う〜ん・・・」って感じの出来ですよ。リアルタイムで観ていたら「あ〜ボンドつまんなくなっちゃったな」って思っていたことでしょう。でも「スカイフォール」の前日譚だとすると「アリかな」という感じでした。最新作は「スカイフォール」のサム・メンデス監督続投で、ボンドガールがペネロペ・クルスだそうですよ。ペネロペは最高齢ボンドガールなんだそうです。夫のハビエル・バルデムは悪役だったし、すごい夫婦だな。

『アルバート氏の人生』切な過ぎるアルバート氏

        



母が借りて来たのでもらい鑑賞。「誰が出てるの?」と聞いたところ「ホラ、あの男っぽい女優さん・・・。昔から有名な人で、誰だっけ、ホラ・・・」と母。「メリル・ストリープ?」「違う」「わかった、ティルダ・スウィントンだ!」「違う」正解は、グレン・クローズでした。グレン・クローズが男装して生きる女性を演じた、ちょっと悲しい映画。いや〜、こんな映画あったんですね。だいたい話題作はタイトルと主演が誰かってことは知っているつもりでしたが、この映画のことはまったく知りませんでしたよ!



※ネタバレします。



舞台は19世紀のアイルランド。アルバート(グレン・クローズ)は地道な仕事ぶりに定評のあるホテルのボーイです。実は女性ということをひた隠しにして生きて来たのでした。毎日もらうチップを貯金し、いつか小さなタバコ店を持つことを目標にコツコツと働く日々。ところがある日、ホテルにやって来たペンキ職人のペイジ(ジャネット・マクティア)に女性ということがバレてしまいます。ホテルの皆に秘密をバラされないか心配するアルバートでしたが、実はペイジも男装をしている女性だったのでした。ペイジは男性として生活し、結婚して妻もいます。そのことに衝撃をうけるアルバート。実はアルバートはホテルのメイド、ヘレン(ミア・ワシコウスカ)に想いを寄せていたのです。ところがヘレンはボイラー職人のジョー(アーロン・ジョンソン)と既に恋仲になっていました。ジョーはヘレンを想うアルバートの気持ちを利用して、お金を巻き上げようとしますが・・・。

ふう〜、悲しいね!実に悲しくて報われない話ですよ。予告編は「アルバートの懸命な生き方が、みんなの心に灯をともすハートフルストーリー!」みたいな感じになってるけど。「”夢を叶える”ロードショー」ともありますが・・・。夢、叶いません。結局のところ、自分を押し殺してコツコツまじめに働いて来たものの、つまらないことで命を落としてしまい、コツコツと貯めて来た貯金を強欲な雇い主に巻き上げられるという実に悲しい話ですよ。一緒に鑑賞した母は「なんなの、この話・・・」と引いていました。映画全体の雰囲気がそこまで悲惨悲惨してなかったのが、救いといえば救いです。

グレン・クローズが男装してホテルのボーイになっている。これは、一体どういう世界なの?と思ったら、周りはみんな彼のことを本物の男だと思っているという設定。彼(彼女)が懸命に働く姿が実に清々しいんです。自室に帰った後は、もらったチップを数えてマイ通帳に記入し、コインを種別にしっかり分類して床下の穴へ収納。なんか清貧という感じで胸を打つんですよ。

そんなある日、ホテルの壁を塗り替えるためにペンキ職人のペイジがやってきます。一見したところ「あれ?彼も女性じゃないか」と思いましたが、私の母はペイジさんが胸を見せるまで男性だと思っていたようです。自分と同じようにして生きている女性がいることに衝撃を受けるアルバート。当時は女性が1人では生きて行けない時代。アルバートは若い時に色々と苦労をして自分を守る為に男装。そのまま男性として生きて来たという人なんですよ。一方ペイジは荒くれの旦那と別れた後、男性として生きて行くことにした女性。最初は昔の性同一障害の人のお話かと思っていたんですが、色々と事情があっての男装なんです。しかし二人とも恋愛の対象は同性(女性)なんですね。ペイジさんは妻(ブロナー・ギャラガー)とつつましいながらも実に幸せそうな家庭を築いているのでした。

アルバートはホテルのメイド、ヘレンのことを密かに想っているわけなんです。ヘレンを演じるのは「この子、最近色んな映画に出てるわね」と母親にも認知されているミア・ワシコウスカ。ダブリンの中級ホテルで働く一番可愛いメイドがミア・ワシコウスカって、なんかリアリティーラインがしっかりしてる気がしませんかね?彼女は「ジェーン・エア」といい、これくらいの時代の映画がなんだかお似合いです。ところが、途中からやってきたボイラー技師のジョーにサクっと取られてしまうんですよ。ジョーを演じているこの若いイケメンはどっかで会ったことがあるなあ・・・と思ったら、「キックアス」の子でしたよ!あのときは童貞ヘナチョコだったのに、実はこんな不埒な美貌のイケメンだったんですね〜。いや〜すっかり騙されました。

色々なことをあきらめてきたアルバートですが、ペイジさんが幸せな結婚をしているのを目の当たりにして、自分も出来るかも・・・と淡い期待をしてしまいます。お金も少しづつではありますが、ちりも積もればで独立資金になるくらい貯まってきました。目をつけた物件を前にして、未来のことを想像するアルバート氏。そこではヘレンやペイジさんの奥さんが笑顔で働いている姿が見えます。しかし、もうこの時点で不幸な予感。不幸フラグがビンビンに立っています。たぶん、彼の夢は実現しないだろうし、貯金も誰かに盗まれるんだろうな・・・・と胸がつかえてしまうシーンでした。

案の定、ジョーがヘレンをけしかけてアルバート氏に貢がせるんですよ。高級チョコレートだとか、帽子だとか、高級なブランデーだとか。ヘレンとのデートが終わった後、自室で本日の支出を計算するアルバート氏。「このままのペースでヘレンにプレゼントをしたら、1年後には◯ポンドの支出・・・」でも、可愛いヘレンを喜ばせる為には必要な経費です。でも、貯金を切り崩したくない・・・。ああ〜切ない、切ないよ!恋心よりも経済が切ないんです。

当時流行していた伝染病のせいで、ホテルは閉鎖されてしまいました。アルバートも病気になり寝込んでいましたが、なんとか回復。久しぶりにペイジさんの家を訪ねたところ、奥さんは既に病気で亡くなっていました。ペイジさんとアルバートは奥さんの形見である手作りの女性用ドレスを着用して、浜辺に散歩に行きます。彼らは本来女性のはずなんですが、女装はなんかやっぱり違和感があるんですよね。「女装感」があるんですよ。ここは見事です。アルバートが夢中になって浜辺を走って、走って、走って転んでしまうというシーンがなんか切ない〜!

一方、スラム出身のジョーはアメリカに渡ることを夢見ていますが、所詮はただのバカな若者。そこへタイミング悪くヘレンが妊娠してしまいます。もちろん結婚する気も子供を育てる気もなく、1人でアメリカに逃げようとするんですね。最初、彼自身は否定していますが最終的にはそうなってしまうわけです。アルバート氏はヘレンと結婚してお腹の子供も面倒を見るといいますが、それにジョーがカチンと来て大げんかに。

ホテルの同僚が総動員で止めに入るのですが、壁に頭を打ってしまったアルバート氏は運悪く死んでしまうのでした・・・・。そして彼の貯金は強欲なホテルの女支配人(ブレンダ・フリッカー)のものに・・・。この女主人がもう最悪なんですよね。お金のことしか考えてなくって、傲慢で体裁ばかり気にしている人物なんですよ。アルバート氏の貯金が入ったので、大掛かりなホテル内部のペンキ塗り替えをペイジさんに依頼するんです。

何も知らずに仕事を受けたペイジさんは、ホテルの裏庭で子供をあやすヘレンと再会します。ジョーに見捨てられて1人で子供を育てているヘレン。ホテルには下女として置いてもらっていますが、女主人からタダ働きさせられています。「子供の名前はアルバートって言うの」とヘレン。「この子も私もひどい人生になるかもしれない」的なことをヘレンが疲れ切った表情で言うんですよ。ペイジさんが「そうならないようにしなければな」と言って映画は終わります。

そんなアルバート氏の人生、いったいなんだったのだろうかね・・・と悲しい余韻が残りますよ。最後のペイジさんの台詞が少しだけ希望を持たせてはくれるのですが。今回調べて初めて知ったんですけれども、昨年のオスカー主演女優賞(グレン・クローズ)、助演女優賞(ジャネット・マクティア)にノミネートされていたんですね。確かにジャネット・マクティアさんは好演してました。なんと身長が186センチあるんだそうです。ところで、ホテルの上客の貴族でジョナサン・リース・マイヤーズが出ていましたが、ストーリーに直接のかかわりはなく本当にチョイ役でしたな。

『マリー・アントワネットに別れをつげて』やはり志麻子さんは作家


        



字幕がないとわからないので、帰省中に観ておきたかった一本です。マリー・アントワネットにダイアン・クルーガー、ポリニャック夫人にヴィルジニー・ルドワイヤン、王妃の朗読係にレア・セドゥということで、楽しみにしていました。

しかしお昼ご飯を食べた後に観たので、ちょっと眠くなってしまいましたね〜。歴史物ってあんまり得意じゃないし、女性の囁く様なフランス語ってなんか眠くなっちゃう・・・。駄作ではないと思うのですが、フランス革命/マリー・アントワネットに興味あり、もしくは百合萌えに興味あり、という人向けの映画かな〜と思いました。



※ネタバレします。



原作小説があるんですが、架空の人物である王妃の朗読係の少女シドニーの視点から捉えられたフランス革命の数日間・・・ということですよ。シドニーは王妃に本を読みきかせする係で、王妃の気分に合わせて読む本をチョイスするという本のソムリエ的な業務も担当しています。演じるレア・セドゥはハリウッド映画でもおなじみ。「ミッドナイト・イン・パリ」や「ミッションインポッシブル ゴーストプロトコル」にも出ているフレンチガールです。ELLEでは、「アンナ・カリーナの再来」と言われてたりします。レアさんの方が肉感的ですが、たしかにカリーナに似ていますね。レアさんのおじいさんはフランスの映画会社パテの会長らしいですよ。フランス映画を観る前に必ずと言っていい程出て来るではないですか、黄色いモビールが回転するとPathé!ってロゴになるあの会社ですよ。レアさん自身もめっちゃお嬢様なのではないでしょうか。

マリー・アントワネットを演じるのは、フランスとアメリカで活躍するドイツ人女優のダイアン・クルーガー。彼女はギョーム・カネ(現在はマリオン・コティヤールの夫)と結婚していたことがあるので、フランス語も上手です。ソフィア・コッポラ監督の「マリー・アントワネット」ではドイツ系のキルステン・ダンストがアントワネット役を演じていました。アントワネットはドイツ語圏のオーストリア出身ってことでドイツ系の女優が起用されているというのもあるのでしょうけれども、ダイアン・クルーガーは本当に綺麗で女王様の風格です。身分が高い人だけが持つ特有のナチュラルな尊大さを十二分に表現出来ていたように思います。マリー・アントワネットに寵愛されるポリニャック夫人はヴィルジニー・ルドワイヤン。ハリウッド映画だと「ザ・ビーチ」でレオ様の相手役として出ていました(ちなみにそのときの仏人彼氏役を演じていたのは、ダイアン・クルーガーの元夫ギョーム・カネ)。知的な雰囲気のパリジェンヌというイメージが強いですね。昔ロレアルの口紅のコマーシャルに出ていて、すごく可愛かったので思わず彼女が付けている色を買ってしまったこともあります(照)。

シドニーは、地味なんですが若くて頭の良い女の子。お使えするマリー・アントワネットにひそかな恋心を抱いているのです。頭が良いだけではなく刺繍も上手。刺繍係は別にいるみたいなんですが、女官長のような立場の人からご指名を受けて王妃の為に一生懸命に刺繍をしたりするんですよ。そうやって献身的に王妃につくすわけなんですが、王妃が一番愛しているのは別の女性、ポリニャック夫人なのでした。民衆の怒りが爆発し、バスティーユ牢獄が占拠され、フランス革命勃発。このままベルサイユ宮殿にいたら危険ということで、アントワネットはポリニャック夫人にフランスから逃げるようにと進言します。

ベルばらも読んでいたんですが記憶が曖昧になっていたので、映画観賞後にポリニャック夫人のことを調べてみました。出自はそんなに裕福ではなかったそうなんですが、マリー・アントワネットに取り入ってお気に入りとなり、大出世した女性なんだそうです。彼女だけではなくて一族まるごとフックアップしてもらったんだそうな。百合萌えと書きましたが、直接的なシーンはないんですよ。でもアントワネットはポリニャック夫人にもうゾッコンで「あなたなしで、私これからどうやって生きていけばよいの・・・」って感じになってるんです。

そんな「最愛のひと」ポリニャック夫人を亡命させるため、アントワネットはシドニーを利用するんですよ。シドニーを呼びつけて、自分がいかにポリニャック夫人を愛しているかこんこんと語り、夫人の影武者として一緒に逃亡するように命令するのです。なんて可哀相なシドニー!シドニーはポリニャック夫人の豪華なドレスを身につけて、ポリニャック夫人は召使いの格好をして逃亡するのでした。かくしてシドニーは敬愛するマリー・アントワネットに別れを告げるのであった。ああ、切ない・・・。

さて、この映画にもたくさんの著名人の方々が絶賛のコメントを寄せています。見たところ「クロワッサンで朝食を」みたいに的外れなコメントをしている方はいらっしゃいませんね。ほとんどのコメントが、ちゃんと映画を観た上で、ご自身の言葉で感想を綴られているようにお見受けしますよ(上から目線ですみません)。その中で一番素晴らしいと思うのが作家、岩井志麻子さんのコメントです。引用させて頂きますと・・・「憎まれても裏切られても失恋の方がいい。一度は恋の相手として見てもらえたのだから。失恋もできない片思いの残酷さを知る映画。」映画がフランス革命やマリー・アントワネットなので、美辞麗句を駆使している方が多い中、余計な装飾を省いた簡潔な言葉で見事に映画の本質を突いているじゃありませんか。さすが小説家ですよ!「5時に夢中!」で「オナ・・・・・・・ニー!」(最近、タメが長め)を連発してるだけのスケベなオバハンじゃないんです、志麻子さんは!ということで、最後は志麻子リスペクトで終わりとさせて頂きます。

追記:その後、志麻子さんは「オナ・・・・・・・ニー!」を封印。押すと鳴く猫のぬいぐるみを使った「オナ・・・・・・・ニャ〜!」というスタイルに移行しました。志麻子さんとお揃いのこの猫のぬいぐるみが今欲しい私です。


『フォロー・ミー』不思議ちゃんと歩くロンドン

         

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ずっと以前に映画評論家の町山智浩さんのポッドキャストで紹介されていた一本です。ポッドキャストを聴いた時点ではDVD化されておらず、観ることが困難な映画の一本ということだったんですが・・・帰省中にツタヤの名品発掘コーナーの下の方で発見しました。どうやらその間にリリースされていたみたいです。町山さんが紹介していて、後にDVD化された名作だと「マドモアゼル」や「追想」なんかがありました。この流れで隠れた名作がどんどんDVD化されると良いですね。


※ネタバレします。


舞台は70年代初めくらいのロンドン。会計士のチャールズ(マイケル・ジェイストン)は最近妻のベリンダ(ミア・ファロー)の様子がおかしいと思い、私立探偵に妻の尾行を依頼します。ところが頼んでいた探偵が変わり、あまり頼りになりそうにないクリストフォルー(トポル)という男が妻の浮気調査を担当することに。彼によると、やはり妻は若くてハンサムな男と浮気をしているということでしたが・・・。

夫の会計士、チャールズを演じるマイケル・ジェイストンの佇まいが、いかにも堅物な上流階級の男という感じで、「これはつまらなそうな男だ・・・」と思いましたが。奥さんの帰りが遅いし、なんだかいつもボンヤリしている。どこに出かけていたかと聞くと「公園に行っていた」とか「映画の二本立てを観ていた」とか「水族館でイルカを見ていた」とか、「本当に1人で?」と勘ぐりたくなるようなデートっぽいことをしている。でも奥さんは「1人よ」と言うんですよ。もういても立ってもいられなくなって、探偵を雇うことにするんです。

しかし、やってきた探偵クリストフォルーは濃い顔したマヌケそうなおっさん。イギリスとギリシャのハーフという設定だそうですが、演じるトポルさんはイスラエル人なんだそうです。とにかくこのおっさんが喋る喋る。落ち着きがなくって、全然探偵に見えません。そもそも人を尾行したりする職業なんだから、街中で目立たないってことが重要なのに、彼の出で立ちときたら真っ白いハンチングにコートにバッグ。それに顔も濃いから目立つんです(笑)。

このクリストフォルーはいつも何かをつまんでいて、会計士にも持参したお菓子をすすめるんですよ。私は思わず耳を疑いました。「マカロン、食べます?これ腹持ちがいいんですよ」と・・・。マ、マカロン・・・??腹持ちがいい・・・?彼が手に持っているのは、私達がよく知るあのパステルカラーで一口食べれるくらい小さいくせに1つ300円くらいする高価な菓子ではありません。色はベージュで佐賀名菓の丸ボウロみたいな大きさの菓子でした(丸ボウロも大好きですが)。当時の英国ではあれが「マカロン」なのか・・・調べた所、パステルカラーの小さいやつはフランス風マカロンで、本作に登場するマカロンはマカロンの原型となったイタリア菓子のアマレッティというものに近いようです。

閑話休題。まず探偵はどうやって会計士が奥さんと知り合って結婚に至ったのかを聞く訳なんですが。奥さんのミア・ファローはカリフォルニアから来たアメリカ人で、あちこちに旅をしているヒッピーっぽい女の子なんですよ。たまたまロンドンに来て、中東っぽいレストランで働いているときに会計士と知り合った訳です。会計士はすごくスクエアで見合い結婚しそうなタイプかと思いきや、たまたま出会った不思議ちゃんのミア・ファローに魅了されてしまいデートするようになるんですね。

会計士はインテリのお坊ちゃんなので、クラシック音楽とか世界の名作小説とか色々知ってる訳なんですよ。で、そういう教養を不思議ちゃんミア・ファローにデートしながら教えたりする訳です。「あなた、すごいわね、物知りね」となるわけですよ。でも知識だけの頭でっかちだから、ダンスとかは出来なくってミア・ファローが無粋な彼にダンスを教えたりして、だんだん仲良くなって行くんです。で、二人は結婚するわけなんですが、やっぱりヒッピーだったミア・ファローはなかなかイギリスの上流階級になじめないんですね。夫は仕事で忙しいし、ロンドンには1人も友達がいないのです。そうして、だんだん孤独をつのらせて行く訳ですが・・・。

あれ、なんだか上段落の最後の二行は私も経験ある・・・。でもさ〜、寂しいっつーたって大都会で何でもあるロンドンなんだし、母国語が通じるんだし、いいじゃん!!!贅沢な悩みだよ!って思う訳なんですよ・・・。まあ、ここで自分の話をするのは本題からズレていくので省略します。70年代のバナルでヒッピーなお洋服を着たミア・ファローがロンドンの名所を彷徨う訳なんですよ。ファッション的にもロンドン観光的にも見所がたくさんあるんです。私はそもそもヨーロッパに憧れた最初のきっかけはロンドンからだったので、その当時にこの映画を観ていたら、かなりビンビンだったと思いますねえ〜。

ミア・ファローは「ローズマリーの赤ちゃん」でもお洋服がものすごく可愛かったです。レトロでバナルなムードのお洋服は服はまず痩せていて、少年体型で、背がそこそこあるっていう体型の人が似合うと思います。個人的には上流階級パーティーで着ていた絨毯みたいな柄を継ぎ合わせたワンピースがすごく可愛かったと思いました。ああいう落ち着いた色の柄ワンピースがこの秋冬欲しいなあと思っていたのですが、やはりミア・ファローが着るから可愛いのでしょう・・・。

実はクリストフォルーが会計士に言っていた浮気相手の「若くてハンサムな男」というのは存在していなかったのです。じゃあミア・ファローは誰と一緒にいたのかと言うと、探偵のクリストフォルー本人。尾行がバレバレだったので、彼の存在に気が付いていたのです。最初は「何、この人?」と思っていたミア・ファローなんですが、付かず離れずの距離感でずっと自分を付けて来る男が無害でなんとなくいい人そうだということがわかると、だんだん妙な親近感のようなものを抱くようになるんですね。一緒にいたと書きましたが、一緒にいたような、いないような不思議な一定の距離感を保ったまま、二人はロンドンの街を歩いていたのでした。

二人は一言も会話をしません。でも何とはなしに気持ちが通じ合っているという不思議な関係なんです。ハイド・パークに行ったり、ナショナル・ギャラリーに行ったり、キューガーデンの温室に行ったり、イルカの曲芸を見たり、テムズ河のボートに乗ったり・・・。ロンドン名所巡りに飽きたら、クリストフォルーが面白い名前のストリート巡りに連れて行ってくれるんです。「ミルク通り」「ベーコン通り」「ハム広場」「アーティーチョーク通り」「プリン小道」「お酢通り」「ガチョウ通り」などなど・・・!これ、実在する通りなんでしょうか、行って写真を撮ってみたいです。忘れちゃいけない、バックミュージックもいいんですよね。寂しそうなんだけど、ちょっと楽しい、でも切ない・・・みたいなムーディーな音楽なんです。映像と音楽がものすごく合っていて、観客も一緒に70年代のロンドンを歩いている気分になれるんですよ。

音楽を担当しているのはジョン・バリーなんですね(ジェーン・バーキンの最初の夫で、彼らの娘ケイト・バリーは写真家)。映画音楽家としてとっても有名な人です。だって、誰もが知っているあの007のテーマを作った人ですよ?私の好きな映画だと「ナック」もそうですね。本当に素晴らしい作曲家です。とにかくムーディーで、キャッチー。フォロー・ミーやナックは曲を聞いただけで映画の世界、60〜70年代のロンドンが脳内にウワ〜っと広がって来ますよ。

妻が一緒にいた男は依頼した探偵だった!ということで、めちゃくちゃに怒る会計士なんですが別に二人は浮気しているわけじゃないんですよ。なんとなく一緒に歩いていると心が通じ合って、なんだか楽しいというだけで。「結婚したんだから、妻は妻らしくしろ!」って言う訳なんですが、「妻らしくってどういうこと?私は好きな人と一緒にいたいから結婚しただけなのに」ってなるわけなんですよ。そりゃあそうですよね。だってヒッピーっ気のある娘が結婚したってこと自体驚きなんですから、会計士が考えているところの伝統的な「妻」を一方的に求めても無理ですよ。

結婚前はお互いの知らないことを教え合っていたのに、今は全然会話がないんです。それって愛じゃないわよ!という妻。う〜ん、これは・・・。まあ夫婦ってね、そんないつもラブラブってものでもないじゃないですか?ちょっと「SATC2」の「いつも二人でキラキラしていたいの!」って言うキャリーのことを思い出してしまいましたが。でもミア・ファローの言ってるのは恋愛のいい上澄みだけをすくった「キラキラ」じゃなくって、お互いにリスペクトしあって思いやり合って生きて行きたくってことで、それが彼女の言う愛で、結婚前は愛があったのに今は消えてしまって正直これが結婚生活だと思うとアタシやだわ、ってことなんですよ。結婚する/しないじゃなくて、もっと二人の仲の根幹の部分に関わる話ですね。でも結婚したり肉体関係を持ったりした後でガラっと変わっちゃう人もいるじゃないですか。特に男性側に多い気がしますけれども。でもそれじゃダメなんですよ!その関係の上にあぐらをかいて面倒くさがったりしてると・・・っていう警鐘ではないでしょうかね、これは・・・。

夫が探偵を尾行させていたことを知って、妻の方も「え〜っ?」ってなるわけです。浮気を疑うならば、先にもっとケアすることがあるのではないかと思うのですが・・・。しかし、粋なクリストフォルーは「数日間、奥さんの後を何も言わずに追いなさい。でも会話をしてはいけません。一緒にいろんな場所を歩いたら彼女の気持ちがわかるでしょう。もう一度奥さんと恋に落ちる経験が出来るなんてあなたは幸せな男だ」って言うんですよ。スクエアな夫は「そんな、何日も仕事を休むなんて出来ない」とか言うんですが、最後はしぶしぶと探偵に従うわけです。ああ、よかった・・・これできっと二人は破局の危機を脱することでしょう、と一安心。なんてことないっちゃ、なんてことない話なんですが、ロンドンを歩くミア・ファローがとても可愛くてちょっと気の効いた映画なのです。

テーマ曲にのせてハイライトシーン↓



『アイアン・フィスト』よっ、ルーシー屋!と思わず掛け声

        



友人Iと映画館で鑑賞。作品チョイスはもちろん友人Iです。お盆休みまっさかりの水曜日、渋谷シネクイントにて鑑賞してきました。ネットで予約をしておいたのですが・・・客少な!40〜50代くらいのソロで来てる紳士(カンフー映画ファン?)が多かったですね。しかしシネクイントに来たのって、久しぶり〜!こけら落としの「バッファロー66」を観に行った以来ではないでしょうか。バッファロー66、ヴィンセント・ギャロが監督/主演で、ヒロインが「ぷに子」のクリスティーナ・リッチでした。懐かしいな〜。シネクイントの座席は前の座席との空間が広めに取られていて、これならトイレが近い私も安心して中座出来そうな感じです。

楽しみにしていたんだけど、私は体調が思わしくなくって睡魔に襲われアクビの連続でした(これは私のコンディションなので、映画の本質とは関係ありませんが)。絶好調のときに観ていたらもっと楽しめただろうに・・・。でも面白かったですよ。荒削りな所もあったけど、さすがは「タランティーノ・プレゼンツ」!


※ネタバレします。


一応、舞台はアヘン戦争のころの中国ってことなんだけども・・・まあ、奇想天外カンフー映画なので、時代背景とかどうでもいいっちゃどうでもいいです。わざわざ何世紀とか言わなくてもいい。ザックリと中国!以上!でも全然問題ないでしょう。

オープニングタイトルとクレジットが中国語と英語の二カ国語表記になっていたので、なんかのっけから信用出来るかも感が・・・。雰囲気が古いカンフー映画そのもので、気合い入っている感じがしますよ。主人公のブラックスミス(RZA)は訳あり風の鍛冶屋。彼の恋人は売春宿で働くレディ・シルク(ジェイミー・チャン)で、お金が貯まったら二人で街を出ようとしているのでした。主人公/監督/音楽/脚本と4役のRZAさんですが、本業はヒップホップアーチストなんだそうで。俳優をしたり、「キル・ビル」の音楽を担当したりもしているそうです。チラシによると、ヒップホップ界きってのカンフー映画マニアで、今回の映画製作に至ったとか・・・。

いや〜、この映画ってきっと彼の長年の夢だったんじゃないですか?実現出来てよかったじゃないかと思う訳ですよ。しかも主役も演じてるし(当初は主演も兼ねる予定ではなかったようですが)「オレの、オレによる、オレのためのカンフーアクション映画」が成立してるじゃないですか。男の夢を叶えたんですよ!しかしね、RZAさんはお顔が眠そう!いつも目がとろ〜んとしていて半開きに見えるんですよね〜。両手を失った鍛冶屋からアイアンフィスト装着して復讐をするんですが、どんなアクションをしていてもな〜んか眠そう!ダルそう!恐らく彼は二重の幅が広いからじゃないかと思うんですが。私が好きなフランス女優のリュディヴィーヌ・サニエも同じタイプの目ですね。

なぜ19世紀の中国の村にアフリカ系のブラックスミスがいるかというと、彼はもともとアメリカのプランテーションで雇われていた奴隷の息子なんですね。彼のお母さんがパム・グリアなんですよ。「ジャッキー・ブラウン」や「マーズ・アタック!」に出ている女優さんですね。お母さんは白人の農園主の愛人で、農園主がブラックスミスを自由にする契約書みたいなものにサインをしたんですよ。で、自由の身になった彼は船に乗り世界を見に行くんですが難破して中国に漂着。中国のお坊さんに助けられて東洋哲学に触れて開眼、みたいな流れでここにいるというわけです。

ブラックスミスの恋人、レディ・シルクを演じるジェイミー・チャンは「ハングオーバー」シリーズでステュの奥さん役で出ている人ですね。彼女は目がちょっと釣り気味で、チークボーンが高いアジア人っぽい顔をしているんですがクールビューティーというわけではなく、どちらかというと親しみやすい感じの顔。なんかチープでエロ可愛いんですよ(褒めてる)。こういう子がキャバクラにいたら思わず通っちゃいそうな感じ(私は女ですが)。

なんか中国の皇帝が金塊をどこぞから都に運ぶみたいな話があって、その金塊を狙って悪い奴らがブラックスミスの住む村にやってくるんですよ。獅子組みたいな山賊グループがいるんですが、組のトップに金獅子親分がいて、ナンバーツーに銀獅子(バイロン・マン)、ナンバースリーに銅獅子(カン・リー)という幹部がいるんです。しかし銀と銅が結託して金獅子親分を殺害、自分たちで金塊を奪おうとするんです。一方、父親殺害の知らせを聞いた金獅子の息子ゼン・イー(リック・ユーン)が敵を討つ為に村へやって来るというストーリーもあるんですね。

この息子ゼン・イーが、特殊なアームスーツを着ていて彼の意のままに、色んな所からナイフがシャッ!と飛び出すんですよ。彼自身もカンフーがめちゃめちゃ強い訳なんですが、こういうギミックは見せられると「すげ〜!」ってテンションが上がりますね〜。演じているリック・ユーンさんは、シュっとしたアジアンイケメン。モデルとしてもキャリアがあるそうで、ベルサーチやラルフ・ローレンが起用した初のアジア系アメリカ人モデルなんだそうですよ。007のダイ・アナザー・デイでは悪役を勤めたそうです(未見)。弟さんのカール・ユーンさんもイケメンでモデル出身。「リアル・スティール」ではライバルのロボットオーナーである日本人役を演じていました。悪い奴、銀獅子を演じたバイロン・マンさんは顔も濃い演技も「佐藤浩市入ってるよね〜」と劇中ずっと思っていました(友人Iは銀獅子が佐藤浩市と名倉のハーフだと供述)。

金塊の護衛についたジェミナイという男女二人組がいるんですが、名前からして双子かと思ってたら夫婦だったんですね。夫が妻をかついで、妻が敵をキックでやっつけるんですが。彼らは実に華麗でしたね〜。この重力なんてものともせずに軽々と舞う感じ、たまりません。武道じゃなくて舞踏。お互いの剣を噛み合わせて、夫が下、妻が上になってシャキーン!って決めポーズを作るわけですが、取り囲んでいる敵が「ジェミナイの◯◯の術のポジションだ!」って言うんですよ。こういう説明台詞ならもう大歓迎なんですけどね〜(笑)。妻を演じるグレース・ファンさんはちょっと人工的な感じの美人でした。

で、金塊を守ったり銀獅子&銅獅子を制圧するためにジャック・ザ・ナイフというイギリス人の巨漢が来る訳なんですが、これがラッセル・クロウ!ヒゲを生やしているとC.W.ニコルみたいですね。彼が泊まるのが、レディ・シルクも所属する売春宿なんですね。英雄色を好むという感じで、娼婦を同時に何人もオーダーするんですが(しかしエキストラも美人が多かったな)。なんだか赴任地で経済力と白人というステータスをいいことに、調子ブっこいてる外資系企業の重役みたいだったな、ラッセル・クロウ・・・。彼も強いっていう設定なんですが、ただ自動回転するナイフで相手をグサっと刺すだけでしたが。しかし、彼が出たことでちょっと映画全体のゴージャス感がアップしていますよ。

そしてそして、お待たせしました、売春宿の女将マダム・ブロッサムがルーシー・リューなんです!もうキター!!!ルーシー、待ってました!という感じ。最近の映画出演は声だけのが多かったりしていますが、こういう国士無双系アクションで悪い奴をバッタバタとなぎ倒すルーシーが見たかった人は私だけではないはず・・・。ルーシーの独壇場は後に回すとして・・・。売春宿のセットがいいんですよね。怪しげなピンク色した不夜城!って感じで、外から見える所に羽衣みたいなのをヒラヒラさせたお姉さんをダンスさせている仕様なんですよ。このわかりやすさたるや!で、天井から各部屋をなめるシーンがあるんですけど、色んなタイプのお部屋があるんですね。私は薄いパープルと黒を基調としたアナ・スイみたいな部屋が可愛いなって思いましたよ(笑)。

あ、あともう1人メインキャラがいたんだった。銀獅子&銅獅子がゼン・イーに放った刺客(って設定だったっけ?たしか)で金剛ことブラス・ボディって言う筋肉ムキムキのスキンヘッド大男がいるんでした。この男は強いだけじゃなくって、身体の至る所を金剛のようなメタルに変化させることが出来る特性があるのです。だから、どんなに攻撃されてもメタル化しちゃえば平気。むしろ攻撃を相手に跳ね返してしまうんです。リアル、ストロング金剛ですよ(ストロング金剛は「風雲!たけし城」で鬼として迷路の中で挑戦者を待ってて、捕まえると顔を真っ黒に塗りたくるという子供にはトラウマを残すようなコーナーに出てました)。私と友人Iは演じるデイヴィット・バウティスタさんのことを絶対にロシア人だと思っていましたが、フィリピンとギリシャのハーフなんだそうです。

ふ〜、ここまで登場人物の紹介ですよ!ああ疲れた!

その後可哀相なブラックスミスは悪い奴らに捕まってしまい、ストロング金剛に腕を二本とも切り落とされてしまう訳です。ラッセル・クロウがあわやのところで助けてくれるのかと思ったら、二本ともザックリとカット!で、恋人のシルクちゃんも殺されてしまい復讐を誓ったブラックスミスは、アイアン・フィストという鋼鉄の義手を装着して立ち上がる訳です。

で、売春宿を舞台に善悪入り乱れての格闘シーンになるわけです。ルーシーは絶対にただの女衒ではない・・・と思っていたら、やはり・・・という展開に嬉しくなってしまいます。娼婦上がりの彼女はセックスと暴力を武器に、娼婦を率いて戦う女傑だったわけで、所属している娼婦もみんな腕に覚えアリのお姉さんたちだったわけです。ルーシーがカスタネットみたいなものをカンカン!とならす度に、悪い奴らが娼婦に殺されて行く訳です。そしてルーシー自身もナイフがしこまれた扇子を持って戦うんですが、「私とやる気?後で後悔するわよ・・・」ってSっ気たっぷりの不敵な笑みを見せる訳ですよ。もうね、これだけでシビレちゃいますね。「キル・ビル」のオーレン石井みたいな感じなんですよ!アクションのキレ、全然昔のままです。扇子シャキーン!で敵を刺したり、空中をクルクル舞ったりして本当に美しい(なぜか売春宿の中に桜吹雪も舞っていたりする)。なんていうんでしょう、Sっ気がありつつも圧倒的な品格がある。もっとルーシーのアクションだけを見ていたい・・・という気分になっちゃうんですよね。残念ながら彼女は紛れ込んだ子供を守ろうとして死んじゃうんですが、やられてガクっと落ちる死に顔にも品格がある。もう能とか歌舞伎とか伝統芸能の様式美にまで高められた美しさなんですよ、ルーシー・リューのアクション〜死に際は。思わず「よっ、ルーシー屋!」とかけ声をかけたくなってしまいますよ。あ〜チャリエン3、やってくれないかな〜(映画版チャーリーズ・エンジェルは私のオールタイムベストです)。

他のキャラも、アクションシーンはあるものの、なんだかお腹いっぱいにならない印象でしたね。まあRZAさんの監督一作目だから、しょうがないっちゃしょうがないのかな。あと要所要所で毒矢を吹いていた悪者、ポイズン・ダガー(ダニエル・ウー)がいたんでした。彼の印象がめちゃめちゃ弱かったですね。途中までなんか仮面みたいなのを被ってたせいもあるんですが。最後は売春宿の風呂場の水車に挟まってミンチになってしまいました。しかし、なぜ風呂場に水車があるのだ・・・もちろん、ポイズン・ダガーをミンチにするためですね、はい(笑)。

ストロング金剛は、機転を効かせたブラックスミスが誰にでもある人体の弱点ツボを押してやっつけられました。中国のお坊さんがツボを説明する伏線が回収されましたね。力ではなく知恵でというのが中国の伝統っぽくてよかったのではないでしょうか。すべてが片付き、平和になった村。ブラックスミスは鍛冶屋の看板「武器作ります」をアイアンフィストで壊してEND。看板が壊れてすぐ「終演」と「END」がバーン!と出るタイミングもなんかよかったです。あと、19世紀中国なのにバックミュージックでヒップホップがかかるんですが、結構合うんですね。「クンフーとヒップホップは、ニョクマムと白味噌なみに好相性」というサブタイトルはどうかと友人Iが述べていたのでここに記します。

しかし「タランティーノ・プレゼンツ」って一体どういうことでしょう?タラちゃんが「これ、面白いからみんなも観てくれよな!byタラ」って宣伝協力している感じなのかしら。Wikiによると「ジャンゴ」とのクロスオーバー企画もあったようです。確かにプランテーションの話が出て来るので繋げられますね。

『ストロベリーナイト』ドラマ発の映画は避けるべし

        



西島さんが出ているのでレンタル。妹(同じく実家寄生中、もとい帰省中)に「DVD何借りて来たの?」と問われ、「西島さんの映画!」と答えたところ「西島秀俊が出てる映画ってつまらないのばかりじゃん」と言われてしまいました。妹曰く「西島秀俊はどの役でも西島秀俊だ(演技が同じ)」とも。悔しいけど、反論出来ず・・・。

私が思うに西島さんは演技力はあるんだけど、役によって自分を変えて行くカメレオンタイプの俳優じゃなくって、自分の持ち味を映画にアダプトして行くタイプの俳優さんなんですよ。だから 役柄と作品の雰囲気が彼に合っていれば素晴らしいものになるし、逆に合ってなければ「う~ん?」という結果になってしまうんだと思います。私が近年観た中で 一番好きな西島映画は「真木栗ノ穴」。ワーストは「サヨナライツカ」です。

さて「ストロベリーナイト」ですが、私は西島さん観たさに借りただけで、テレビドラマの方は全然観ていません。妹によるとドラマはすごく面白いらしいですが。原作小説も読んでいないので映画としての感想を書きたいと思います。



※ネタバレします。



は〜、めっちゃつまらなかった〜。つまらない上に長いという、最悪のパターンですよ。途中でスマホをいじりながら迫り来る眠気をごまかして、なんとか最後まで鑑賞。「西島秀俊の出ている映画はつまらないものばかり」という妹の言葉は本当だった・・・みたいな!キャストは皆さん魅力的な方ばかりなのに、話がもう壊滅的に面白くない。ミステリーサスペンスとしてグダグダ。「幾重にも隠蔽され、複雑に絡まった事件」って・・・。日本広告審査機構に訴えるぞゴルア!というレベルではないでしょうか。

ヒロインの姫川玲子(竹内結子)は殺人課の警部補。昔、事件に巻き込まれたトラウマがあるようですが、果敢に事件に取り組む仕事の出来る女というキャラクターのようです。姫川班っていう自分の捜査チームも持ってるし。しかし、一般的に言って男性優位の縦社会であろう警察で、アラサーくらいの女性が役職持ってチームも持ってるって違和感があります。部下として西島さんや宇梶というどう見ても姫川より年上の男がいるのも変です。警察も積極的に女性登用をしているのか・・・?と思ったら、大会議室に集まった捜査のメンバーは姫川以外もれなく全員男(婦警さんが一般事務みたいなデスクワークをしている描写がチラっとあり)。姫川は若くて女性というハンデをものともしないくらい、ずば抜けて出来る職員ってことなのでしょうか。だったらびっくりするくらい仕事が出来るって場面を入れてくれないと、ファンタジーにしか見えない。姫川が竹内結子じゃなくって天海祐希とかだったら、まだ説得力があるが・・・。

そんな姫川は昇進したときに自分へのご褒美を買う女子らしい一面も。彼女がいつも持っているバッグはエルメスの「オータクロア」。一見バーキンに見えますが、バーキンより少し縦長のフォルムになっているんだそうですよ。私も知りませんでした。中古で80万くらいしたんだそうな。映画は全編大雨が降っているんですが、いつも構わずに赤のオータクロアをお仕事バッグとしてガンガン持ち歩く姫川なんですよ。「ああ、そんな土砂降りの中、中古とはいえエルメスを・・・」とハラハラしてしまうんですが、これもタフな女表現なのかしら。

事件はヤクザが同じ手口で連続殺害されたというもので、組同士の抗争だろうという警察内マジョリティーと、ちゃんと調べないとわからないじゃないですか?という姫川班が対立。タレコミ電話で「ヤナイケント」という男が殺したという情報がもたらされます。姫川はその男を探そうとするんですが、上司や警察の偉い人から止められてしまうのでした。どうやらその男の身辺を洗うと昔、警察が行った殺人事件の調査が間違っていたということになるらしいと言うことです。

殺人現場も 全然グロくなくって、そこらの2時間ドラマより随分とあっさりした感じ 。話が面白くないんだから、せめてグロ描写でも・・・と思ったら肩すかしですよ。次々殺されるチンピラも、キャラが薄いから全然記憶に残らないし殺害方法も普通だしな〜。それに真実を追求する姫川を抑止する警察の闇・・・みたいな描写もないしな〜。警察には、三浦友和や渡辺いっけい、遠藤憲一に柴俊夫と、イイ感じのおっさん俳優がザクザクいるのにあまり使われておらずモッタイナイんですよ。武田鉄矢はちょっとキャラ作り過ぎで浮いてたな〜。

「ヤナイケント」を探す途中で、姫川は牧田(大沢たかお)に出会うんですが、実は彼はヤクザの若頭的な人物だったんですね。いや〜、しかし大沢たかおはカッコイイね!あっさり目の優男系イケメンだけど、ヤクザ役もなぜか説得力ある〜!過去に色々あってヤクザ入りし、内部からの復讐を試みよう としているキャラクターにぴったりですよ。西島さん目当てで借りたんだけど、大沢たかおの方がカッコ良かったです♡

姫川が追っていた事件の鍵を握る男「ヤナイケント」は染谷将太さん。この重要な役に染谷さんということは・・・この後、やっぱり「悪の教典」みたいな修羅場になったりするの?とワクワクしていたんですよ。しかし染谷さんもあっさり殺されてしまいました(遺体のグロ描写もなし)。う〜む、もったいない。警察もそうだけど、いい俳優さんが脇役でたくさん出てるのにちょっともったいないな〜。ある意味贅沢な使い方?

結局、チンピラ連続殺人の犯人は大沢たかおをのことを慕っていた弟分(金子賢)だったのでした〜チャンチャン。動機は「兄貴(大沢たかお)が上に立つためなら、なんでもする・・・」というもので、大好きな兄貴のために組の邪魔者を次々と消していたのです。でも最後になぜ大好きな兄貴を刺すのだ?ブロマンスの果てにある歪んだ愛情?にしては 、弟分が出て来るシーンはアッサリしてたしなあ〜。この弟分は全ての悪事を引き受ける役として作られただけのキャラクターって感じでしたね。

サスペンス部分がグダグダなので、それならもっと姫川と大沢たかおの恋愛(?)パートを膨らませた方が良かったんじゃないかなあ〜とも思いますが。二人とも過去に傷を負っていて、その傷のせいで今こんなんです。そんな二人にしかわからない世界があって、西島さんはそこに触れることも出来ません。というのは表面的にはわかるんだけど、大沢たかおが最後に死んじゃうなら、もっと二人の関係を掘り下げて描いて欲しかった様な・・・。

伏線になっていた姫川愛用のエルメスの赤い「オータクロア」なんですが、赤は血の色だからってことでした。そ、そんなわかりやすい理由だったのね・・・。そもそもタイトルの「苺の夜」って何さ?そしてこのエピソードに付けられた「インビジブルレイン」って何さ?それを言うならヒロインの名前が姫川玲子って二昔前の少女漫画みたいなのはなんでさ?なんかネーミングセンスがいちいち中二病っぽいのである。

まあ原作もドラマも見てない人には理解出来ない世界観があるのでしょうね・・・。これだから、人気テレビドラマの映画化は厄介なのである。映画版を味わうのにテレビドラマシリーズを既に観ていることが前提となるので、一本の映画を観る為に費やす時間が膨大になってしまうんだもん。テレビドラマを予習するくらいだったら、他の映画を一本観たい。ドラマファン前提に作られている映画はやはり敷居が高いです。わかってはいたけど、西島さんにほだされてレンタルしてしまった私が悪いのでした。

余談:なんと1日返却するのが遅れてしまい300円の延滞料金が発生(自分が悪いのですが)。ク〜!悔しい!しかも前日「あ、明日返さなきゃ」ってことは覚えていたんですが、電車に乗る直前にDVDを忘れていたことに気が付きました。前日気が付いた時点でカバンにDVDを入れておくのだった・・・。



『みんなで一緒に暮らしたら』ビタースイートな終活映画

        



義理の母マミンカが「悲喜劇で面白かったわ」と言っていたので、帰省中にレンタルして実の母と観てみました。老境に差し掛かった長年の友人である五人の男女。それぞれに病気だったり痴呆だったりがあったりして、今のまま生活していくのはちょっと心配・・・。だったら、みんなで一緒に暮らしてみましょうか、 というお話です。

お年寄りの男女が数人集まって生活するというのは、最近だと「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」なんかがありました。マリーゴールド・ホテルは老いていても、勇気を出して一歩踏み出せば新しいことは待ってるんだよ!というすごくポジティブなラストでした。一方の本作はマミンカが「悲喜劇」と言った通り、いいこともあれば悪いこともある、セラヴィ ・・・(それが人生)という甘じょっぱい塩キャラメルのようなお味でしたね。



※ネタバレします。



ジャンヌ(ジェーン・フォンダ)はハツラツとして素敵マダムですが実は病気を患っていました。彼女の夫アルベール(ピエール・リシャール)は痴呆症があり、足腰も悪く愛犬の散歩もこなすのにひと苦労しています。一方、彼らの友人クロード(クロード・リッシュ)は75歳になるのにも関わらず、アクティブなセックスライフを満喫しています。しかし娼婦の家で突然倒れてしまい、老人ホームに入ることに。同じく彼らの友人夫婦、アニー(ジェラルディン・チャップリン)とジャン (ギイ・ドブス)はクロードの哀れな姿を見て「大事な友達をこんなところで死なせられない」と彼らの家で五人揃っての共同生活を提案します。

気の合った友達同士で一軒家(家庭菜園が出来る庭付き、プールも設置予定)をシェアして、感じのいいお手伝いさんを雇う。これってもう最高の老後ではありませんか?しかし、そうスンナリいかないところがこの映画の面白い所です。二組の夫婦と1人の男(クロード)という仲良し五人組なんですが。実は奥様方のジャンヌとアニーはその昔、クロードと愛人関係だったんですね。しかも同時期に。図解すると、


アルベール&ジャンヌ⇆クロード⇆アニー&ジャン
(夫婦)      ♥    ♥  (夫婦)
       

という風に、クロードを通じてまっつぐにそれは綺麗な一直線の関係が出来てしまうというわけです。1つ屋根の下に棒姉妹と穴兄弟が同居っていう、異常事態なわけですよ。今は愛人関係は落ち着いていて友情に変わっている訳ですが、女性二人が墓まで持って行こうとしていた秘密が夫たちの知る所となり、大げんか。し かし最後は握手して終わるという、実に大人な感じ。夫たちが偉いわけなんです。

このクロードおじいちゃんが75歳なんだけど、精力びんびんで孫のような年頃の娼婦を買ったり、バイアグラを買って来てもらって街の女性を探しに行ったりしてるんですよ。もう本当にジジイどうしようもねーな!(毒まむし三太夫風)って言うわけなんですが、演じている俳優さんがとても可愛らしいのでなんか許せちゃうって感じ。彼と不倫してた女性陣ジャンヌとアニーが「私は◯◯ホテルで火曜日に会ってたのよ」「私は同じホテルで木曜日だったわ」と言うシーンも微笑ましいっちゃ微笑ましいです。これが現役時代の出来事だったら血の雨が降る悲劇になると思いますが、年を経た今では喜劇になるという・・・長い時間はエグい事態も中和してしまう不思議な力があるので、年を取ることはネガティブなこ とばかりではないんだなと思いますよ。

しかも彼女たちの中でクロードとの恋が今もいい思い出として残ってるのがいいんです。ジャンヌとアルベール夫婦が犬の散歩の為にやとったドイツ人青年ディルク(ダニエル・ブリュール)がいて、彼とジャンヌがよく散歩に行くんですが、この青年ディルクが民俗学の研究をしている学生なんですね。で、研究テーマが老人の共同生活ということなんです。で、ジャンヌが「老人にだって性欲があるのよ。私は昔いた愛人のこと考えて自慰するわ」と彼に言う訳です。それがクロードのことなんですね。40年を経た後もオナ・・・・・・・・ニー!(岩井志麻子風。最近間が長くなりました)のオカズになる愛人って素晴らしいことじゃないですか?

し かしジェーン・フォンダは今でも充分素敵なマダムです。贅肉が殆どないスレンダーさだし、腰の位置が高くてシャツをパンツにインしたなんて〜ことない格好 がものすごくカッコイイ。腰の位置が高いってことは歳を取ってからも、もの凄いアドバンテージなんだな〜と思いましたよ。こればっかりは整形出来ませんしね。さすが元「バーバレラ」ですよ(我らがドリュー・バリモアが「バーバレラ」の権利を買ってリメイクプロデュース&主演ってニュースが結構前にありましたが・・・)。

ドイツ人青年ディルクを演じたアンパンマンみたいな顔のダニエル・ブリュールは英語もフランス語も堪能ですね。こんな性格のいい子に身の回りのお世話をしてもらえるなんて最高じゃないですか。老人たちに振り回されるシーンに彼のいい人感が滲み出ていますよ。

ジャンヌが病気亡くなったあとに、彼女が生前頼んでいたもう1人のお手伝いさんが来るんですが、それがエキゾチックかつ巨乳というディルクがジャンヌに言って いた好みど真ん中の子なんですよね。で、若い二人はすぐに仲良くなり地下室でセックスするするわけなんですが、それをクロードおじいちゃんが覗き見ていて 「よしよし・・・」みたいな顔をして去って行くんですよ。老人映画なんですが、病気とか痴呆とか以上に結構セックスシーンやセクシャルな話題がいっぱい出 て来て「ああ、性からは一生離れることが出来ないんだなあ・・・」と思うのでした。西洋と日本ではまた違うのでしょうけれども。

40年前の 不倫発覚があった他にも、風呂の水出しっ放しで家が水浸しになったり、病気や痴呆が進行したりと、色々あるんですがやっぱり昔からの友人と送る共同生活は とても楽しそうです。病気だったジャンヌが亡くなった後、庭にアニー待望のプールが完成しました。冒頭で 「孫が全然遊びに来てくれないからプールを作る」と言っていましたが、元気盛りの孫たちの相手はかなり重労働。「もうヘトヘトよ」とアニー。さんさんと太 陽があたるお庭と元気な孫たちが遊ぶプール、そしてワインを片手に談笑する老人たち、なんて幸せな老後の風景なんでしょう・・・で、終わりなのかな?と 思ったら、痴呆が進んだアルベールが既に亡くなった妻のジャンヌを探しているシーンになります。

誰も何も言わずにアルベールと一緒にジャ ンヌのことを探し続けます。家を出て道を渡り、彼女がよく散歩していた公園に行き「ジャンヌ!」「ジャンヌ!」と呼んでも決して返事をしない名前を叫び続ける老人たちと青年ディルク。ジャンヌを探し続けてだんだんと画面から遠くなって行く彼らの後ろ姿に重なって、エンドクレジットが。う〜ん、と思わず唸ってしまいました。安易に「みんなで一緒に暮らしたらハッピー☆」で終わってないのが、さすがフランス映画。映画全編を通して楽しいこと、悲しいこと、切ないことが絶妙なバランスで盛り込まれていて味わい深い!ラストは切ないかもしれないけど、きっとアルベールが独りで探すより幸せなことだと思うから、ビターに見えるハッピーエンドなのかな〜、と思いました。

『女の子ものがたり』リアリティーに欠けていて残念

       



西原理恵子原作漫画の映画化です。漫画は本屋さんでチラ見したくらいです。同じく西原漫画原作の「パーマネント野ばら」が神級の出来だったので、期待してこちらもレンタルしてみました。しかし、友人の浦鉄さんが「あんまり面白くなかった」って言ってたような・・・。



※ネタバレします。



少女漫画家のなつみ(深津絵里)は、編集者の財前(福士誠治)から原稿の催促をされる日々。しかしなつみはスランプ中だったのでした。そんな中、生まれ育った海辺の街とそこで出会った幼なじみの友達ことを思い返すなつみなのでした・・・。

こんな感じの話です、はい。←(適当?)夏の話だったので今観るのにちょうどいいし、子供の頃の夏休みっぽいノスタルジックな感慨に浸るのも悪くないと思ったのですが、う~ん、やっぱり浦鉄さんが言った通り面白くない・・・。微妙だったなあ~、題材はすごくいいのに残念です。

小学校4~5年生くらいの女の子、なつみはお母さん(奥貫薫)と新しいお父さん(板尾創路)と海辺の田舎町へ引っ越してきました。なつみは、空き地で同じ年のきみこ、みさと知り合い友達になります。捨て猫を一緒に育てたり、街へ憧れのブラジャーを買いに行ったりと、楽しい日々を送る三人でしたが、実はきみことみさは、なつみより貧乏な家の子で学校で男子にいじめられたりしているのでした。

団地に住むみさのお母さん(子沢山で怖い)が、黒沢あすかさんだったので「おお!」とテンションが少し上がってしまいましたね~。これは 、後々なにかあるのでは・・・と期待していたらやっぱり山の中に人を埋めてましたね。期待を裏切りません。(ちなみに本作の方が「冷たい熱帯魚」より先に公開されています)

きみことみさは貧乏でいじめられてるってことなんだけど、見た目は普通の子供と変わりないから、お家を見て「あれっ、実は貧乏なのかな」ってわかるくらい。この映画全体に言えるんだけど、リアリズムを完全に放棄してしまっていて、悲惨描写がほとんどないんですよ。きみことみさは洋服もパリっとしてわりと可愛い服着てるし、髪の毛だってサラサラだし、自転車も持ってるし(パクったのかもしれないが)、お腹も好かせてないし、なつみにお菓子をねだったりもしないんですよ。だから男子が二人をなぜいじめるのかわからなかったし、お家をみて「ああそういうことだったの?」としか思えませんでしたね。

子役の演技もあんまり上手じゃなかったしな~。なつみ役の子はちょっとぶちゃっとした顔をしててブサ可愛かったですけど、他の二人は結構な美少女だったし。「失敗したコケシみたいな顔の私達」って台詞がありましたが、全然そんなことありませんよ?むしろ「芸能界に入ってこんな街から抜け出してやる!」って意気込んでもいいくらい。

高校生になっても三人の友情は続いています。高校時代のなつみは大後寿々花さんです。「桐島、部活やめるってよ」でイケメンDKに報われない恋をする吹奏楽部の部長をやっていた女の子ですね。JKなんだけど、ちょっとオバチャンみたいな顔の女の子なんですよ。彼女はやっぱり演技に深みがありました。高校時代のきみこを演じる波留さんはスラーっとしていてロングヘアの美少女。高校時代のみさを演じる高山侑子さんはボーイッシュな感じの美少女です。なつみはいいとして、他の二人が美少女すぎるし、モデル体型だし、演技も決して上手とは言えなかったので、う~ん・・・という感じ。西原漫画のキャラクター実写版とはとても思えません。

三人はそれぞれ別の制服を着ていたので進学した高校が違うけど、仲良しなんですね。しかし、普通の家庭の子であるなつみがクラシックなセーラー服、貧乏な家庭の子である二人がブレザー(私立校風のちょっとシックな色味だったりする)って衣装もなんかちぐはぐ。逆にした方がよかったのに。高校生で年頃になったから彼氏とかが出来たりするんですけど、きみこやみさの彼氏がチンピラだし平気でDVをする男なんですね。口の端がちょっと切れたり腫れたりしてるんだけど、これもリアリティー全然なくって記号としてのDV跡って感じだし。二人が高校生にして既にだめんずウォーカーってことも全然伝わってこないんですよ。殴られたメイクと説明台詞という超表面的なことだけで、汲み取らなきゃならないわけです。

回想シーンと平行して、現在スランプ中のなつみの話も進行します。深津絵里さんは好きな女優さんですが、なんか本作ではちょっと演技が鼻につくというかイライラしてしまいました。漫画に対する情熱も焦りも感じないし、スランプというよりただ毎日ビール飲んだり犬と遊んだりして、怠惰な生活を送っているだけに見えてしまうんだな。しかし編集の仕事って大変ですね。作家に付き合って遊園地に行ったり帰郷したりしなければいけないんですから。好きな作家さんじゃなかったら辛かろう。

漫画家のなつみは、吉祥寺っぽい服装をしている女子なんですよ。外国の古着ミックスみたいなファッションですね。で、幼女っぽさを演出しているのか手を異様にブラブラさせて歩いたり、1人でケンケンパしだしたり、道端の猫じゃらしを摘んでみたりするんです。私はこういう「私ってこんなに幼くてピュアな部分を残しているの。私のこと守ってみたいって思うでしょ?」って自己演出をする女性を見ると脳天をカチ割りたくなります。深津絵里でもちょっとイラっと来るくらいなので、一般の女性は何をか言わんやですよ。芦田愛菜ちゃんなら許されるでしょうけど・・・。

高校時代のなつみは、ダメダメな(といってもそこまでダメ描写があるわけでもない)親友二人を見て「私はこんな風になりたくないな・・・」と思っている訳です。蒸発したお父さんの板尾さんが「なつみは、他の子とはちょっと違う。人と違う人生を送れるんやないか」と何度も言っていましたが、絵が好きななつみは空き地の小屋の壁に絵を描き始めます。真ん中に大きな地球があって、それに通じるであろう蛇行した道が無数に描かれていて、道の上には少し不安そうな表情をした若い女の子が立っている絵です。

「変な絵やな〜」と親友二人に言われたりするんだけど、「この瞬間にもたくさんの女の子たちが家を出ているでしょう。その子たちの住む世界の為に、道はどんどん伸びてるんよ!」みたいなことを言うなつみ。おそらくなつみは無意識的にかはわかりませんが、この街を出たいと思っているのでしょう。後にプロのクリエイターとして都会に生きることになるなつみと、DVを受けながら不幸な結婚生活を続けるきみことみさ。もう高校生のときから、いやもっと前から全然違うメンタリティーを持っていたに違いありません。子供の頃は一緒にキャッキャやってるだけで楽しかったけど、高校生になって「いつかはバラバラになるんやろね・・・」としんみり呟くシーンが切ないっちゃ切ないです。

最後は親友二人と決別し上京することになるなつみなんですが、きみこと本音をむき出しにしたケンカをして、泥だらけになって、最後にはきみこから「お前はここから出て行け。二度と戻るな」という言葉が出るんですよ。きみこ的には自分たちよりは前途のあるなつみに向けて、あえて厳しい言葉を言って送り出そうとしている感じなんですが、今までのきみこ&みさの、ここに残留するという覚悟みたいなものもちゃんと描かれてないから、この台詞がどう〜も締まらないんですよね。もしかしたら、きみこやみさは自分の夢なんてとっくに見限った上で、田舎にDV夫と残留することを選んでいるかもしれない。自分の限界をわかっているという点で「漫画家」という不確かで雲を掴む様な夢を見ているなつみよりも大人なのかもしれないんですよ。そういう人が言う「お前は出てけ。二度と戻るな」ならすごい深みが増して泣けると思うんだけども・・・。

だからやっぱり、きみことみさはもっとリアリティーのあるキャスティングにして、彼女たちがどうしてDVを振るうパートナーと一緒にいるのか?どうして田舎に残るのか?→経済的な理由等で、そうするしか他に選択肢がないから、と言うことがわかるように作ってくれないとダメなんですよ。そうしたらわざと暴言を吐いて親友を送り出そうとするなんて、号泣メーン!じゃないですか。

そして漫画家になったなつみが久しぶりに帰郷すると、きみこは他界していて、みさは行方知れずになっているのでした。高校生のなつみ→大後寿々花から漫画家になったなつみ→深津絵里って大規模な整形でもしたのかってくらい違うけど、まあ、そこは映画なので100歩譲って目をつぶりましょう。きみこのお母さん(風吹ジュン)の家で話すシーンのあと、空き地の小屋に描かれた絵の前で小さな女の子と会うんですが、この子がきみこの忘れ形見の娘なんですね。で、風吹ジュンがその子を迎えに来て「きみこの娘よ」ってなるんですが、ここも不自然ですよ。家で孫の話するだろうに。そこで深津絵里がきみこの娘の名前を知るんですよ。それで絵の前で「おじょうちゃん、おなまえは?」「なつこ!」もしかして、この子は・・・で、風吹ジュン登場でいいじゃないですか〜。

帰りのバスの中で「私、友達のこと描いてみようかな・・・」とポツリもらす深津絵里。遠くから聞こえるきみことみさの「なっちゃーん!」という呼びかけ。ここも、「お前は出て行け、二度と戻るな!」が号泣メーン!だったらしみじみ泣けるシーンになったのにな〜。「もうこんな友達は一生出来ないと思う」のキャッチコピーになった台詞もそうですよ〜。

ということで、浦鉄さんの言った通り残念な出来でした。恐らく女性向けってことを意識しすぎて綺麗に作りすぎちゃったのかな。西原理恵子さんと本人は、みさちゃんの家族が逮捕されるシーンで説明台詞を言う近所のオバチャン役で出ていました。


『ことの終わり』神様のイメージ=ひょうきん懺悔室

        



ポッドキャスト「伊集院光の週末tsutayaでこれ借りよ」の中で、映画評論家の町山智浩さんがおすすめしていたのが、10年くらい前のメロドラマ「ことの終わり」でした。意外・・・町山さんと言うとアメコミ映画や馬鹿エロ映画やスラッシャー映画やトラウマ映画などの、ドギツイ映画を紹介する方という印象が強いので「何かの間違えじゃ?」と思いましたが、オススメされているのは間違いなくレイフ・ファインズ&ジュリアン・ムーア主演の不倫メロドラマ「ことの終わり」でしたね。

この映画の存在は知っていたのですが、私も同じく「かったるそうだから、絶対観ないであろう・・・」と思ってたんですよ。しかし町山さんがオススメというのならば、レンタルしてみようじゃあない か、100円で!ということで観てみました。

舞台は第二次大戦後のイギリス。作家のモーリス(レイフ・ファインズ)は、旧友のヘンリー(スティーブン・レイ)に偶然会います。浮かない表情をしているヘンリーに話を聞くと、彼の妻サラ(ジュリアン・ムーア)がどうやら浮気をしているらしいとのこと。探偵に頼むかどうかを迷っているヘンリーに、モーリスが自分をサラの嫉妬深い恋人という風にして彼から依頼してみると言い出します。実は戦時中にモーリスとサラは不倫関係にありましたが、その後別れていたという過去があったのでした。サラの現在の恋人が誰なのかを突き止める為にモーリスは探偵事務所の戸を叩くのでした。



※ネタバレします。



町山さんの仰る通り、不思議な映画でしたね~。不倫メロドラマなんだけど、途中でスピリチュアルになっちゃうんですよ。私は最初、実はレイフ・ファインズもう死んでいるのではないか・・・などと思ってしまいましたが「シックス・センス」オチではありませんでした。

あるパーティーでサラとモーリスは知り合い、すぐ不倫の恋に落ちてしまうんですよ。レイフ・ファインズは普通の男じゃなくてちょっとアートな感じの知的メンズだし、ジュリアン・ムーアは戦時中の上品だけどじわじわとエロい奥様役がバッチリ合ってる。二人ともなんか佇まいが格調高い文芸ものっぽいんですよね(ちなみに原作小説あり)。二人が画面にいると本当にクラシック作品を観ているみたいなんですよ。映像はすごくムーディーです。

サラの夫のヘンリーが多忙なので、ヘンリーはモーリスにサラと一緒に外出して欲しいと頼むんですよ。で、二人はモーリスの小説が原作の映画を二人で観に行くんです。映画終わって食事して、その席で愛の告白。そしてモーリスはサラを家に送り届けるのですが、夫が帰って来る前の家のリビングソファで不倫セックスという早さ。レイフ・ファインズのお尻が見られてちょっとしたお徳感もあります。

その後は夫には内密に逢瀬を重ねて行く二人なんですが、戦時中のドサクサに紛れた方が密会しやすかったってのがリアルですね~。原作を書いたグレアム・グリーン自身の話がベースだそうなので、リアリティがあります。空襲だから爆音で部屋の壁は震えるし、天上からチリやホコリなんかが落ちて来る中、愛し合う二人。非常事態だからこそ燃えるってやつでしょうか・・・。すると、二人がいる家が爆撃で半壊し、階段の踊り場にいたモーリスは爆風で二階から一階に落ちてしまいます。寝室の中にいたサラが慌てて駆けつけますが、既にモーリスは息を引き取っていました。

このシーンがモーリス視点で描かれた後に、サラ視点でもう一度描かれます。サラ視点で振り返った後に「ああ、そういうことだったのか・・・」とすべてが腑に落ちるように出来てますよ。ここが町山さんおすすめの所以ですね。タダの不倫メロドラマではないんですよ。爆撃のサラ視点では、アッと驚くスピリチュアル展開に。最愛の人モーリスを失ったサラは半狂乱で、信仰していなかったにもかかわらず神様にお祈りをします。「彼を奪わないで下さい。もし奇跡が起こって彼が生き返ったら、もう二度と彼には会いません・・・」と必死で祈り続けたら、なんとモーリスが息を吹き返すんですよ。

サラの態度が急に冷たくなったのはこういうことだったのね~、と。ただの偶然か?それとも神様による奇跡が起きたのか?その後、二人の不倫は夫の知る所となりますがサラは重病を患っており、男二人で彼女を看病。しかし彼女は亡くなってしまうのでした。実はモーリス生還だけではなく、もう1つの奇跡も起こっていたのです。サラを尾行していた探偵(イアン・ハート)の息子の顔には生まれつきの大きなアザがあるのですが、サラが「このアザが消えますように」と願って彼のアザにキスをするんですね。しばらくした後、アザが綺麗に消えていたんですよ。

ということで、モーリスと別れてからサラが密会していた相手は「神様」だったのでした(教会に行ったり、神父様に会いに行ったりしていたので、勘違いした夫が怪しんでいただけ)。なんじゃそら~!と思わないでもないですが。しかし、現実に自分の周りでこんなことが起きたら、やはり信仰してしまうでしょうね・・・。

昔テレビっ子だった私はキリスト教の「神様」って言うと「オレたちひょうきん族」の「ひょうきん懺悔室」に出ていた神様を思い出してしまいますねぇ・・・。番組のスタッフや出演者が、十字架に貼付けにされたロン毛で太めの神様に懺悔するんですが、神様が腕でマルを作るとセーフ、バツを作ると上から水が落ちて来る仕掛けでした(懺悔者が男性だとバツ、女性だとマルが多かったな)。今見ると他愛のない内輪ウケコーナーですが、まだ幼くて純粋だった当時は「どうか、どうかマルが出ますように・・・」とマジでお祈りしていたものです。あのときのお祈り、返して欲しい(笑)。

『夢売るふたり』火事ダメ、ゼッタイ!

        



こちらもリストに入れていた一本です。「女の嫌な面がいっぱいでドロドロしている」という評判を聞いていたので、恐らくリストに入れていたのでしょう。どうやら私は最近こういうドロドロしたものを欲しているようです。現代ニッポンの病巣ぽいシーンがある映画「ヒミズ」「ふがいない僕は空を見た」も観てますしねえ・・・。

なんでそんなものばっか選んで観てるんだよ・・・と我ながら思いますが、外国映画では味わえないものがあるからだと思います。外国映画でも胸がえぐれるような話、やりきれない話、トラウマになりそうな話、そりゃあいっぱいあるけど、やっぱり日本映画で見た方が一番リアルに感じられるから・・・でしょう。日本の設定で、日本人俳優が日本語で演じるからこそ、身につまされたり怖かったりするのだと思います。

ということで、結婚詐欺をする夫婦のお話「夢売るふたり」なんですが・・・私にはあんまり引っかかりませんでしたね。なんだかツルっとした印象で、普通っちゃ普通。「女のドロドロ」って聞いてたから、もっと「うへえ~、まるで自分の嫌~な部分を拡大ルーペで見せられてるみたい~」っていう感じを期待していたのですが・・・。最近観た結婚詐欺映画だと「クヒオ大佐」がありましたが、結婚詐欺に引っかかる女性心理が全然描かれていないんですよ。本作も田中麗奈のパートがあったものの、そんなにフックはありませんでした。「結婚詐欺」ってテーマがタラバガニだとしたら、まるでカニ味噌を食べずに身だけ食べて捨ててしまうようなもったいなさを感じます。タイトルが「夢売るふたり」なので、一体どんな「夢」を売ってくれるんだろうかってワクワクし過ぎたのかもしれませんが。

それに結婚詐欺ってネタやエピソードの宝庫だと思うんですが、正面から取り扱っている映画はあまりないような気がします。邦画だとクヒオ、洋画だとアメリカ映画の「ハートブレイカー」(シガニー・ウィーバーとジェニファー・ラブ・ヒューイットが母娘で結婚詐欺をするコメディ)くらいかなあ〜?同タイトルでフランス映画の「ハートブレイカー」がありますが、こちらは別れさせ屋のお話でした。前々から思っていたのですが「婚活サイト連続殺人事件」は絶対に映画化させるべきですね。監督は園子温さん、主演は藤山直美さんが希望ですが年齢を考えると、う~ん、園監督のミューズ神楽坂恵さんにシャーリーズ・セロンの「モンスター」ばりの役作りをして頂いてってのはどうでしょうか。てか調べたら、すでにこの事件をモチーフとした寺島しのぶ主演のドラマがあるみたいです。見たいな、見たいな~。しかし、しのぶはいい女優だけど、太ってな~い!藤山直美さんもやはりドラマで木嶋香苗役の噂があるようですが、実際のところはどうなんでしょうかね~。

ということで、前置きが長くなってしまいました。映画の感想です。


※ネタバレします。


貫也(阿部サダヲ)と里子(松たか子)は庶民的な小料理屋を営む夫婦。ある日、店が家事で焼けてしまいすべてを失った二人は、新しい店を持つための資金調達として結婚詐欺を思いつくのですが・・・。

この映画で一番「うわ~」と辛かったのが家事で小料理屋が焼けてしまうシーン。え、まさかそんな焼き鳥から出火なんて・・・って思うんですが、火を消そうとして慌ててしまい、揚げ物の油が入った中華鍋が落下、一気に火の手が広がってしまうんです。こういうお店では厨房に小さい消化器を設置していないのだろうか・・・と思いますが、まあ火事にならないと話が始まらないので仕方ないか。

しかしこのシーンは本当に夫婦が可哀相でなりません。住居が一緒じゃなかったのだけが不幸中の幸いか。妻の里子はラーメン屋でバイトを始めたりして、さっそく生活の立て直しをはかっていますが、夫の貫也はパチンコ行ったりしてフラフラしてます。しかも妻の職場のラーメン屋にケチつけたりしてるし。それでも妻が夫を見限ったりしないのが偉いなって思いますよ。演じる松さんは梨園のプリンセスですが、力強く働く庶民の女性の役が似合いますね。

夫の貫也役の阿部サダヲさんは、背も低いしカッコ良くもない普通の男性なんですね。優しいっちゃ優しいのかもしれないけど、ぶっちゃけ私的にはあまり魅力を感じませんでした。ここもこの映画に乗れなかった理由かも~。阿部さんは魅力的な方だと思うんですが、私はちょっと異性として見られないかな。友達にはすごくなりたいですけどね。

あるとき貫也は、小料理屋の常連のOL玲子(鈴木砂羽)と一夜を共にしてしまうわけですが。玲子は不倫相手からもらった手切れ金を「こんなお金いらないから」と彼に握らせる訳です。ものすごい分厚い封筒だったので五百万はあったかのではないかと・・・。「 必ず返すから!」と逃げ帰る貫也。家に帰って来て、妻の里子に「偶然、昔の友達に会っちゃってさ~、お金借りられたんだよ!」と嘘 をつきますが、そんなん数秒で見破られてしまう訳で。

浮気されたことに怒り心頭の里子。ものすごい顔でパンをもりもり食べるシーン、素晴らしいですね。手切れ金に火をつけて、入浴中の夫にむけてばらまく里子。湯船のお湯をどんどん上げて行く里子。夫が入れようとした水を脚で方向を変える里子。女を怒らせたら怖い・・・。

ここから転じて二人は夫が騙し役、妻が裏方の結婚詐欺コンビになるわけですが、具体的に「結婚詐欺やろうよ!」という話し合いのシーンはありません。詐欺なんですが、女性たちを騙して大金をせしめても、次の店が軌道に乗ったら返すという信念のもとに詐欺をしているんです。部屋の壁に銀行の封筒(お金をくれた女性の名前入り)と借用書を貼って、二人で拝んでいるので全然悪人という感じはしません。今、書いていて気が付いたけどこれって「結婚」詐欺ですかね・・・?

結婚詐欺って、結婚をちらつかせてお金を引き出したりする行為だと思うんですが、貫也は結婚の「け」の字も言っていなかった様な・・・。単に付き合っている男女間のお金の貸し借りではないかと思うんですが。しかも「◯◯だから、お金を貸して欲しい」と切り出さず、女性の方から切り出させていたしな~。騙しのテクニックみたいなのをポンポン見せてくれるのかと思っていたので、ちょっとここも肩すかしでした。「夢」売ってたかね・・・。いや貫也と過ごす時間が「夢」なのか・・・?

田中麗奈は仕事もいまいちで結婚を焦るOL咲月役でしたが、彼女の妹役(医者の妻) がプッチ風のプリントワンピースを着ているんですよ。でもバッグが普通!ハイブランドのバッグを持たせて欲しかったと思いました。貫也が騙す女性の中に、重量挙げ選手のひとみ(江原由夏)という人がいるんですが、この人がすごい存在感でした。初め男性かと思っちゃったくらいで。顔がロバートの秋山に似てるんですよ。妻の里子がターゲットにしようとするんですけど、貫也はひとみちゃんがちょっと可哀相だな・・・って思ってしまうんです。デブでブスだから?いや、それ以上にひとみちゃんはすごく純粋でひたむきな子だからです。

重量挙げ一筋で、ものすごく頑張っていて素直。そんなひとみちゃんに人間的に魅了されてしまうんですよね。そんなキャラクターなので、 ひとみちゃんの対比として田中麗奈や割烹料理屋の女性客たちをもっとエグ味のあるキャラにした方がよかったんじゃないかと思いますねえ。ターゲットの前では「妹」ということにしてある里子の入院費が300万くらい必要という嘘をでっちあげるわけなんですが、しっかりもので優しいひとみちゃんはすぐにネットで保険のこととか調べるんですよ。「ねえ、こんな保険制度があるみたいだよ!」とペラペラ話し始めますが、イライラした貫也は「そんな一度に言われてもわからん!」って九州弁でキレてしまうんです。このシーンはリアルでよかったですね。うちの親のケンカを見ているようでした(笑)。

平行してターゲットになったのは風俗嬢の紀代(安藤玉恵)です。彼女の雰囲気もなんかリアルでした。 こういう気もいいし金払いもいい風俗嬢っていそうだよな~と 。演じる安藤さんは色んな映画に脇役で出ている方なので、「ああこの顔知ってる」とサブリミナル効果にかかった気分。彼女のヒモ(暴力を振るうチンピラ)がアパートに乗り込んでくるんですが、こいつよく見るとカッコよくね・・・?と思っていましたよ。後で調べたらびっくり、伊勢谷友介さんでした。全然わからなかった・・・。いやあっぱれ。

そして同じくターゲット、ハローワーク職員でシングルマザーの滝子(木村多江)。木村多江は本当に薄幸な役が似合うよなあ~。この映画では女性と仲良くなって相手の懐に忍び込むプロセスがザックリ省略されているので、次のシーンくらいでもう貫也が彼女の家で、彼女の父と息子と和気あいあいと夕食を食べているんですよ。「あの人、公務員だ し入りはガッチリしてるんだ」と里子に話す貫也 ですが、里子は最近また面白くないようです。怒鳴る夫と「はいはい、あらもうこんな時間」と聞き流して仕事をし出す妻、ここもリアル!再び、うちの親のケンカ(というか父親が一方的にギャーギャー言ってるだけ)を思い出します(笑)。

思い詰めた里子は、ターゲットの滝子の家に行きますが留守。台所に置いてあった貫也の出刃包丁をつかみます。それを握って滝子の家を出る里子でしたが、階段ですべって落ちてしまい、包丁はどこかに転がり落ちてしまいました。凶行が防げてよかった・・・とホッとするんですが、地面に落ちた包丁が・・・気になる!!

咲月(田中麗奈)が依頼した探偵(笑福亭鶴瓶)が、貫也の動向を押さえていました。車の中から写真を撮るシーンがあったのですが、そのときに隣に座っていた探偵助手が「息もできない」「マジック&ロス」のヤン・イクチュンさんらしいです。で、滝子の家で貫也が滝子の息子とご飯を作っているときに探偵と咲月が乗り込んでくる訳ですよ。しかしな~、咲月よわざわざ探偵雇って調査するほどのことかね?と思いますよ。交際当時も妻がいたこと知ってた訳だし、自分の好意でお金を貸した様なもんですからね。

そして訪れる修羅場・・・。もみ合ってると、滝子の息子が「えーい!」って無邪気に鶴瓶を何かで刺すんですが、それが里子が持ち出した包丁だったんですよね。うわ~・・・何もわかってない子供がたまたまそこに転がっていた包丁で人を刺しちゃうんですよ。鶴瓶死んでしまうの?と思ったら助かっててホッとしましたが ・・・。時を同じくして、新しい店を構える予定の物件の中で、図面などを見ていた里子が何かに気が付いたように出て行き、走り出します。風でバラバラと飛んで行く図面。虫の知らせでしょうか、きっと里子は貫也のことをとても愛しているんだろうなあ・・・と思いましたが。火事になって、犯罪ギリギリのこともやったけれども、火事にさえならなかったら、きっと慎ましくも幸せに暮らしていた夫婦だったんだろうなあと思いますよ・・・彼らに関わった人もみんな幸せになってないしな~。ってことは、火事ダメ、ゼッタイ!ってことが裏テーマか?←(違います)

その後、貫也は堀の中へ。里子はどこかの漁港で働いています。別々のところにいる二人ですが、魂のレベルでまだ繋がりがあるような描写があり、とても切ないです。 出所したらまた頑張ってお店やって欲しいなあ・・・と思う訳ですよ。結婚詐欺映画を期待してしまったけど、これは夫婦映画ですな。最初は惚れたはれたがあって一緒になるわけですが、年数を経て人類愛っぽさが出て来るのが熟成された夫婦(めおと)と言うものかもしれません・・・。そう思って振り返ると、なんだか腑に落ちる様な気がしますね。

『ふがいない僕は空を見た』人生とは不条理な条理を発見する旅 (by父)

       



公開当時、気になっていはいたんですが見逃してしまっていた一本です。確か友人の浦鉄さんが観に行って、田畑智子の身体についてなにがしの感想を言っていたのを覚えている様な、いないような・・・・(浦鉄さん、違ってたらゴメンナサイ)。それ以来「帰省したら観る映画リスト」に入れていた一本でした。近所のツタヤに1本だけ取り扱われていたのですが、10本くらいは入れて特設コーナーに置いて欲しいです。それくらいよかったです。

この映画も、現代ニッポンのネガティブな感じが濃縮還元されていると言ってもいいような・・・。キーワードは「モラル/セクシャルハラスメント」「自然分娩原理主義」「低所得者団地」「貧困」「独居老人」「幼児虐待」など、もう息苦し〜いトピック満載です。扱われている題材はかなりヘビーなんですが・・・しかしヘビーになり過ぎず、心にもずっしりとイカリを降ろしてくるという絶妙な感じでした。 原作小説がありますが、未読なので映画についての感想を書いてみたいと思います。

セックスと生殖と貧困。この3つのテーマが床屋さんの店先に設置してある赤と青と白のねじり棒みたいにぐるぐると絡み合って、実に深い世界を作り上げていますよ。手前味噌ではございますが、以前に私の父親が「人生とは、不条理という名の条理を発見していく旅である」という名言をドロップしていました。この映画もまさにそうだよなあ~と思います。



※ネタバレします。



大きく分けて2つのパートに分かれているんですよ。1つは高校生の卓巳くん(永山絢斗)と人妻の里美さん(田畑智子)の不倫関係を軸にしたお話(セックスがテーマ)。もう1つは卓巳くんの同級生で団地住まいの福田(窪田正孝)のお話(貧困がテーマ)。その2パートをつなぐ感じで卓巳くんのお母さんで助産師の寿美子さん(原田美枝子)と彼女の患者さんとのお話が入ってきます(生殖がテーマ)。3パートと言えば3パートかもしれないけど、寿美子さんのパートは時間的に短くなっていたので、大きく分けて2パートと理解しました。

高校生の卓巳くんと人妻でコスプレが趣味の里美さんはコミケで知り合い、その後不倫関係になります。お気に入りのキャラクターのコスプレをしてセックスにふける二人。あ、ちなみに本作は18禁なんですよ。しかしな~、これ高校生が主役の話でもあるんだから、その子たちが鑑賞不可っていかがなものか・・・いい映画なのにな〜。18禁のボーダーラインが気になるところです。

卓巳くんはオタクとかじゃなくって、普通に素直で爽やかなDK(男子高生)。友達の付き合いで行ったコミケで、あんずというアニメキャラのコスプレをした里美さんと知り合います。演じる永山絢斗さんがな~、心に繊細さを秘めたイケメンぷりで実に実にいいんですよ。不倫してる高校生なんだけどチャラくないし、脆さと純粋さがないまぜになった表情、雰囲気が素晴らしいですよ。身体は大人の男なんだが、心は少年っつーバランスもたまらんな!(キモイですか?)永山さんはこの映画で初めましてなんですが、これから要チェックだなと思いました。

里美役の田畑智子はやっぱり朝ドラ「私の青空」の印象が強いですね~。里美さんはあるアニメが好きで、そのヒロイン「あんず」のコスプレに命をかけているという主婦です。なんでそこまでコスプレにのめり込むのか?コスプレの世界にいる間だけは現実から目を背けられるからです。彼女の現実はと言うと夫(山中崇)がいるものの、妻のことをしっかり守ってくれる夫ではないんですね。夫は嫁いびりをする姑(銀粉蝶)の言いなりなんです。

この姑役の銀粉蝶の嫁いびりが、もうちょっとしたホラーの域に達してましたが・・・。里美さん夫婦は子供に恵まれず、姑に強要される感じで不妊治療を受けているんです。姑が、何が何でも孫を!というちょっと狂気じみた感じの人。姑が週末の朝にアポなしでやってきて朝食をこしらえるんですが、買って来た新鮮お野菜をサンドイッチにして食べるのは自分と息子だけ。嫁には妊娠する効果があるお酢みたいなものを飲ませます。「私の友達がね、孫をペットのように猫可愛がりして連れ回してるのよ、孫はおもちゃじゃないわよ(笑)」とか言って、暗にいびったりするんです。 その他にも「ああ、ちゃんと里美ちゃんが赤ちゃん生める身体だって調べてもらってから結婚すれば・・・」とか「思春期にお母さんから栄養のあるものを食べさせてもらってないから・・・」「子なし三年は去れって昔は言ったのよね」というダイレクトいびりまで、ありとあらゆる「いびり」パターンを見せてくれます。

人工授精の結果妊娠してないことがわかって、里美さんは夫に「ダメだった」と伝えるんですが、夫は「母さんには里美ちゃんから言っておいて〜」と我関せずで、ゲームしたりバラエティー番組見たりしてるんですよ。姑に「ダメでした・・・」と伝えると、電話口の向こうから「キエーッ!!!!」という奇声が・・・。マジ怖い。また銀粉蝶さんの演技が上手なんだコレが。電話を切ったかと思ったら速攻でコールバックがあって「ねえ、なんで(子供
)出来ないの?」と人権を全否定されるようなデリカシーのなさ。怖いな、怖いな~。稲川淳二の怪談より怖いですよ。稲川淳二には悪いんだけど、お化けなんかより生きてる人間のほうがよっぽど怖いんですよ。

だから里美さんはDKとのコスプレ不倫セックスに耽溺するわけです。一旦は卓巳くんが「こんなことダメだよ。旦那に悪いって思わないの?」と言って、別れようと努力したりするんですが、また元サヤになるという関係。卓巳くんは同級生の美少女(田中美晴)に告白されて付き合ったりしてるんですが、やはり里美さんのことを本気で好きになっちゃったんでしょうなあ。

話題になっていた二人の18禁セックスシーンですが、扇情的なファンタジーっぽさは全くなくって、非常にリアルで どことなく痛ましさを感じさせる印象でした。田畑さんの身体がリアルなんですよね。巨乳でも美乳でもなく、くびれもないヌボーっとした身体が本作の雰囲気にぴったり(褒めてます)。お肌は白くてすべすべでとても綺麗でした。

ところが、ある日里美さんが買物から戻ると自宅に姑と夫がいて、隠しカメラで撮られていた彼女と卓也くんのコスプレセックス動画を見ていたのです・・・。思わず地面にへたり込んでしまう里美さん。姑の銀粉蝶が「だから、女を暇にさせておくとロクなことしないって言ったでしょう」と表情をぴくりとも変えずに言います。夫はビショビショに泣いています。里美さんが「・・・離婚させて下さい!」って土下座しても、夫が「嫌だ~!絶対離婚しない!」と泣くばかり。姑が「こうなったからには絶対孫を生んでもらって夫婦関係を修復しないと」と、この期に及んでまた不妊治療を強制させられることに・・・。

「離婚すれば、動画をネットにばらまく」と脅迫する夫。結局二人は離婚しないんですが、動画はばらまかれてしまい(夫の仕業か姑の仕業かは謎)卓巳くんの高校でも嫌がらせのビラが配られ大騒ぎになってしまいます。学校や近所、お家にまで知れ渡ってしまい、卓巳くんはお家に引きこもってしまいます(そりゃそうだよな・・・)。

卓巳くんのお母さん、寿美子さんの助産院にも嫌がらせメールが。しかし寿美子さんは「また来たの~?しょうがないわねえ」というテンションです。助産院エピソードもいくつかあって、「どうしても病院で生みたくないから、ここに来たんです。私、自然に生みたいんです!」という妊婦さんがやってきます。助産院でカバー出来ない場合は病院へ搬送する場合があるということを説明するのですが、「病院は絶対にイヤなんです!」とかたくなな患者さん。こういう自然/オーガニック至上主義な人もちょっと怖いですね。寿美子さんの助手、光代さんことみっちゃん(梶原阿貴)は「ハア?お前何言ってんだお前」みたいなテンションなのが最高です。「妊娠中は目が疲れやすいから、なるべくネットは見ないでね」と優しく言う寿美子さん(ネットで付け焼き刃な知識を覚えないようにという意味)。後でお料理を作りながら話す寿美子さんとみっちゃん先生のシーンもいいですね。

引きこもった卓巳くんを心配して、友人の福田と担任の先生が助産院にやってきます。寿美子さんは担任の先生が妊娠していることを見抜くのですが、まだ相手の彼氏と結婚するかどうかもわからないし・・・という状態。 「お前、そんなんで・・・」と適当過ぎる先生にプルプルするみっちゃん。担任の先生が地味でマジメな人かと思ったら急に「だって~」とか「こわ~い」とかおつむてんてんギャル喋りになるのがちょっと唐突な印象でしたが。「こんなんが教師だなんて日本も終わりだよ!」とみっちゃん(笑)。

卓巳くんの友人福田が、引きこもって寝ている卓巳の布団をはぎ取ります。「自分だけ不幸なふりしてんじゃねーよ」という感じなのですが、ちょ、福田、卓巳くんは「ハメ撮り」(しかも個人特定で)をばらまかれたんだから充分不幸だよ!って思ってんですが、福田は卓巳よりもずっと大変な人生を生きているのでした。卓巳くんはコスプレセックスに興じる余裕があるけど、福田はその日を生きて行くことだけで精一杯だからなのです。

福田は朝は新聞配達、昼は学校、夜は酒屋兼コンビニでバイトをしています。お母さんは大きな借金がある風で、頼りになりません。彼は痴呆が始まったおばあちゃんの世話をしながら、働いている子なんです。しかも所持金が数十円くらいしかなくって、いつもお腹をすかせています。卓巳くんのお母さんの寿美子さんがお弁当を彼に届けたりしているんですが、いつも食べずにゴミ箱の中へ捨てている福田。バイト仲間の同級生あくつ(小篠恵奈)に「また施し受けてんの?」と冷笑的に言われているシーンがあるので、彼には彼なりのプライドがあるんだなあということがわかります。

バイト中あまりにお腹がすいたので、10円のチロルチョコを3つ買ってポケットの中に入れる福田。パクらずに、ちゃんと自分でレジに通してることから「ああ、彼は貧しいのかもしれないけど育ちはいい子なんだな」ということが伝わってきます。そして、弁当の品出しをしながらパッケージ越しに食べ物の匂いを嗅ぐ福田・・・現代の日本でこの飢餓描写は衝撃です。演じる窪田正孝さんは、朝ドラ「ゲゲゲの女房」や「僕たちには世界を変えることができない。」でお会いしていますが、ここまで演技派な方だとは知りませんでした。福田の施しは受けたくないんだというギリギリで踏みとどまっている姿勢とリアルな飢餓感がヒシヒシと伝わってきます。おそらく窪田さんは役の為にちょっと痩せたのかな?じっと虚無を見つめる大きな目がより際立って見えますよ。

福田の家は恐らく低所得者用と思われる団地で、アメリカだとゲットーに相当する様な居住区域です。コンビニの店長に「福田くんが来てから団地の子供の万引き増えたんだけど」とイヤミを言われてしまいます。彼は彼なりに出来ることをすべてやっているんですが、もうそれ以上に問題が大き過ぎてどうしようも出来ないんですね。お金がないことも、おばあちゃんの世話も。そりゃあ卓巳のハメ撮り流出の悩みなんて、彼に取っては屁でもないですよ。

バイト先の同僚で、すこし年上の田岡(三浦貴大)という青年がいるんですが、彼は福田にすごく優しいんですよ。「お前進学のこと考えてるのかよ?貧困の負の連鎖から抜け出すには学歴つけるしかないぞ。俺が勉強見てやるよ」って言ったりするんです。ああ、こういう人が福田の側にいてくれてよかったなって思うんですが、同じくバイト同僚のあくつに「あいつホモだぜ」と告げられるのでした 。田岡は恵まれた家の子供で学歴もあるけど、なぜかコンビニのバイトをしているので変わり者ということです。

福田があくつの自転車を蹴ると、カゴの中から卓巳への嫌がらせビラがこぼれ落ちました。「・・・それ、俺に半分くれよ」という福田。あくつが暗闇の中でニヤーっと微笑みます。あくつ役の小篠さんの演技も素晴らしいです。嫌がらせビラを近所にポスティングしまくる福田とあくつ。福田、お前卓巳のダチじゃなかったのかよ・・・と思いますが、彼の中で何かがリミットを越えてしまったのでしょう。秋の柔らかい光の中で、二人が無邪気に笑いながらビラをまくシーンは非常に美しく撮られていて悲しい様な何とも言えない複雑な気分に。福田がひたすら卓也の味方として存在していないことが、深みがありますね。

そんな時、福田のおばあちゃんが水道を出しっ放しにしてしまう事件が発生。団地の下の階の人に怒鳴り込まれます。福田が慌てて帰ると、あくつが掃除をしてくれていました。福田もぞうきんを手に取り掃除を始めますが、台所の上に卓巳のお母さん、寿美子さんからのお弁当バッグが置いてあるのに気が付きます。「それ、ドアノブにかけてあった」とあくつ。福田は手も洗わないで、弁当箱を開けて中身を食べ始めます。むしゃぶりつく、という表現がぴったりな勢いで。現代の日本で、ホームレスでもないのにこんなに飢えているなんて・・・とかなりショッキングなシーン。福田はあくつにも分けてやりますが、あくつも夢中で弁当にむしゃぶりつきます。あくつも飢えていたのか・・・と衝撃を受けるのでした。

俺は、どうしてこんな世の中に生まれて来たんだよ・・・と生まれて来たことを後悔する福田。別のシーンですが、寿美子さんが「この世にいらない命なんてないの。だからあんたも生きてて」と卓巳くんに言うんですよ。こんな圧倒的な母性で包んでくれるお母さん、素晴らしいですね。殺伐としたこの世の中だけど、原田美枝子さんの安定感抜群の演技にホっとします。また福田も卓巳のところへ戻ってきました。ついに学校へ行く決心をした卓巳なのでした。

大きな病院の息子だったバイトの同僚、田岡のお陰で福田のおばあちゃんは入院出来ることになりました。「どうして、俺たちにこんなに良くしてくれるんですか?」と田岡に問いかける福田。「俺さ、別のところですげーひどい奴だから、これくらい親切しないといけないんだ」という田岡。一体どういうことなのか・・・と思ったら、後に田岡は男児への淫行で逮捕されてしまうのでした。「人は見かけに寄らないわねえ、怖いわねえ」 と病院の看護婦さん。「福田くんは、何もされてないわよね?」と言って福田のアップになり場面が切り替わります。うーん、すごい演出だ。

福田のバイト先のロッカーには、田岡が添削した英語の練習問題が残っていたのでした。その後は図書館などで勉学に励む福田。福田、頑張れ、頑張るんだ~!学歴社会ってお勉強が出来る人だけが得をするシステムって思ってたけど、こうやって恵まれなかった子が這い上がる手段にもなるんだなあ・・・と思いますよ。

寿美子さんのところに絶対に自然分娩で生みたい妊婦さんが産気づいてやってきました。しかし経過が思わしくなく、仕方がないから病院へ搬送することに。すると逆ギレする妊婦さんの旦那。だから最初に説明したのに・・・。こんなモンスターペイシェントもいるんですね。帝王切開の手術をすることになった妊婦さんは「私、こんなんじゃ母親失格ですよね・・・」みたいなことを寿美子さんに言って、手術室に運ばれて行くのでした。うーむ、自然分娩で出産ってそこまですごいことなんでしょうか、私には理解不能です。

里美さんは代理母を探す為にアメリカへ行くことになりました。彼女のマンションのドアも動画流出のせいで心ない人からの落書きがされていたんですが、結局離婚はしなかったみたいですね。彼女はたとえ子供が生まれても、あの夫と姑がいる限りなかなか心の平安が訪れない様な気がしますが・・・。なんで離婚せずに渡米を決心したのかはわからないままでした。この映画は素晴らしいのですが、出て来る落書きにいまいちセンスがないのがもったいない。里美さんのドアに書かれた落書きもそうだし、里美さんの学生時代のものと思われるノートにかき込まれた罵詈雑言も、明らかにワンパターンで1人の人が書いたみたいな落書きなんですよね。ノートの罵詈雑言は、現役JKに書いてもらえば良かったのに・・・って思いましたよ。

卓巳の担任の先生も寿美子さんの助産院で出産しました。相手の彼氏は、みっちゃんが脅してくれたお陰で先生と結婚することに(笑)。生まれたのは男の子でした。出産を手伝った卓巳は、赤ちゃんを見て「お前、やっかいなものつけて生まれて来たなあ・・・」と微笑み、映画は終わります。ラストで生まれた男の子の赤ちゃんに、「やっかいなもの」がついていたということで、生殖とセックスがリンクして「人の世はこうやって続いて行く・・・」という感じですよ。「人生とは、不条理という名の条理を発見していく旅である」(by 父)と書きましたが、この赤ちゃんの旅は始まったばかりです。

ということで落書きが微妙だったけど、全体的にはとても良かったですね。「ふがいない僕」である卓巳が空を見上げるという「そのまんまやんけ!」と言うシーンなんかもなかったし(変な映画だとそういうシーンがあったりするじゃないですか?)。監督のタナダユキさんは私が知ってるところだと「百万円と苦虫女」なんかを監督されてます。今調べてびっくりしたんですが、卓巳役の永山絢斗さんのお兄さんは瑛太さんなんですね~。お兄さんより断然好きかもです。

『悪の教典』あまりの事態に笑いが・・・


        


三池監督の映画なのでレンタル。このところ映画「オーディション」関連の検索ワードで当ブログを訪問して下さる方が増えました。ある時から急に増えたので、どこかで「オーディション」が取り上げられたのでしょうか。いずれにせよ、拍手クリックも頂いてとても嬉しい限りです。ありがとうございます!
さて悪の教典ですが、こちらも非常に面白かったです。まあトラウマ度合いは「オーディション」の方が上ですが。伊藤英明の先生が生徒を皆殺しにするらしい・・・ということは知っていたのですが、まさかここまでとは!あまりに殺しすぎて途中からブラックコメディーに見えて来る始末です。ちょっと「シリアル・ママ」を思い出しました。まあシリアル・ママは正義の味方なんですけどね。



※ネタバレします。





東京都下にある私立高校の英語教師、蓮見(伊藤英明)はイケメンだし授業は面白いし生徒思いの人気者。しかし、彼には裏の顔があった!というストーリーです(短か!)

伊藤英明さんが非常に良いんですよ。こんな爽やかイケメンで有能な教師いるわけな~い!と思うんですが、前半のいい教師パートは非常に説得力がある。セクハラ被害に合っている女生徒を助けるエピソードなんか「ああ、いい先生なのかな・・・」ってちょっと思っちゃうんですよ。ただ携帯を使ったカンニング対策で、試験中に妨害電波を出すって案はちょっと「ん・・・?」って引っかかるようになってる。そしてまた出た、物理教師の釣井役で吹越満さん!吹越さんが出てるってだけで「この後に、いったいどんな壮絶シーンが待っ ているんだろうか・・・」と、ちょっと期待してしまうではないですか~。

そ してクローズアップされる生徒の早水役に染谷将太、友人の片桐役に二階堂ふみの「ヒミズ」コンビ。今回は高校生役です。特に二階堂さんはヒミズのときと全然違うキャラで、女優よのう~と思ってしまいました。同じく友人の夏越役で浅香航大。この人は「どっかで絶対見たことある・・・」と思ったら「桐島、部活辞めるってよ」に三枚目な役で出てました、出てました。日本映画界をしょって立つ若手が大勢出ていますよ。

冒頭、恐ろしげなドイツ語の歌「Macky Messer」が雰囲気たっぷり~。メキメッサーというシリアルキラーのことを歌ったものなんですが、ものすごい悪知恵が働く奴で誰にもつかまらないという怪物なんですね。これが蓮見なわけですよ。怖いな、怖いな~。過去のシーンもインサートされて、どうやらハスミンは子供の時から異常だったことが提示されます。

最初の殺人は学校に怒鳴り込んで来るモンスター・ペアレントの家での放火殺人。モンスター・ペアレント家の周りには猫よけの水入りペットボトルが隙間なくガーっと並んでいる訳ですが、中身がすべて灯油になっていたと言う・・・。話はちょっと違いますが、こういうペットボトルで要塞みたいになっている家たまにありますよね。猫よりも中に住んでる人の方が恐ろしいよ・・ ・と通る度に思いますが。タバコの吸い殻から着火してあっという間にバーンダウンしまいました。

学校にも警察が来るんですが、吹越さん演じる釣井先生が刑事に「蓮見先生はここに来る前に某◯◯高校にいました・・・」って二回言うんですよ。大事なことだから二回言う、これ社会人の鉄則ですね(笑)!釣井先生が独自に調べた所、ハスミンが前にいた高校で生徒が4人連続で自殺をしていたのです。劇中では「ウェルテル効果」って名前が付いていました。周りで自殺が起きて自殺する、自殺の連鎖みたいなものなんだそうですよ。しかし4人って!こ、これは・・・とワクワクしちゃいます(不謹慎?)。

ハスミン親衛隊からは距離を置いている生徒3人(「ヒミズ」コンビと「桐島」の三枚目 )も、何かがおかしいことに気が付いています。事実を追求しようとする早水(染谷将太)に「あまり深入りしない方がいいかもしれない、あんたが心配」と告げる片桐(二階堂ふみ)なのでした。

一方、ハスミンは体育教師、柴原(山田孝之)のセクハラから美彌(水野絵里奈)を助けますが、ハスミンのことを好きになってしまった美彌から迫られ自分が淫行教師に(まあ女生徒から迫られたんだけどね)。もう1人の淫行教師、美術の久米先生(平岳大)は美術部の美少年、雅彦(林遣都)とホモ淫行をしていました。うちの母親は平さんのファンで、「かっこいいわね~。さぞやモテるでしょうね~」とため息をついていますが、この映画のことはたぶん言わない方が良さそうです。


釣井先生は早水を呼び出して、ハスミンの人物調査結果を語り始めます。14歳で両親が何者かに殺され、自らも傷を負う。その後京大に進学するがすぐ退学、ハーバード大学を出て証券会社に就職するも2年で帰国、そして何故か英語教師に・・・。そしてすごいのが「蓮見にはまったく劣等感を刺激されないから、 アイツは俺と同類・・・もしくはそれ以上の異常者かもしれない」とのこと。釣井センサー、侮り難し!しかし、教室コンセントに内蔵された盗聴器でこの会話はハスミンに筒抜けでした。怖いな、怖いな~。

ハスミンは何故かすごいボロ家に住んでいて、家の中にある鉄棒みたいなので裸腹筋しています。サイコ野郎がストイックに身体を鍛えてるって怖いですね、怖いですね。「タクシードライバー」か?でもデ・ニーロは中二病をこじらせちゃっただけだし、ギリギリのところで踏みとどまっています。ハスミンは既にこの時点で何人も殺してますからね。

ハスミンおかしい!と気付いてしまった釣井先生はやっぱり殺されちゃうんですよ。釣井先生は電車のつり革を取り付けているバーで首を吊られていましたが、そんな高さあったっけ・・・(路線によるのかな)。あと屋上でハスミンと美彌のイチャイチャシーンを偶然見てしまった蓼沼(KENTA。ちなみにダルビッシュの弟らしい)も消されます。そして早水もリンチの末、闇に葬られてしまいました。伊藤英明、海猿ブレイブハーツなのに・・・(映画は未見です)。海猿シリーズはもう終了したらしいので、爽やかで熱い海上保安官から真逆のサイコ教師への真逆転身は鮮やかですね。リアルでは「ええ?海猿の伊藤英明が殺人鬼?」フィクションの中では「ええ?人気者の蓮見先生が殺人鬼?」という風に連動していますし。しかし本作を観た後で海猿観ちゃうと怖いかも~。海上保安の人が、助けに来てくれた!と思ったらメキメッサーですからね(笑)。

ハスミンのアメリカ時代の回想シーンも出てきます(ちょい英語を頑張って話している感じがしたけど)。このときの人殺し同好の友(後にハスミンにより殺害)が彼に取り憑いていて、殺戮シーンで散弾銃にへばりついた目となって、そそのかしているみたいな感じでしたね。

もうすでに高校から三人も自殺/行方不明者が出てしまいました・・・(生徒二人の行方不明については事件化されているのかわからないような感じでした)。が、文化祭は予定通りに行われるみたいです。そしてこの映画の白眉シーンがやってきました。準備のため学校に泊まり込む生徒たちを皆殺しbyハスミンです。「まるで出席を取るみたいに、先生はみんなを殺し続けたんだ。」ですよ!

学校裏サイトの件からハスミンのことを疑いだした美彌を屋上で殺害。山田孝之からセクハラされたことを気に病んでの自殺を工作します。釣井先生のときと同じ、中に鈍器を隠したスーパーの袋が武器です。どうやらこれはハスミンのお気に入りカモフラ武器らしい。美彌を探しに来たおせっかい女生徒も殺害。当直中の山田孝之も殺害(彼が死ぬ直前に行う「利きパンツ」が面白い)。山田孝之からは猟銃でパンパン射殺して行きます。軽音楽のメンバーも殺害。ここで久米先生を学校に呼び出して意識不明にします。ああ、そう言えば久米先生は以前に射撃をやっていたシーンがあったので、後から罪をなすりつけようってことなんだな・・・怖いな、怖いな~。

猟銃の音に「何か変だよね?」となる生徒たち。ハスミン は校内放送で「猟銃を持った不審者が学校に侵入したので、落ち着いて屋上に逃げて下さい」と告げます。パニックになる生徒たち。前半部にあった妨害電波もオンになっているので、携帯も使えません。屋上に殺到する派と「ちょっと待て、落ち着け」派にわかれます。冷静になって考えれば、この放送は「不審者」も聞いている訳で・・・。屋上に通じるドア前に集まった生徒たちはもちろん袋のネズミですよ。そこへ登場したハスミン。生徒たちが泣きながらハスミンにかけよって「先生~!私達ずっとここで待って・・・」 パーン!(射殺)みたいな。ここで英語版の「Macky Messer (Mack the knife)」がかかっているんですが、軽快なビックバンド風のアレンジになっているんですよ。ここまで来るともうエンターテインメントに昇華されちゃった感があって、思わず笑いがこみ上げて来るというものです。一体どこまで殺すのか?と言う、もう殺しのわんこ蕎麦状態ですね。命の重さとか、そんな説教臭さはぶっ飛んでしまうくらい簡単にバンバン殺されて行きます。ははは・・・。しかも撃ったらほぼ命中。薄暗いのにものすごい射撃テクを持ったハスミンです。

こんな修羅場になる直前、告白しよう/されようとしていた男子生徒と女子生徒のパートもなかなか良いですね。女の子が美少女じゃないのが、なんかグっと来ます。男の子は弓道部なので、部室にある弓道の装備を装着して彼女を 助けに向かうんですよ。おお~、勇ましいっ!弓矢ってとこがまた泣かせるじゃないですか。文字通り、一矢を報いるのか・・・?!とドキドキしながら見守ります。しかし弓矢は散弾の1つに当たってしまい外れ。あわれ弓道少年は銃弾に倒れます。やっぱり三池作品、そこまで甘くないか・・・しょんぼり。


さて次は残った生徒たちが狙われます。東大志望を公言していた感じの悪いガリ勉も殺害。そして久米先生と付き合っていた美術部の美少年も殺害されてしまいますよ。この子には助かって欲しかったけどなあ~。久米先生も自殺工作されて殺害。アンチ・ハスミン派だった片桐と夏越は、避難訓練で使った滑り台で逃げようとします。しかし機転を効かせて助かりました。こういうホラー映画、スラッシャー映画で助かるのはいつも聡明で機転が効く人なんですよね~。私もかくありたいです。

結局、生き残った生徒はこの二人だけ。ってかハスミン雑!詰めが甘いんですよ。だってひとクラスも校内にいたら絶対取りこぼしが出るってことは考えなくてもわかるはず。私だったら、人間の温度を察知する特殊な暗視レンズ的なものを装着しますよ(ドン引きですか?)。だって1人でも生き残ったらアウトなんですからね。警察の前でしらばっくれるハスミンですが、AEDのログが証拠になってくれました。「やっぱり一発で二人をしとめるのは無理か~」ってハスミンの声が入ってるんですよ。弾丸を節約したせいで、AEDが落ちて作動しちゃうんだから、 やっぱり正念場ではセコさが命取りになるんですよ(笑)。

警察に連行されながら、片桐と夏越の前で心神喪失狙いのパフォーマンス(?)をするハスミン。「こいつ、もう次のこと考えてる・・・」と驚愕しながらつぶやく片桐。一 方、屋上から落とされた美彌は息を吹き返します。そして出る「To be continued」の文字・・・マジ?みんな死んじゃったけど続編あるの?とビックリ。染谷将太さん演じる早水はちゃんと死んだって描写がなかったけど、これが伏線なんでしょうか?

いやはや、しかし・・・これだけ人が死ぬ映画って邦画では珍しくないですか?aitan調べだと本作の中で伊藤英明に43人殺されてますよ(内訳は保護者1名、教師3名、生徒39名)。それにカラっとした印象の大量殺戮シーンは日本映画離れしているように感じました。三池監督ご自身は「この作品がR-15の限界」とお話されています(引用元はこちら)。面白かったので興味のある方は是非ご覧下さい。


ドイツ語バージョンの「メキメッサー」↓

『最強のふたり』ひとりじゃないって素敵なことよ

         



話題作だったので取りあえずチェックしてみようかと思ってレンタルしました。ヨーロッパでも大ヒットしていたので映画の存在は知っていたものの、字幕がないとなあ~と思っていたのです。「クロワッサンで朝食を」は、おばあちゃんがゆっくりと話すので字幕なしでも大筋の理解出来たかな・・・?と思いますが、バンリウの若者が早口で話す本作はやはり字幕で見ておかないとチンプンカンプンでした。そう考えるとヴァンサン・カッセル主演の「憎しみ」字幕ナシなんてわかるわけないですね。無謀でした・・・。

ヒットして評判もいいけど、なんか説教臭かったら嫌だな、嫌だな~と思っていたんですが・・・全っ然そんなことない!重度の障害を持ったフィリップ(フランソワ・クリュゼ)とバンリウ出身の若者 ドリス(オマール・シー)、境遇が全く違う二人の心の交流・・・マジメか!ってよりも、ただ偶然出会った二人の男の友情を人情味豊かに描いた映画という感じ。だから、どんなにフィリップが障害の為に大変な生活を強いられているかなどのシリアスな苦労描写はほとんどナシです。しかし、映画の主題が二人の友情に重きを置いているのでこのようなライトタッチで正解だったと思います。



※ネタバレします。


オープニング、フィリップを横に乗せて高級車で夜のパリをかっ飛ばすドリス。この二人は、一体何をやっているんだ?と思ったら、二人で警察に捕まるかどうかの賭けをしているんですね。賭けはドリスの勝ちで200ユーロゲット、ご機嫌になった彼はカーステからディスコの名曲「September」をかけます。思わず肩が動いてしまう この選曲、いいねえ!と映画の世界にグっと引き込まれました。

オープニングは既にダチになっている二人ですが、過去のシーンに戻りドリスが介護士の面接を受ける場面になります。面接で「失業保険もらうのにサインが必要だから来たんだけどさ〜とっととサインだけしてくんねえかな?」というドリス。この気持ち実は私もわかりますよ・・・。失業するとハロワに行って失業認定してもらって、失業保険の給付が始まるんですけど1ヶ月に3回くらい就職活動の実績を残さなきゃならないんです。こうして「活動はしてるんですけど、まだ無職なんです(てへぺろ)」ということが認定されれば給付金が下りる仕組みなんですね。

日本の場合は面接以外にも求人応募なんかも実績になるんですけどね。私も実績作りと面接の練習を兼ねて、転職エージェントから紹介された行きたくない会社に行って面接してもらったことがあります。後から調べたらそこは結構なブラック会社だったようで、やっぱりなと思いましたが。

閑話休題。そんな本音ぶっちゃけドリスですが、それが逆に応募者の中で目立ってお試しで雇われることに。ドリス役のオマール・シーは結構整った顔をしていて、いい服着るとまるでパリコレモデルみたい。破天荒なヤンキー演技も小気味良いです。ラデュレな装飾の個室を与えられたし、ラッキー!って感じですよ。介護の経験はありませんが「マジかよ〜」ってヤンキーなテンションで新しい環境への順応もわりとスムーズです。

フィリップ役のフランソワ・クリュゼさんは薄目の顔をしたおじさんで、今までにフランス映画でちょくちょくお会いしたことのあるお顔。しかし薄めの方なので特に印象に残っておらず、フィルモグラフィーを見て「ああ!」と思うことしきりでした。しかし演技派ですね。首から下が麻痺している役なので、使えるのは顔と声だけなんですが、体全体から出しているオーラも演技に使っているような印象を受けました。

フィリップの友人は「あいつは調べたら前科(宝石店強盗)があるし暴力的だし、早急に新しい人を雇った方が良いのではないか」と言うのですが、フィリップは拒みます。なぜドリスがいいのか?彼は重度の障害があるフィリップに対してスーパー普通に接しているからなのです。同情心を持って接してこないから良いのだと言うフィリップ。なるほどな〜。障害を特別視せず対等に接するということは、頭では理解出来ますが・・・実際はなかなか難しいと思います。自分だったら絶対余計な気遣いとかをしてしまいそうだな、と思ってしまいました。

しかし、ドリスが次々と繰り出す笑っていいものかどうなのかの不謹慎ジョークが強烈です。M&Mチョコレートを食べているドリスに「チョコちょうだい」とフィリップ。「いや、これ俺のだし・・・これは健常者用チョコだから食べちゃダメ」とドリス。「食べさせて」「これ健常者用」と言うやりとりが3〜4回あったんですが、ちょっとドキドキしてしまいました。こういう気遣いが余計なのか・・・。

あと雪が降った公園で遊ぶシーンがあって、ドリスがフィリップに雪の玉を投げながら「たまには反撃して来いつーの」って言うシーンも同じですね。これでフィリップが「そうそう、こうやって雪を丸めてな・・・ワシ首から下麻痺しよるから投げれんちゅーねん!」ってノリツッコミとかするまでならこちらも安心してワハハと笑えるんですがね・・・まあこういう気遣いがフィリップはイヤなんでしょう。私はどうしたって彼の介護役にはなれそうにもありません。

そんなこんなですっかりダチになった二人。間にそれぞれの恋愛なんかも入ってきますよ。フィリップは後から結婚したと出ますが、文通相手の女性とうまくいったのでしょうかね。すっかりダチになったフィリップとドリスの生活ですが、家庭の事情でドリスは辞めちゃうんですね。フィリップが「家に帰った方がいい」って言うんですが。フィリップの豪邸の前は駐車禁止になっているんですが、たまに駐車して携帯で話している人がいるんですよ。ドリスが来たばかりの頃は、そんな人がいると車から引きずり降ろして「お前、字読めるか?」って駐車禁止の看板を読ませていたんですが、辞める頃には「すみません、あそこに駐車禁止って書いてあるので車を移動してもらえませんか?」と頼めるようにまで成長したんですね。

そしてやはりフィリップの元へ戻って来たドリス。フィリップは代わりの人が介護しているときは石の様な表情だったのに、ドリスが来ると表情が和らぐんですね。ドリスがいない間に伸びきったヒゲをそることになるんですが、落ち込んでいたフィリップはドリスに「カミソリでノドをかっ切れ」って言うんですよ。しかし「お前何言ってんだ?」と剃ってしまう前のヒゲで遊ぶドリス。しまいにはフィリップをヒトラー風のちょびヒゲ&ヘアスタイルにしてしまうです。「あ、これは笑えない、笑えないよ」とフィリップ。「超ウケる!」とドイツ語のつもりの妙な言葉を話しながらナチ式敬礼をフィリップにさせるドリスなのであった。ここは笑ってしまいましたね。しかしドリスのギャグはいつもギリギリすぎるんだよな(笑)。

ラストで本物のフィリップとドリスが海を見渡せる場所で佇んでいるのが映りますが、本当になんでもぶっちゃけあった長年の友達独特の、家族みたいな雰囲気があってちょっと感動しました。障害等は抜きにして、単純にいい友達と出会えるって素晴らしい。最強のふたり、♪ひとりじゃないって〜素敵なことね〜♪と思わせてくれる映画でした。

『ヒミズ』何故だか知らないけど涙が・・・

        

ヒミズ【コレクターズ・エディション】 [DVD]

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価格:5,076円(税込、送料別)



恋の罪」や「冷たい熱帯魚」が大変に面白かったので、園子温監督の「ヒミズ」をレンタルしました。中学生の男の子と女の子の話だったので、前述2作のようなエログロさはなかったけれども「ああ、映画観たな~」と満足感のある作品でした。原作の漫画は読んでないので単純に映画としての感想になります。

ヒミズって何だろう?水の種類?と思っていたら、モグラのことだったんですね。「日の光を見ない」ってことでヒミズと言うそうな。主人公の住田(染谷将太)は、貸しボート屋の息子で、特に大きな夢とか持たず普通にボート屋を継いで平凡に暮らして行きたいという男の子。そんな彼が理想とするのがモグラのような生活ということなんです。30歳の男がそう言うならわか るけど、15歳の子ならもっと大きな夢を持てよ!と言いたいところですが、まあ人生色々なんでしょう。

映画冒頭で、ガレキの山が積み重なる土地が果てしなく広がっているのを見せられて「これ、3.11後の世界では・・・」としょっぱなから凹みます(私は当時、東京に住んでいたので被災はしていませんが)。映画全体の印象から言うと、3.11後の困難な世界でどう生きて行くか?みたいな部分が後付けされているようで、なんだかそぐわない感じを受けます。家の増築したところだけが妙に浮いてしまっていて「ああ、ここ増築だな」ってすぐにわかっちゃう感じなんですよ。後から調べたところ、やはり3.11のエピソードは事後に盛り込まれたそうです。こんな大き過ぎるテーマを無理に盛り込まなくてもよ くね?と思ったり、いやしかし監督は英断されたのだろうと思ったり、人によって色々な感じ方があると思いますが、わたしとしては3.11なしで作った方が、よりシンプルで力強くメッセージが伝わったのではと思いました。

住田が母親(渡辺真起子)と住むボート屋兼住居の周りには、手作りのテントのようなものが張ってあって中には様々な大人が住んでいます。この人達はホームレスなのかな?と思ったら皆被災したっぽい設定になっていました。なぜか住田のことを慕うおっさん夜野(渡辺哲)、仲良し夫婦の圭太(吹越満)と圭子(神楽坂恵み)などなど。私は夜野のことをしばらくでんでんだと勘違いしていました(笑)。クラスメートの茶沢(二階堂ふみ)のお母さんは黒沢あすかだし、金子ローンの社長はでんでんだし、あの猛毒エンターテインメント「冷たい熱帯魚」のメインキャストが勢揃いです。

大人気のNHK朝ドラ「あまちゃん」に、漁協の組合長さんででんでんさん、観光協会の会長さん吹越満さんが出演されていますが「じぇじぇじぇ!誰かボディーさ透明にされてねが?」←(注:方言適当です)と思ったのは私だけではないはず・・・。

茶沢さんは住田のことが大大大好きなので、部屋の壁いっぱいに住田語録を貼ってるんですよ。中学の先生が「夢を持て!」って若干ウザイんだけど、住田が「普通サイコー!」って叫ぶのに痺れた茶沢さん。確かに自分の意見を持っているアナーキー中学生、住田はちょっとカッコイイです。中二病もそんなに発症していないようですし・・・。

住田を演じる染谷 将太さんは、私が知ってるところだと「東京島」に出ていました。たびたびヒロインの木村多江の元に現れては妙な予言をする少年で、うつろな大きい目が怖かったのを覚えています。染谷さんは漫画家/コラムニストのしまおまおさんに似ていませんかね?姉と弟と言われたら納得の似てる具合です。染谷さんは茶沢さん役の二階堂ふみちゃんともそっくりだと思います。

しかし二階堂ふみちゃんが可愛いんですよ。ウザ可愛いとでも言ったらいいのでしょうか?「すーみーだーくーん!!!」って大きな声で台詞をさけぶのも可愛いし、住田にどつかれてパンツ丸見えでゴロゴロ土手を転がり落ちていくのも可愛い。演じる二階堂さん(Not大分麦焼酎)は宮崎あおいっぽい感じの女の子なんだけど宮崎あおいから、優等生臭さを抜いた感じで、演技も鼻につきません。住田、茶沢さんのことをウザがっていたけど彼女が側にいてくれて本当によかったと思いますよ。今までに情状酌量的犯罪を犯してしまった少年全員に茶沢さんがいてくれたら・・・と思ってしまいました。

住田のお父さん(光石研)が借金をこしらえてしまい、どうにもこうにもならなくなってしまうのですが、この父ちゃんがヒドい。お前さえいなければ良かったのによお~とことあるごとに言って来て暴力を振るう父なんですね。借金をした金子ローンからも取り立てが来て、住田くんや夜野のおじさんもボッコボコに殴られてしまうんです。取り立てヤクザの役が村上淳で、親分が出たー、Bボーイみたいな格好をしたでんでんさんです。やっぱりでんでんさんの役者力って凄い。出て来ただけでもう彼に釘付けになってしまう何かが出ているような気が。

しかし家庭が大変なことになっているのは住田の家だけではありませんでした。茶沢さんは無邪気だし可愛らしいし、きっと愛に溢れた家庭で育ったんだろうな~と思っていたら・・・。住田の家より全然荒れてる!黒沢あすか のお母さんから暴力を振るわれてカツアゲされたりしてるんですが。しかも両親が彼女の自殺台みたいな首閉めの縄をぶら下げたイルな装置を作っているんですよ。ひ~!茶沢さん住田より可哀相じゃん!!私はてっきり住田が茶沢さんと一緒に両親を殺すんだと思っていましたが、茶沢さんのお家の状況は最後まで変わらなくて非常に胸がえぐれる思いでした。

住田くんのお父さんは600万円の借金があるんですが、夜野おじさんがスリの窪塚洋介に弟子入りして謎のナチス部屋からお金を取って来て代わりに返済してくれるんですよ。お金は返済したので、でんでんの態度は軟化。仕事してないときのでんでんは、コワオモテだけど普通にいいことを言うオッサンです(股間をかく仕草を入れている演技が素晴らしいと思いました)。「お前はな、 今病気なんだよ。お前は自分で自分の可能性を狭めて、一番ヤバい道に行こうとしてるんだ」・・・言葉だけ聞くとベテランの中学校教師みたいです。

お父さんを殺害してしまった住田くんは「せめて世の中の役に立ってから死のう」と思い顔に妙なペインティングをして(インディアンとかが戦闘のときにほどこす化粧と同じ様な意味合いか?)、紙袋に包丁だけを入れて街を徘徊します。1人自警団的なつもりなのでしょう。

住田が満員のバスに乗っていると、優先席の前で妊婦さんとそのお姑さん(木野花)が立っているんですよ。お姑が「お腹の調子どう?」妊婦さん「今朝は張っていたんですけど、今は大丈夫です」と大きくなったお腹をさすりながら答えます。すると座っていた年配女性が「あら、気付かなくってごめんなさいね。どうぞ」と席を立とうとするんですが、妊婦さんが「すぐ降りるので大丈夫です。ありがとうございます」と答えます。年配女性の隣には若い男性(ちょっと顔つきが変)が座っていたので、お姑が「あなた席かわりなさいよ」って言うんですよ。妊婦さんは遠慮しているんですが、お姑が結構強気に「かわりなさいよ、ここ優先席よ!」って若い男性に言うんですよね。

そうすると、ヤバい顔つきをした若い男性が持っていたナイフで姑を刺すんですよ。パニックになる車内。お姑を助けようとしたサラリーマンが何回も刺されるという地獄絵図に。若い男が刺しながら「優先席ってだけで、譲るのは強制じゃねーんだよ!」みたいなことを言うんですよね。これ、映画の中ではそんなに大きな比重を占めているシーンではないんですが、何でしょう・・・現代ニッポンのイヤ~な部分が濃縮還元されているみたいなシーンだと思いました。子供を育てている/育てようとしている女性に厳しいって部分とか、額面通りの言葉しか受け取れない若者とか・・・。実に世知辛いシーンだと思いました。

住田がボート小屋に帰って来ると、夜野や茶沢さんがボート小屋をピンク色に可愛くペインティングしているんですね。なんかちょっとホッとするシーンですよ。みんなが帰った後「明日、警察に自主しに行こう」と泣きながら茶沢さんが言うんです。「出てくるまでずっと待ってるから」と言う茶沢さん。今夜はボート小屋でプラトニックお泊まりです。住田出所後の生活を語る茶沢さん。住田は本当にギリッギリの崖っぷちのところで救われていると思います。

まさか自殺してしまうのか・・・?と思ったら生きていた住田。もしかして、茶沢さんが池の中に投げた石ころの1つが命中して目を覚ましたのかもしれません。夜野のおじさんが「あの子にはこれからがあるんだよー!」って、でんでんに差し出したお金も無駄にはならなくてよかった。ラストの二人で泣きながら走って行くシーンで、何故だか知らないけど私の両目からも涙が・・・。一体全体何故だかわからないけれど涙が止まりません。「すみだー!がんばれー!」と叫びながら住田に伴走する茶沢さん。そして茶沢さんの「がんばれー!」に重なる3.11後のガレキの山・・・。これは監督からのエールか。しかし、3.11描写を入れなくても充分に素晴らしい作品になり得たと思います。よくよく考えると、ボロボロになってもなんとか立ち上がって生きようとする、このいたいけな二人に感動したのかなと思いますが、とにかく理由なしに涙が出て来る映画を観たのは本当に久々でした。「母なる証明」以来かも。

染谷将太さんと二階堂ふみさんは、ベネチア映画祭で新人賞をダブル受賞だそうで。昨年は「ブラック・スワン」のミラ・クニスが同賞を受賞しているそうです。

『クロワッサンで朝食を』パリのお洒落な不良婆さんアコガレ

        



母親が観たいと言ったので一緒に鑑賞してきました。この映画は確かプラハ国際映画祭でも上映されていたんですが、チェコ語字幕だけだったので観るのを諦めていた一本だったので、帰省中に観る機会が出来てよかったです。

劇場は銀座シネスイッチ(和光の裏)。上映1時間前に到着したところ、既にチケットカウンターの前には長蛇の列が・・・!しかも皆さん母親と同世代のアラ還マダムたちです。いや~、すごい人気。整理をしていた劇場の方によると「劇場側としても予想以上で驚いているんですよ~」ということ。チケットをゲットするために、かれこれ20分くらい並びました。

新聞や雑誌の映画レビューコーナーで軒並み褒められていたし、シニア女性のお話ということで母親世代の興味を引いたのでしょう 。「ジャンヌ・モロー、懐かしいわね~」という昔からの映画ファンの方もいらっしゃったのではないでしょうか。

しかし、驚いたのは並んでいたマダムたちのオープン&フレンドリーさである。列の前後になった人と、まるで久しぶりにあった旧友同士のように普通にトークし始めるんですよ。知らない人同士なのに、このフレンドリーさ!まあ同じ映画に並んでいるという共通点があるからというのもあるんだろうか。うちの母親もジャンヌ・モローのシャネルの衣装が自前だという雑誌で仕入れた情報を、後ろにいたマダムに提供したりしていました。「あら〜、そういうことを知るともっと観る楽しみが増えるわね〜」と後ろのマダム。オバチャンのコミュニケーション能力の高さ、ナーメテーターである。



※ネタバレします。



母を亡くしたばかりのエストニア人女性アンヌ(ライネ・マギ)は、パリに住む裕福なエストニア老婦人フリーダ(ジャンヌ・モロ ー)の家政婦として働くためにフランスへやって来ます。しかしフリーダは気難しく、なかなかアンヌを受け入れようとしません。フリーダの唯一の友人で彼女を気にかけているステファン(パトリック・ピノー)によると、今まで何人も家政婦を雇ったが続く人はいなかったと言うことでした。フリーダの朝食は毎朝決まって紅茶とクロワッサン。それを知ったアンヌが彼女好みの朝食を出すようになり、二人は一緒に散歩をするまで仲良くなるのですが・・・というあらすじです。

いや眠かったですね~。楽しみにしていた母親でさえ一瞬、意識を失ったと言っていました。一言で言うと金持ちの気まぐれ婆さん in Paris、って話ですかね・・・。評判では感動するっぽいことが書いてあったので、「もしかして泣いちゃうかも・・・?」と思っていた んですが、流した涙はアクビのときの涙だけでしたね。ツウ好みの映画になっていて、私はいまいちピンと来ませんでした(母親も)。

演技はジャンヌ・モロー始め皆さん素晴らしかったですし、押さえた演出も雰囲気があってよかったんですが、最後にカタルシスが来る、来ると思っていたらカタルシスではなくカタスカシだった・・・みたいな感じでした。母親が読んだどこかのレビューでは、最後に家政婦の彼女が老婦人の莫大な遺産を相続するみたいなことが書いてあったそうですが、最近母親もボケ始めているので本当かどうかは信用できません(笑)。ラスト、フリーダのアパルトマンに戻ったアンヌに、フリーダが「ここはあなたの家なのよ」って言うけど、それが遺産相続ってことなのかな?と母親。しかし、 その言葉=遺産相続って完全に妄想の域に達してると思うけど・・・。

エストニアから来たアンヌは、若い頃フランス語を一生懸命勉強していたけれど数十年使っていないという設定。しかし少しスローだけど普通に話せてるんですよ。アンヌがお世話をする老婦人フリーダもエストニア人という設定ですが、彼女は一言もエストニア語を話さないんですね。同郷のお友達が来てエストニア語に切り替わっても彼女だけは全部フランス語で通します。これはジャンヌ・モローがフランス人であるという制作上の制約が、逆に働いていて良かったと思います。フリーダは故郷を完全に捨ててフランス人になったということでしょう。

フリーダは食もフランス人化しています。アンヌがエストニアの家庭料理を作っても「エストニア料理は地元の食材を使わないとダメなのよ」と言って食べない。そして朝は必ずお紅茶とクロワッサンです。アンヌはスーパーで袋入りのクロワッサンを買って朝食に出しますが「プラスチックを食べさせる気?」と言われてしまいます。ブーランジュリー(パン屋さん)で作ったクロワッサンじゃないとクロワッサンじゃないとバッサリ言うフリーダ。確かにおパリでは美味しいクロワッサンが至る所で買えますからね。しかし、このエピソードがエストニアから出て来たばかりで、街の事情を知らなくて倹約家(やはりスーパーの方が安いだろうから)のアンヌのキャラクターを表していると感じました。

近所のパン屋さんでクロワッサンを買い求めるアンヌ。「やればできるじゃない」と言って美味しそうにクロワッサンを食べるフリーダ。言わずもがなこのクロワッサンエピソードが邦題の元になっていて、劇場でもクロワッサンやパンの本が売られていました。「ティファニーで朝食を」みたいなお洒落で洗練されたイメージを狙っていて、洋モノに目がないマダムたちに刺さる邦題だと思います。原題は「Une Estonienne à Paris」で、パリのエストニア女性(単数)という意味。アンヌとフリーダ、一体どちらのことを指しているのでしょう?

ジャンヌ・モローは演技をしていると言うより、ご本人の素で勝負しているみたいな感じでしたね。母親が言っていた自前のシャネルも素敵でしたよ。睡眠薬を大量に飲んで自殺未遂を起こしているのにもかかわらず、おうちの中でもシャネルのお洋服を着て、パールのネックレスやカメリアのブローチをつけています。本当に死んでしまいたい人だったら洋服のことなんてもうどうでもよくなると思うので、自殺未遂は恐らくステファンの注意を引く為のポーズだったのかなあ・・・?とファッション的にも感じました。

フリーダにはステファンという息子程年の離れた友人がいて、彼だけがフリーダの老後を気にかけているんですが、実は元愛人なんですね。カフェでギャルソンをしていたステファンをフリーダが見初めて以来、愛人関係を断続的に続けていて、今は友達と言う。今はカフェのオーナーですが、その開店資金もフリーダが持たせてやったということで、恩義を感じているというキャラクターです。演じているパトリック・ピノーさんはちょっとジャン・レノに似ている渋くて素敵な俳優さんでした。

フリーダの自宅でステファンと一緒にソファに座ったフリーダが「私が好きなのは彼だけよ〜。家政婦の助けなんていらないわ!」ってアンヌに言うシーンがあります。私はソファの後ろにある黒い屏風に目が釘付け。なんかこれマドモワゼル・シャネルの自宅にあった中国の屏風に似てるな〜、やっぱりフリーダは シャネルフリークってことなんだなあ、と思って後で公式サイトを見たら、なんと本物のコロマンデル・ドゥ・シャネルでした・・・。さすがジャンヌ・モロー様です。

ステファンのカフェまで散歩に出かけるシーンのお洋服も素敵なんですよ。シャネルのノーカラージャケットの上におそらくシャネルのコートを羽織り、パールのロングネックレスをして、チェーンバッグをなんとクラッチバッグ風に持っているんですよね(上の写真)。イヤリングと指輪も大きめのパールですよ(恐らく全部シャネル?)。なんて粋でお洒落なババアなんだろうな〜と言うね。私のアコガレのオババNo.1はジュディ・デンチ様ですが、ジャンヌ・モローもパリの不良婆さんって感じで素敵です(ちなみに彼女がカフェで飲むのは氷たっぷりのウォッカ)。

アンヌはお散歩の際にいつものオーバーコートを羽織ろうとしますが「そんなんじゃダメよ」と言われフリーダのトレンチコートを貸してもらいます(バーバリー?)。長身なアンヌにまたこれがあつらえたようにピッタリ。「アンタこれ似合うからあげるわ」って言われるんですが、こんな婆さんが側にいたら私もお世話したいですよ〜。

ステファンのカフェに行って、久しぶりに常連さんのムッシューと一緒に飲もうってことになったんだけれども、ステファンが「俺の人生はフリーダを中心に回ってるんじゃない」って率直すぎる発言をしてしまい、なんかせっかく外出する気になったのに台無しになってしまうのです。それ以降、何も食べたくないと言ってふて寝をするフリーダ。アンヌが呼んだ同郷の古い友達とのお茶も、フリーダがその昔、既婚者(彼女と後に結婚したと思われる男性)を寝取ったことを蒸し返されて台無しに。まあ、フリーダは旧友(と言っても20年くらい音信不通だった)に会いたい訳じゃなかったので、これはアンヌのおせっかいなんですが。「60年も前のことを蒸し返すなんて、さすがエストニア人」「そんなに愛国者ならもう国に帰れば?」とフリーダ。彼女はきっとこういう風に生きて来たんだろうな、生きにくそうだけど、正直でちょっと羨ましいなとも思います。

そして、ついにフリーダに愛想がつきたアンヌは「もう無理」とエストニア語でキレて出て行ってしまうのです。お茶会からラストまでわりと記憶がないんですが・・・夜のパリをキャリーケース引きながらさまようアンヌの描写が続き、やはりアンヌはフリーダのアパルトマンに帰ります。するとフリーダが「ここはあなたの家よ」と優しくアンヌを迎え入れてくれるんです。これでエンド。

またしてもヤボ天なんで、ケンカをしてからアンヌがどんなことを考えてパリを彷徨ったのかとかわからないんですよね〜。つくづく感受性が欠けていて情緒を解すことが出来ない人間なんだなあと嫌になってしまいます。エッフェル塔を見たアンヌが「やっぱりせっかく憧れのパリに来たんだし、もう少し我慢してみようかな・・・」と思って引き返したと理解するのは最低ですかね、やっぱり・・・(笑)

母親的には「70点」だとか(彼女は聞かれもしないのに映画を観賞後、私に映画の点数を報告してきます)。しかし70点って結構な高得点だと思うのですが・・・。私的にはジャンヌ・モローの暮らしぶりとファッションは楽しめた一作になりました。

余談:映画の公式サイトを見てみると著名人の方々のコメントが載っているのですが、道端カレンさんのコメントを思わず二度見してしまいました。映画を観ていなくても出来る適当なコメントを出すくらいだったら、事務所的にも仕事を受けない方が良いのではないかと・・・思ってしまったんですが。この著名人の映画コメント問題は「レスラー」のみのもんたさんでも物議を醸し出しましたね。みのさんのは言い過ぎて墓穴を掘っちゃうタイプのコメントだったので、それに比べれば当たり障りのないコメントの方が安全っちゃ安全なのかな。

『テルマエ・ロマエ』阿部ちゃんに5億点

         



話題作だったので取りあえずチェックしてみるか、とレンタル。予告編など散々見たんですが凄く面白かったです。

阿部ちゃん・・・頑張ってる!古代ローマ人役にまったく違和感なし。外国人エキストラの中に混じっても違和感なしどころか、むしろ際立って濃い!いや~さすがです。その昔、美大生だった友人が文化祭で売るシールを作ってたんですよ。牛乳パックの形をしたシールで、阿部ちゃんの似顔絵(版画だったかな?)の横に「特濃」って文字も入ってて、なかなか素敵な作品でした。それを思い出しちゃいましたね。それにトーガ(布を巻き付けた古代ローマの衣装)が似合うことと言ったらありません。鍛え抜かれた肉体も素晴らしい。もう100点、いや5億点です。

少し前に「メモリーズ・コーナー」 と言う阿部ちゃんが重要な役を演じているシリアスな映画を観ましたが、これを「テルマエ・ロマエ」の先に鑑賞しておいてよかったですよ。だって「あれ、ルシウス日本でなにやってるの?」って思っちゃいそうだから・・・。

他の古代ローマ人役の役者さんも素晴らしいです。ハドリアヌス帝の市村正親、アントニヌスに宍戸開、ケイオニウスに北村一輝、濃い顔を配したキャスティングの妙に痺れます。宍戸開は少し前にNHK教育のアラビア語講座に生徒役で出ていたんですが、その情報を友人Iに与えたところ「適材適所すぎる・・・」と笑っていました。宍戸開は中東系もいけそうですね。語学番組繋がりで言えば、北村一輝さんはイタリア語講座の生徒役をやっていたそうです。Eテレもなかなかいいキ ャスティングをしますね~!ルシウスの友人役はてっきり無名の外国人エキストラかと思っていたのですが、勝矢さんという日本人の方でした!この方が、普通になり切り度合いでは一番ではないでしょうか。

濃い顔の男優さんばかり出ていたので女優さんも投入したところを観てみたかったですね。大地真央とか?小沢真珠とか?長谷川潤とか(でもハーフか)?町亞星とか(アナウンサーですけど)?う~ん、でも男優ほどのインパクトはあまりないかなあ~。そう考えると、生物学的に男性の顔の方が濃くなれるんでしょうか?

平たい顔族には上戸彩ちゃんや、笹野高史さんなど。温泉客の常連に竹内力がいましたが・・・竹内力さんは平たい顔族ではなく古代ローマ人側ではないですかね?ちょっと前まで安岡力也( ホタテマンの方)と区別が付かなくて戸惑ったことがありました。濃くてその筋の人っぽいし、名前に「力」が付いてるから紛らわしいんですよ!調べた所、安岡力也と竹内力の間に血縁関係はないようですね~。他人ってことにまたちょっと衝撃を受けてしまいますが(笑)。安岡さんはもう既にお亡くなりになっているので、存命の方が竹内力と覚えました。

笑っちゃったところはたくさんありますが、まず古代ローマの都市全景が映されて「紀元138年」って出る所ですね。「スケール、でか・・・」って笑ってしまいました。あとお人形を使ったタイムワープシーンが可愛かった。お人形をぐるぐる回る家庭用流し素麺の機械みたいなものに入れて、あえてチープな効果を出しているんです。この演出は矢口史靖監督、西田尚美主演の「ひみつの花園」を思い出しました。

現代日本の風呂に衝撃を受けるルシウスも面白かったけど、シャワートイレに衝撃を受けるシーンは最高でした。便器に近づくとウィーンとフタが開いて、音楽まで流れると言う高性能さ。裏で奴隷が一生懸命頑張っていると言う想像図も面白かった。そしてウォシュレットに涙を流す阿部ちゃん、広がるお花畑・・・そう、日本のトイレは本当に素晴らしいんですよ。

私も帰省中に、トイレに入ってフタが自動で開閉することに「おっ!」とビックリしました。いやそういう高性能トイレが日本にあることはもちろん知ってたんですよ。でもヨーロッパにはないから、久々の高機能トイレとの対面に感激してしまったわけです。おまけに用を足した後は自動で洗浄なんてすごいじゃないですか。「おおお・・・」とちょっぴりルシウスの気分が味わえた瞬間でした。現代日本の高性能トイレは神!もっと諸外国にアピールしたいですね。リアルタイムで観られないと思うけど、次回作も非常に楽しみです!

『セイジ -陸の魚-』もう一度観ればわかるかも

       

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西島さん主演作なのでレンタルしました。眠い・・・眠過ぎる!私には、近年稀に見る睡眠導入剤映画でした・・・。そしてラスト「意味・・・わかんない・・・」お口ポカーンですよ。まさに狐につままれたような感覚でした。いや~、主演男優で映画を選んで観ていると、やっぱり出来不出来あるんですな・・・。だからしょうがない、しょうがないんです、うん、うん・・・(自分を納得させている)。

しかし私にとって意味がよくわからなかっただけで、感性が豊かな人ならスっと入って行けるのかもしれない・・・ヤボ天な私にはちょっと理解するのが難しい高度な映画でした。監督はあの鳥系ハンサムの伊勢谷祐介さんですよ。アートっぽくもあり、人情っぽくもあり、サイコものっぽくもあり、スピリチュアルっぽくもあるという不思議なテイストの映画です。映像は雰囲気があってとても美しいです。ただそこから色々と観客側が積極的にストーリーを汲み取って行かなければならないわけで、そこがヤボ天にはハードルが高くなってしまったポイントなのでしょう。


※ネタバレします。



おおまかなあらすじはこんな感じです。

僕(二階堂智)は、中年のサラリーマン。仕事で山沿いに建つ飲み屋の改修プロジェクトに関わることに。その飲み屋は彼が学生時代にバイトをしていた場所だった。学生時代の僕(森山未來)は自転車で旅行中に軽トラと衝突事故を起こしてしまい、自転車が破損してしまう。事故の相手カズオ(新井浩文)の勧めで飲み屋で住み込みのバイトを することに。その飲み屋には雇われ店長のセイジ(西島秀俊)と彼の恋人の翔子(裕木奈江)がいた。

常連客ばかりが集まる気楽な飲み屋で、徐々に仕事と新しい生活に慣れて行く僕。しかし不思議な存在感を放つセイジが気がかりだ。セイジには親しくしている盲目のおじいさん(津川雅彦)と彼の幼い孫娘りつ子いて、りつ子はセイジにとてもよくなついていた。ある日、セイジは12歳の頃、妹を守る為に両親を殺した過去があることを僕に告げる。セイジはりつ子に妹の影を重ねて見ているのだった。そんな時、無差別殺人事件が連続して発生する。おじいさんとりつ子の家が襲われ、りつ子の目の前で両親が惨殺、りつ子も左腕を切断する大けがを負い、感情を表に出すことができなくなってしまう。り つ子を助ける為にセイジがとった行動は・・・というお話です。ゼーハー・・・(説明で息切れ)

結局、 ラスト近くでセイジはりつ子の目の前で自らの左腕を切り落として、りつ子を覚醒させるんですね。そして20年後、仕事で飲み屋のあった建物に来た僕は美しく成長したりつ子と再会して昔を懐かしみ終わるんです。

見終わった後、意味が全然わからなくって評論や感想などのページを読んだところ、どうやらこの映画は「人が人を救うという崇高な行為を描いている」ということらしいです。それを読むと「ああ、そうか。なるほどな~」と思うんですが、セイジとりつ子の間にどんな絆があったのかとかよくわからなかったんで、セイジの行動があまりにも唐突で破壊的に見えて「えー!」ってなってしまったんですね。

西島さんは、ちょっと疲れた感じの訳ありな男を演じています。外見的には私が 好きなややダメ男テイストも入っていますが、なんだか底知れぬ悲しみを抱えていて、訳ありなことが伝わってきますよ。裕木奈江は懐かしいな~。童顔なのでとてもアラフォーには見えず。裕木奈江は「僕」目線のアップで撮られていたので、僕が裕木奈江に魅了されているのが一目でわかるんですよ。ここはすごく僕の気持ちが伝わってきました。

裕木奈江とビールを開けて語らった後、僕はトイレにこもって苦しそうな声を出しているんですが「冷たいビールを飲んだからお腹が痛くなっちゃったのかな」って思ったんですよ。しかし、後で評論等を読んでみたらココは僕の自慰シーンだったんですね。下痢じゃなくて自慰!これで私がどれだけヤボ天かわかるというものですよ・・・。

裕木奈江は離婚して夫に子 供を取られた女性なんですが、そのかわりに飲み屋をもらって細々とお店をやっているという設定で、ある雨の日にバックパッカーを背負ってやって来た誰とも知れぬセイジを拾ってやっているのでした。僕がその当時のシーンに迷いこむみたいな演出があったけど、過去に遡ったSFみたいでココだけ映画から浮いていた様な気がします(僕が飲み屋に来るまでを別の視点から撮った「桐島」っぽいシーンもあったな)。

僕とセイジと翔子さんで三角関係みたいになるのかな?って思ったら、翔子さんは中盤から後半にはほとんど登場しません。セイジが独特な死生観を持っているということを披露するシーンがありますが、動物愛護団体の人がちょっと新興宗教の勧誘っぽい感じでしたね。綺麗な車に乗って、 ちゃんとスーツを着てて、妙に礼儀正しく愛想がいいという。この人達を過激な意見を持っている某環境団体から来た風に描いた方が面白かったんじゃないかな~と思いました。セイジに意見されて「ふっざけんな!死ね!」みたいに馬脚を現して帰って行くシーンとか見たかったですが。

そんなセイジが心を許している相手が、津川雅彦のおじいちゃんの孫娘りつ子なんですね。血縁関係じゃないみたいなんだけど、ものすごく仲良しで。セイジとりつ子がじゃれあって遊んでるシーンとか「ああ、りつ子になりてえ・・・りつ子になって西島さんとじゃれてえ・・・」と思いましたよ。子役の女の子がまた超可愛くて、西島さんに慣れてるんですよね。「ねえ、セイジ~」とか言ってて、 もういっぱしの彼女みたい(笑)。

翔子さんが僕に「セイジはね、陸の魚みたいな人なの」って言うシーンがあるんですが。これ、台詞で言っちゃダメでしょう・・・。原作にあるシーンなのかわかりませんが、キーワード入りの説明台詞ほどカッコ悪いものはないですよ!町山さんも常日頃仰っているではないですか。しかしタイトルにもなっているくらいなんだけど、結局「陸の魚」ってどういう意味なのかわからず仕舞でした。よく観てたらわかるのかな・・・(汗)。

平和だった田舎暮らしですが、無差別連続殺人犯が徘徊しているというニュースが入り、ついに津川雅彦おじいちゃんの家も犠牲に・・・。おじいちゃんが、りつ子の作ったテープを聴いているうちに惨劇が起きてしまうんですが 、ここは「ああ、じいちゃん、気付いて~!」ってかなりヤキモキしました。りつ子の両親って描写がほとんどなかったけど一応存在していたんですね。しかしお馬鹿な私は「犯人、もしかしてセイジ・・・?」と騙されてしまいましたよ。結局、真犯人は誰かわからないままに映画は終わってしまいます。まあ本筋とは関係ないので、別に逮捕されなくても良し。

話は前後するかもしれませんがが、セイジはまだ少年だった頃に両親を殺害してしまった過去があったのでした。妹を撮影した思い出の8ミリフィルムが残っていたりしますが、結局彼の妹は服役中に亡くなってしまったと言うことがわかります。美しい湿原のようなところで夜、僕とセイジが語り合うシーンなんですが、風景がものすごく幻想的で美しかったです。しかし湿原を観た僕に感激の台詞を言わせるのはいただけない。表情だけでわかります。それを言うなら、僕が免許持ってるのに車を運転出来ないって嘘つくシーンもそう。モノローグで「僕は免許を持っていた」みたいなのがあったけど、これも表情と雰囲気だけでわかるから余計!伊勢谷監督の今後の課題は、余分な説明台詞を削ることである(上から目線で本当すみません)。

りつ子は両親殺害を目の当たりにして心を閉ざしてしまいました。お見舞いになかなか行く気が起きなかったセイジですが、皆と一緒におじいちゃんとりつ子を訪ねます。全く反応がないりつ子に呆然とするセイジ。何を想ったのか庭で薪を割っているおじいちゃんの斧を取ってきます。そして、りつ子の目の前で彼女が失ったのと同じ左腕を自ら切り落とすのでした。

返り血がりつ子の顔に飛んで、空洞のようだった彼女の目に光が戻って来るのが超スローモーションで撮られています。りつ子にとって大好きだったセイジが、自ら自分と同じ左手を失う衝撃シーンを見たからでしょうか。自己犠牲の精神ってことなのかな~。今思うとセイジにとっては、りつ子=妹なわけで、彼女は自分の左腕を犠牲にしてまでも助けたい存在ってことだったんだと思います。あれ、理解出来たかな?!

今こうして文章にしてみると頭の中に整理がついて、理解に近づいた気がしますが、映画を観ている時は全然わからなかったんですよね(汗)。この後、現在になって僕が二階堂智になるわけですよ。で、ボロボロになった飲み屋に行って 、大人になったりつ子と会っておじいちゃんの話をして終わると言う。エンドロールではセイジの乗っていた軽トラが湖のほとりに停車されていたので、セイジは今でもどこかで生きているんだろうなあ~という感じでした。

う~ん、こうやって振り返ってみると結構いい映画なのかも?!しかし、初見でスンナリ理解出来るように作ってくれれば名作になったかもしれない・・・。説明台詞による理解配慮をもっと別の部分に当ててくれればよかったのかも。飲み屋の常連のシーン/エピソード(東京栄転とか、アマチュアロックコンサートとか、スナックでのケンカとか)を削って、セイジの内面をもっと掘り下げればよかったんじゃないかと。セイジと翔子の関係も上手く使えばセイジの内面表現に役立ったと思いますし・・・。あとセイジとりつ子の絆にもっとズームインしてみるとか。僕は翔子に惹かれていてもいいけど、もう完全に傍観者スタンスでいいですよね。

ということで、もう一度観ればもっと味わい深くなる映画かもしれません。しかし・・・私にはそんな時間がありません・・・。この後にもまだまだ観たい邦画/外国映画が控えているのですから!さあ、次行ってみよう!

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